ラグカフェ編集部の取材メモ

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ラグビースタジアム専用マガジン『ラグビーカフェ』
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●取材班
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(編集長)おもに世界

JR熊谷駅から車で15分ほど、緑豊かな広大な敷地の熊谷スポーツ文化公園に熊谷ラグビー場はある。

 

 

この国内有数のラグビー専用スタジアムで、2024年4月20日(土)21日(日)に『太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2024熊谷大会』が行われた。

2014年の初開催から10年以上続く女子7人制ラグビー大会で、サーキット形式で4つの会場をまわり、それぞれ2日間にわたり実施。今シーズンは全12チームが出場し、初日にプール戦、2日目に順位決定トーナメントを戦っている。

 

 

今シーズンから北九州大会が加わり初めて4月に開催され、前年王者のながとブルーエンジェルスが優勝。昨シーズン、初の4大会全勝による総合優勝に輝き衰え知らずの“ながと”がこのまま勝利を重ねるか、2大会目となる熊谷大会も注目された。

 

初日のプール戦では、ながとブルーエンジェルス、PEARLS、東京山九フェニックスラグビークラブが全勝で各組トップ通過。

 

そして、2日目。この日の第4試合となる準々決勝に、ながとブルーエンジェルスが登場。

前半ながとが2トライを挙げるものの、対する日本体育大学ラグビー部女子も善戦。後半に巻き返し同点とし、ゴールデンポイントによる延長戦へともつれこんだ。どちらかが得点した時点で試合終了となる緊張感のなか、延長前半3分に日体大の樋口真央がトライを決め、12-17で劇的勝利をおさめた。

 

プレーやキャリアだけでなく存在感そのものに圧倒的な違いを感じざるをえない相手にも、決して臆することなく果敢に攻め続けた日体大のプレーは、観ている者をワクワクさせた。特に、1年谷山三菜子がトライの起点となるなど活躍を見せた。これで、ながとの連勝記録は33でストップした。

 

 

日差しが強く日焼け対策必須だったという初日に比べ、2日目は曇りがちの天気で、風がやや冷たく感じられた。

収容人数およそ24000人の客席は空席が目立ったが、それでも、特に関東周辺を拠点とするチームには熱烈な応援団が駆けつけ、試合中にはチャントや歓声で選手を後押しした。こうしたファンの存在は、選手やチームだけでなく、大会を運営する側にとっても大きな支えとなる。

 

 

決勝トーナメントを勝ちあがったのは、PEARLSと東京山九フェニックスラグビークラブ。

先制したのはPEARLSだったが、すぐに2トライ2ゴールを決めた山九フェニックスのリードで前半を折り返す。後半はそれぞれ1トライをあげたが、山九フェニックスが逃げきり最終スコアを19-12として、2シーズン前の弘前大会以来5大会ぶりの優勝に輝いた。

 

一方、PEARLSは2大会続けての2位。表彰式後の記念撮影を終え、末結希キャプテンの涙はなかなか止まらなかった。

 

撮影:国分智

 

 

大会終了後、優勝した東京山九フェニックスラグビークラブから、ゲームキャプテンをつとめた岡元涼葉選手に話を聞いた。

 

 

「昨シーズンも、先月の大会も、ほんとうに悔しい思いをしたので、その思いをすこしは晴らせたかなと思います。今回は、全員が自分の役割を全うできたからこそ勝てたと思います」と2日間を振り返った。

前回の北九州大会では4位だった山九フェニックス。「特にPEARLSさんには準決勝で負けていたので、そのリベンジもしたいと思っていました」

 

撮影:国分智

 

中島涼香選手、古田真菜選手との共同キャプテンとして迎えた今大会。「自分がゲームキャプテンをつとめるのは初めてだったので、チームをまとめなくてはという気持ちが強かったぶん、トロフィーの重みを感じています。でも、ふたりが一緒だったからとても心強かった。わたしだけの力ではなく、みんなでまとめられたと思います」

 

シリーズポイントは、2大会を終え2位につけたことについて「言われてみれば……そうですね(笑)。一戦一戦、目の前のことしか考えてなかったけど、あと2大会も頑張らないとって思います。課題はたくさんあるので、チームでその課題を持ち帰って、みんなで練習して、もっともっとレベルアップして、残りの大会に臨みたいです」と笑顔で語ってくれた。

