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小池浩二氏の [プレイングマネージャーの仕事術] シリーズ (19)

【プレイングマネージャーの技術編 「メンバーの動かし方シリーズ」 全4回】
第2回目「チームを動かすために必要なリーダーの7つの役割」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
 

チームリーダーはチームに対し、目指すべき目標、進むべき方向性を考え示す役割があります。
そして、立てた目標を達成するために何をすべきかをメンバー全員で考え、達成するための条件を整備し、それを実践し成果を出していく事が大きな役割です。

チームリーダーの役割として重要な点は次の7点であります。

1.方向性を立てる機能(向かうべき方向と目標を立案する)
チームが何のために、何を目指して、どのような方向性でいくのかという進むべき方向とその目標を提示する役割があります。

つまり、会社方針、自部門の方針、目標、そしてそのやり方をどうするのかを立案しなければなりません。チームの羅針盤をつくることです。

2.知らせべき
る機能(向かう方向と目標を提示する)
メンバーに対して会社方針・自部門の方針・目標・手順そして、そのための課題を自分の考えとして、きちんと明示し、積極的に語りかけることです。

知らせる機能の重要な点は教えることではありません。メンバー一人ひとりに理解させ、意識させること。そしてチームの全員で共有化することです。それによってメンバーは、自分の仕事の位置づけ、役割を一つひとつ確認し、意味づけることが可能になります。目的・目標・課題の共有化を図ることです。

3.巻き込む機能(全社員で目標に向けてチャレンジする)
立案した目的・目標を達成するために全社員で考え、工夫し、実践していくことです。メンバーを参画させることがポイントとなります。

参画とは自らが考え、判断し、行動することです。メンバーとのベクトル合わせ、判断基準の刷り合わせを怠らないことです。仕事の目標が決まったら、チームリーダーは「どのようにやるか」という戦術をメンバーに示さなければならない。ただ単に「目標をやれ」だけなら、チームに知恵・工夫は生まれず、全体の生産性向上につながりません。

また、途中経過や進捗状況についてもオープンにして、どんな状況でもメンバーの衆知を集めて乗り切ることです。
メンバーの納得があって、成果の出る行動につながります。

4.指示命令機能(各メンバーに役割をやらせる)

チームの目標を達成するために、各メンバーの役割に応じた行動を指示命令することです。指示命令は願望ではありません。本質的には「~をしてください」ではなく、「~をしろ」となります。

業績をつくるためにやるべきことは、多数あります。しかし、優先順位を決めて、真の行動予定(日時を決める)を組んでいるメンバーは、ほとんどいないのが現実です。キチンとやるべきことを行動予定に組ませることは最大の指示命令事項です。つまり、決めたことをやらせていくことです。また、チームリーダーがメンバーに対して指示命令があるならば、メンバーがチームリーダーに協力してもらいたいこともあると考えたほうがよいでしょう。

チームリーダーは協力者です。相手と同じ立場に立って感じ、考えることです。このために必要なのは聞く能力です。

5.価値観を共有化させる機能(コミュニケーション)
メンバーに価値観の共有化を図るのはチームリーダーの役割です。職場のコミュニケーションには、価値観を共有化させる土俵づくりが必要です。

共有化させる土俵とは、場・状況・情報の共有による問題意識の共有化であります。考えるとき、実践していくときに、常にベクトルを合わせることが不可欠となります。

価値観の共有とは、意識の共有・情報の共有・スキルの共有・成功体験の共有、ルール基準です。また特定の人にしか見えなかった問題点をチーム共通の問題としていくことも重要です。

価値観とは考え方・判断の仕方を言葉にしたものです。他人様の集団を束ねるためには絶対不可欠な要素であり、この木の根っこが崩れるとチームは崩壊します。

6.業績推進機能(目標を達成させていく推進者)

チームには目標があります。その目標に対する業績責任者はチームリーダーです。目標とは生き残るための条件です。できたらやりたいことは願望。会社が継続して栄え、働く社員が豊かになるために、やらなければならないことが目標です。

リーダーは、業績づくりのために人を動かすことに注力し、決めたことを自ら行い、メンバーに行なわせるのがその職務です。

また、リーダーは相談を受けるのみではなく、判断をする人でもあります。判断をする人とは、状況を正しく把握し、現状のチーム力での最善の方法は何かを創造していくことです。そのためには日常から先に対しての今やるべきことを考え、手を打つことです。

忙しがっているリーダーほど、目の前のことに追われ、先への対策が打てていません。そうなると貧すれば鈍になるだけで、悪循環に陥ります。

業績の責任者はリーダーです。しかし、一人で業績を上げてくれとはいっておりません。プレイングマネージャーだけでやろうとしても無理です。チーム全員でやっていくプレイングマネージメント体制が必要です。

7.環境整備機能(チームを運営しやすくする)
チームを運営しやすくするためには、環境を整備することです。環境整備とは社会生活で必要なインフラを整備することと同じです。電気、水道、道路等のインフラ整備があるから、安心して生活が送れます。人を動かすためには最低必要な仕組みをつくること。そして習慣化させることで人の動きに変化が出ます。

人材教育でも自社・自チームで働く上で必要な価値観をわかりやすくまとめる。この仕事ができるようになるためには、どのような知識・技術が必要か? それはどのようにすれば習得できるかをパターン化していく。

