王様の耳はロバの耳

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リアルでは本音は語れない
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久しぶりに開いたらいつの間にかブログの表示が変わっていた(-_-;)←私が書く所の事です

6月から今まで観劇はしました。

けれど時間を使ってでも「書きたい」と思う気持ちが湧いてくる舞台が無かった。

久しぶりに書きたいと思う公演が「アーサー王伝説」。

月贔屓だから、というのもあるけど、心が動かされる舞台だった。

「アーサー王伝説」はフランス版のDVDは発売されていなくて(昨日フランスで発売だったらしい)予習としてYOUTUBEでのぶつ切りの動画を見たり、フランスで観てきた人のブログであらすじを読んだりしたので、楽曲はあらかじめ頭に入った状態で観劇。

石田先生の脚本は、所々引っかかるセリフや演出・登場人物はいて、総合して絶賛!とまでは言えないけれど、大体においていい舞台に仕上がっていたと思う。

 

ここからはネタバレも批判も入るので、嫌な方はここから引き返してください。

 

珍しく東京での幕開き、私が見たのは初日から3日目。演者の演技はかなり出来上がっていると感じた。石田先生の潤色での不満点の大きなところは幕開きとアリアンロッド。本編は大人っぽいミュージカルの舞台として成立していたのに、幕開きに登場するアリアンロッドが甲高い声と真っ赤なミニスカで歌い喋る。度々登場するこのアリアンロッドが私にはとても浮いて見えて「ウザい」存在だった。マーリンとアリアンロッドで物語の語り手の任もあり、確かにひたすらマーリンが一人で語るよりも会話形式にした方が分かりやすく場も持たせやすいのだろうが(新公主演経験者の小雪にちゃんとし役も与えられるし)、この後に続く子供時代の流れも加わって、どうにも子供ミュージカル風味なのが残念だった。照明や音楽を使って幽玄な場面にしてほしかった。子供時代も、メリアグランスがずるをしたという事にはなっているが、アーサーも試合もしていないのにマーリンの手招きでいつの間にか剣を引っこ抜いているのが、そっちもずるじゃないの?と思ってしまう。フランス本家版も、アーサーは試合で勝ってエクスカリバーに挑戦したわけではないようなので、このくだりは仕方ないのかもしれないが。

それと子供アーサーと大人アーサーがせりで入れ替わる演出はとても既視感がある。そして途中何度もトート?フェルマリ?と、ヅカファンのツッコミが聞こえてきそうな演出が・・・。

それと何度もあったビンタ。概ねいい舞台だっただけに本当に残念だ。

 

では、ここからここの役の感想を。

 

アーサー(珠城りょう)

木梨・ジュリアーノ、そして今回のアーサーと、主演作の役がどれも苦悩する役。

今回も幸せそうだったのは、グィネヴィアと出会って恋に落ちるところぐらい。

CSなどのインタビューを見ても、若くしてトップになることに迷いや不安も多かったらしいので、アーサーの苦悩する姿がどうしても彼女自身の姿にかぶって見えてしまう。

それだけにラストの所信表明のようなセリフもリアルに伝わってきた。

そういうことが透けて見えてしまうのは芝居の見方として決していいことではないと思うのだが、ラストの「笑え!笑わんか!」の件では痛いくらいにアーサーの心が見えてしまい涙なくしては観られなかった。セリフ・歌と技術的な課題はあるひとだが、心のこもったいいお芝居をする役者だと思うし、彼女の真面目な持ち味が生かされた役で、この役でトップお披露目となったのは良かったと思う。

 

グィネヴィア(愛希れいか)

もうベテランのトップ娘役なので、技術的には何の不安もない。余興の人形振りが見事だった。ただこのグィネヴィアという役、どうにも同性の共感は得られない女性だと思う。「尻軽女」と非難されるセリフが有るが、ひどい言われようと同情する気持ちにはなれず、「仕方ないよね」と思ってしまう。「不義は極刑」の時代にあまりにも安易に不倫に突っ走るので、天真爛漫通り越してバカなのかと・・・。お芝居なので、登場人物全てが感情移入できる善人であることもないので、観ていてイラッとさせられるお姫様を、そういう人物として的確に演じていたのではないかと思う。発狂の演技もさすがに上手かった。(思いっきりネタバレするけど、ラスト二人国外追放になってボロボロの体で城を出ていくけど、お父さんが後から付いて行くよね。

