古本屋レッドブロンコ開業準備室

四十五にして惑うばかり。どうなるんだオレ?

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倉敷でもブックオフ

 所用で倉敷に遠征した。時間も予算も乏しいので、夜行バス利用のとんぼ返りという45歳の肉体を鞭打つ、0泊2日、滞在時間僅か12時間のハードスケジュールだった。それでも奮発して夜行バスは、一番高いジェイアール系の3列シートの京浜吉備ドリーム号にしたのだが、これが座席の位置によって居心地がかなり違うので参った。全席指定なのだが、A席とのことだったので窓側と喜んだのだが、左端のA席と中央のB席の間は非常に狭く、右端のC席と中央のB席の間が通路になっているため、A席から通路に出るにはB席の前を通らなければならないのだが、B席の人がリクライニングを下げて眠ってしまうと巨大な障害物となるため、通路に出れなくなってしまうのだ。トイレは付いていても、そのトイレに行けなくなってしまうのである。そのうえ、途中に何度かサービスエリアに寄るのだが、あくまで乗務員の休憩や車両点検のためのもので、乗客はバスから出ることさえ許してもらえない。つまり、一晩、トイレに行けないのだ。夜中に一度はトイレに行く私にとってはかなりの苦行であった。また乗る機会があったら、今度はC席を指定するようにしよう。そして、空いていれば、階段空間のために左側に席のない7-B席にしたい。この席は真後ろが階段への通路になっていて、後ろの席の人に気兼ねすることもないので、リクライニングを目いっぱい下げられるのだ。行きは満席だったが、帰りは空いていたので、私は乗務員の許可を得て7-B席に移った。階段空間がタイヤの音を反響させるので少々うるさいもののすこぶる快適だった。同じ料金なのに位置によって快適性がかなり違うのが高速バスの旅のようだ。45歳にしてまた一つ学んだ。

 

 浅い眠りを何度も繰り返しながら、8時30分に倉敷駅に到着した。倉敷は3度目だが、過去の2回は車の旅でいわゆる美観地区しか行かなかったので、駅前は初めてだった。高速バスの発着所のある駅北口には、クラボウの工場の跡地にチボリ公園というテーマパークがあり、いわゆる「倉敷」のイメージにはそぐわない異様な感じがするのだが、よそ者がとやかく言うことではない。用事は昼過ぎなので、それまで散歩をして昼前に風呂に浸かることにし、商店街や美観地区周辺を歩き廻った。大原美術館の辺りの美観地区は美しいまちなみではあるが、生活感が全くなくおもしろみには欠ける。それよりも商店街の路地裏の迷宮の方が遥かに楽しい。また、美観地区の北東側に古い町家の連なる通りがあり、新しい感覚の様々な雑貨屋が幾つかあり、こちらの方もおもしろそうなのだが、時間が早くまだ開いている店がなかった。その「おもてなし通り」には、かめ好きの女店主の切り盛りする有名な古本店「蟲文庫」や、随分前に当ブログでも紹介した世界中のうまいものを取り寄せている「平翠軒」もあったので、野暮用を済ましたらまた来ることにし、風呂に行く前に倉敷に2店あるブックオフのうちの1店を覗くことにした。家族が一緒なら許されない寄り道だが、一人旅なら気兼ねすることなどない。私はブックオフが好きなのだ、寄って何が悪いと言うのか?期待に胸を弾ませながら「蔵の湯」という立ち寄り湯スタイルの銭湯近くにあるはずのブックオフを目指して歩くと、あの3色のどぎついカラーがかなり遠くからでもその存在を際立たせていた。近づくと、仏壇屋の隣にそのブックオフは佇んでいた。

 

 ブックオフの入り口を抜け店内に目を遣ると、わが町のブックオフと変わらぬ風景に安心するとともに少々つまらなさを感じてしまう。初めての店だがブックオフはブックオフ。変わり映えはしないのだから、過度の期待は禁物なのだ。だが、さっと店内を一周し、わが町のブックオフと何となく違うことを感じた。店は100坪ほどだが、中央の什器が低く抑えられ、広く明るく感じる。それに何だか、マンガが多く感じる。半分以上はマンガが占めている。ゲームやCD、DVDが四分の一。本や雑誌は全体の四分の一程度に過ぎない。近くに高校があるので、マンガに力を入れているのかもしれない。それに駐車場が広くないうえに数店舗の共用であるため、車を利用しない子どもに重点を置いているのかもしれない。時間もなく、重い本を荷物にするのも嫌なので、太田出版の本を1冊とCDを4枚選んだ。それでもスーツと革靴を詰め込んだダッフルバックの重みが増し、肩に食い込んで痛いくらいになってしまった。倉敷まで来て何をやっているんだか。45歳の分別無し。蔵の湯のぬるい湯に浸かり、念入りに髭を剃っていたら、顔の下半分が血だらけになってしまった。あーあ、これから大事な話で人と遭うというのに、血だらけとは。トホホ・・・



暮らしき

 

「暮らしき」 発行・三宅商店 2007.11.01

  

omise

 

「おみせ」 五十嵐豊子 福音館書店

   

 美観地区から少し離れた古いまちなみの老舗呉服店の蔵を改築した喫茶店で売っていたお洒落なタウン紙。それが「暮らしき」。現在までに3号が発行されていたので、それくらいならと全て買ってしまった。上部掲載はその最新刊の3号なのだが、表紙の絵はこのタウン紙を発行している三宅商店さんのありしの日の姿なのであった。今では町家喫茶となり、趣きは少し変わってしまったが、倉敷の美しいまちなみに溶け込んでいる。この絵をどこかで見たと感じた方もいるかもしれない。実は20年以上前に福音館書店から発行された五十嵐豊子氏の「おみせ」という絵本に掲載されていたうちの1店だったのである。だが、当の三宅商店の方はそんな絵本に自店が掲載されていたことを知らなかったらしい。あの「蟲文庫」のオーナーが町家喫茶となった三宅商店のオーナーに古絵本の「おみせ」を見せ、感動したオーナーが版元と著者に掛け合い、復刊させたという。うーん、いい話だ。そんな話が詰まっているのが倉敷の魅力なのだろう。

ブックオフでセルタネージャが買えた


XORORO1

 


