【要旨】
● 中国が、日本産海産物全面禁輸を正当化しようとするなら、恐らくは「一般的例外」か「予防原則」のどちらかだろう。どちらもそれ程筋がいいとは思わない。

● ただ、中国の法戦能力は結構高い。軽い気持ちでWTOに提訴すると勝てない可能性がある。

【本文】
 福島第一原子力発電所の処理水放出に対する中国の海産物全面禁輸については、科学的に見ればその主張が合理的なものでない事は明らかです。そして、彼らも本心ではそれは分かっていると思います。しかし、それでもあれだけの反応をするという事は、「ああいう反応をしないと、現政権が中国国内の政局で厳しい立場に置かれる。」という事でしょう。

 

 つまり、対中包囲網的な動きが進む中、日本に何かのネタで一発ガツンとやるべきという強い勢力がおり、その主張に応えておかないと、国内で「何やってんだ」とばかりに後ろから矢が飛んで来るという事なのだろうと思います。要するに、あの過剰反応は「国内向け」でしょう。なので、これは厄介です。理屈は無いけど、内政上言わざるを得ないというのが最もやりにくいです。論理的な説得が落し所にならないからです。2020年くらいから豪州と中国の関係が悪化し、中国は例えば豪州炭を禁輸しましたが、その解除の議論については2年半くらい掛かっています。日本についても、ここまで(理屈無く)振り上げた拳を降ろすには、それなりの時間が掛かるとみておくのがいいでしょう。

 

 さて、その上でこの全面禁輸については、普通に見れば通商法の基礎であるWTO協定に違反する所が数多くあります。なので、何らかの形で中国はこの措置を正当化しようとするでしょう。その際、どのような理屈があり得るだろうかと思考を巡らせてみました(なお、中国を庇う意図はなく、相手の戦略分析の類です。)。

 私が見る限り、2つの可能性があります。「(GATTにおける)一般的例外」か「予防原則」のどちらかでしょう。なお、この2つは法理論上は同根です。

 まず、GATTという国際条約には、一般的例外として「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」ならば自由で公正な貿易に反する措置を取ってもいいですよ、という規定があります。


《GATT第二十条(一般的例外)》
この協定の規定は、締約国が次のいずれかの措置を採用すること又は実施することを妨げるものと解してはならない。ただし、それらの措置を、同様の条件の下にある諸国の間において任意の若しくは正当と認められない差別待遇の手段となるような方法で、又は国際貿易の偽装された制限となるような方法で、適用しないことを条件とする。
(略)
(b) 人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置
(略)

 ただ、この「必要」を措置を講ずる国が勝手に判断していいわけではありません。客観的に判断されるべきものです。過去、それなりにこの規定を使った例外を主張した国はありましたが、WTOの紛争解決手続きではほぼ認められていません。私の記憶が正しければ、ECがアスベスト関連で制限措置を取った時くらいかなと思います。

 では、もう一つの可能性ですが、これはいわゆる「予防原則」と呼ばれるものです。「証拠ははっきりとしないんだけど、危険な可能性があるから衛生検疫措置として予防的に貿易を制限します。」というものです。根拠とされるのは以下の協定です。

《衛生植物検疫措置の適用に関する協定第五条(危険性の評価及び衛生植物検疫上の適切な保護の水準の決定)》
(略)
7. 加盟国は、関連する科学的証拠が不十分な場合には、関連国際機関から得られる情報及び他の加盟国が適用している衛生植物検疫措置から得られる情報を含む入手可能な適切な情報に基づき、暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができる。そのような状況において、加盟国は、一層客観的な危険性の評価のために必要な追加の情報を得るよう努めるものとし、また、適当な期間内に当該衛生植物検疫措置を再検討する。
(略)

 予防原則というと分かりにくいですが、例として「害虫も食わないような遺伝子組み換え作物は危ないかもしれないから禁輸する。」、「筋肉ムキムキのホルモン牛は将来健康被害になるかもしれないから禁輸する。」というイメージです。なお、遺伝子組み換えも、ホルモン牛も具体的に何かがヤバいと証明された事はありません。ただ、日本でも世論調査を取ると、かなりの方が懸念を有している事が分かります。

 

 これをよく使うのはEUです。EUとアメリカとの間には長らく、「危ないかもしれないから制限する」と「危ないと証明されない限り制限するな」の理念の違いがあります。そして、この予防原則による貿易制限措置について、これまでWTOに提訴された事はありますが、大体玉虫色的に解決が図られ、WTOが確定的な判決を出した事は無かったのではないかと思います(違っていたらすいません)。つまり、予防原則を持ち出して取ってきた措置が、本質的にOKなのか、ダメなのかの確定的な判断はなされていないという事です。

 

 そして、今回、中国はこの予防原則を持ち出して、「日本の海産物は危ないかもしれないから、予防原則を適用して禁輸した。」と言って来るかもしれないな、と思っております。ただ、科学的証拠が不十分という根拠は出せないでしょう。EU vs. アメリカでもいつもそうだったのですが、「安全でないという証拠を出せ」という日本に対して、中国は「安全だという証拠を出せ」という悪魔の証明を求めて議論が膠着する構図です。ただ、それでも中国の主張には無理があるので、私は日本がWTOに提訴すれば勝てると思います。

 

 しかし、法戦における中国の能力を侮ってはいけません。中国の通商関係者は、相当にレベルの高い議論を展開する能力があります。そして、福島原子力発電所関連で韓国が取っていた禁輸措置について、2019年、日本は韓国に敗訴した事を忘れてはなりません。ただですね、今のWTOの紛争解決手続きは、最終審となる上級委員会において、アメリカ(トランプ政権)が委員の選任をブロックしてきたため、欠員による機能不全です。仮に日本が第一審(パネル)で勝ったとしても、中国が上訴してしまえば、上訴審の可能性が閉ざされているため塩漬けになる可能性大です。

