米国議会(下院)は、今日12月14日まで、15日よりクリスマス休会に入り、2024年1月9日から再開。
13日には、バイデン大統領の弾劾裁判開始決議が221:212で可決され、上院で弾劾裁判の手続きが始まることになった。
NHK 12月14日 
バイデン大統領 次男めぐる疑惑 弾劾への調査 正式承認可決

 

下院投票結果

AFP 12月14日
バイデン大統領の疑惑関与を否定 次男ハンター氏

下院監視委員会と司法委員会の共同声明 12月13日
証言を求めた公聴会への出席を拒否したハンターに対し議会侮辱罪の手続きを開始!

 

司法省はハンターを微罪て起訴することにしたが!
NHK 12月9日
カリフォルニア州連邦大陪審、ハンター・バイデンの虚偽の税申告で起訴

ゼレンスキー大統領は、アルゼンチン大統領就任式に出席した後、12日ワシントンを訪問しバイデン大統領、ジョンソン下院議長などと会い支援を求めたが、14日に閉会する議会で緊急予算を成立させることが困難となっている。
NHK 12月13日

バイデン大統領 ウクライナ支援継続も予算承認のめど立たず

 

(12月15日追記)
米上院は、クリスマス休会を延期し、来週(18日の週)再招集し、ウクライナとイスラエル支援策を採決すると発表

The Kyiv Independent
 

 米国政治は混迷を深めている。

10月3日マッカーシー下院議長を解任した後、共和党内で議長選出の協議を行っていたが、スカリス院内総務(辞退)、ジョーダン司法委員長(投票で過半数に達せず)と政治的空白を続けてきたが、10月25日、マイク・ジョンソン議員が共和党全員(217票)の支持を取り付け議長に選出された。

 

 10月3日のマッカーシー下院議長解任の原因は、2024年度予算(2023年10月~2024年9月)の審議がまとまらず、民主党に妥協した11月17日までのつなぎ予算を可決させたことに対する共和党右派(フリーダム・コーカス)が出した解任動議を民主党も加わり可決させたことである。
 スカリス院内総務は、フリーダム・コーカスの支持を得る見通しがないことで辞退、ジョーダン司法委員長はフリーダム・コーカスの創設者の一人であるが共和党内の反フリーダム・コーカス派の支持を得られず下院投票において過半数に達せず、マイク・ジョンソン議員が議長に選出された。ジョンソン下院議長は、トランプ大統領支持派である。

 

BBC 10月26日
米下院、議長にジョンソン氏選出 3週間の空席と混乱をようやく解消

 

 喫緊の政治的課題は、ウクライナ支援、イスラエル支援、11月18日に失効するつなぎ予算の継続(つなぎ予算または本予算)であり、とりあえずイスラエル支援を優先し、つなぎ予算の合意に向けて協議している。
ロイター 11月9日
米下院議長、政府閉鎖回避へ暫定措置を近く決定

ブルームバーグ 11月13日
米政府閉鎖リスク残る、下院議長が妥協案提示も可決のハードル高い

 この1ヶ月、米議会は議長不在によりほとんどの審議が止まっていた。この間、バイデン親子の収賄問題、COVID19の起源問題などについては進展が見られなかった。

 

下院監視委員会は、11月8日ハンター・バイデンと弟とウォーカー氏(関係者)に召喚状を送付。

さらに11月9日追加でハンターのビジネス関係者4名に召喚状を送付した。

 

毎日新聞 11月9日
バイデン氏の次男や弟に米下院委が召喚状 大統領弾劾の審査
委員会出頭日
11月29日 ウォーカー氏
12月6日 弟ジェームズ
12月13日 ハンター

 一方、トランプ大統領に対し民主党支配の司法は攻撃を強めている。

「2020年選挙結果への異議」
10月6日 BBC
2020年選挙結果への異議 ワシントン連邦地裁
トランプ前大統領、選挙結果覆す試みは「職責の一部」 裁判所に免責求める

