これは夢だ、それは分かっている。
それでもこの暗号だけは忘れてはならない。
*
猫のクッキー缶と紅茶缶。
をお土産に選び、駅に向かう所。
友達の運転する車の中、道案内をする。
「この道を真っ直ぐ、突き当ったら左。」
のはずだったのだが突き当りの左は行き止まりだった。
「おかしいな、どこで間違ったんだろう。」
突き当りを右に進みUターンするが
道は真っ直ぐどこまでも前方に続いており、
左にも右にも曲がれなくなってしまった。
左右は奇妙な建物が立ち並ぶ住宅地だ。
「一度家に戻ろうか。」と友人が言い、
友人の家に向かい出した途端、左右に道が出現する。
本日の新幹線、何時発だったか。
間に合うのだろうか。
「見せたいものがあるの。」
友人の家はレンガ造りのマンションの二階。
重厚な黒い外階段を昇り、扉を開ける。
友人が持ってきたのは一枚の絵だった。
人物の横顔?
いや、横たわる猫の絵だ。
右下にサイン?
いや、これは何だろう。
何かの暗号だろうか?
いや、本当は分かっている。
これは夢だ、それは分かっている。
それでもこの暗号だけは忘れてはならない。
間に合わなくても
辿り着けなくても。
この暗号だけは、
と目を凝らした瞬間
一文字一文字が次々と姿を変えて行く。
これは夢だ。
それでも。
「傘を持って行ってね。」
友人が言う。
もうすぐ目が覚める。
時間が無い。