 

 最後にちょっと毛色の違う通商ネタを一つ。今回、中国の前捌き係として、香港が日本の水産物を禁輸しています。中国の意向を受けての事だというのは明らかです。通商法上、香港(やマカオ、台湾)は中国とは別扱いでした。WTOにおいては、国だけでなく、「独立の関税地域」というカテゴリーで加入する事が出来ます。中国とは異なる通商政策を有していると見做されているから、そのような扱いがなされています。しかし、今回の経緯を見ていると、とてもそうは思えません。であれば、現在の香港の「独立の関税地域」としてのステータスを維持する必要があるのかも問われるべきです。


 かつて、中国が事実上香港を制圧した際、当時のトランプ政権は香港製品に「中国製」と明記するよう要求する措置を取りました。この措置について、WTOの紛争処理の場でアメリカは負けています。そういう経緯はあるので、簡単な事ではありませんが、日本として香港の「独立の関税地域としてのステータス見直し」の議論を再提起するくらいの気持ちは持ってもいいのかな、と思いましたね。

 先日、企業・経済動向に関する情報を提供する、福岡市のデータマックス社から取材を受けました(前半後半)。以下のようなテーマについて、幅広くお話させていただいています。嘘や包み隠しはありません。そして、出来るだけ分かりにくくならないようにお話したつもりです。すべて見ていただく必要はありませんので、適宜つまんで見ていただければ幸甚です。
 

● 冒頭・昨今の政治情勢

● 今の野党をどう見るか
● 今の野党に望む事

● 今の無所属の立ち位置

● 財政金融政策
● 財政金融政策(有事における財政面での継戦能力)
● 外国人人材の活用

● 少子化
● 北九州市政
● 今後の活動
● 最後のメッセージ
 

 もっとポピュリスト的な事を言えるのなら気は楽なのですが...。

 今日の話は、昔書いたブログの改訂版です。長崎県五島沖の海域を韓国とどう分け合うかという問題です。

 

 日本と韓国との間には、この海域の大陸棚を分け合う協定があります。日韓大陸棚南部協定というものです。1978年に発効し、50年の効力があります。当時の国際法の考え方は「自然延長論」でして、沿岸国は自然に延長している大陸棚に権原を有するという考え方です。分かりやすく言うと、韓国は日韓の中間線を越えて沖縄トラフまでがうちの大陸棚だろ、と交渉で主張しました。そして、最終的には中間線から日本側だけに共同開発区域を設けました。当時の国会審議はさすがに大荒れに荒れて、複数回の国会審議を経てようやく承認されております。画像で見てもらうとよく分かります

 

 ただ、その後、国連海洋法条約が合意され、「中間線」をベースに考えるのが衡平な解決だという方に移っていきます。嚙み砕くと、海底地形にかかわらず、分け合いのベースは中間線から始めましょうという事です。国際司法裁判所の判決も概ねこの方向に沿ったものになっています(つまり、日韓大陸棚南部協定締結時の考え方は古くなったという事)。さて、上記に「50年の効力」と書きました。協定終了3年前から、協定を終了させる意思(+再交渉する意思)を通告する事が出来るようになっています(つまり、2025年)。この協定をどうするかは、そろそろ考え始めなくてはなりません。

 

 さて、この画像が一番現状を理解しやすいのですが、正確性には欠けるので、私は自分で南部協定第2条の点をすべてGoogleマップ上に打ってみました。そして、中間線に当たる部分の日本側基点は何処かと距離を測ってみたら、長崎県の肥前鳥島(の北小島)でした。この島が無いと仮定すると、使える基点は男女群島か福江島になるので、もっと日韓中間線は日本寄りになってしまいます。

 

(注:一昔前は条約に書いてある地点を自分で打って作図しようなどと思いもしませんでしたが、Googleによってこういう事が可能になりました。)

 

 ここまでは冒頭の過去ブログにも書きましたし、実は外務省も比較的情報が出やすかったです。しかし、同じような視点で(大陸棚ではなく)日韓漁業協定を語り始めると急速にガードが上がりました。1999年に発効した日韓漁業協定では、竹島を含む海域を暫定水域として領有権の話を切り離しています。画像で見ていただくとよく分かります。この過程で韓国側から「竹島を暫定水域に入れる代わりに、(本来中間線から日本側であるはずの)好漁場である大和堆を暫定水域に入れてくれ。」と言われ、実際に含めました。暫定水域は日韓双方がそれぞれのルールできちんと漁をする事が前提なのですが、韓国の漁業関係者はあちこちでムチャクチャやって資源枯渇を招いています。例えば、鳥取県境港市の港に韓国漁業関係者が放置した膨大なカニ籠の残骸が積んであるのを見た事がありますし、歴史的に大和堆で漁をしていた石川県等の漁業従事者の方が非常にご苦労しておられます。

 

 そして、この図の中でもう一ヵ所暫定水域を設けている場所があります。長崎県沖です。こちらについても、日韓漁業協定第9条2にある暫定水域の点をすべてGoogleマップ上に打ってみました。打ってみるとよく分かるのですが、長崎県沖の日韓漁業協定暫定水域は、その大半が日韓中間線の日本側です(僅かながら韓国側にはみ出している部分があります)。こうなった理由について私は交渉経緯を知らないのですが(本当に知りません)、竹島の領有権棚上げへの対価ではないかとも言われています。

 