環境整備とはメンバーがチームの一員として働きやすくする方法です。これに着手しないと、サブリーダーはチーム運営のサポートはできませんし、チームメンバーの成長は遅くなります。

どうしても、業績に目が行きがちですが、真の意味で業績をあげようとしたら、環境整備が近道です。


(続く)

 

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■ 小池浩二氏 (マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

実践に基づいた「中小企業の基礎打ち屋」として、中小企業成長戦略のシステムづくりを研究。これまで500社以上の中小企業経営に関わり、経営診断、経営顧問、研修等を実践。多くの経営者から「中小企業の特性と痛みをよく理解した内容」と熱烈な支持を得ている。
  http://www.m-a-n.biz/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
         筆者 小池浩二氏が
【プレイングマネージャーの仕事術】の概論を
YouTubeで説明しています

     http://www.m-a-n.biz/8-1-0.html


 



「“四方よし”で会社経営を」
----年輪型長寿ビジネスを心掛ける85歳“現役営業”創業者の挑戦


社長の座は後進に譲ったものの85歳でまだ“現役営業マン”会長として奔走、宮崎氏が提唱するのは「売り手(社員)」「買い手(顧客)」「世間」の三方に「自然」を加え、「三方よし」ならぬ「四方よし」。LED製品など環境に配慮した製品の販売・工事を行っている。いつも「“人”が大事」と唱える宮﨑氏が、トラブルに巻き込まれ多額の負債を抱えたときも社員は辞めなかったと言う。
「”好奇高齢者”として、少しでも世間に貢献できれば」と話す宮﨑氏にうかがうビジネスと人生の機微。

■講 師 
﨑 正氏((株)大倉物産 代表取締役会長)

1932年長野県生まれ。東京経済大学卒業後、商社に入社、営業成績を上げ28歳で横浜支店長に。66年に独立、(株)大倉物産を創業。以後50年間社長を続け、2016年現職に。この間、札幌に半導体工場を作るも人間関係上のトラブルから13億円の借金を背負う羽目に。後進に譲るためには「会社の形を作ること」と営業の先頭に立ち、近年では「ロボットビジネス」に未来のビジネスチャンスを見据えている。また80歳を過ぎてから英語塾に入塾するなど「生涯現役」を標榜している。

■日 時  2017年 9月6日(水) 14:00―15:30
        

■会 場  レ・ビューロー新橋駅前セミナールーム (新橋駅前ビル1号館6階)
       (JR、地下鉄銀座線、都営浅草線「新橋」駅 銀座口〔北口〕より徒歩1分)


■参加費 (清話会会員システム はこちら
清話会会員(会員証お持ちの方)・・・無料
一般の方・・・事前予約10,000円/当日15,000円/学生3,000円

■お申込み 

下記を切り取り、清話会オフィスまでメール info@seiwakai.com  にてお願いいたします。

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■2017. 9月6日 清話会講演セミナー【東京】参加希望
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ご質問等ございましたら、
お気軽に清話会オフィス までご連絡ください!

TEL 0120-181-334

■大阪・特別例会■
「関西文化サロン お別れ会」
----33年の歴史に幕を下ろす


清話会が長年にわたり、講演会や研修会など多くのイベントを開催して参りました関西文化サロンが、33年の歴史に幕を閉じます。これまでの思い出を皆様とともに振り返りたいと願い、この度の「関西文化サロンお別れ会」開催に至りました。昼食会も併せて開催しますので、ご多忙の時とは思いますが、ぜひご来会ください。
■講 師  安田紘一郎(清話会関西支局長)

■日 時  9月26日(火) 12:00-14:30
        <講演会>12:00-13:00
        <昼食会>13:00-14:30

■会 場  関西文化サロン (阪急グランドビル19階) 

(JR「大阪」駅 御堂筋南口より徒歩3分、阪急「梅田」駅 中央改札口より徒歩3分、阪神「梅田」駅 東口より 徒歩7分
地下鉄御堂筋線「梅田」駅 中央改札口より徒歩3分、地下鉄谷町線「東梅田」駅より徒歩3分)


■参加費 (清話会会員システム はこちら
清話会会員・一般  4,000円(昼食代、税込)

※講演会のみ、昼食会のみの参加申込は受け付けておりません。
 定員30名、事前申込制です。(お早めに)

    
■お申込み 下記を切り取り、清話会オフィスまでメール 
info@seiwakai.com  にてお願いいたします。


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■9月26日(火) 清話会特別講演セミナー【大阪】参加希望

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ご質問等ございましたら、清話会関西支局オフィス までご連絡ください!

TEL 06-6258-3338




◎清話会主催・大人の社会科見学
「メルセデス・ベンツ専門の板金塗装工場、販売店見学会」
----日本におけるベンツの高品質と顧客対応の現場を検証する


■「メルセデスとともに生きる」宮園輸入車販売(株)

車を単に販売するのではなく、「メルセデスのあるライフスタイルを提案する」ことを使命と心得、メルセデス・ベンツの正規販売店として2007年に設立。

「販売店の価値はアフターサービスで生まれる」という赤須惣一社長の思いから、1992年には所沢BPセンター(板金塗装工場)の設立に奔走、日本独自の「メルセデス・ベンツ」の品質と文化を維持、顧客の信頼を得てきました。

・メルセデス・ベンツ販売店として2年連続「CS(お客様満足)No.1」の評価
・すぐ汚れてしまう工場だからこそBPセンターの掃除、整理・整頓等5Sを徹底
・整備工場を併設する中野店は、地元住民との日常の接し合い・地域のつながりを大切に
・販売店スタッフの気づきや意識向上のための話合いを常に心がけて
・サービス工場のためスタッフがメルセデス・ベンツ国際認定サービスアドバイザー、故障診断士等を自主的に取得
 etc.