XORORO2
 

CHITAOZINHO & XORORO  「em familia」
 

 今年、二本のブラジル音楽関連の映画が日本で公開された。一本は、ドキュメンタリーでボサノバの世界を綴った「ディス・イズ・ボサノバ」。もう一本がブラジル・セルタネージャ界のビッグスター、「ゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノ」の家族の軌跡を描いた「フランシスコの二人の息子」。二本とも映画館では見られなかったが、「二人の息子」の方は最近、DVD化されたので、見ることができた。知ったかぶりして書いているが、ブラジル音楽と言えばボサノバという感覚しかなかった私がセルタネージャというジャンルを知ったのも、「ゼゼ・ヂ・カマルゴ」を知ったのも、「二人の息子」を見てからに過ぎない。この春にブラジル音楽の専門店から、ブラジルでは「最早ボサノバは古い音楽」だということをお教えいただくまで、ボサノバこそが現代ブラジルの最先端音楽だと思い込んでいたのだから仕方ない。そこで、ブラジルの流行歌を学ぶべく「二人の息子」をじっくり見ることにしたのだが、物語でフランシスコの二人の息子が奏でるのはボサノバなどより遥かに田舎臭いアコーディオンとギターが奏でるコーラスで、いつ洒落た都会的な音楽に変わるのかと思い、ついに最後まで田舎臭い音楽で面食らいつつ、それでも最後の「エ・オ・アモール」の歌声には感動の涙を流し、終わった後にはアマゾンでゼゼ・ヂ・カマルゴのCDを検索している始末であった。ボサノバが過去の音楽となった今のブラジルで最も愛されている音楽ジャンルが都会的な気だるさが漂うボサノバと比べれば、埃臭くて汗臭く田舎っぽいゼゼ・ヂ・カマルゴのようなセルタネージャというカントリーソングだということを知り、一瞬戸惑ったが、よく考えて見れば、至極当然な話だとも感じた。広大なブラジルの多くの人は田舎で生活しているか、田舎から都会に出稼ぎに行っているかのどちらかが多いのだから、ぼそぼそつぶやくようなボサノバなどより、田舎の郷愁が漂うセルタネージャを好むのは当たり前のことかもしれない。

 

 そんなわけで「二人の息子」を見た後、ブックオフのCDコーナーでもしかしてセルタネージャがあるかもしれないと気に掛けていたら、意外に早く出くわした。それが上部掲載の「CHITAOZINHO & XORORO 」の「em familia」だった。表面を見たら名前らしき文字が「&」で連なっていたので、「ゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノ」と同様のいわゆる「ムジカ・ドゥプラ」と呼ばれるデュオであることが予感され、裏面のカウボーイ(ガウチョ)姿の写真を見て、これはまずセルタネージャで間違いあるまいと期待に胸を弾ませて250円で買った。ただ、表面の写真が何となくクリスマスっぽいのには嫌な胸騒ぎもした。帰って早速、聞いてみると、期待どおりにセルタネージャではあったが、胸騒ぎのとおり、ホワイトクリスマスなどのクリスマスに因んだ曲が多く、そのうえ、カーペンターズで有名なあの「シング」のカバーまで収められており、セルタネージャの世界にどっぷりと浸かるということはできなかった。それでも近くのブックオフで僅か250円でセルタネージャまで手に入ってしまうのだから、やっぱり、ブックオフは奥が深い。それにしても誰がどこで買ったものなのだろうか。永遠の謎ではあるが気になる。ところで、ネットでこの「CHITAOZINHO & XORORO」を調べていたら驚いた。「シタンジーニョ・イ・ショロロ」と読むこのデュオこそ、「ゼゼ・ヂ・カマルゴ」が自分で唄ってもヒットしないが、提供した楽曲ならヒットすると映画の中でぼやいていた、その提供先のデュオの一つだったのであった。ブラジルでは「ゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノ」以上の存在らしく、数十枚のアルバムを出しているとのことだった。今年のうちのクリスマスはこいつで決まりだ!セルタネージャで迎える聖なる夜、女房と子どもは喜ぶまい。

ブックオフ、店舗再編成か?

 義父が大病を患い、入院してしまった。文京区千駄木近くの病院だったため、見舞いにかこつけて、不謹慎ではあるが、小一時間だけ近くの古本屋を駆け足で覗いてみることにした。千駄木とその隣の根津近辺は、13年ほど前のゼネコン勤務時代にマンション開発のために毎日通っていたため、土地勘は抜群にあるはずだった。しかしながら、僅かな期間に過ぎないが、街並みは大きく変化していないにも関わらず、店はかなり入れ替わっていたためか、馴染みのまちという感覚はすぐに吹き飛び、知っている店を見つけてはほっとするようなありさまであった。そんなわけでお目当ての古本屋には辿りつけず、仕方がないのでどこにも寄らないよりはましとブックオフ千駄木店だけ覗くことにした。そこは僅か25坪程度のブックオフにしてはかなり小さい店だった。小さいとお目当ての格安コーナーも小さいので掘り出し物に出逢える可能性も小さくなる。だが、都心であり、近くにはあの芸大もある土地柄だからアート系のいい本に出くわすかもしれない。だが、何もなかった。格安コーナーも予想通りボリュームがなく、触手が延びるものにぶつからなかったし、雑誌コーナーやアート本コーナーにも何もなかった。おまけにVHSビデオは550円もしたし、CDも高目の値段設定であった。これなら地元のブックオフの方が遥かにいい。地元のブックオフなら手ぶらで帰ることなどまずないが、千駄木店ではついに欲しいものにぶつからなかった。義父の見舞いを抜け出てまで来たので罪悪感だけが残ってしまった。

 

 さて、久し振りにブログを更新したら、すぐにコメントを二ついただいた。とても嬉しいことだ。一つは、私の将来の姿が垣間見られたような少し背筋の寒くなる内容で、もう一つは大いに背筋が凍りつくような内容であった。それは、私が目指す小規模店の成功モデルのはずだった、あのブックオフ成城学園駅前店が閉店となっているとの指摘だった。成城のブックオフは千駄木店と同じくらいの大きさだが、坪当たり15万円近くを売り上げる効率の良い店だった。その分、賃料も高いが、それ以上に売上も上がっていたはずなので優良店だと思っていた。ブックオフのIR情報では営業利益率が3.2%とされていたため、売上の割には利益率が少ないとは思っていたが、それが原因だったのだろうか。ネットでブックオフの閉店情報に当たっていると、成城学園駅前店と同じ時期にあの原宿店も閉店になっていた。原宿店と言えば、ブックオフ成功のシンボルのような店だったはずである。そのようなシンボル店まで閉鎖してしまうのはどうしてなのだろう。気になっったので、公開されているIR情報の中から9月末時点の出店閉店状況のデータを見ると、全国1500店舗体制を目指しているはずのブックオフが、今年の4月以降の6カ月間に増やした店舗が僅か2店に過ぎないことが判明した。新規出店を抑制しているわけではなくフランチャイズと合わせて20店舗以上を新規に出しているのだが、同じ数に近い店舗を閉店しているのである。成城学園駅前店も原宿店もその中に含まれているのだろう。

 

 1000店舗体制の達成を目前に控え、1500店舗体制に計画を上方修正したはずなのにどうしたことなのだろう。新規出店と同じくらいの数を閉鎖していては、とても1500店舗など達成できまい。創業者が退いたことが関係しているのだろうか。いけいけどんどんの創業者からバトンを受けた新社長は、取引銀行との調整の中からむやみやたらな拡大路線ではなく、新規出店の条件として経営効率の悪い店のリストラを同時に行うように要請されたのかもしれない。取引銀行に重要なのは、取引先の売上よりも利益と融資額とのバランスの方だ。無謀な拡大戦略が裏目に出る例は枚挙に暇がない。取引銀行にとって、創業社長は既に融資先の危険要素と写っていたのかもしれない。もしかしたら、丸善と創業社長の癒着をリークしたのは、取引銀行だったなんてこともあるのかもしれない(単なる想像です)。そんなたくましい想像さえさせてしまうほどブックオフの経営にかつてない慎重さが伺えるように感じる。成城学園駅前の閉店の場合は、人の流れが変わってしまったのが原因かもしれない。小田急の駅中戦略に凄まじいものがある。学生時代に使っていた登戸駅など改札の真ん前にスーパーを出店させ、駅前の商店街に人が流れなくなってしまったように見える。成城学園駅も駅中に成城らしいお洒落なショッピングモールができて、駅前商店街は大きな影響を受けているのかもしれない。ブックオフが新規出店ばかりでなく、既存店のリストラを重視するようになったのだとすれば、ブックオフの株は今こそ買い時かもしれない。私は金がないから買えないが・・・。