 

大会MVPは山九フェニックスの松村美咲選手

早稲田大学1年、7人制と15人制ともに代表キャップを持つ

 

 

撮影:国分智

 

 

 

さて、2月に開催された北洋建設 presents Nanairo CUP 北九州『KYUSHU WOMEN'S SEVENS 2024』以来、個人的に追手門学院大学女子ラグビー部 VENUSに注目しており、今回も大会終了後に選手にインタビューした。

 

話を聞いたのは、松田向日葵選手。現在2年生、バックスもフォワードもこなせるVENUS期待の選手のひとりだ。

 

 

「上位リーグ進出を目標にやっていたので、初日に負けてしまって悔しい気持ちで1日目を終えたけれど、2日目は最低でも9位に入って大会を終えようとみんなで話していたので、最低限の目標である9位で終えられて、ひとまずよかったと思っています。最初が悪いといつも負けてしまう。アップが課題だね、とみんなで話してやっているけれど、まだまだ改善点がたくさんあるチームだなと。3、4戦目はもっと上にいけるように、もっとチームの雰囲気をよくしていきたい」と今大会を振り返った。

 

個人としてはここまで2大会で8トライをあげ、個人トライランキングは2位。熊谷大会2日目も2試合ともに前後半で1トライずつ決め、勝利に貢献した。

「トライは取れているけれど、戦術面でみんなが広げてくれたり、ハードワークしたあとにたまたま自分がそこにいただけで。最終的に自分がとったけど、みんなのトライです」と謙虚に話した。

 

撮影:国分智

 

2月の時点で2年生への進級が危ういという話も聞いていたが……

「進級できて、ほんまによかった(笑)。1年生のころは緊張もあってガチガチだったけど、2年生になって緊張もほぐれてきて、楽しめているなと思います。すこし自分らしさも出せるようになってきたかな」と、後輩を迎えた心境や意識の変化を感じている。

 

3歳からラグビーを始めた松田選手。大会プログラムの自己紹介では、”ゲームコントロール“を得意なプレーとして挙げている。

改めて自分の強みについて、「プレーに多く参加できるように、プレー回数を増やすために動こうとする、その意識があることが強みだと思います。意識することでボールを持つ回数も増えているし、すこしずつだけれど、その意識をプレーに活かせて部分もあるかなと思います」

プレーからはフィットネスのタフさも感じられるが「そこはまだまだ。すぐにヘロヘロになってしまうから。でもゲームコントロールは声を出せばできるから、疲れても積極的に声出ししようと思ってやっています」

 

最後に、「ここに来ていないメンバーにもすごくポテンシャルの高い選手がいるので、絶対に上位にいって、去年の最高5位を超えたい。このままで終わりたくないです」と残り2大会への意気込みを聞かせてくれた。

後日、大会のX公式アカウントでも注目選手としてピックアップされた松田選手。話ぶりからは、松田選手自身のポテンシャルの高さを感じた。今後も目が離せない。

 

撮影:国分智

 

太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2024は、5月5日(日)6日(月祝)に第3戦の鈴鹿大会、5月25日(土)26日(日)に第4戦の花園大会が行われる。

ながとが返り咲くか、山九フェニックス連勝か、PEARLSが3シーズンぶりに優勝をもぎとるか、はたまた若い大学生チームが試合を動かすか……総合優勝に関わるシリーズポイントも気になるところだ。今シーズンは最後まで注目して、引き続きレポートしたい。

 

 

公式発表では、熊谷大会の観客数は2日間合計で2293名。北九州大会は2974名。いずれも2日間通しての数であり、延べ人数であることを考えると、まだまだ物足りない数字だ。ラグビーに真剣に向きあう選手がここにもたくさんいること。その一人ひとりの熱量は、ほかのどのカテゴリーとも違わないこと。だからこそより丁寧に、その姿勢や思いを伝えていきたいと思う。熊谷駅から熊谷ラグビー場をむすぶ約4キロの道は”ラグビーロード“と呼ばれ、ラグビーファンに親しまれている。この日乗車したタクシーの運転手によると、代表戦やリーグワンの試合日には、タクシーやバスに乗らずこの道を歩くファンの姿がたくさん見られるそうだ。いつか、ウィメンズセブンズの開催日にも同じような光景が広がるように。

 

(夏)