★ぜひ、お誘い合わせのうえご参加ください。


■行 程 (予定):
9:30      中野サンプラザ前から貸切バスで移動
9:50-11:00  メルセデス・ベンツ中野店(販売店)を見学
11:00-12:00  バスで移動、
(車内で、塚本氏による販売店、所沢BPセンターの特徴 と視察のポイントを解説)
12:00-12:45  昼食 (花小金井周辺にて)、バスで移動
 13:00-13:40  メルセデス・ベンツ西東京店見学→バスで移動
14:30-15:30  所沢BPセンター(メルセデス・ベンツ専門の板金塗装工場)にて、宮園輸入車販売(株)赤須惣一社長による概要説明 (予定)、センター内の見学

15:30-16:00 バスで移動、志木駅(東武東上線)にて現地解散

■全行程同行・解説 塚本晴樹氏(プランズマーケティング研究所所長)

販売店・板金塗装工場の見るべき点のみならず、自動車業界と販売システムの仕組み、販売店が陥りやすいワナ、CS対応のチェックポイント等を現場・バス内で解説。

★参加者には、見学先の特徴やポイントを詳細に記した手引書(塚本晴樹氏作成)を事前送付させていただきます。

★ベンツや自動車好きの方のみならず、販売からアフターサービス(板金塗装)の流れを参考にしたい経営者、営業・顧客担当の方まで、ぜひご参加下さい。

■日 時:  2017年  9月27日(水) 9:30am  中野サンプラザ前に集合 (JR中野駅北口徒歩2分)

■参加費 

・清話会会員 19,980円  (ガイド料、バス代、昼食代、税込み)  ※同伴の方も同価格
・一 般  24,980円 (同上)

★定員20名、申込み締切り9/25(月)
 (最少催行人員に満たない際は中止となる場合がございます。ご了承下さい)

■お申込み
下記を切り取り、清話会オフィスまでメール
info@seiwakai.com にてお願いいたします。

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■2017年9月27日 「メルセデス・ベンツ専門の板金塗装工場、販売店見学会」
■会社名
■ご担当者               
■ご参加者
■ご住所 〒
■TEL                  ■FAX
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ご質問等ございましたら、お気軽に清話会オフィスまでご連絡ください。
03-6228-5481




【特別リポート】
「『神田祭』の『神幸祭』を撮影しました。」

日比恆明氏 (弁理士)


「神田祭」の行事の中で、平成29年5月13日の「神幸祭」を撮影してきました。
私は東京に住んでから三十年以上経つのですが、恥ずかしながら一度も神田祭に出掛けたことがありません。そこで、各種資料を読みあさり、何とかこのお祭を理解することになりました。

付け焼き刃のような知識であるため、「三代続かなければ江戸っ子ではない」と呼ばれる地元の方々からは笑われてしまうような内容となっているかもしれません。文章中に間違いがあれば、新参者であることでご容赦下さいませ。

【神田祭の歴史】

「神田祭」とは、千代田区の神田明神により2年に一度斎行されるお祭で、京都の祇園祭、大阪の天神祭と並ぶ日本三大祭の一つです。また、「山王祭」、「深川八幡祭」とならび江戸三大祭の一つでもあります。ただ、江戸三大祭には「深川八幡祭」の代わりに「三社祭」が入るのではないか、という説や、「根津権現祭」、「三社祭」、「鳥越祭」が該当するのではないか、という説もありますが、どの書籍にも「神田祭」は日本三大祭に含まれているため、東京で最大のお祭には間違いないことです。

「神田祭」を斎行する「神田明神」は天平二年(730年)に創建され、徳川家康が江戸城に幕府を開くよりもずっと前から鎮座していました。江戸幕府が開かれるよりも前から関東に鎮座していた神田明神が、江戸総鎮守として幕府の庇護を受けたのは徳川家康とのつながりがあります。慶長五年(1600年)の関ケ原の合戦に際して、徳川家康は神田明神で戦勝祈願を行い、その結果天下統一ができました。元和二年(1616年)に神田明神は江戸城からみて表鬼門にあたる現在地に遷座し、江戸城の鬼門守護の神社となりました。

                              地図

神田明神の氏子は日本橋地区と神田地区にある町会で、その数は百八町会となっています。講談などで江戸の下町の数を「大江戸八百八町」と表現することが多いのですが、町会の数とは一致していません。講談などでは江戸の町が広かったことを大げさに表現したからではなかったでしょうか。
 