柳原 良平
柳原良平の装丁
ブックオフは空振りだったので、病院に戻る途中にあるあの「往来堂書店」に立ち寄り、たくさんあった欲しい本の中から予算の都合で2冊だけ買い求めたうちの一冊が上の「柳原良平の装丁」。4年前に発行された本なので、表紙などが少しばかりすれていたが、それほど痛んでいなかったので買うことにした。義父の見舞いに来たときに買い求めた本として記憶に留めることにしたいからだ。アマゾンでならまっさらの新品が手に入るかもしれないが、記念のようなものだから構うまい。最近の昭和ブームのためか、近頃亡くなられた内藤ルネ氏などと同じく柳原良平氏関連モノもヤフオクなどでは高値がついているので、こういう本があると貧乏人には助かる。柳原良平氏と言えば、アンクルトリスなどのキャラクターや船のイラストが有名だが、この本をめくっていて驚いたことがある。「野生のエルザ」シリーズのように、イラストは一切描かず、ライオンの写真とラインを使うだけの装丁デザインも手掛けていたのだ。つまり、イラストレーターではなく、デザイナーだったってことらしい。それにしても往来堂は小さい。小さいが飽きない。とてつもなく良い本屋であることは間違いない。

百円の孤独

 二日ほど前だったと思うが、夕方のテレビニュースの特集で「じてんしゃ図書館 」が取り上げられていた。以前、毎月購読しているビーパル(恥ずかしながら、私はビーパルを創刊号から買っている。最も長く定期購読している雑誌なんです)の8月号の「リアル旅人図鑑」に掲載され、私の頭ではとても理解できないが、何となくうらやましく感じ、強烈な印象を受けた若いもんがたまたま見ていたニュースに動画で紹介されたので見入ってしまった。若いもんのお名前は土居一洋氏、28歳。直径1m50㎝ほどの水車型の本棚(水車の水が入るところに本を収めるようになっている)を台車に載せ、それをドロップハンドルのサイクリング自転車で牽引しながら、全国を巡り、図書館や巡りあった方に「百年の愚行」というこの百年の間に人間がしでかした環境破壊や戦争などの行為をヴィジュアルで示した警告の書を勧めるという活動をもう3年近くしている。ぶらぶらしているときに本屋で偶然その本を手に取り、衝撃を受けた土居氏は、これからの百年を過去の百年のようにさせないために、自分にできることとして、より多くの人にその本を見てもらおうと決意し、全国3000の図書館に「百年の愚行」を置くようリクエストするために旅立ったのだという。旅先では野宿が基本で、たまに資金稼ぎのバイトもするという。その土居氏の活動は図書館へのリクエストだけではなく、自腹で購入した「百年の孤独」ほかの警告書を出逢った人に無償で貸し出し、借り受けた人にはほかの人にまた貸しするようにお願いしているのだ。本の無尽連鎖貸し出し作戦とでも言うべきか。環境問題の啓発のための行脚だから自転車を利用するのは解かるが、何故重量のある水車型の本棚を使用するのかとか、何故出版社から本の提供くらい受けないのかとか、何故どこぞの企業にスポンサーになってもらわないのかとか、何故こぎにくそうな着物を着ているのかとかといった疑問はつきないが、3年近く続けているその事実には馬鹿みたいだと感じながら、とは言えすごい奴だと感じてしまう。

 

 さて、しばらくブログの更新を怠っていたら、心配のお便りを寄越してくれた方がお二人もいた。とても嬉しかったが、リアクションを起こさず、大変な失礼をしてしまった。お一人は、ネット古本屋を運営されている方で、もうお一人はステディな関係にある方がリサイクル書店勤務から脱サラして50坪の古本屋を始めたという方であった。お二人とも私よりは相当若い方のように思え、それぞれ大きな目標に向かって日夜奮闘されているように感じ、私としては大いに焦りを覚えもした。じてんしゃ図書館の土井氏に感じたねたましさも若さに対するものである。学校を卒業して今日まで切れることなくサラリーマンを続け、脱サラを夢見ながら未だ果たせず、果たす見込みも薄くなりつつある今日この頃、無鉄砲な若い奴を見ているとうらやましくてたまらないのだ。若さをうらやんでも仕方ないので、最近は妻子持ちの中年にも可能な比較的安全な新しい人生の展開方法を模索しているのだが、私の脱サラのストッパーとなった家内の父親が大病を患うなどして、手かせ足かせは増えるばかりで、何となく孤独感にさいなまれている。可愛い盛りの娘もいる私の孤独感など百円くらいのものなのだが、それでも募る寂寥感。どうなっちゃうんだろう。あと15年で60歳だぜ!

 

池澤 夏樹, アッバス・キアロスタミ, フリーマン・ダイソン, 鄭 義, クロード・レヴィ=ストロース, 小崎 哲哉, Think the Earth Project
百年の愚行 ONE HUNDRED YEARS OF IDIOCY [オリジナル複写版]
ガブリエル ガルシア=マルケス, Gabriel Garc´ia M´arquez, 鼓 直
百年の孤独 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1967))
「百年の愚行」は、私も新刊書店で手に取ったが、農学部出身だが、ガソリン価格の上昇が目先の最大の関心事のようなものにとって、わかっちゃいるけどやめられない環境問題はつい目をそむけたくなるもの。手には取ったが、すぐに戻してしまった。そんなんじゃあいけないことは解かっている。だが、バイク通勤を自転車に替えるつもりのない私には見る資格もないように思える。この本のタイトルは恐らく、ノーベル文学賞にも輝いたガルシア・マルケス氏の「百年の孤独」から来ているのだろう。「百年の愚行」の寄稿者の筆頭に掲載されている池澤夏樹氏は、ウィキペディアに寄れば大江健三郎氏などと同様にマルケス氏の影響を色濃く受けているらしいから、まず間違いあるまい。とは言え、私は、「百年の孤独」も読んだことがない。マルケス氏の母国、コロンビアではソーセージ並に売れたというが、叙事詩的な内容らしいことから端から読みこなせそうにないと感じているのだ。誰でもおもしろいと感じるような内容なのだろうか、古本屋を目指すならやはり試さねばなるまい。

