朝日新聞デジタル 大滝哲彰 2024/5/7 12:00


「控訴を棄却する」

 裁判長が主文を言い渡すと、女性(54)は両手の拳を強く握りしめた。憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障している。それが脅かされたとき、裁判所が憲法のとりでとして守ってくれると、弁護士から聞いていたのに――。

 国が2013~15年に行った戦後最大の生活保護基準額の引き下げを巡り、受給者が違憲だと訴えた裁判。大阪高裁は4月、減額取り消しを求めた原告の訴えを退けた。女性も原告だった。

 2人の子どもを育てるシングルマザーの女性が生活保護を受け始めたのは2010年だった。夫と離婚し、複数の飲食店や医療事務の仕事をかけ持ちし、昼も夜も働きづめになった。盆も正月もなし。過労で倒れた。

 知人からは「休んで生活保護を受けなよ」と何度も勧められた。でも、「もうちょっと頑張れる」と無理をした。支援を受けることに、少し恥ずかしさもあった。

 ただ、当時90代の父は認知症が進んでいた。母は足が悪い。無理をした体に介護が重なった。生活保護を受けることにした。

 周囲の目は冷たかった。医療機関で働いていた時、看護師たちが、ある患者について「(生活)保護で来てんねんから」と陰でからかっていた。

 保護基準引き下げの影響を痛感したのは、娘が中学に入った頃だ。

 ある日、娘が泣きながら帰ってきた。お気に入りだった筆箱を見た同級生に「それ、百均やん」と言われた。娘は「貧乏をからかわれた」と感じた。いじめも重なり、不登校になった。高校1年で学校をやめ、以来4年間、家から出ることがなくなった。

 娘は数年前、かかりつけの心療内科の医師から、躁(そう)と鬱(うつ)を繰り返す双極性障害と診断された。リストカット、オーバードーズ(薬の過剰摂取)。何度も自殺未遂を繰り返した。

 今は息子が独り立ちし、20歳になった娘と2人暮らし。買い物に行くたびに物価高を感じる。卵はかつての倍の値段になった。入浴は2~3日に1回だけ。食事も1日2回。もともと食が細い娘は夜1回しか食べない。

 世の中は大型連休だが、「子どもと旅行なんて行ったこともない」。憲法がうたう「健康で文化的な最低限度の生活」とはいったい何なのか。いまは疑わしく感じている。(大滝哲彰)

【25条 生存権】すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」

生活保護を受けることがこれだけ困難な社会で生き抜いていくのは本当に大変。

このブログで何度も書いているけど、強い者に弱く、弱い者に強いのがわが国政府・自治体。一度踏み外したら滅多なことでは這い上がれない。

ほぼ全ての財産を無くさないと申請が出来ないし、その申請も阻止しようとされるし、「金が無い」って言ってるのにお金が入るのはだいぶ先のことだし。

原因不明の難病も地震・津波の被害も、どちらも「自然災害」と自分としては思うんだけど、骨肉腫で死にかけてた時、政府・自治体は何もしてくれなかったなー。子どもが骨肉腫になった場合、公費助成は結構あるらしいんだけど(告知当時の埼玉県立がんセンター整形外科部長談)、こちとら成人してから罹患したもんだから、普通の病気と同じ扱い。もちろん民間の医療保険も入ってたよ。だけど、骨肉腫になることを想定して医療保険には入ってなかったからねー。術中MRSA感染して手術も入院期間も増えたし。

自己責任かね?シンママさんも、俺も。