 そして、ここからが重要なのですが、この暫定水域について外務省に聞いた所「境界線に関する双方の主張が異なることから、双方の主張を勘案しつつ、暫定水域を設定した。」との回答でした。もう一度繰り返すと、この海域での日本の基点は肥前鳥島です。要するに韓国側が肥前鳥島を基点とする境界線の設定を受け入れず、それを勘案して、(肥前鳥島を基点とした中間線から日本側に入った所に)暫定水域を設けた、という事を言っているように聞こえます。

 

 では、その韓国側が肥前鳥島が基点である事を受け入れない理由は何かと言うと、恐らくは国連海洋法条約における島の定義を拠り所にしているはずです。というか、これ以外に考えられないのです。

 

【国連阿海洋法条約】

第百二十一条 島の制度
(略)
3 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

 

 つまり、韓国は「肥前鳥島は岩だから、漁業協定を締結する根拠となる排他的経済水域を有しない。なので、漁業協定の中間線を測る時には考慮に入れない。」と主張したのではないかと推察されます。そして、それを日本がある程度受け入れたという事になったのではないかと懸念しています。

 

 ここで、冒頭の日韓大陸棚南部協定に戻ります。仮に日本が延長せず再交渉になると仮定する時、もう韓国が自然延長論を主張して来る事はないでしょう(あるかもしれませんが)。そうではなくて、「肥前鳥島は岩じゃないか。だから、日本側が主張する中間線ではなく、もっと日本側に寄った場所で中間線を引くべきだ。」と言って来るような気がします。上記のような思考を巡らせてみると、どうしてもそんな懸念を持ってしまうのです。

 

 韓国はかつて中国との間にある暗礁「離於島(イオド)」は、排他的経済水域や大陸棚を持つ領土だと主張していました。しかし、この(荒唐無稽な)主張はもう取り下げています。そして、返す刀で沖ノ鳥島や肥前鳥島は「岩」だと主張してくるような気がしてなりません。あえて、ここで強調しておきますが、「沖ノ鳥島(の法的ステータス)」にも波及するテーマです。

 

 纏めると「今後5年以内に日本と韓国との間で大陸棚を分け合う協定の再交渉があるかも。その時、長崎県五島沖にある肥前鳥島が(国際法上の)『島』なのか、『岩』なのかで激しい議論になるだろう。そして、ここで引いたら日本のダメージは甚大なものがある。」という事ですかね。本件、日本では全く議論になりませんけど、韓国側はかなり意識している感じがあります。近々、韓国報道関係者が私の所に取材に来られますので。

 今国会の質疑を振り返りっておきます。全体前半部分はそれぞれリンクを参照ください。見ていただければ分かりますが、内閣委員会には本当に統一性のない法案がどんどん上がってきます。今国会、何度も政府に対して「内閣官房、内閣府に何でも押し込むのは止めるべき。もう一度、内閣官房・内閣府スリム化をやるべき。」と主張し続けました。こんな政府機構のあり方についてしつこく言い続ける野党議員は私だけだと思います。

 

● 医療ビッグデータ法改正案:希少性の高い疾患の方、医療面で特異値を出す地域のデータの扱いには気を付けるべき。一方、医療ビッグデータの活用を進めるためには、カネを出してくれる製薬業界をエンドユーザーとして明確に位置付けないと絶対に上手く行かないと主張しました。この指摘は医療ビッグデータ活用に関心のある方からは「よく言ってくれた」とご指摘を頂きました。質疑終局後に討論をしています。私はこの法律を作った7年前、修正を成立させ、参議院での審議で答弁に立っています。なので、法案政策の当事者だと自負しています。その思いを述べさせていただきました。

 

● 孤独・孤立法案(参考人討論):私からは「対応しなくてはならないのは孤独であって、孤独を一切感じていない孤立にまで対応する必要はないのではないか。」という法案のスコープの話をしました。この点、とても違和感があるのです。あと、この法律によってまた業務増になるのですが、既存の孤独対策との整理を付けないと屋上屋になるという懸念を表明しました。私は参考人質疑で、NPO法人「あなたのいばしょ」の大空理事長という素晴らしい方を知り得てよかったです。

 

● 4月28日内閣委:しつこいまでに内閣官房・内閣府の肥大化に警句を鳴らしました。「こんなの与党がやれ!」と言いたいです。その後、TPPについて聞いています。中国・台湾の加盟について、台湾は「歓迎している」という事なので、中国は「歓迎していない」のかと聞いたり、日米貿易協定交渉時、日米関係全体のバランスの中に防衛装備品購入は入っていたのかと聞いてみたり、それぞれ重量級の問いをしてみました。最後に日本学術会議について、同会議は何処までの防衛研究ならOKなのかを明確にすべきでは、と後藤大臣に振りました。

 

● DV法改正:現行のDVへの法的対応は裁判所を経由して行う事になっています。人権制限を伴うからです。しかし、裁判所に行く事など思いもよらないDV被害者がおられます。行政の権限でプッシュ型で対応できるような仕組みは持っておくべきだと強く主張しました。あと、被害者の一時保護(駆け込み寺的なものを含む)を法令上、もう少し明確に位置付けた方がいいと提案しました。

 

● 遊漁船業法改正案:法案審議前に、農産物の価格適正化のため生産者と消費者や加工業者が相対で交渉する事を定めたフランスのエガリム法を引用して、日本ではどうか?と聞きました。野村大臣は「そういう事をやっているのは牛乳だけなんだ。なので、日本でどうやって行くかは考えたい。」と非常に正直に言っていました。遊漁船については当地北九州でもたくさんあり、きちんとしている業者を振興し、そうでない業者は退場願うようにすべきです。また、規制がきちんと利くようにしなくてはならないという視点を中心に質疑しました。

 

● 5月24日予算委:TV入りでした。G7サミットを受けての予算委でしたが、私の前の方はあまり外交・安保については質疑しませんでした。短い時間の中、価値観外交、核不拡散、ウクライナ和平の見通し、解散・総選挙の見通しと幅広くやり取りしました。良いやり取りだったと思っています。