ふるほん文庫やさんと紀伊国屋

 リサイクル書店最大手のブックオフと書籍関連商社・丸善との関係は何となく悲しいものがある。ブックオフ創業者を退陣に追い込んだバックリベート問題だけでなく、売れ残りの本を古本屋で捌くという行為には何となく後ろめたいイメージが生まれてしまうからだ。先入観かもしれないが、売れ残りのマンションを安値で処分販売するような感じで、定価で買った人を欺いているような気がする。そんなことを言っていたら、百貨店のバーゲンセールだって同じだが、アパレル商品には流行やサイズも関係するから、大幅値下げしても流行はじめに定価で買った人から文句が出ることはない。文句が出るのはマンションのような超高額商品の場合だけだろうから、本の値下げなど気にする必要はないのかもしれない。話がずれてしまった。何となく物悲しいブックオフと丸善の関係だが、その正反対がふるほん文庫やさんと紀伊国屋との関係ではあるまいか。かなり前にふるほん文庫やさんの話題を当ブログで取り上げたときにも両者の関係に軽く触れたが、その関係は今も続いているというよりも両者の結びつきは当時よりも深まっているらしい。少し前になってしまうが、9月上旬の読売新聞に【絶版や品切れになった“お宝文庫”をズラリ2万冊並べた文庫フェアが9月7日、東京のJR新宿駅近くの紀伊国屋書店の新宿本店と新宿南店で始まった。約50万冊の在庫を誇る文庫専門の古書店「ふるほん文庫やさん」(北九州市)と提携し、両店で各1万冊販売する。現在より縦のサイズがやや大きい戦前の岩波文庫や、サンリオSF文庫、講談社少年倶楽部文庫といった既に姿を消したシリーズなど、ファンにはたまらない“レア物”が並ぶ。価格は480~1280円と意外に手ごろだ。会場にないものは、在庫があれば取り寄せ、なければ探してくれるという。日本では300巻以上が翻訳されているが、288巻まで品切れとなっているSF小説「宇宙英雄ペリー・ローダン」(ハヤカワ文庫)も1冊から買える。】というような記事が掲載されていたからだ。

 

 新刊書店が商売敵であるはずの古本屋と手を組むというのは一瞬驚くような事態であるが、よく考えれば、新刊書店と古本屋は非常に合理的な関係を結べるのに気付く。新刊書店が版元からさえ入らなくなった絶版・品切書の提供を古本屋から受けられれば、その新刊書店はお客様の求める全ての本を用意することができるようになるからだ。まさに無敵の本屋になる。顧客サービスとしてもこれ以上のものはあるまい。逆に、古本屋の立場からすれば敵に塩を贈るようなもので、古本屋の存在意義を否定しかねない暴挙と言えないこともない。しかし、ふるほん文庫やさんはそんなケチな発想の古本屋ではない。求めている方に求められている本が渡ればそれで良しというようなおおらかなお気持ちなのであろう。ふるほん文庫やさんの谷口さんならそういうご発想であろう。勿論、メリットも大きい。日本の新刊書店の代表である紀伊国屋との提携による売上と信用の増大は経営に安定をもたらすものである。この世に出された全ての文庫を集めようとの強い思いを実現させたふるほん文庫やさんだからこそ紀伊国屋も提携を申し込んだのであろう。新刊書のリサイクルに過ぎないブックオフは新刊書店の目の上のタンコブだが、絶版品切れに強い古書店なら新刊書店のパートナーにもなれるということだ。ブックオフ以前の古本屋は新刊書店とも共存していたのだから、当たり前なのではあるが。

 

 逆説的言えば、今日の出版業界の不調はやはりブックオフが大きく関係していると言えることになろう。新刊書店で売れるのは発売されたばかりの本だけで、発行後しばらく経ったような本は売れなくなってしまった。そういうちょっと古い本ならブックオフで安く買えると消費者が考えるようになったからだ。ブックオフが新刊で買われた本を買い取って安く売ってしまうから、新刊書店はブックオフでまだ売られていない新刊だけを売るようになり、新刊が新刊でなくなったときには新刊書店では売れなくなってしまっているのだ。その結果、出版業界は新刊で稼ぐことしかできなくなり、やたらめたらと点数ばかりを出し、つまらない本が増え、そのせいで本そのものの魅力も失われつつあるのではないだろうか。おまけにたくさんチャンネルのあるテレビやゲームやインターネットがあれば、つまらない本など見向きもされないのは当たり前だろう。だが、このような出版業界の不況をチャンスと見ることもできるのではないだろうか。ブックオフのようにやたらめたらと量を置く方式とは逆に、よいものを選んで置けば売れるはずである。選びやすいように店も小ぶりの方が良いだろう。あの店に行けば、何か必ずおもしろい本に出逢えるというイメージを創ればいいのだ。今、うまくいっている実店舗の小さな古本屋は、そういうイメージづくりに成功しているところだと言えよう。私もそういう店を創りたいと願っている。そして、そういう店で私は新刊の取り寄せや絶版書の探求などにも応じ、古本屋でありながら、出たばかりの新刊まで取り寄せることで偉大な紀伊国屋のように本に関わる全てのニーズに応えるようにしたいものだと考える。アマゾンやヤフオクを使えば、不可能ではないのだから。

  
LONPOPO

 

ED YOUNG 【LONPOPO】

 

 甲府のブックオフ遠征では、この「ロンポポ」を含め「FOSSETTE(フォセット)」というシリーズものの洋絵本を数冊仕入れた。その前に直近のブックオフで手に入れた丸善の「ソンリーサ」と同じような感じだが、どこを調べても丸善の名前は出てこない。そこで、ネットで調べてみると、やはりソンリーサと同様に、丸善がセット販売していた絵本らしいことがわかった。洋書輸入の最大手の丸善らしく、このフォセットシリーズは直輸入したものらしい。ブックオフでの価格はソンリーサと同じ価格で200円か300円であった。このフォセットもソンリーサと同様にセット価格は20~25万円程度の価格だったらしい。1冊当たりの価格は3000円を越すことになる。セットを定価で購入した方がブックオフで200円や300円で売られているのを知ったら、悲しい気持ちになるかもしれない。だが、そう悲しむことはない。ブックオフで売られているのはセットではなく、セットになれなかった半端な売れ残りなのだ。それにしてもブックオフで2~300円で売られているということは卸値はその半額以下だろう。そんなに安く処分するよりもセットで購入した方からの信用を守るために焼却処分した方が経営的にはプラスなのではないだろうか。それともそんな余裕さえないというのだろうか。だとしたら、もうだめだかもしれない。

先を越される!