また、神田明神と同様に江戸城を鎮守する神社には、赤坂に鎮座する日枝神社があります。日枝神社も京橋や日本橋の町会を氏子としています。両神社の氏子区域を大雑把に区分すると、日本橋川から北側の町会が神田明神の氏子であり、南側の町会が日枝神社の氏子となります。どのような理由で区分されたのかは不明ですが、江戸・明治・大正と長い時間の変遷により氏子が集約されたのではないかと推測されます。日本橋川で神田明神と日枝神社の氏子区域が区分されているため、神田祭と山王祭の神輿の巡行は日本橋が境界となっています。
 
さて、今年は神田祭が、昨年は山王祭が斎行されており、両祭は交互に開催されています。その昔は毎年開催されていたようですが、天和元年(1681年)からは幕府の通達により隔年に行われるようになりました。また、江戸時代の神田祭は9月の秋祭りでしたが、明治25年(1892年)からは5月に斎行されるようになりました。
 
今年の神田祭は、5月11日の鳳輦神輿遷座祭から始まり、5月17日の例大祭までの7日間続きます。この間には色々な行事がありますが、メインは13日の神幸祭と14日の神輿宮入りです。氏子の神輿は大小合わせて約二百基があるそうですが、その内の約八十基が宮入りします。

【神幸祭の行列】
 
神幸祭とは、神様がお乗りになった三つの鳳輦と神輿を中心にした行列が日本橋一帯を巡り、氏子である108の町会を祓い清めていく神事のことです。行列の編成は、神職、氏子総代、祭典委員、鳶頭衆、供奉者などの数百人規模で、先頭から最後尾までは500mくらいの長い行列となります。
 
神幸祭の行列は、神田明神を出発し、神田地区、大手町を経て日本橋界隈を廻り、三越より秋葉原へ北上し、外神田を廻りって神田明神に戻るのです。行列の道順である巡行路を地図で眺めると、まるで一筆書きをしたようにジグザグとしたコースとなっていました。氏子の町内を満遍なく巡るにはこのようなコースになったのでしょう。

全行程は約30キロメートルとなり、朝8時に神田明神を出発して、氏子の町会を巡行して神田明神に到着するのが夕刻7時という長い行程なのです。途中で休憩もありますが、全行程を歩き通すのは大変なことでしょう。巡行路の案内図には、5分刻みで行列が到着する時刻が掲載されています。実際に行列が到着する時刻はこの予定時刻とほぼ一致しており、行列の進行が正確なのには驚かされました。


        写真1      


        写真2

行列の先頭では神職が先導し、次いで神幸旗(写真1)が、さらに錦の狩衣を来た天狗が続きます(写真2)。天狗というのは俗名で、「鼻高面」というのが正式の名称です。


       写真3


        写真4
 
続いて、神田明神で11日に御神霊を遷座した鳳輦・神輿が通ります。一番目の鳳輦は「一の宮鳳輦」(写真3)で、神様は大己貴命(おおなむちのみこと)です。大国主命(おおくにぬしのみこと)とも称され、庶民からはだいこく様と呼ばれています。縁結び、夫婦和合、国土開発・経営、医療・医薬の神様です。
 
その次は「二の宮神輿」(写真4)で、神様は少彦名命(すくなひこなのみこと)です。庶民からはえびす様と呼ばれていて、商売繁昌、医薬健康、開運招福の神様なのです。


       写真5     


       写真6

最後の鳳輦は「三の宮鳳輦」(写真5)で、平将門命(たいらのまさかどのみこと)で、平将門公は平安時代の関東の武将でした。朝廷に反旗を翻した将門公が神田明神に祭られたのは、大手町にある将門公を葬った将門塚と関連があります。中世になって将門塚の周辺では天変地異が発生し、疫病が流行ったことから、延慶2年(1309年)になって神田明神に合祀して供養したからでした。現在も、神幸祭では将門塚を巡行して奉幣の儀が行われています。

「三の宮鳳輦」の後からは、平安時代の衣装をまとった巫女さん、旗持ちなどが並び、その間には宮司さん、千代田区長、中央区長が乗られた馬車、氏子総代が乗られた馬などが続いてます(写真6、7)。行列の最後尾は、お祭特有のお囃子を奏でる太神楽曲芸協会の車となりました(大神楽ではなく、太神楽であることに注意)。

「太神楽」とは傘の上で毬や升を廻したりする曲芸や祭囃子のことです。テレビ番組でご覧になった方も多いと思うのですが、海老一染之介、染太郎が有名でした。「太神楽」は本来は幕府公認の神事芸能でしたが、時代と共に寄席などで芸を披露することになりました。芸能が成立した歴史的背景が全く違うことから、神楽師は「太神楽は、落語や漫才などの大衆芸能とは格が違うんだ。」と自慢されているようです(写真8)。


       写真7     


       写真8

【氏子総代の献饌】

神幸祭では、氏子総代が献饌(けんせん)することになります。「献饌」とは、神様に供物を供え、拝礼するという意味で、行列が氏子総代の家の前に到着すると、宮司が馬車から下車して御祓いすることになります。神幸祭では10か所の氏子総代で献饌が行われていました。日本橋横山町では衣料品問屋の株式会社宮入が総代で、この会社は明治41年創業の町内の老舗です。

店舗前には社長以下社員一同が行列をお待ちしていました(写真9、10)。鳳輦が店舗前に付けられて、神職によって御祓いを受けたあと、全員で献饌をして拝礼が行われました(写真11、12)。お供物には酒、米、塩などがあり、伝統的な五穀豊穣を意味しているのでしょう。