 

● 5月31日国土交通委:団地内の公園、コンパクトシティにおける公営住宅の役割、無保険車削減、自動車の民間保険支払い、バイオディーゼルの活用(軽油取引税の承認申請)といった幅広いテーマについて取り上げました。普段所属していない委員会なので、北九州市で抱いていた問題意識大放出という感じでした。与党議員から「コンパクトシティにおける公営住宅の活用は、目的外使用じゃなくて目的内使用にすべきだよなあ。」と指摘を頂きました。

 

● LGBT法審議(討論):これについては、私の思いは「討論」にすべて尽きています。与野党含めて、非常に好評を博した討論でした。

 

 という事で、これが私の通常国会の質疑すべてでした。多種多様なテーマに取り組んでいます。すべての問題意識の根底には、地元北九州市で伺う話があります。夏もビール缶片手に色々な話を伺っていこうと思います。「おい、林太郎、ちょっと話を聞け。」、大歓迎です。そして、私はそういう指摘から国会質疑のインスピレーションを頂いています。

 今日で国会は終わります。今国会、出番としては30回もありました(1日に複数回の出番があったため、質疑としては23日)。色々な事に取り組んでみましたので、少し振り返りたいと思います。全体のリンクはココです。

 

● 2月2日予算委:酪農に関し、アメリカからの乳製品の輸入の仕組みを見直すべきと厳しく指摘しました。この質疑を契機に輸入のやり方が少しだけ変わりました。また、少子化対策について「ライフスタイルに中立でない税制(子どもが増えれば税が下がるという仕組み)」を導入する事についてどうかと聞きました。なお、今国会冒頭ちょっと盛り上がったフランスの「N分のN乗税制」については、ここで私が「日本ではやれない」と丁寧に説明し、今後主張する方が居なくなりました。

 

● 2月13日予算委:内閣総理大臣秘書官に掛かる守秘義務が、136年前の勅令「官吏服務規律」なのはおかしいと指摘しました。岸田秘書官を見ていると、内閣法改正でもう一度意識を促した方がいいです。それ以降は大英帝国の戦時経済を引きながら日本の継戦能力のあり方、バルーンへの破壊命令、中台有事、日朝外交について包括的に質問しています。バルーンへの破壊命令の発動については、私の質問を契機に運用が変わりました。今国会、一番メモリアルな質疑でした。

 

● 2月15日内閣委:年初に家族で(!)南大東島に行きました。その時に思った事を質問しています。国境離島の大切さ、さとうきびの振興、そして、中国の第一列島線と第二列島線の間にある大東諸島への航空自衛隊の配置等、幅広く聞いています。「さとうきびは島を守り、島は国土を守る」、忘れない言葉です。

 

● 2月15日予算委:防衛三文書について、少し専門的な観点から「何をやったら、何が抑止されるのか?」という根本的な問を岸田総理にぶつけています。こういう議論がもっともっと必要だと思います。

 

● 2月17日予算委:短時間だったのですが、非常に、非常に重要な問題提起をしたつもりです。金融危機に際して、日本の破綻処理法制が機動性に欠けるはず、という指摘をしています。行政の意思で不良債権を切っていける仕組みの提案をしています。

 

● 2月21日予算委第三分科会:悪質な交通事故について、刑事、民事双方の観点から質問しています。危険運転致死傷罪の規定には問題が多いです。また、補償のあり方についても問題が多いです。昨年から本件について取り上げて始めて、数多くのお声を頂くようになりました。継続的に取り組む議員が少ないので、私がやり続けます。

 

● 2月28日予算委採決時討論:採決時に溢れる思いを述べました。与野党問わず、好評でした。

 

● 内閣委コロナ特措法改正案審議(討論):感染症対策を見直すものなのですが、変な接ぎ木をしたので指揮命令系統がボロボロになっています。この仕組み、上手く行かないと思います。また、コロナ禍において福岡県と政令指定都市の関係が著しく悪かった事を踏まえ、権限の整理をすべきと強く主張しました。また、コロナ禍での医療分化の必要性、かかりつけ機能の発揮について厚生労働省に質問しているのですが、政務三役が全くダメでした。

 

● 3月29日内閣委:高市大臣に、一般論としての「中立」と「公平」について質問しました。中立とは誰も応援しない事、公平というのはすべての関係者を平等に扱う事、という違いがあります。なので、公平の達成のあり方はどういう価値観を置くかで大きく異なる、という法哲学的な論点を振ったのですが、途中から非常にガードが上がりました。良い議論だと思うんですけどね。

 

● 内閣委フリーランス法審議:フリーランスの方がお仕事を受注する際、募集時・発注時で条件提示をするようこの法律では求めています(そして、この2つの条件提示は同じものである必要はない)。発注時の条件提示では不利な条件を提示されても断れない可能性が高いため、その間にある契約時での条件提示を求めるべき、と主張しました。かなり政府は困っていましたが、3年後の見直しで検討すると答弁させました。

 

 残りは次のエントリーにします。

 5月31日、国土交通委員会で質疑の時間を頂きました。地元北九州で伺った話、地元北九州で気になった話、かねてから問題意識を持っていた話を盛り込みました。地元の個別案件を取り上げる事も考えましたが、どうせ大した答弁は返って来ない事は分かっているので政策的なテーマに集中しました。ただ、問題意識の原点は北九州市での日々の生活で感じたものばかりです。

 

 普段は予算委や内閣委に居るので、国土交通委員会は独特の雰囲気だなと思いました。事業系に関心の強い議員が多い事が影響しているのかもしれません。

 