 厳しくも情のあるコメントを時折寄越してくれる「とおりすがり」さんより、URLだけのコメントをいただいた。すかさずクリックすると、広報担当というページで、「BOOK BANK CLUB (以下BBC)」という新しい古本屋がオープンしたというプレスリリースが掲載されていた。それによると、BBCとは「大人ゴコロをくすぐる上質感ある古書店」をコンセプトとし、リサイクル書店中堅の「ほんだらけ」が手掛ける新業態店とのことであった。それってこのオレが標榜していた「大人のブックオフ」ってことじゃない!しかも初めからフランチャイズ展開を目指しているってことだから、オレの目指していたとこってことじゃない!!先を越されてしまったってことか!!!「とおりすがり」さんの冷ややかな笑い声が聞こえてきそうな気がした。もっともそのくらいの業態は誰でも思いつくことだから、先を越されたからといってびっくりするようなことではない。と開き直るが、心中は穏やかではない。救いは既に一定の実績を持つリサイクル書店チェーンが始めたというところだ。このオレのコンセプトは間違ってはいなかったってことになるだろう。それに脱サラ開業組の試みでもないから、焦りを覚えることもない。

 

 ということで、気を取り直して、BBCのホームページをじっくり見ることにする。すると、出店地で少しばかり驚いた。BBC1号店が開店した池袋駅西口のアゼリア通りは、私が年に数回は車で走る道であったのだ。家内の実家が東武東上線沿線にあり、行けば大抵は東武デパートに繰り出すのだが、その際、必ずアゼリア通りを利用していた。立教大学も近く、東京芸術劇場もあり、西武のある東口に比べると、落ち着いた感があり、老舗の古本屋も何店かある。販売の立地としてはかなり良いと思うのだが、一般客からの買い取りに力を入れるとなると駐車場の問題があるのでとても良い場所とは言い辛い。ホームページの小さい写真からではよく解からないが、こげ茶の木目を基調とした内装とこだわりの落とした照明で大人向きの落ち着いた空間に演出されているように見える。まさしく私がしたいと考えていたような店づくりを具現化しているようでうらやましい気がする。早く行ってみたいものだが、しばらく家内の実家に行く予定がないし、家内の実家近くに一人で出掛けるのも馬鹿げているのですぐには行けそうもない。BBCのホームぺージを読むと、品揃えでは「読み物」を主体にしているとのことで、コミックやCD・ビデオに売上を依存する従来のリサイクル書店との大きな違いを打ち出そうとしているようだ。このような路線は、西荻窪周辺のニューウェイブ系の古本屋と同じなのかもしれない。私が考えていた「大人のブックオフ」では、コミックやCD・ビデオも「大人向け」のものをセレクトして積極的に扱うつもりだったので、ここのところの考え方は大きく異なる。だが、ほかのかなりの部分で私の「大人のブックオフ構想」と通じるところがあるので、このBBCがうまく行くのであれば、私の次回のチャレンジにも可能性が見えてくると言えるかもしれない。開店の半年後くらいに様子を見に行く方がいいだろう。

 

 BBCの大きな特徴は初めからチェーン展開を目指しているところにもある。30店舗体制のほんだらけが仕掛けている新業態なのだから当然なのだが、9月1日にオープンしたばかりで、開店1カ月の収支さえまだわからない状況であるにも関わらず、既にフランチャイジーを募るというのはどういうことなのだろう。絶対の自信があるということなのだろうか。ホームぺージにはフランチャイズ希望者向けの資料として事業モデルも掲載されているが、1500万の初期投資で20坪の店舗を借りた場合の1年間の収支は、売上1800万円に対し、粗利益が1260万円(粗利益率70%)で、経費の支出が720万円となり、営業利益は540万円となっている。この経費には人件費は含まれていないので、店主が一人だけで切り盛りした結果の税引き前の店主の取り分が540万円に過ぎなくなるのだ。1500万円も投下し、年中無休で一人で働いた結果の税引き前の取り分が540万円に過ぎないのなら、週休二日制で有給休暇もあるサラリーマンがネットで趣味の古本屋をやる方が遥かに良いのではないだろうか。これは店舗の賃料を坪当たり2万円としているため、年間の賃料を480万円に設定しているから経費の比率が高くなっているからである。逆に1カ月の売上は坪当たり7万5千円とし、他のブック●●●などよりはかなり低く設定している。賃料が坪当たり2万円の立地であれば、売上もそれなりに期待できるはずだから、BBCの事業モデルはかなりシビアな設定と言えよう。それとも、読み物主体の大人の古本屋の場合は売り上げも期待できないということだろうか。だとしたら、いくら格好よくてもフランチャイジーになろうという方はいまい。とっくに先を越されてしまっていたのだが、BBCの先のことはわからない。利益を生み出すビジネスモデルになるのであろうか。

 

 
ローレンス コーン, Lawrence Cohn, 中江 昌彦
ザ・ブルース・ブック

 大人のブックオフに相応しい読み物となると、こんな感じになるのではないだろうか。この本は、ほんの少し前に直近のブックオフの格安コーナーで手に入れた。まさかこの手の本が格安コーナーに並ぶとは、いくらブックオフといえどもそうあることではない。破損や書き込みなどもなく帯も付いていたが、少しばかりくたびれていたのでそういう扱いになってしまったのかもしれない。この「ザ・ブルース・ブック」は、VOL.1とVOL.2に別れるが、VOL.1は既に出版社にも在庫がない、絶版品切れ書であるため、アマゾンマーケットプレイスにおいても元値よりもかなり高い価格設定になっている。この本を手に入れたことで最近は、ブックオフで格安ブルースCDを探しているが、なかなか出逢うことができない。ジャズやブルースはブックオフでも比較的高い値段設定のため、大きなブックオフよりもジャンル分けが大雑把な小さなブックオフの方が安いものに出逢えるが、店が小さければ絶対量が少ないのでなかなか見つからないのだ。

甲府でもブックオフ

 国産の250CCのスクーターに乗り換えたことで随分久し振りに浮き立つ感覚が得られるようになった。車はあるが、ガス代が掛かるので一人で遠出する気にはならない。バイクならガス代も気にならないし、それより何より開放感がある。そんなわけで子どもが学校や幼稚園のある日にサラリーマンの休みの日があったので、家内の許しを請い、学生時代によくツーリングで立ち寄った甲府に出掛けることにした。甲府はわがまちから比較的近く、風光明媚な土地であるうえ、温泉もあるしで日帰りに遊びに行くにはベストの場所である。そのうえ、ブックオフ創業者の出身地であるからか、甲府近辺だけで10店舗ものブックオフがあるのだ。残念ながら、逆に、ネットで調べる限りでは、まちの古本屋はほぼ絶滅しているものと思われた。時間が許せば、生き残ったまちの古本屋を探したりしてみたいとも思った。

 

 ということで、昨日の朝5時半に出発し、奥多摩廻りの柳沢峠を抜ける遠回りコースで甲府を目指した。わがまちからは甲州街道を利用すれば、高速を使わずとも2時間余りで甲府に着く。古本屋巡りだけなら8時頃にゆっくりと出発すればよいのだが、早朝に出発したのは懐かしい道を走るために遠回りをするからだけではない。甲府の近くに、近頃よくテレビや雑誌で取り上げられる「ほったらかし温泉 」という立ち寄り湯があり、何とそこは日の出の1時間前から営業していることを知ったからである。立ち寄り湯の営業開始時間は大抵10時頃であり、ブックオフの開店時間と被ってしまうが、朝から営業している立ち寄り湯があれば、ライディングで疲れた体を温泉で癒してからでもブックオフの開店時間に間に合うので、時間をロスすることなくブックオフ巡りに充てることができる。ほぼ予定通りの8時半頃に、フルーツパークの奥にある「ほったらかし温泉あっちの湯」に到着すると、平日の朝であるにも関わらず、既に先客で賑わっていた。施設は安づくりではあるが、ここの売りは早朝営業というだけでなく、風呂からの眺めにある。そう、山梨側からだと山並みの向こうになる富士山を勝沼周辺のブドウ畑やまちなみとともに堪能できるのである。日の出前にオープンするのもお湯に浸かりながら日の出を眺めることができるようにしたためである。旅館に泊まれば、湯船の中から日の出を楽しむこともできようが、立ち寄り温泉でとなると日本広しと言えでも数少ないであろう。まして、富士山を背景にしてとなるとほかにはないかもしれない。昨日の朝は、霞がかかっていたため、視界は今ひとつであったが、それでも富士山ほかの山容とブドウ畑の大パノラマは迫力と美しさに満ちていた。甲府のブックオフに遠征しようという方には、「ほったらかし温泉」から始めることをお勧めしたい。

