安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

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硝子ノ縋憶ト輪廻ル疵痕/Misanthrope

 

1. Gebet

2. Monologue

3. Lost

4~99

 

Misanthropeによるライブ会場と通販にてリリースされた3rdシングル。

 

本作に収録された「Gebet」と「Lost」は、Crucifixion時代の楽曲。

結果として最後の作品となった完売音源集「Crucifixion -mode of [INISIE]-」に収録されていたことを踏まえれば、転生後にも演奏し続ける必然性があるほど思い入れがあるのでしょう。

 

90年代に登場したコテコテバンドは、大きく黒系と白系にカテゴライズされていました。

白系がソフトヴィジュアル系に歩み寄っていったことで、コテコテと言えば黒系バンドとなっていくのですが、彼らのこれまでの作品は、ツタツタリズムと発狂シャウトで猟奇性や狂気を表現する黒系寄りのナンバーが中心。

その代表的な存在であるMadeth gray'llのフォロワーとしてのスタイルをマーケティングとしてあえてアピールしていた節があり、幻想的で神秘性のあるサウンドで耽美な世界観を描く白系バンドのアプローチとは真逆の立ち位置です。

 

一方で、本作に収録された楽曲には、白系のファクターを多く詰め込んだ印象。

激しいサウンドで狂気性を見せるパートも存在させてバランスはとっていますが、透明感のアルペジオやファンタジックなメロディは、壮大に広がっていく神々しさすら感じさせます。

作品としての構成力にもこだわっており、2曲目の「Monologue」は、パイプオルガン風の鍵盤の音色にヴォーカルと語りを重ねる繋ぎの1曲。

世界観の創出に特化しているのですよ。

 

なお、それでは物足りないという層にも配慮してか、シークレットトラックも存在。

99トラックまで設定されている中での96トラック目に、オムニバスで逆再生Verが収録されていた「黑ノ醜宴」が完全版で収録されています。

4分半だった収録時間は7分半に拡大されていますが、空白が入っていたりテンポが遅くなったわけではなく、煽りパートが拡充されたというのが彼ららしい。

結局、ダークでドロドロ、Matinaバンドっぽさを醸し出してクロージング。

ギミックから、構成から、なんだかんだで懐かしさを押し出してきますね。

 

同時にリリースされた限定シングル「硝子ノ縋憶」と併せて、次の展開に向けたバリエーションの追加。

強かさも携えて、3年目のMisanthropeも期待できそうです。

 

<過去のMisanthropeに関するレビュー>

硝子ノ縋憶

黒夜ニ冥ル呪華ノ饗筵

哀絶ノ百合籃

FACTION/OLD CIRCUS

 

1. FACTION

2. PARTY HURRY UNHAPPY

3. ミラーボール

 

ライブ会場と通信販売限定でリリースされたOLD CIRCUSの2ndシングル。

 

ミニアルバム「happy?」に続くシングルとなり、デザインやメッセージ性には連続性を感じます。

「PARTY HURRY UNHAPPY」などは、曲名からして「happy?」の問いへのアンサーとなっていると捉えても面白いのでは。

作詞はすべてVo.和泉隆宏さんが担当。

作曲は、それぞれDr.レイジさん、Ba.小川万次郎さん、Gt.TφRUさんが手掛けていて、メンバー全員が作品の世界観を構築していると、より強く感じることができると言えるでしょう。

 

やはり魅力的なのは、等身大の和泉さんの歌詞と魂を削って叫んでいるようなヴォーカリゼーション。

様式美的な意味では洗練されていない雑多な文体と捉えられなくもないのですが、普段と変わらない日常的な言葉で叫ぶことでリアリティが増しているのは事実。

理想通りの自分になれないフラストレーションを衝動的なサウンドに全力でぶつけている姿に、自分自身を投影してしまうリスナーも多いのでは。

1曲目の「FACTION」から、切れ味抜群。

ハイスピードで疾走するパンクスタイルはもとより、感覚的なフレーズで焦燥感を煽り、ハラハラドキドキさせられます。

 

続く「PARTY HURRY UNHAPPY」は、拳をあげて盛り上がれそうな文字通りのパーティーチューン。

掛け合い風のコーラスワークによって勢いを示しつつ、サビではダンサブルでアッパーなポップロックに。

この曲調で、「happy?」に対して必ずしもYESとは言わないナイーヴさややさぐれ感、なんなら怒りすら孕んでいるのがOLD CIRCUS流。

明るさがあるほどグサッとささる1曲に仕上がっていました。

 

最後は、ロカビリー風のノスタルジックなフレーズとともに、とにかく止まることを恐れているかのように疾走していく「ミラーボール」。

相対的にポップな雰囲気で、どこか歌モノ感もあるのだけれど、CDが再生し終えるまでスピードを維持。

それは、何者にもなれなかった人間が、それでも何者かになりたいともがく焦りにも聴こえるし、夢さえあれば突っ走って行けるという決意のようにも聴こえます。

いずれにしても前途多難。

至るところに現実の厳しさを表現している節はあれど、どこまでもリスナーに寄り添って、その声を代弁しようとする頼もしさ、力強さを感じずにはいられません。

 

この作品は、どこまでがファクトで、どこからがフィクションなのだろう。

本当にフィクションの部分があるのだろうか、と疑ってしまうほどの生々しさで迫ってくる1枚。

 

<過去のOLD CIRCUSに関するレビュー>

CINEMA

日々

春色ラプソディ/デミアン

 

1. 春色ラプソディ

 

早くも今年3曲目のリリースとなったデミアンのデジタルシングル。

 

Vo.MAYAとBa.LUIによる新たな挑戦。

4月に届けられた「春色ラプソディ」は、彼らなりのサクラソングとなるのでしょう。

キラキラと散りばめられた鍵盤の音色はひらひらと舞う桜の花びらを連想させ、美しさと切なさを連れてきてくれます。

大きな起伏をつけずに淡々と展開していくのが、この楽曲においてはハマっていて、感情の強さは直接的な声量ではなく言葉をリフレインさせることで表現。

MAYAさんの優しい歌声がたまりません。

 

東京に住んでいると、3月末から4月初旬が桜の時期というイメージ。

リリースされた4月中旬は、既に葉桜になってしまっていて、実際に桜を見ながらこの楽曲を聴けなかったのが悔やまれます。

しかし、彼らの拠点は北海道。

東北の地元にいた頃、お花見はGWの少し前という印象でしたし、これはきっとジャストタイムだったのですよ。

音と詞に乗ってありありと再現される春の映像が感動を誘う。

描かれているストーリーは抽象的なのだけれど、だからこそ、自分がそこに入り込める没入感が生まれていました。

 

特に季節感が強調された「春色ラプソディ」を聴いたことで、これまでに発表してきた「Hello」や「時の列車」も、その時期に聴くことで本領を発揮する楽曲だったのだな、と気付かされる。

ジャンルとしての音楽性や歌詞のテーマ性ではなく、季節に寄り添うことが彼らの根幹なのだな、と。

第四弾となる楽曲のレコーディング中との情報もあるので、次はどんな情景を運んでくれるのか、今から楽しみです。

 

 

 

<過去のデミアンに関するレビュー>

時の列車

Hello