● 住宅団地内の公園
 住宅団地の中を巡っていると、「なんで、こんな場所に公園?」と思う事があります。明らかに端切れの土地を公園にしており、かつ、場所が良くないのでそもそも使われていないというものです。何故、あのような公園が増えるかというと、都市計画法上、設置義務があるからです。都市計画法第33条第1項第2号における開発許可においては「道路、公園等が、環境保全、防災、安全等支障がないような規模・構造で適当に配置される」としているのですが、もう少し方向性を出しておいた方がいいのではという指摘をしました。

 

● コンパクトシティと公営住宅
 これからコンパクトシティを進めていく必要が出ます。その際、市街地に移ってきてもらう必要がある時、公営住宅に優先的に入ってもらえるような政策ツールが求められると思います。「市街地に移ってきてください。その際の住居は確約できません。」ではコンパクトシティは進みません。勿論、公営住宅法の原則は公募制。これ自体は恣意的な公営住宅の運用をするためにも重要な原則です。一方、補助金適正化法による目的外使用が認められています。今後の政策のあり方として、補助金適正化法の目的外使用の中に明確にコンパクトシティを位置付けるべきだと主張しました。

 

 この問は与党議員に好評で、「目的外使用ではなくて、むしろ、公営住宅の本来の目的と位置付けたいくらいだ。」とのコメントもありました。斉藤国土交通大臣も質疑中、何度も頷いておられました。何かに結実してほしいと思います。


● トラック
 これは地元の運送業者からのお話でした。クレーンを積んだ四トントラックのユニック車だと、車両総重量が八トン未満にするため、事実上二トン少しくらいしか積めない事となります。少し大きめの自動車なら2台積む事すら出来ません。一方、近年車両の性能が上がっているので、安全のための基準をきちんと満たす事を条件に、もう少し積めるように出来ないのか、というお話でした。別の運送業者の方と話した時も「それ、結構、悲願なんですよね。」と言われています。

 

● 自動車保険
(1)地元のガレージの方と話していると、「林ちゃん、民間保険に入っていない車、多いのよ。多分、想像以上だと思うよ。」と指摘を受けました。先の国会以来、私はこの交通安全の話を刑事(危険運転致死傷罪)、民事(補償)双方の観点から追っており、被害者や遺族と話をしていると、事実上泣き寝入りに近い事がかなりあります。ただですね、答弁を見ていても分かるともいますが、自賠責は国土交通省、民間保険は民間(金融庁は監督)という事で、交通事故被害者に対する補償全体という観点からは誰も考えてないというのが現状です。勿論、全体を見直すとなると、保険のあり方そのものを見直さなくてはなりませんから、超大改正ですけど、補償能力のない車がバンバン走っているというのは怖い事なのです(勿論、事故が起きないのがベストです)。

(2)昭和48年、保険会社が示談代行制度を導入する際、非弁行為に当たる事を懸念した日弁連は日本損害保険協会との間で覚書を交わします。一方、交通事故被害者の中には、補償金の支払いが著しく滞っている方も多く、それらの方から現在の民間保険の運用はこの覚書の精神に反するのではないかという意見を聞きます。政府として、この覚書は遵守されるべきものだと考えるかと問いました。

 

この自動車事故の話は、当事者になった方の悲痛な声を聞いています。暴走する車に愛する親族を奪われた方から、「何故、あれが過失なのか?(刑事)」、「何故、補償されないのか?(民事)」、そのような声を聞くにつれ、これからも声を挙げていこうと思っております。


● バイオディーゼルの活用
 バイオディーゼルと軽油と混合して、自動車(バス)等に使用する場合、何かとハードルがあるんです、という指摘を地元北九州市で聞きました。説明を聞いてみると、経済産業省、国土交通省、消防庁、総務省(自治税務局)と数多くの省庁が絡む事がよく分かりました。

(1)その上で、経済産業省、国土交通省、消防庁の規制の中で活用のハードルになっているものがあるのかと問いました。詳細はともかくとして、多分、これらの省庁の規制が活用のハードルになっている印象は受けませんでした。

(2)多分、総務省自治税務局所管の軽油引取税関連の承認申請が少し事を複雑にしているのではないかと思います。10日前までに「承認を受けようとする者」「消費年月日」、「消費しようとする燃料の性状及び数量」、「消費に係る自動車の自動車登録番号」、「消費に係る自動車の主たる定置場」を提出して承認を求めなくてはなりません。答弁にある通り、勿論、不正軽油防止と課税情報の把握は大事です。一方、優良な実績がある事業者については承認のあり方を事後的に緩和する事は出来るような気がします。これは特区でやれないかと思っており、その旨、地元にフィードバックしました。

 

 20分という限られた時間でしたのが、地元で普段から疑問に思っている事をしっかりやりました。

 今日、国会にLGBT法が提出されるはずです。元々存在していた議連案と(党内議論で若干の変更を加えた)自民党・公明党案が併存する形になると思います。審議するのであれば、私が所属する内閣委員会に付託されるでしょう。先日、自民党の提案者と衆議院法制局からお話を聞きました。

 

 自民党による変更点の一つとして、「性自認」を「性同一性」という表現に変えました。普通に読むと「性自認」は主観、「性同一性」は客観の要素が強いです。ただですね、用語の定義規定に変更が無いのです。いずれであっても「自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無又は程度に係る意識」です。「意識」である以上、「性自認」も「性同一性」も主観であるはずです。その点を衆議院法制局に確認した所、「主観」との回答でした。

 