お父さん隣の国の領主だから、全然悲惨な事にはならないのでは?と思ってしまった。)

 

モーガン(美弥るりか)

華奢な体つきや容貌が主人公の姉で魔女という設定にはまっていたし、経験豊富な上級生としてその存在感も素晴らしかった。「悪のちから」の中のワンフレーズだけ高音域が声量の弱さもあり気になったが、他は歌唱も上手くこなしていた。

役の背景にある哀しい過去を背負い、復讐という目的のために強く生きる女を的確に表現した。男役の強さはありながら、カマっぽさの無い、色気のあるいい女だった。

 

ランスロット(朝美絢)

劇場にいた誰もがまず思っただろう事、「イケメン!」

正直「強そう」とか「剣の腕が立つ」人物、には見えなかったが、王妃の不倫相手としては

もう適役だったと思う。歌唱に関しても、今まで音程やお高音域に不安定な所が見られたが、今回はかなり安定していた。気になっていたブレス音も今回はほとんど気にならなかった。

演技も、ゆるされない事と分かりつつ王妃に対する思いに苦悩する若者の気持ちが良く伝わってきた。

 

メリアグランス(輝月ゆうま)

少ない出番なのに強烈な印象を残した。歌唱はファルセットから本来の男役のアルトまで、声量も豊かで聞き惚れた。芝居も、前半のゴール国の王子としての演技と、魂を悪魔に売って風貌の変わる後半とは全く違う。型通りの悪役の演技ではなく、自分を振ったグィネヴィアを見上げたり、絶命の呪いの言葉などその表現力は緻密で秀逸だった。手下二人を従えて舞台中央でのダンスも場を持たせる魅力があったし、モーガンを背中に背負ってのリフトは見ごたえがあった。(このリフトは勿論美弥るりかの上手さでもある)

 

マーリン(千海華蘭)

セリフの多い役なので、滑舌発声の良い彼女でストレスなく見ることが出来た。

アーサーを導く者としての落ち着いた演技と物腰も、非常に上手かった。

ただ、元々の顔が童顔なのと声が高いので、髭やコスチュームでもそれほど老け役であることを感じることが出来なくて、若干物足りなさを感じた。

 

ガウェイン(紫門ゆりや)ウリエン(貴千碧)

アーサーの忠実な部下という雰囲気が良く出ていた。二人の性格や考え方の違いもはっきり出ていてよかった。

 

レオデグランス公(綾月せり)

若いメンバーが多く、専科からの特出も無い中、渋いイケメン枠を一手に担っていた。

セリフも声が落ち着いていて、優しくていい父親であり領主であるとともに、騎士としてのかっこ良さもある。管理職として若手にいい見本を見せて行って欲しい。

 

レイア(早乙女わかば)ヘラヴィーサ(海乃美月)

モーガンと3人の並びは本当に美しくて眼福だった。ニコイチだが、キャラクターの違いがはっきりとしていて、無表情で冷たい印象のレイアの方が少し損をしているような感じがした。

ヘラヴィーサはまさに「小悪魔」。矢印のような悪魔のしっぽが見えるようだった。

 

ケイ(佳城葵)

芝居巧者の抜擢が嬉しかった。コミカルな動きやセリフの間がやはり上手いし、独特だが通るいい声が心地よい。だいぶ練習したであろうパントマイムで1場面一人で持たせられるのは大したものだと思った。ただ、旅行鞄のパントマイムは、時代的なものと場面を考えるといささか唐突で、マイムを見せたいだけの場面と感じた。もちろんこれは彼女のせいではない。

 

その他では、カリメルドからの伝令颯希有翔の歌が印象に残った。