ラグカフェ編集部の取材メモ

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「HSBC SVNS RUGBY 2024 香港大会(香港セブンズ)」が、2024年4月5日から7日にかけて開催されました。個人的には6年ぶりの香港セブンズ。そして、“香港スタジアム”では、最後の開催となる香港セブンズ。香港では、これまで主要な国際大会は香港スタジアム(香港大球場)で開催されてきました。2025年以降は九龍に新しく建設された「カイタック・スポーツ・パーク(啓徳運動公園)」での開催を予定しています。

 

香港スタジアムを初めて訪れたのは、2015年11月。男子セブンズ日本代表のリオ五輪アジア予選「7人制ラグビーアジア予選 香港大会」でした。セブンズ(7人制ラグビー)というスポーツを初めて観戦して、15人制と同サイズのフィールドを駆け回る姿に興奮したのを覚えています。

 

当時は男子アメリカ代表がどんどんと力をつけているときで、カーリン・アイルズやペリー・ベイカー、ダニー・バレットらのプレーで大熱狂。特にダニー・バレットの相手ディフェンスを投げ倒す姿はまさに“Beast”。その他にも、いろんなチームや、いろんな選手らが香港スタジアムを沸かせ、たくさんの思い出を残してくれました。

 

そんな思い出のある香港スタジアムでの最後のセブンズシリーズ。今回は、その記録を写真とともにレポートしていきます。

 

 

 

大会初日の朝。セブンズシリーズの試合前に、ジュニアラグビーの試合が行われており、朝早くからスタジアムにつめかけるお客さんも。彼らの間をすり抜け、まずはメディアセンターへ向かいました。そこには顔なじみの運営スタッフもいて、見た目のわりにやさしいセキュリティーのおじさんも変わらず。すこしだけ懐かしい時間を過ごし、スタジアムの中へ。そこには香港のネオン街のようなタイトルロゴが出迎えてくれました。

 

 

 

 

観客席へ上がると、平日の朝ということもあってか、観客はまばら。ただし、これが2日目、3日目になると、スタジアムは多くのセブンズファンで埋め尽くされます。

 

なかでも異様な盛り上がりを見せるのが「サウススタンド」。このエリアは観客席内での飲酒が許されているため、観客の多くはビールを片手に試合を楽しみます。

 

そして、サウススタンドの大きな特徴がコスプレ。ドラゴンボールやマリオ、トイストーリー、バービーなど、サウススタンドを鮮やかに彩ります。みんな、お酒を飲んだり、コスプレをしたり、踊ったり……。サウススタンドは香港セブンズ名物です。

 

 

 

 

 

香港セブンズは、会場演出で観客を盛り上げる仕組みでいっぱいです。選手入場では、大量のスモークとともに「Hey ho, let's go! Hey ho, let's go!」と、Ramones『Blitzkrieg Bop』が大音量で流れます。そのBGMとともに選手が全力ダッシュでグラウンドへ向かう姿は、見ていて本当に気持ちがいい。

 

また、会場で流れるBGMは、みんなが歌って踊れるナンバーがたくさん。とくにoasis『wanderwall』やNeil Diamond『Sweet Caroline』の大合唱は圧巻です。その他にも、スタジアム内のコンコースにはDJブースやバンド演奏など、だれもが楽しめるイベントが用意されています。

 

 

 

 

 

さまざまなイベントが用意されていますが、やっぱりメインは試合観戦。特に注目を集めるのが男子アルゼンチン代表。今シーズンの成績は5大会で優勝3回と、圧倒的な強さを誇ります。そして、なんといってもマルコス・モネタへの期待は大きい。東京オリンピックでアルゼンチン代表を3位に導き、2021年には年間最優秀選手賞を受賞。そんな彼のプレーを楽しみにしているファンも多いはず。

 

しかし、初戦のアメリカ戦でアクシデントが――。試合開始2分、モネタが右足の怪我で交代となったのです。

 

足を引きずる姿に心配しつつも、試合はアメリカ代表のペリー・ベイカーが2トライをあげる活躍。アルゼンチン代表もロドリゴ・イスグロらのトライで追いつこうするが届かず。10-14でアメリカ代表が勝利しました。

 

その後もアルゼンチン代表はプール戦を1勝2敗と振るわず、8強入りを逃しました。なお、モネタの右足の怪我は骨折と診断されたとのこと。

 

単独で駆け抜けるペリー・ベイカー

 

足を引きずるマルコス・モネタ

 

 