       写真9    


       写真10

【昼御饌】  
 

行列が東日本橋にまで到着すると、日本橋両国旧御仮屋で昼御饌(ひるみけ)という神様に昼食をお供えする神事を行います。現実には御仮屋という建物はなく、東日本橋2丁目の薬研堀不動院にある空き地で執り行います。これはかっての習慣の名残りで、当時は神幸祭が数日にわたって行われていたため、巡行路の途中にある両国米沢町に仮の小屋を建て、仮屋で鳳輦・神輿を一時奉安していたからだそうです。


       写真11


       写真12


       写真13 


       写真14


       写真15

昼御饌では大鳥居信史宮司が祝詞をあげられ、氏子総代全員が拝礼されていました(写真13、14)。御仮屋に奉安された鳳輦・神輿は、中央が「一の宮鳳輦」、右側が「二の宮神輿」、左側が「三の宮鳳輦」となっています(写真15)。
 
御仮屋に鳳輦・神輿を奉安した後、行列一行は近くの日本橋中学校で昼食を取られて1時間ほどの休憩となりました。神田明神を朝8時に主発し、御仮屋に到着したのが午後1時で、4時間を歩き続けたことになります。

【明治座での献饌】

 
日本橋浜町の町会では明治6年創業の株式会社明治座が総代で、明治座前で氏子献饌が行われました(写真16、17)。


       写真16        


       写真17

【雨の神幸祭】
 
今年の神田祭では、12日はほぼ快晴であり、梅雨前の気持ちの良い天気でした。しかし、その夜から天候が思わしくなくなり、13日は朝からシトシトと小雨となり、ほぼ全日雨という天気になってしまいました。一時的に雨が止むこともとなく、撮影には最悪の条件でした。観客の方も出掛けるのを躊躇した人が多かったようで、出足は悪かったようです。写真18は水天宮角の交差点で撮影したもので、これが晴天であれば人混みで大変な賑わいであったことでしょう。


       写真18     


       写真19

【附け祭】

 
神幸祭の一行が水天宮まで到着すると、行列の後尾に附け祭が加わり、行列がさらに長くなります。「附け祭」とは江戸時代から始まった出し物であり、本祭の余興のようなもので、その当時に流行った能や浄瑠璃などを題材にした踊り屋台や山車が出た仮装行列のようなものでした。お祭をみんなで楽しもうという趣向ではないかと思われます。
 
写真19は昔話の「花咲か爺さん」を乗せた山車で、時々山車からは煙が噴出される演出があり、煙が出ると観客からは歓声が上がってました。左側で傘を持つ男性はどう見ても外人のように思えるのですが。


      写真20  


       写真21
 
次は、昔話の「亀に乗った浦島太郎」の山車で(写真20)、移動している間はリードオルガンのような柔らかな音色で浦島太郎の童謡を流していました。すこし間延びしたようなオルガンの音色は心を和ませてくれました。「花咲か爺さん」、「浦島太郎」の山車は江戸時代の附け祭には既に存在していたという記録があり、これらの昔話は相当に古い時代から続いていたのでしょう。

写真21は、マンガでおなじみの「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の主人公両津勘吉の山車です。バルーンですがリアルに制作されていて、出版元の集英社が奉納したものでした。


      写真22

【相馬野馬追】
 
日本橋三越本店前に出陣するのは福島県南相馬市から参加した「相馬野馬追騎馬武者(そうまのまおいきばむしゃ)の10騎です(写真22)。福島の国指定重要無形民俗文化財である野馬追が附け祭で行進するのは、神田明神のご祭神平将門公と関連しています。将門公は原野に放してあった野馬を捕らえる軍事訓練である「野馬追」を行っており、その由来で野馬追を奉納しているのだそうです。
 
日頃は自動車しか通らない中央通りに10騎の馬が居並ぶのは全く異次元の世界であり、ほら貝を吹いて出陣の儀式を行っていました。この光景は珍しいので、外人観光客が盛んに写真を撮影していました。騎馬の一団が通り過ぎた後の車道には落とし物があり、競馬場でおなじみの香りがしました。


       写真23  


       写真24


       写真25

【三越前で】
 
三越本店の建物壁面には献灯台が設えてあり、提灯が奉納されていました(写真23)。氏子だけではなく、有名商店や老舗の名前もみかけられました。多くの提灯が掛けられているのは、三越本店が老舗であることと大店であることが理由ではないかと思われます。

また、室町1丁目町会の神酒所が設けられていて、町会の神輿が奉安されてました(写真24)。造作は立派なもので、ここで参拝される人が目立って多い神酒所でした。この三越本店前でも献饌が執り行われるため、日頃は顧客が出入りするライオン口の前では役員一同が鳳輦の到着をお待ちされてました(写真25)。

【撮影で困ったこと】
 
今回の神幸祭の撮影で困ったのは、絵にするカンが働かないことでした。通常、このようなイベントの撮影では事前に下見をしておくのですが、過去に神幸祭を見た経験がないため、行列の流れが不明でした。このため、ネットで神幸祭の画像を検索してみたのですが、各町会の神輿の画像は数多く抽出されましたが、神幸祭の行列を最初から最後まで撮影した画像は検出されず、意外でした。多分、神輿の方がお祭の雰囲気が出やすいので、撮影者された方はこちらを好んで選ばれたのでしょう。
 