 そうすると、「主観である性自認あるいは性同一性『のみ』に依拠した判断は何処まで許容されるのか。」という当然の問題意識が出て来ます。出来るだけ「カミング・アウト」みたいな事をしなくても穏やかに暮らせる世の中であるべきですが、性自認のテーマについてどうしても公権力が性別を分けなくてはならない事があります。私が強く意識しているのが「刑務所」です。少し前の「The Economist」で、レイプ犯として有罪になった者が性自認として女性を主張し、女性刑務所に入ったというスコットランドの事例が取り上げられていました。私の感覚では「さすがにこれは無いだろう」と思うわけですが、スコットランドのニコラ・スタージョン首相(最近辞任)は主観を重視する方向性をずっと追求して、中央政府と争って来ました。

 

 日本のLGBT法にある通り、私もLGBTの方々に差別する事は許してはならないですし、あってはならないと思っています。他方、上記のような限界事例について、一定の区別を設ける事は避けられないと思います。私から「不当な差別はあってはならないが、合理的な区別を設けざるを得ない所はあると思う。それはこの法律によってどうなのか?」という問を提案者にしました。この辺りはまだ明確になっていない印象を受けました。

 

 私は「差別は絶対にダメ。一方、合理的な区別は何処まで許容されるのか?」という議論をすべきだと思っています。特に公権力行使に際して、どうしてもその区別を設けなくてはならない分野を見極める作業をしないと、結果として当事者の方にも、非当事者の方にも良くない結果を招くと思うのです。「そんな事をしたら、パンドラの箱を開けてしまう」、その気持ちは分かります。しかし、ここから目を背けてはならないはずです。

 

 そういう基礎的な条件を整えた上で、差別不可で理解を増進しつつ、誰もが穏やかな環境で暮らせるような世の中にしたいと思います。

 以前から、私は憲法改正について以下のように考えています(その旨は当ブログやSNSでも書いてきました。なお、以下に書くのは基本的に私個人の見解です。)。

 

● 憲法89条(公の財産の支出又は利用の制限):私学助成やNPOに対する助成が違憲に読めるおそれがあり、改正すべき。

● 参議院の合区:早急に解消すべき。現在、合区となっている鳥取、島根、徳島、高知の4県の国政における代表性は確保しなくてはならない。そのためには参議院を一票の格差から解放する必要がある。一案として、参議院議員は「国民」の代表ではなく、「国土」、「自治体」といったものを代表するとの位置づけがあり得る。その観点から、現在自民党が出しているたたき台はダメ。

● 緊急事態:(以下の記載参照)
● 9条:現行憲法の「平和主義」の理念は揺るがせてはならない。その上で、日本の平和主義の理念を体現するための改正はあり得る(なお、私は自衛隊等の具体的なオペレーションに憲法を直接適用しようとするのは違和感を持っています。憲法はそういうものではありません。)。ただ、現在の自民党が出しているたたき台は何がしたいのか意味不明であり、論理的な整合性も取れていない。

 

 上記は自由民主党が出しているたたき台についてコメントしたものですが、その他にも、憲法第8章の地方自治の規定の充実化、環境、財政についての規定創設、個人の人格権(例:プライバシー)の更なる確立、衆議院の解散規定の具体化、天皇陛下の国事行為の明確化、といった点は改正の議論をすべきだと思っています。逆に2012年の(恐らくもはや有効ではない)自民党の憲法改正案にあるような、内心の自由を国家が保障すると規定する改正案については断固として反対です(私が頭の中で何を考えるかは、国家に保障してもらうようなものではありません)。

 

 その上で、今国会、我々の会派「有志の会」は日本維新の会、国民民主党と緊急時の議員の任期延長に関する憲法改正案に合意しました。当会派きってのインテリ、北神圭朗議員が非常に重要な役割を果たした事は強調しておきます。これは要するに、東日本大震災の際、関連地方自治体の長や議員の選挙期日を延期した法律の国会議員版です。地方自治体の長や議員については法律で選挙期日の延期をする事が出来ますが、国会議員は憲法に身分の規定がありますので、そのような事態に対応するには予め憲法改正をしなくてはならないという事です。地方自治体で具体的事例がある以上、国でも制度を整えておくべき、ただそれだけの事なんです。

 

 懸念されるのは、時の政権・与党が恣意的にこの条項を使って選挙をどんどん後ろに倒し、結果として独裁のツールにならないかという事です。ナチス・ドイツの例がありますので、そこは我々としても慎重にやっています。我々の歯止めでは不十分だという議論はあり得るでしょう。そこは真摯な議論に応じたいと思っています。

 

 一方、「緊急事態」というと、まず思い浮かぶのは「緊急政令」です。法律によらず、政府が出す政令で人権制限をする事が出来るというものです。私はフランスでのこの手の緊急政令の歴史と運用を知っていますので、その便利さと危険性はよく分かっています。2015年のフランス・テロ事件を受けた緊急事態は何度も更新され、例えば、令状なしの捜査がかなり行われました(EUからかなり問題視されていました)。緊急事態は権力側にとって、とても使いやすいツールなのだという事を痛感しました。

 

 その上で、私は「徹底して法律で規律を作っていくべき。それでも対応できないものがあるとするなら、そこで憲法改正による緊急政令の議論が出て来る。」というのを基本的な視座としています。例えば、現在の原子力災害対策特別措置法における原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)の権限は広範かつ強力です。様々な歯止めを入れつつ、機動的に対応する事が出来る仕組みを作っています。有事、テロ、災害、大規模感染症等の様々な緊急事態を想定しながら、同種の検討を法的に積み上げていく事で相当な対応が可能だと思います。そして、そこまでやっても対応出来ないのは「ムチャクチャ重大なもの」か「カスカスの残り」かだろうと思います。前者は「政体」そのものに関わるようなものであり、そもそも憲法での規定に馴染まないと思いますし、後者は本当にカスカスで憲法に書くようなものにならないはずです。ただ、これは具体的な検討をしてみないと確定的な事は言えません。

 