今回、香港セブンズのコンペティションとして「The 2024 Melrose Claymores」も開催されました。男子は日本・香港・中国、女子は香港・中国・タイが出場し、3チームの総当たり戦になります。男子の初戦、日本は香港に33-14で勝利しました。

 

この試合では、香港がトライをあげると地響きがするほどの大歓声。一方で日本がトライを決めると大ブーイング。香港セブンズでは、チームに関係なく、いいプレーがあれば会場全体から歓声が上がりますが、香港代表は別。あの大歓声と大ブーイングは、なかなか体験できないでしょう。

 

その後、中国戦も31-26で勝利した日本でしたが、決勝では香港に12-22で敗れ、大会を2位で終えました。

 

 

 

 

大会初日の夜には、オープニングセレモニーも行われました。今大会は、ラグビーボールをくわえた龍がグランドを飛びまわる演出。中央ステージには香港のアイドルや歌手らのパフォーマンスもあり、香港らしい、最上級のエンターテインメントを堪能することができました。

 

 

 

 

 

2日目の午後には男女ともにプール戦を終え、カップ戦へ突入します。観客席の熱気もさらに上昇。なかでも、応援に力が入るのがフィージー。水色の国旗をまとったフィージーコールはもはやお家芸。「トソ・ビティ・トソ(行け フィジー 行け)」という応援コールから始まり、試合が終わるまで声を出し続けます。

 

ちょっと面白いのが、試合が終わると、途端に応援団は観客席から姿を消し、またフィージー戦が始まる頃には全員集合していること。フィージー戦以外はあまり姿を現さない。それがフィージー応援団。

 

 

 

 

今大会も男女開催の香港セブンズ。女子セブンズ日本代表(サクラセブンズ)もコアチームとして参戦しています。プール戦では、カナダ代表に5-12、アメリカ代表に12-17で敗戦。しかし、3戦目のスペイン代表に19-12のスコアで勝利。なんとかカップトーナメント(8強)へ進出しました。

 

準々決勝の相手はオーストラリア代表。前半、日本は自陣でのプレーが多いものの、粘り強く対応できている印象。ボールを持つ時間も長く、相手陣地へボールを運ぶシーンも。1本のトライを許しましたが、なんとか耐え、オーストラリアの5点リードで折り返しました。

 

後半、デリバレイト・ノックオン(故意のノックオン)の反則で、オーストラリアにシンビン。数的有利となった日本でしたが、疲れが出始めたのか、攻めきれずに逆にトライを奪われてしまいます。コンバージョンキックも決められ、0-12。そのままスコアは変わらず、オーストラリアの勝利。前半がよかっただけに、悔しい結果に。

 

なお、最終日の7/8位決定戦では、アイルランドに12-5で勝利。日本は今シーズンの最高位である7位で大会を終えました。

 

 

 

 

 

2日目の昼過ぎには、ジュニアラグビーの子どもたちによる「MINI RUGBY MARCH」も行われました。その中には、香港ラグビーのマスコットキャラクター「ワイベイ(Wai Bei)」の姿も。子どもたちも、ワイベイと嬉しそうにハイタッチしていました。

 

 

 

 

その後はカップトーナメントや順位決定戦が行われ、大会2日目を終えました。そして、明日は最終日。香港スタジアムでセブンズシリーズが開催される最後の日。そんな大事な日を目前にして――。なんと、帰国。

 

セブンズシリーズ最後の香港スタジアム。前から分かっていたものの、やっぱり帰りたくない。スタジアムを出たときの、運営スタッフからの“See you tomorrow”がなんともわびしい。名残惜しい気持ちでいっぱいでしたが、香港スタジアムを後にしました……

 

***

 

最後に少しだけ懐かしい写真を何枚か。

男子日本代表、リオ五輪アジア予選優勝(2015年11月)

 

スコール時の香港スタジアム(2016年4月)

 

男子セブンズ日本代表、コアチームへ昇格(2016年4月)

 

コアチーム昇格時、桑水流裕策(2016年4月)

 

コアチーム昇格時、レメキ・ロマノ・ラヴァ(2016年4月)

 

サウススタンドの観客(2018年4月)

 

男子セブンズ日本代表、コアチームへ再昇格(2018年4月)

 

快晴の香港スタジアム(2018年4月)

 

コアチーム再昇格時、橋野皓介 (2018年4月)

 

香港スタジアム、思い出をありがとう!(2024年4月)

 

 

HSBC SVNS RUGBY 2024 香港大会の結果は以下の通りです。

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男子

1位 ニュージーランド

2位 フランス

3位 アイルランド

 

女子

1位 ニュージーランド

2位 アメリカ

3位 オーストラリア

7位 日本

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(岡)