安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

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春爛漫/のろゐみこ

 

1. 春爛漫

2. 地獄太夫

 

Ba&Vo.髙橋サヲリ、Dr&Vo.生虫により結成された、のろゐみこの1stシングル。

 

これまで、3枚のミニアルバムを発表してきった彼女たちですが、ここにきてシングルをドロップ。

引き続き、ハイダンシークドロシーのGt.情次2号さんをギタリストに迎え、スリーピース編成でのサウンドに仕上げています。

表題曲は、サヲリさんが作詞、生虫さんが作曲を担当。

読経のようなフレーズや、歌い回しなどに和の要素を強く散りばめつつ、デジタルな質感を強調しているのが面白いなと。

ヴィジュアル的にも、世界観としても、古式ゆかしい日本文化を下地にしているように見えて、あえてミスマッチを作っていました。

 

メインヴォーカルは生虫さん。

あどけなさの残る声質がストレートに突き抜けていて、キャッチーなサビにハマっていますね。

怨念めいた迫力のあるサヲリさんは"謎の巫女"、無垢な歌声で心を揺さぶる生虫さんは"物の怪"という設定が割り振られていますが、そういう解釈が与えられていることで、無邪気さ故の不気味さが生まれるなど、音楽にも深みが増すように感じます。

 

フィジカル盤には、カップリングとして「地獄太夫」が収録。

イントロの時点で、チープな電子音が「春爛漫」以上にこれでもかと多用されています。

どこか生虫さんが在籍していたマイナス人生オーケストラを彷彿とさせる部分があるのかも。

そして、節回しや歌詞の構文に聞き覚えがあるなと思ったら、小梅太夫構文でした。

だから「地獄太夫」だったのか。

本作を聴く分に、あのネタをシリアスなアレンジに差し替えたら、というアイディアから始まっていそうな1曲ですよ。

 

なお「春爛漫」は、MVも制作されています。

映像編集は、マツタケワークスのマツオカワークスさん。

生虫さんが仮面を被っているせいで、口パクにすらなっていないのがシュールですが、併せて見ておくべきでしょう。

 

 

 

<過去ののろゐみこに関するレビュー>

天地騒乱

幽明の境

凶日

 

 

嘆きの楽園~ざわめきの章~/CANARY

 

1. merciless

2. ~麗夜~

3. ~Dear・・・

4. 砂の十字架

5. inferno

6. 嘆きの楽園

 

嘆きの楽園~静寂の章~/CANARY

 

1. 死期の影

2. 眠りの中へ…

3. Liebe

4. Nostalgia

5. 記憶の色彩

6. 嘆きの楽園

 

1998年に各5,000枚限定でリリースされたCANARYの1stミニアルバム。

 

現在では珍しくない2種類同時リリースですが、本作は、その先駆け的な1枚と言えるのでしょうか。

もっとも彼らの場合は、初回盤のみの収録となる表題曲を除き、すべて異なる楽曲。

副題がそれぞれ"ざわめきの章"、"静寂の章"と振られていることからもわかるとおり、テンポの速い楽曲とゆるめの楽曲で振り分けている印象で、体感的には同一アルバムの2種類同時リリースというより、アルバム2枚の同時リリースという認識でしたね。

ジャケットはほぼ同一ですが、"ざわめきの章"は赤、"静寂の章"は青の帯が付属していて、遂になっていることを示唆しています。

 

リズム体を組むBa.時雨さん、Dr.JUNさんは、ともにex-Deshabillz。

クラシカルな楽曲構成とダークで退廃的な歌詞世界には面影が見られますが、幾分か耽美的なエッセンスが強まっていて、メロディアス性は高まりました。

ただし、歌唱力が追い付いていない部分は否めず、苦しそうで不安定。

この時代のインディーズシーンにおいては何も彼らに限った話ではないものの、そこが受け入れられるかどうかの鍵にはなっていそうだな、と。

 

スピーディーな楽曲を集めたのは「嘆きの楽園~ざわめきの章~」。

当然のように激しさが際立っているのですが、同じぐらい様式美も重視されているため、勢い任せということでもなく、フレーズを細かく紡いでいるのが印象的です。

対照的に、聴かせる楽曲を集めたのが「嘆きの楽園~静寂の章~」。

こちらはテンポが落ち着いたこともあってか繊細さに丁寧さも加わって、多用される幻想的なアルペジオは、白系サウンドにも踏み込むベールに包まれたような世界観を構築していました。