また、公道での撮影許可をどこで取得するかに苦労しました。昨年の山王祭では中央通りは警察による交通規制があり、一般客は車道に進入できず、車道では撮影できませんでした。

今年も同じように交通規制があるかと考え、万世橋警察署に問い合わせたのですが撮影許可については何だか的を射ないような回答でした。「まあ、どうにかなるだろう」と勝手に考えて、当日私は車道上で撮影をすることにしたのですが、警察官からは注意されませんでした。

どうも、警察による祭の解釈が違うようで、神幸祭は「お祭の行列が車道を通過する」と考えているようであり、下町連合渡御は「多数の神輿が車道を練り歩く」と考えているようです。このため、下町連合渡御では上下の車線を通行止めとしているのに対して、神幸祭では車道の片側だけを交通規制し、反対車線では車両を通行させていました。
         
【気が付いたこと】
 
神事を文章にするのは初めてなので、今まで見たことのない漢字に接することになりました。特に、「鳳輦」の「輦」、「献饌」の「饌」という漢字は生まれて初めて見るものでした。

しかし、この二つの漢字はJIS第二水準の漢字表には含まれていて、特殊文字ではないのです。これらの漢字は神事以外にも使用されていて、使用頻度が高い漢字であると気がつきました。




小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (19)
【摩訶不思議な中小企業という生き物 全4回】
 ◆第3回目「なぜ、会社によって成長に差が出るのか?」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■なぜ、同業種を同地域で同時期に始めても、会社に差が出るのか?

それは社員の基本的行動の質の差である。

同じ時期に、同じ地域で、同じ業種を始めることは物選び、地域選び、スタート時期が同じことを意味する。それでも業績に差が出るのが会社経営である。

私も同業種を同地域で同時期に始めたA社、B社をお手伝いするケースが幾つかあった。(時期は違うけれど)そのときに感じた成長企業と成長できない企業の特徴だが、成長企業の社員は、指摘されなくてもメモを執る習慣を身につけている。

しかし、成長できない企業の社員はよほど記憶力が良いのか不思議とメモを取る習慣がない。また、社内で決められたことに対する意識の違いがある。成長企業は守らなければいけない意識が社員にあるが、成長できない企業は決められたことに対する意識が低く、守ろうしない。

「鶏が先か卵が先か」ではないが、成長したからできるようになった、できるから成長してきたと聞かれれば、後者のできるから成長してきた、が答えである。

この差は経営者が会社の人間集団の基礎的レベルを上げることに注力を注いだ時間・知恵・執念の違いであろう。

■なぜ、同業他社と同じ商品でも業績に差が出るのか?

それは準備期間の差である。
中小企業において自社しか取り扱うことができない商品を持っている企業はほとんど皆無であろう。必ず、同業他社も似たり寄ったりの商品を取り扱っている。しかし同じ取扱い商品でも、企画の準備段階は各社各様である。

10月のことを10月から準備したら、勝てない。業績の良い会社は3ヶ月~6ヶ月先までの準備をしているから勝てる。私の協力している会社で経常利益率を10~20%出している会社は6ヶ月~2年先までの手を打っている。

同業他社と同じ商品で業績に差が出ているのは、ぶっつけ本番でやるからである。プロの世界は練習を必ず行う。しかも勝つための練習である。基礎的能力の高い集団でさえそうなのに、基礎的な能力が劣る中小企業の人間集団が色々なことを事前準備して鍛えないで本番に突入したら負けるのは当然のことである。

■なぜ、人の成長スピードは会社の成長スピードより遅いのか?

それは成長の歪みが出て、必要性を感じて人財育成に取り組むスタンスだからである。
人・物・金のナイナイ尽くしの中小企業には余裕はなく、成長し、社内に歪みが出て、待ったなしの状態で人財育成に手を打つからである。

中小企業の成長は経営者の成長スピード・動きに比例するが、社員の成長スピードには比例しない。従来の育成パターンは、部門長をやらせて、できなければ教育させる等の措置をとるが、本来その時点で遅いことに気づかねばならない。会社の規模が5億から10億、10億から30億、30億から50億、50億から100億を目指すときには組織運営のギアをチェンジしなければならない。

そのときに創業以来、共に頑張ってきた幹部が権限委譲、公私混同の是正、公開経営等の運営方法の変化に対応できないことが多い。情に厚い経営者は我慢強く辛抱するが、中堅・若手社員の目が気になり日々悩む。何かにつけ、舵取り方法の大きな変化を求められるこの段階では会社内にギャップ現象が多発する。

■なぜ、年商5・10・30・50億の壁を突破できないのか?