 

 さて、甲府周辺のブックオフ巡りで最初に選んだのが湯村温泉近くの甲府塩部店であったのだが、ちょうど10時にそこに到着したものの店の中が暗い。よく見ると、貸店舗の看板が掲げられていた。店の外観や内装もブックオフのままなのでつい最近までは営業していらしい。グーグルの地図機能で「甲府・ブックオフ」を検索し、その地図をプリントアウトしたのだが、流石のグーグルもリアルタイムの情報更新にまでは対応できていないようだった。帰ってブックオフのホームページで調べると、グーグルで検索したときに掲載されていた甲府周辺の10店舗のブックオフのうち2店舗は既に削除されていた。迂闊であった。グーグルを過信していたらしい。やはり原典を当たらなければいけなかった。気を取り直して次に向かった甲府平和通り店は、しっかりと営業していたのでほっとした。ここでは特に目新しいものはなかったが、手ぶらもなんなのでハヤカワのノンフィクションなどと250円CDを数枚押さえておくに留まった。

  

 次に向かったのが、甲府下石田店。ここでもおもしろいものに出くわさずに、仕方がないので安いCDを漁ろうと棚のCDを抜き出すと、何と105円のCDがかなりあることにすぐに気付いた。どこのブックオフでも不良在庫化しそうなCDを105円で処分することがあるが、大抵はワゴンに入れて処分品的な扱いであることえを明確にしている。商品も15年以上も前のヒップホップやジャケットからしてイケてないものばかりだが、ここのブックオフのはほかのブックオフなら250円で出しているようなものに105円を付けていた。そこで端から入念に見ていくことにし、CD棚だけで1時間半くらい掛けて105円のCDだけで17枚を籠に入れてしまった。根気があると自分でも感心するし、ちょっと恥ずかしいが楽しいんだな、これが。ただ、普段なら250円だと気軽に買うのだが、こういう状況だとえらく慎重になる。普段の250円が105円で、普段の750円が250円という感覚になるから不思議である。そんなこんなに時間を費やし、2店目を終わった段階で既に15時を廻っており、昼飯も食わなかったので、ブックオフ巡りを切り上げ、ほうとううどんの名店「皆吉」で遅い昼を摂り、金を浮かすために甲州街道をひた走り、19時前に帰った。それが昨日の出来事。私というサラリーマンの休日の過ごし方なのだ。みっともないけど。


アンデルセン

須磨敦夫編 【アンデルセン童話・物語挿絵集】 長江舎1997年

 

甲府塩部店の通常価格の棚で見つけ、950円もしたが、目ぼしいものに当たらなかったので、つい買ってしまった。ネットで調べたが、出版社のデータもないし、編者の名で調べても別のアンデルセンの研究書に当たるだけでこの本の情報は出てこなかった。挿絵の図版集だが、物語別にイラストが掲載されているだけで、何の説明もない。誘発されるのはインスピレーションではなく、フラストレーションだったぞ!

 

 
ヨルゴス
リトモ・ラティーノ
 
甲府下石田店で105円で購入した17枚の中で一番期待したのがこれ。帯が残っており、「ダンサブルなパワー・ボッサ!シャレたラテン・ラウンジ!ジャズのフリー・スピリット!」とあった(35文字のうちの日本語はたった6文字だ!)ので、インスピレーションが誘発された。もしかしたら750円でも買ったかもしれない。家に帰って聞いたら、ちょっと想像とは違うが、105円ならめちゃくちゃ得した気分だ。だが、アマゾンで調べたら、マーケットプレイスに掲載されていた28点のうち100円以下が9点で、1円が2点あった。そんなものなのか。まさか残りの16枚もみんな1円なのかと思って調べたら、ほかのはそれなりの値段でホッとした。でも一番期待したのが一番価値が低いとは困ったもんだ。

古本屋の猥褻図画販売

 以前、古本屋の聖地・神田でアイドル系図画の専門店である「荒魂書店」ほか数店が、販売目的で猥褻図画を所持していたとして摘発されたことを悲しい出来事として言及したことがあった。つい先ほど、酒を飲みつつ長女の友人関係の愚痴を聞きながら眺めていた日本テレビの「みのもんたの全国警察TV公開ナマ捜査SP」の中で、またしても悲しい場面に出くわしてしまった。いわゆる裏DVDの製造卸業者が逮捕され、その供述に基づき卸先の古本屋に捜査が入り、堂々と棚に裏DVDを陳列していた店主が、販売目的で猥褻図画を所持していたとして現行犯逮捕されてしまう場面だった。そのとき捜査で訪れた警察官が中年であろう古本屋の店主に対し、「子どもも出入りするような店にこんなものを置いておいて、自分の子どもが買うようなことを想像しないのか?」というようなことを言い、それに対して無言の店主がうなだれていたというようなシーンもあった。違法なものを売るのは勿論許されることではないし、断罪されるべきことである。だが、もし私がその店主であったなら、警察官の問いかけに対し、「今どきネットで外国のホームページにアクセスすれば、いくらでも猥褻な画像が手に入るんだから、こんな捜査にどんな意味があるのか、あんたら暇だねえ」と言い返したいところだ。まあ、警察官の心象を悪くするのは得策でないので、反省の態度を示した方がいいに決まっているから、実際には言い返し難いであろう。それでも、テレビの視聴者としても警察がそんなに猥褻図画の販売阻止に熱心に取り組むのなら、ヤフーやグーグルのようなポータルサイト運営業者に対し、国内ではそういうサイトにアクセスできないような仕組みづくりを指導しなければならないはずだし、そういうサイトにアクセスできるままにしているポータルサイト運営業者は猥褻物公然陳列の幇助で摘発されるべきでもあろう。インターネットで気軽に猥褻図画を見れる時代に裏DVDを販売していたからと言って、まちの古本屋のような零細小売業者が逮捕されるのは腑に落ちない気がしないでもない。

 