 そもそも、緊急政令というのは「いざという時、議会を経由した対応は時間が掛かる上に邪魔だ」という認識がベースにあります。フランスで何故緊急事態的な法整備が充実しているかというと、議会不信、司法不信を持っていたシャルル・ド・ゴールが議会や司法の権限を抑え込むような第五共和制憲法を作ったからです。上記のような邪魔者扱いに対して、我々議会人は「迅速に的確に対応するよう、私達が法律できちっと準備してみせる」という姿勢で臨むのが筋でしょう。議会側から軽々に「いざという時、我々は邪魔なので飛ばせるよう憲法改正しよう」と提起するような事は、私は福岡9区の皆様に送り出していただいている衆議院議員としてやりたくありません。ただ、それでも任期の問題だけは如何ともしがたい所があるので、上記のような改正案を作ったわけです。

 

 大体、これが憲法改正に対する私の意見です。徹底的に「立憲主義」を貫いているつもりです。国会議員たるもの、自分の憲法観を提示する事は大切だと思い、あえて踏み込んで書きました。異論、反論あるでしょう。それが大切な事です(ただ、議論の範疇を超えた罵倒はご遠慮します)。

 28日(金)、内閣委員会で一般質疑に臨みました。多分、今国会最後の一般質疑(何を質問してもいい機会)だと思うので、問題意識を持っている表題のテーマについて詰め込みました。少数会派なので、ストーリーを追いながら質問する事は出来ず、ズバッと聞くスタイルになってしまいます(笑)。

 

● 行革

 2015年に「内閣官房・内閣府スリム化」なるものが通った後も、内閣官房や内閣府はどんどん肥大化していっています。国会で内閣委員会に所属していると分かるのですが、「この役所は何をやる役所なんだ?」と思う事ばかりです。「スリム化した後、どれくらい仕事増えたの?」と官房長官に聞いています。法令上の権限(仕事)も、定員もまあまあ増えています(ただ、私の想像よりは少なかったです)。ともかく放っておくと、どんどん肥大化していく組織である事は間違いありません。こうやって国会で取り上げておく事で圧力を掛け続けたいと思います。というか、こういうのは政府・与党でもっと問題意識を持ってほしいです。

 

 また、内閣府(+内閣官房)は総合調整の役所のはずですが、スタッフ制の元、各部局がタコツボ化して似たような事業をやっている所が多いのです。各省庁から出向してきた審議官、参事官の元、相互に連携することなく、成果物も似たようなものが出ている、こんなケースは枚挙にいとまがありません。内閣府のこの幹部名簿、見ていただければどれだけ重複があるのか恐ろしくなります。この問題点は旧知の内閣府幹部からも指摘がありました。なので、厳しく指摘しました。これは既得権化しているところがあり、内在的な論理では絶対に解消しません。政治が乗り出して、ガサッと整理しなくてはなりません。

 

 そして、中央官庁が行革をしようとしても、そのリーチが及ばない対象として「議員立法」があります。地方自治体から「国から計画作れ、計画作れと言われてキツい」と苦情が来ており、中央省庁としては対応を始めましたが、議員立法で創設されるものについては手が付けられません。私からは「議員立法はとても大事だが、中央官庁としてそれを上手く受けるためのメカニズムを創設してはどうか?」と指摘しました。これは三権分立の中、難しいテーマですが、官僚諸姉諸兄の中には理解してくれる方が多いと思います。

 

● 叙勲

 次に叙勲について取り上げました。孤独・孤立対策推進法審議の際、NPO法人あなたのいばしょ理事長から「NPO法人関係者は叙勲で報われない」との話がありました。今、叙勲されている方は非常に高い功績を挙げた方だが、一方、所管官庁から推薦ルートが半ば固定化している印象を受けており、社会で地道に頑張る方を汲み上げるルートをもっと開くべきでは、と指摘しました。内閣府賞勲局に少しでも響いていればいいなと願います。

● TPP・日米貿易協定
 英国加盟が実質妥結しましたが、英国が太平洋地域に持つ領土は、絶海の孤島ピトケアン諸島のみです(是非、リンクを見てください)。環太平洋パートナーシップとはおよそ無縁。それでもTPPに入れるという事は、TPP加盟には地理的要件は求められていないのかと質問しました。結論から言うと「無い」そうです。世界中、どの国でも加盟申請可能だとの事。


 その上で、現在申請が出ている中国・台湾の扱いについて質問しています。外務大臣政務官から「台湾の加盟申請は歓迎」という答弁がありましたので、「中国は歓迎していないという事か?」と更問をしました。政務官は色々と言っていましたが、基本的にあまり理解が高くないのでしょう。今一つピンとは来ませんでした。政府参考人にプロが居たので、そちらに当てればよかったかなと反省しています。

 あと、安倍総理・トランプ大統領間での日米貿易協定交渉の際、官邸での総理と関係省庁次官級協議に必ず防衛審議官が入っていた事を踏まえ、当時の日米間全体のディールの中で防衛装備品購入はバランスの中に入っていたのか、と質問しました。これは現在の防衛費増額の議論とセットになっている所があります。アメリカからの防衛装備品購入が、日米貿易交渉前後からどんどん増えています。防衛費増額の背景の一つには、アメリカからの購入によって国内防衛産業が苦しくなっているという背景があるはずです。答弁は見ていただければ分かりますが、「ディールが何を指すか不明」とか、「防衛装備品の購入は日米貿易協定の対象外」とかいったものでした。いずれもについては「他の議員にならともかく、僕にその答弁かよ。」と呆れました。まあ、答えにくいという事です。

 