それは組織運営へのギアチェンジができないからである。

企業に危険度・問題点・病気をもたらす要因特性の一つとして企業の規模への対応能力がある。会社の規模的成長は危険度増加をもたらす。そこで身の丈に合った経営態を創らねば、成長気味=膨張となり、企業の危険度が増すだけである。企業の規模対応とは、人間でみると、小学生には小学生の生活習慣・骨格に合わせた食べ物・洋服があり、中学生には中学生の生活習慣・骨格に合わせた食べ物・洋服がある。

いくら同じ食べ物でも小学生が育ち盛りの中学生の量は必要ない。それと同じように、会社も企業の規模に応じた対策を講じないと健全なる運営ができず、至る所からほころびが出始める。

企業の年商規模段階のステップは以下のとおりである。



(続く)


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         筆者 小池浩二氏が
  【中小企業に必要な経営の技術】の概論を
      YouTubeで説明しています


      http://www.m-a-n.biz/3-3.html

         是非、ご覧ください
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【ニュース・事例から読む給料・人事】
第7回「人手不足時代の社員引き留め策」

神田靖美氏 (リザルト(株) 代表取締役)


厚生労働省が6月30日に発表した『一般職業紹介状況』で、5月の正社員有効求人倍率が集計開始以来最高の0.99倍となりました。人手不足がいよいよ正社員の領域まで及んできました。
今回は人手不足時代における定着促進策について考えてみました。

■賃金は重要だが
 
もちろん高い賃金は効果的です。おそらくもっとも効果的でしょう。アメリカで1984年に行われた世論調査では、マネージャー、事務職、時給労働者という3つの職種で、「仕事においてもっとも価値あるもの」として「給与と厚生」が挙げられています(唯一専門職においてだけ、「昇進」がもっとも重要で、給与と厚生は2番目でした)。日本でも大学生の就職人気企業の上位は高賃金企業が占めています。

しかし賃金は採用難だからといって急に上げることはできません。採用初任給を上げたら既存の社員の賃金も同時に引き上げなければならず、その負担に耐えられる企業ばかりではありません。
 
比較的簡単にできて効果的な施策として、①リアリズムに基づく採用、②短い労働時間、③社外で通用する技能への訓練の3つが挙げられます。

■リアリズム採用
 
リアリズムに基づく採用とは、人材の採用に際して真実の情報を提供するということです。仕事の内容や賃金、労働時間、休暇、社員の定着率などについて、きれい事だけでなく会社にとって不都合な情報も含めて、実際にどうなっているのかを率直に情報提供することです。
 
「最近の学生は、休みは欲しいし長時間労働はしたくない、給料はたくさん欲しいという。うちみたいな中小はどうしたら良いのだ」という趣旨のことを言う経営者の方はたくさんいます。これに対する私の答えは「それでも真実を開示すること」です。希望を聞かれたら貪欲なことをいうのは当たり前です。好き好んで長時間労働や低賃金を希望する人がいるはずがありません。しかし希望を語る人も、別に桃源郷のような会社でしか働きたくないと思っているわけではありません。

本当のことを言ってしまったら人が集まらないと考えるのは間違いです。リアリズム採用には、
①入社後の幻滅感を和らげる、②入社するかどうかよく考えて決断させる、③会社の誠実さを印象付ける、④入社後の、自分の役割をよく認識させる
などの効果があり、仕事に対する満足度を高め、定着を後押しします。同じ労働条件でも、過大な期待を抱いて入った人よりも現実的な期待を持って入った人の方が定着率が高いということです。

■短い労働時間

 
長時間労働の会社に社員が定着しないことは、いろいろな調査で確認されています。少し前までは「長時間労働はしたくない」などと素直に言える状況ではありませんでしたが、最近は「働き方改革」や「ブラック企業」騒動などの影響もあり、状況が変わってきました。
 
長時間労働の原因として、よく過剰サービスが指摘されます。しかし過剰だからやめよというのは乱暴な議論です。過剰と思われるサービスに実はKFS(主要成功要因)があるかもしれません。いきなり廃止するのではなく、期間を限定して休止するとか、一部の営業所だけで休止するとか、テストをします。そして悪影響がなかったら廃止し、悪影響があったら存続するというように、影響を見極めてから廃止するべきです。

労働時間が短くても通勤時間が長くては、仕事に時間をとられるという意味では大差ありません。社員に遠距離通勤をさせないことも効果があります。採用の際、通勤時間の長さも考慮するとか、通勤手当に上限を設けるなどすると良いでしょう。

■社外でも通用する技能への訓練


仕事の技能にはその会社でしか通用しないものと、社外でも使えるものとがあります。わが社でしか使わない機械設備やコンピューターシステムの使い方、わが社の顧客特性などは前者の例です。パソコンの知識、財務の知識、マーケティングの知識、各種検定試験への合格などは後者の例です。

その会社でしか通用しない技能の訓練はどこの会社でもやっています。これをやらない会社は何のために人を雇っているのかわかりません。その反面、こうした技能の訓練だけをやって、社外でも使えるような技能の訓練をまったくやらない会社も珍しくありません。

たしかに、わざわざ転職に有利になるような訓練にお金をかけるのは無意味なことのように思えます。しかし社員の側から見て、社内でしか通用しない技能への訓練はあって当たり前で、ことさらありがたみを感じません。これに対して社外でも使えるような技能への訓練にはありがたみがあります。

社外でも通用する技能への訓練で留意すべきことは、短期間で習得できるものを選ぶということです。そうすれば会社にとってさほど負担になりませんし、社員にも満足感があります。

もちろん、以上であげたこととて、これらを行うことに、障害がまったくないわけではありません。しかしある程度の勇気と気力だけでできる施策から取り組んでゆくことが、今後ますます進展するであろう、人手不足の時代に重要になってくるはずです。