 

勢いに傾くと演奏の粗さが、歌モノに傾くとヴォーカルの不安定さが目立ってしまうので、結果的には一長一短なのかな。

とはいえ、フルアルバムとして1枚にまとめていたら、メリハリをつけるのが難しそう。

二極化して同時リリースという手段をとったのは、当時においてはインパクトもあり、先見性の高い戦略だったとも捉えられます。

どちらにしても、Gt.美希さんによるクラシカルな旋律は聴きどころ。

メンバー全員が作曲に関わっていながら方向性が一致しているだけに、早々に時雨さんが脱退となり、短命に終わってしまったのは意外というか、もったいないというか。

 

<過去のCANARYに関するレビュー>

羅紗

 Genealogie der Moral/deadman

 

1. in the cabinet

2. 真夜中の白鳥

3. rabid dog

4. 静かなくちづけ

5. ミツバチ

6. the dead come walking

7. 猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声

8. 零

9. 宿主

10. dawn of the dead

 

実に19年ぶりの発表となった、deadmanの3rdフルアルバム。

 

振り返れば、2005年の「in the direction of sunrise and night light」まで遡ることになるdeadmanのオリジナルアルバム。

2019年に再始動してからは、ミニアルバムも含めて3枚のリテイクベストをリリースしていた彼らですが、遂に復活後の楽曲を中心としたアルバムが発表されました。

配布された「rabid dog」や、MUCCとのカップリングCDに収録された「猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声」など、アルバム制作に向けた予兆は確かにあったものの、実際に現物を手にするまでは信じられないといった心境であったことを告白します。

 

音楽性としては、19年のインターバルを感じさせない「in the direction of sunrise and night light」の延長線上。

スピードと焦燥感のある「in the cabinet」にて衝撃的に幕を開けると、どこか陰鬱で、だけど感受性は繊細で、要所要所で前衛的な展開が続いていきます。

言葉はわからないけれど心を揺さぶられる洋画のような映像美を、サウンドだけで体感するような作品だな、と。

強いて比較するなら、跳ねるような楽曲、躍動感のある楽曲も増えてきた印象で、モノクロ映画から、アングラなミュージカルに媒体が変化したような。

ずっしりと沈み込む精神面での重さが薄れた代わりに、月並みの言葉ではあるものの、ライブ感が増しているのですよ。

推測ではありますが、解散を目前にして作品としてのクオリティを高めるのか、ライブで育てることも念頭に楽曲を制作するのか、というスタンスの違いが影響しているのかもしれませんね。

 

最初の3曲で、攻撃性を打ち出したのが巧み。

全体を俯瞰すると、そこまで激しさだけでは押していないにも関わらず、ゾクゾク感を高める効果があります。

そして、それがあるからこそ、リードトラックである「静かなくちづけ」が効く。

切ないミディアムナンバーが、より引き立ったと言えるでしょう。

ハイブリッドだと感心したのは、「零」。

初期のdeadmanに見られたBUCK-TICKからの影響を、あえて強く打ち出している楽曲ですが、ゴスの要素だけではなく、ポップな方向でB-Tを意識することで、両方の時代を繋いでいる。

同時リリースとなったリテイクアルバム「Living Hell」とのギャップを埋めつつ、アルバムの流れを損なわない絶妙なテイストでした。

 

keinとの並行稼働となったことで、差異化としてダークな楽曲を避けた部分もあるのかな。

その分、強みであるシアトリカルなパフォーマンスが強まっているので、彼らの中で住み分けはしっかり出来ていそう。

良い意味で気負い過ぎておらず、deadmanの現在地を示している1枚です。

 

 

 

<過去のdeadman(DEADMAN)に関するレビュー>

dead reminiscence

RABID DOG

苦悩の中の耐え難い存在-demo tape 2002-

「I am here」「I am here-disc 2-」

in the direction of sunrise and night light
701125+2
雨降りの向日葵
no alternative

siteOfScafFold

subliminal effect