● 日本学術会議と防衛関連研究

 最後に、日本学術会議についてですが、与党があれこれ手を突っ込もうとしているのは、同会議が防衛関連研究に悉くノーを出したからのはずです。今後の検討に際し、日本学術会議に対して、どの程度の防衛研究であればOKなのかの議論をしてはどうかと質問しています。「防衛省」が発注元だからという理由だけで研究を拒むというのは、おかしいです。国民はその議論を見たいと思っているでしょうし、その回答で日本学術会議自体が評価されるべきだと思うわけです。答弁の最後、後藤大臣は軍用汎用品(デュアル・ユース)の重要性についてご自身の言葉で語りました。それで良いと思います。

 

 16分の割当(実際には18分程度)でこれだけやろうとするのは大変なんです(笑)。

 私の所属する衆議院内閣委員会で「孤独・孤立対策推進法」が審議され、先日、衆議院を賛成多数で通過しました。

 

 非常に気になったのが「孤独」と「孤立」を並べて大半の議員が「孤独・孤立」と繋げて議論していた事です。そうやってこの2つを括ってしまうのは事の本質を見誤ると思い、私はこの2つを明別して議論しました。私の質疑に対して、政府も孤独は感情、孤立は客観的状態だと答弁していました。そして、私の参考人質疑NPO法人「あなたのいばしょ」の大空理事長が喝破したように、今回、「孤独」にフォーカスを当てた事に意義があります。

 

 

(なお、大空理事長は本当に卓見の持ち主で、その一言一言に感銘しました。)

 

 これまで法令用語で「孤立」という言葉はそれなりにあったのですが、「孤独」という言葉は初出です。つまり、これまでの日本のアプローチはどちらかと言えば客観的状態である孤立にフォーカスしていたのが、そうではなくて感情である孤独に目を向けなくてはならないという事になったのが意味があるのだと思います。孤立していないのだけど孤独を感じている人への対応というのは難しいですが、それが現代的な課題のはずです。

 

 その観点から、逆に「孤立しているのだけど、孤独を感じていない方」への対応はどうあるべきか、という事が問題になります。この法律における「孤独・孤立の状態」とは、「日常生活若しくは社会生活において孤独を覚えることにより、又は社会から孤立していることにより心身に有害な影響を受けている状態」と定義されます。孤独を一切感じていない中、孤立している方で心身に有害な影響を受けている方というのは、居ないとまでは言いませんがかなり限定的であり、そもそも何処まで公権力の射程に置くべきなのかという事をかなりしつこく聞いています

 

 私の問題意識は、上記にも書いたように「結局、集中的に対応しなくてはならないのは『孤独』なのではないか。そういうふうに大きく問題意識を振ったのがこの法律ではなかったのか?」という事です。

 

 その後、行政改革を重視する私は「この法律で行われる孤独・孤立対策は屋上屋になりはしないか。」という点を聞いています。自殺、刑務所出所者支援、引きこもり、不登校等、既にやっている事がある中、その上に「屋上屋」にならないようにする仕掛けはこの法律に盛り込まれていません。また、孤独・孤立対策本部は内閣府に置かれますが、内閣府の中にもDV、就職氷河期等を担当する部局があります。これら部局との調整についても現時点では行われていません。こういう事を言うと、「緒方は孤独・孤立対策に後ろ向きなのか?」と言われそうなのですが、そうではありません。現在、政府の中、特に内閣府には「似たような事をやっている組織が複数ある」のが散見されます。それを厳しく見ていかないといけない、という意識があるのです。

 

 また、地方自治体の負担増についても聞いています。昨今、特に安倍政権以降、国から地方自治体に「計画作れ、計画作れ」と話が降りて来る事が増えました。新しいコンセプトで法律が出来て、その法律に基本計画を都道府県に求め、市町村にも努力義務を課すパターンが非常に増えました。全国知事会からの苦情を受けて、昨年度の骨太方針ではそれを抑制しようという事になっています。孤独・孤立対策推進法では、自治体に基本計画を求める事はしていませんが、地域協議会の立ち上げを努力義務として課しています。

 

 自治体の発案で地域協議会が立ち上がる事はとても良い事なのですが、同時に気になる事があります。去年の骨太方針以降、地域協議会の立ち上げを書き込んでいる法律が増えたような気がするのです。邪推の極みなのかもしれませんけど、基本計画が抑制される中、その代替物として地域協議会という手法が使われているのではないかという懸念を持ちました。「努力義務なんだからいいじゃないか」という声はあるでしょう。しかし、過去に基本計画策定を努力義務としていても、計画を作っている自治体を担当省庁が一覧で公開する、ましてや計画を作らないとその事業でカネが降りてこない、といった事例が散見されました。これだと半ば義務化してしまうのです。作らない事で中央省庁から睨まれるくらいなら、作っておこう、そういう意識になるのは当然です。

 

 あと、この手の話で一番難しいのは、孤独を感じておられる方に様々な支援メニューを用意しても表に出て来られない方です。これについても参考人質疑で提起しています。これは「支援メニューを知らない」ケースと「そもそも出たがらない」ケースがあります。どちらも対応が難しいです。私はよく地元の市民センターで「独居高齢者の中でこの市民センターに来て、活動している方は何の心配も要らない。課題は来ない方。」という話をします、まち協会長、市民センター館長、皆様が首肯されます。上記の2ケースそれぞれ対応は異なります。一歩踏み込んだ対策が必要だと思っています。

 

 採決前の討論では、国の行革の観点から「肥大化するなよ」と念押ししました。大英帝国の殖民地省が、領土が減っていたにもかかわらず拡大の一途を辿った事実を分析した「パーキンソンの法則」を引用しながらの話は与党議員にご好評でした。最後に1976年に出された内山田洋とクールファイブの「東京砂漠」にもあるように孤独という課題は昔からあるが、今問題となっている孤独には現代性がある。そこを透徹した目で見て、対策を充実させてほしいと訴えました。