 テレビで現行犯逮捕された古本屋はエロ事専門の古本屋には見えなかった。店の中は、一般書籍が大半を占め、エロ雑誌が入ったボックスが少々置かれ、棚の片隅にエロDVDが申し訳程度に置かれていたに過ぎないような感じだった。想像ではあるが、本好きの店主が思い余って古本屋を始めたものの、大型のリサイクル書店の出現で売上が激減し、そういうときに訪れた裏DVDの卸業者の口車に乗せられ、背に腹は変えられぬと扱いを始めたのかもしれない。逮捕された古本屋のエロ本コーナーからは投げやりな雰囲気が感じられた。適当にエロ本を置いているだけだから、エロ本コーナーにさえ力が入っていなかったのだろう。当然、エロ本さえ売れず、最後の手段が裏DVDだったのかもしれない。警察官だって客として来るかもしれないような店で裏DVDを無造作に棚に突っ込んでおくのは、いくら何でもやけっぱち過ぎる気がする。商売としてはとっくに破綻していたのだろう。普通の古本屋が裏DVDにまで手を出さねばならないような状況になっていたのなら、すぐに店を閉めた方がいいということだろう。そういう状況に陥ってしまったのなら、もう二度と普通の古本屋としてはやっていけない状況に違いないのだから。そういうことを忠告してくれる人がいなかったのが最もの不幸であろう。かつてサラリーマンの仕事の関係でネットワークビジネスの説明会に立ち会っていたとき、壇上の若い男が会場に押しかけた同じような雰囲気の若いものに、「もし友達が金に困って助けを求めてきたら、お金を出して上げたいでしょう?このビジネスで頑張れば、そういうときに友達を助けることもできます!」なんてことをほざいていた。金融機関や身内にも見放された奴が金を借りにきたら、これ以上傷口を広げないうちに自己破産しろって勧めるのが友達ってもんだろうと思ったが、会場に詰め掛けていた寸足らずの変なスーツを着込んでいた連中は関心しながらその馬鹿話に耳を傾けていた。古本屋を始めたものの、どうにもならず、裏ものに手を染めねばならないような状況に陥ったなら、その時はすぐに店をたたむつもりだぞ、オレは。だが、なかなかそうは踏み切れないないんだろうな。ここさえ乗り切れば何とかなるって思うんだろうな。悲しいことだ。

 

 
魚返 一真
オールガール
 
 当然ながら、猥褻図画など持っていないので、テーマに合う本は紹介できない。猥褻と言っても、ズバリ見せるだけが能ではない。着エロっていうのもある。このそのへんにいるうら若い女性をモデルにした「オールガール」を撮った魚返一真氏(オガエシカズマ)のテーマの一つである妄想写真は、日常的な風景の中でポロって言う感じで垣間見せるエロチックな瞬間の何と刺激的なことかを感じさせる。だが、こういう感覚が暴走すると、電車の中であらぬ妄想が爆発し、とんでもない行動を起こしてしまうかもしれない。そういう意味からは猥褻図画よりもさらに危険かもしれない。「オールガール」は魚返一真氏の初作品集で、「妄想写真」のコンセプトを得る前のものであり、まだエロチックさが抑制されているが、その萌芽を感じることはできる。なお、カバーガールの衣装は背景の老舗百貨店の包装紙でできている。それにどんな意味があるのかは私にはわからない。でも何となくおもしろい。

ブックオフと丸善

 直近のブックオフでは入り口近くの目立つ場所に新入荷コーナーとでも呼ぶべき書架があり、恐らく同じ売主が処分したものと思われるシリーズものだとか、新しい雑誌などが置かれ、ここでよくおもしろいものに出くわすことがあり、寄れば真っ先に眺めることにしている。先日、サラリーマン仕事の帰りにその直近のブックオフに寄ってみると、そのコーナーに輸入物のような絵本がたくさん置かれていた。英語のみならず、どこかわからぬがヨーロッパの言語らしきものや中国語のものもあった。同じ本が2~3冊ずつあったので、個人の所蔵物ではなく、業者の処分品と思われた。そのうちの一冊を手にすると、裏表紙に「Sonrisa(ソンリーサ)」と書かれたラベルとその絵本が初めに世に出されたものと思われる国がカタカナで記載されていた。どの絵本も皆そうであったので、どこかの商社か出版社が「世界の絵本」などとして様々な国から輸入したものをシリーズ化して出したものかと思った。ところが、中までよく見てみると、最後のページに「Published by MARUZEN Mates Co. Ltd. in Japan」という表記があり、輸入物ではなく、丸善の関連会社が版権を得て国内で印刷したものらしいことが解かった。つまり、1500店舗体制を目指すブックオフの什器を一手に引き受け、ブックオフの創業者を退任に追い込む原因となったバックリベート問題の一方の当事者である、あの丸善がとうとう自社の出版物までをブックオフで処分することになっていたのである。

 

 投資詐欺事件の被害にあった丸善の経営状況がおもわしくないことは知られていたから、丸善の事業の一つである書店什器製造販売事業でブックオフに食い込み、その結果、ブックオフの創業者に足元を見られ、巨額のバックリベートを贈っていたらしいことは想像に難くない。ブックオフ創業者のスキャンダル後には、丸善が大日本印刷と業務提携を行い、事実上、大日本印刷の傘下に入り、生き残りを掛けることになったことが報じられたので、少々驚きもした。ネットで調べてみると、当初、丸善はブックオフとの提携を模索していた可能性もあったが、バックリベートのスキャンダルでその可能性がなくなり、大日本印刷が差し伸べた救いの手にすがったとの見方 があった。丸善の現社長はキャリア官僚から実業界に転じ、一時はブックオフとのつながりも深いTSUTAYAのカルチャアコンビニエンスクラブの役員を務めていたこともあるので、その可能性も十分ありえたかもしれない。多数の新刊書店や出版部門も抱える老舗の商社が新興のリサイクル書店の傘下に入るような事態があれば、下克上を体現するような出来事で、ある意味痛快なことであろうが、丸善の社員にしてみればそれだけはやめて欲しかったに違いない。大株主や取引銀行から送り込まれた雇われ社長がそれまでの伝統や社風を否定し、自身のコネクションや発想で会社を変革しようとする行いは、大抵プロパー社員を不安にさせるものである。同じ老舗の大日本印刷に吸収されて一番ほっとしているのは、丸善の社員かもしれない。

 

 しかしながら、ブックオフで丸善の絵本が処分されていたことからは、丸善とブックオフとの協力関係も途絶えたわけではなく、自社出版物の処分先として丸善とブックオフの提携は今後も続くように思われる。つまり、出版社とリサイクル書店が手を結び、自社の出版物をリサイクル書店で処分するということは、再販制度が事実上は崩壊していると思わせるに十分な出来事であると言えるだろう。これまでもブックオフを不良在庫の処分先として活用してきた出版社はあるが、丸善という老舗さえも外聞もなくそうするようになったことは、再販制度の行方を考える一助となる。1500店舗体制が達成されれば、ブックオフ一社だけでも出版社の不良在庫をさばけることができるのだ。ブックオフがどこにでもあるわが国の場合、新刊書店で本の割引販売が当たり前のように行われるようになる可能性は低いと言えるのではないだろうか。逆説的に言えば、新刊書店で割引販売が日常的に行われる状況を再販制度の崩壊というのであれば、わが国では再販制度が事実上は維持されるということでもある。割引せざるを得ないような不良在庫化した書籍は、それと知れずにブックオフの棚に並ぶことになるのだ。そして、それは新刊書店も望むことでもあろう。出版業界や新刊書店業界から敵視されてきたブックオフであるが、数の力により、敵対関係から協調関係に移行しようとしているのかもしれない。