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神田靖美氏(リザルト(株)代表取締役)

1961年生まれ。上智大学経済学部卒業後、賃金管理研究所を経て2006年に独立。
著書に『スリーステップ式だから成果主義賃金を正しく導入する本』(あさ出版)『社長・役員の報酬・賞与・退職金』(共著、日本実業出版社)など。日本賃金学会会員。早稲田大学大学院商学研究科MBAコース修了。

「毎日新聞経済プレミア」にて、連載中。
http://bit.ly/2fHlO42

書評:『成功する人は偶然を味方にする』
ロバート・H・フランク著 月沢李歌子訳 
日本経済新聞社 2017年6月17日
副題 : 「運と成功の経済学」
帯の言葉  「“努力と才能は報われる”という幻想」


この本は面白い。またこの本で著者が主張していること、つまり「成功する人は偶然を味方にする」は、私の体験上からも、「正しく、信頼に足る」と言える。教育者を含め、ぜひ多くの人に読んでもらいたい一冊である。

私のビジネスにおける成功も、私は運によるところが大きいと思っている。したがって私は、若い人たちには、
「たとえ成功しても、自分の才能や努力で、成功したと奢ってはいけない。成功したのは運がついていたからである。だから次に同じような場面で同じことをしても、多分成功はすることはできない。
つまり成功体験はただちに捨てることが大事だ。また成功しなかったとしても、それは運によるところが大きいので、落胆する必要はない。引き続き、チャレンジすることが重要である。
私は、“得意超然・失意泰然”という言葉を座右の銘にしている。さらにどうせ成功は運によるところが大きいと思い、まったく努力しない人がいるが、それは大きな間違いである。なぜなら、能力を磨き、努力をしなければ、運が向いてきても、それをつかむことができないからである。
常にチャレンジし続けなければ、運に会うチャンスには恵まれないからである」
と、声を大にして言いたい。

著者は本書で、多くの社会学的・心理学的実験結果を通じて、「成功する人は偶然を味方にする」を証明している。それらは大変貴重なものである。その中の一部を、下記に列記しておく。

・成功にはいつも後追いで理由がつけられ合理化されてしまうことがほとんである。わたしたちは、成功を運によるものだと思いたくないのです。
運が大事だという証拠を突きつけられても、多くの人が運を軽視するのはなぜだろう? 
ひとつは才能と努力を強調してほかの要素を排除すれば、成功者が自分が獲得した報酬の権利を正当化できるからだろう。
しかしわたしはもう一つの可能性を考えたい。それは運の要素を否定するのは、成功の前に立ちはだかる数々の障害を乗り越えやすくするためだという可能性だ。
おそらく成功への最大の障害は、その道のりが長すぎたり、成功が約束されているかどうかわからなかったりするせいで、努力をやめてしまうことだ。
運が重要だと強調されると、努力したところで将来の成功は約束されないと感じ、何もしないでただ幸運が訪れるのを願えばいいと思うようになる。

・めったにない成功が起こったときは後知恵バイパスがとくに強くはたらく。そこで問題となるのは、成功が必然であるかのような説明をつけるのは、ほとんどどんなケースでも簡単にできることだ。現実には、すべてのできごとは、小さなできごとが複雑に絡み合った結果だ。それぞれのできごとがその前のできごとによって変わる。前のできごとがすこしでも変われば、すべてがまったく違うものになる。

・大規模な競争では能力が最高水準近くにある参加者が多いため、そのうちの何人かが偶然、幸運に恵まれることだ。参加者が多ければ、能力がトップの参加者にほんのわずか劣るものの、大きな運に恵まれる者がたいてい現れる。したがって、運が左右するのが全体のパフォーマンスの一部だとしても、もっとも能力の高い人が勝者になることはほとんどない。むしろ、最も幸運な者のひとりが勝つのである。

・経済的な勝者を決める競争には、つねに大勢が参加する。その多くは、能力も意欲もきわめて高い。そんな彼らでもたいていは、類い希な強運に恵まれなければ競争に勝つことはできない。

・運は重要ではないと親が子どもに教えて育てれば、運は大事だと真実を教えるよりも、こどもを成功に導く可能性が大きくなる。運が重要だと知ってしまった子は、困難な壁にぶつかると、とりあえず運に任せればいいと手を引いてしまうかもしれないからだ。

・成績全体のうち運による部分がわずかだとしても、運がよくない勝者はめったにいないということである。

・世界のどこでビジネスチャンスが生まれようと、野心的な起業家はすぐさまそれを見つけ、利用する。

・運の重要性をよくわかっている人ほど、成し遂げた成功に感謝する。


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清話会  評者: 小島正憲氏 (㈱小島衣料オーナー )

1947年生まれ。 同志社大学卒業後、小島衣料入社。 80年小島衣料代表取締役就任。2003年中小企業家同友会上海倶楽部副代表に就任。現代兵法経営研究会主宰。06年 中国吉林省琿春市・敦化 市「経済顧問」に就任。香港美朋有限公司董事長、中小企業家同友会上海倶楽部代表、中国黒龍江省牡丹江市「経済顧問」等を経ながら現職。中国政府 外国人専門家賞「友誼賞」、中部ニュービジネス協議会「アントレプレナー賞」受賞等国内外の表彰多数。


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