 


チェコ

 

【Sonrisa 35 チェコ】

小鳥のクラビズニャーク:ヴァーツラフ・チトヴルテック作/ガブリエラ・ドゥプスカ絵

  

輸入物ではないので、とりあえず4冊押さえておいたうちの1冊。憧れのチェコの絵本だが、チェコ語なので全くわからないし、どちらから開いて良いのかさえ解からない。表紙の向きから見るのだろうが、絵だけ追っても物語を想像するのは難しい。何となく「醜いアヒルの子」ような感じがするが、全く違うのかもしれない。全く解からない言語はやっぱり疲れる。チェコの絵本は美しいのは解かるが、物語がわからないのではやはり楽しめない。絵だけ見ていてもフラストレーションが溜まるのだ。ところで、この絵本、ネットの古本屋さんでも力を入れて扱っているところがあった。何でも新刊当時は70冊セットで付属品も付いた価額が25万もしたそうだ。1冊当たり3千円以上になる。某古本屋さんでは付属品付きの中古セットの価格が15万円であった。ブックオフでの価額は版型により200円または300円である。何と古本屋泣かせなことよ。だが、ブックオフでは70冊はとても揃えられない。私が買ったこの本も不人気な不良在庫だったのかもしれない。70種類売られているのなら、1種類ずつ欲しいものである。それでもセット価格は2万円程度に過ぎない。恐るべし、ブックオフ。仕入値は一体いくらなのか。もしかして0円か?

かもしだ商店で考える

 20年振りのツーリングにスクーターで出掛けた先の伊勢原でその存在を知ったのが「かもしだ商店 」さんである。田舎のよろず屋のような屋号だが、そのイメージに違わず「創造大百科」をキャッチフレーズに、様々なおもしろそうなものをよろず屋的に集めたリサイクルショップのチェーン展開を図っている。伊勢原の246号線を渋谷方面に向かって走っていると、左手のカラフルな建物にアメリカ雑貨らしきものを陳列した窓が目に入り、続いて、古本CDの買い取りの宣伝文句が一瞬目をかすめた。腹も減っていたので素通りしようかと思ったのだが、流石に伊勢原となると気軽には来られないので、わざわざ日を改めて出直したときに「何だこんな店だったのか」と落胆しないために覗いておくことにし、300メートルほど過ぎてから引き返した。結構大きな建物で100坪くらいはありそうだった。入り口には100円コミックのワゴンが置かれていたので古本屋であることは間違いないようだ。だが、中に入るとまず賑やかな雑貨の類が目に飛び込んでくる。本や雑貨のディスプレイにはヴィレッジヴァンガードの影響が感じられ、私の考えていた「ブックオフのビジネスモデルを基盤に据え、ふるほん文庫やさんの精神でもって、古物版のヴィレッジヴァンガードをやる」というコンセプトをやられてしまったと思った。だが、よく見て行くと、そういう部分も確かに感じられたが、もっと貪欲と言おうか、おいしそうなものを何でも詰め合わせましたというような、悪く言うと「あざとさ」、良く言えば「旺盛なサービス」が感じられた。

 

 この「かもしだ商店伊勢原店」さんは、夏休みの旅行中に茨城の高萩で見たブックオフとカメレオンクラブとインターネットカフェの複合店のように、古本、古CD、古ビデオ、古ゲームに加え、新譜のCDも扱い、インターネットコーナーを設け、さらに雑貨や中古家具まで扱うテンコ盛り百貨店なのであった。ただし、値段は高めで、総じてブックオフよりも1~2割程度高いように感じたし、格安コーナーも僅かなボリュームで、いろいろあるが、いわゆる掘り出し物には出会えそうもなく、わくわく感に乏しく感じられた。毎日通わないと掘り出し物を誰かに持っていかれそうな気にさせるブックオフの、整然として隙がないように見えながら、実は穴だらけという魅力づくりの凄さを改めて思い知らされた。やはり、いろいろ扱い、見せ方に工夫したところで、古本屋を含めリサイクルショップに一番重要なのは、「掘り出し物」に出逢えそうなイメージづくりではなかろうかとも感じた。隙がない値段設定ではおもしろみがないのだ。いいものを安く手に入れられたからと気を大きくさせ、得した気分だから安くはないけど、これも買っちゃおうって気にさせるのがブックオフのしたたかな演出なのかもしれない。

 ところで、この「かもしだ商店」さんは、ビジネス展開の方向性がなかなかおもしろい。伊勢原店と同様の「創造大百科」というキャッチの総合リサイクル店を3店展開するほかは、インターネットカフェが2店のほか、もんじゃ焼きの店まで運営し、更にTSUTAYAのフランチャイジーまでやっているのだ。その上、リサイクル店、ネットカフェ、もんじゃ焼きについては開業支援も行ってくれるそうだ。つまり、数千万の資金を用意すれば、お好きなパターンの店を作ってくれ、運営のサポートもしてくれるらしい。勿論、フランチャイズではないので、加盟金などはいらないとも。ブックオフ高萩店のオーナーさんならこの「かもしだ商店」さんの方が良かったのではないだろうか。この「かもしだ商店」さんは昔々は調布の新刊書店だったらしい。時代の波に翻弄され、生き残りを図った結果、今のような形態に落ち着いたのだろう。ホームページに掲載された沿革を読むと、苦労が偲ばれる。商売を続けていくのは並大抵の努力ではないのだろう。紆余曲折の沿革を見ていたら、サラリーマンの気楽さの捨てがたさを逆に感じてしまった。頑張れ、かもしだ商店さん!今度はつつじヶ丘の本拠地を見学させてもらいます。もんじゃ食べて、ネットカフェで休憩したら、創造百貨店でもしかしたらあるかもしれない掘り出し物を探そう!

  
sweden

Ten Swedish Designers

 

 最近の掘り出し物はこれ。ちょうど1週間前にかもしだ商店さんの本拠地でもある調布市内のブックオフで手に入れたもの。スウェーデンのテキスタイルデザイナーを紹介した本らしいのだが、カラー図版が豊富で造りもしっかりしていたので950円と高かったが買ってみた。家に帰ってネットで知らべると、アマゾンでは取り扱いがなかったが、世田谷区にある北欧雑貨の有名店、ビオトープ さんで扱われ、9975円で販売されていた。他に12600円という販売価格のショップもあったので、950円なら高い仕入れ値にはなるまい。スウェーデンの著名なテキスタイルデザイナーの紹介本だと思ったのだが、少し奥が深いようで、1970年台に10人のテキスタイルデザイナーが集まり、ティオグルッペン(グループテン)として共同ショップを構えて創作活動を始め、今日まで続く芸術活動として脚光を浴びているらしいグループが活動の30周年を記念にして2001年に発行した記念誌らしい。何が転がっているかわからないのがブックオフの最大の魅力だろう。単純明快なビジネスモデルの勝利だろう。

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