10月20日 BBC
トランプ前米大統領の元側近、ジョージア州での選挙介入で有罪認める

「ニューヨーク連邦地裁:トランプ一族の不正利益」
10月26日 ロイター
米裁判所がトランプ氏に再び罰金、中傷禁じる命令に違反

11月2日 BBC 
ニューヨーク連邦地裁:トランプ大統領の長男証言

11月7日 Bloomberg
トランプ氏が判事らを怒鳴りつける異例の展開-NY州民事訴訟で証言

 

11月10日 CNN 
機密文書の扱い巡るトランプ氏の裁判、リゾートの従業員が証言に立つ可能性 情報筋

2024年選挙に向けて
10月31日 NHKのまとめ(共和党候補動向と裁判)

未確認情報だが、トランプ氏が副大統領候補に前FOXのニュースキャスター「タッカーカールソン氏」を検討と発言した。


 

 夏休み明けの9月17日に再開した米下院では、連邦債務上限や2024年度連邦予算(2023年10月~2024年9月)の重要法案の成立を目指していた。マッカーシー下院議長(共和党)が民主党と協議し、9月30日に、11月17日までのつなぎ予算を可決させた。ウクライナ支援、国境管理、支出削減などの問題で、共和党内保守強硬派「フリーダム・コーカス」(下記NHK記事と宮沢氏解説)の反対を押し切って成立させた。

 フリーダム・コーカスに属するマット・ゲーツ下院議員が、民主党に協力を求めたマッカーシー下院議長の解任動議を提出、10月3日の採決により、8人の共和党員と民主党全員の賛成により216:210で動議を可決した。
 後任の下院議長選は10月11日、候補としては、スカリス院内総務、エマー院内幹事などの名前が挙がっているが、スカリス院内総務は血液ガンで治療中。

 マッカーシー下院議長は、バイデン大統領を弾劾裁判に持ち込むため、司法委員会、監視委員会、歳入委員会における証拠集めを指示していた。ゲーツ下院議員はより強硬であった。(下記日経記事)一方民主党はバイデン弾劾を避ける努力を推し進めている。油と水の利害関係の組み合わせが、マッカーシー下院議長解任に同意した。民主党としては、議会運営が遅れること共和党の内紛を利用することが期待できると考えたのだろうと思う。しかし、フリーダム・コーカスの主張を受け入れれば、よりバイデン政権攻撃の勢いが増すのだが。

Bloomberg 10月4日
マッカーシー米下院議長解任、史上初-共和党保守強硬派の造反で

 

NHK 10月2日
「つなぎ予算」成立でアメリカ政府機関の閉鎖回避も混乱続く

フリーダム・コーカス(東京財団の宮沢氏の解説)

 

 カンザス州ウィチタには、エネルギー・コングロマリットのコーク・インダストリーズ(Koch Industries)がある。同社を経営するチャールズ・コーク(Charles Koch)とデイビッド・コーク(David Koch 2019年8月没)の資産はそれぞれ220億ドルに達し、二人は共に『フォーブス(Forbes)』誌の世界長者番付(2011年版)の18位に入っている。(2023年それぞれ590億ドル、合計するとビル・ゲイツより多い)
 コーク兄弟は、共和党の保守派を支援し勢力の拡大を実現してきた。2010年の中間選挙でティーパーティー派が多くの議席を獲得し、その後下院ではフリーダム・コーカスという勢力になる。2016年の大統領選挙を控え、2015年に、コーク兄弟がウイスコンシンのスコット・ウォーカー知事、マルコ・ルビオ上院議員、ランド・ポール上院議員、テッド・クルーズ上院議員等をイベントに招待し、9億ドルの資金提供を行うと表明した。2016年にはコーク兄弟の期待が外れトランプ氏が共和党の大統領候補となった。

東京財団政策研究所 宮沢智之氏
非介入派を支えるコーク財団―クインジー研究所の誕生―(2019年)
コーク兄弟(Koch Brothers)についての考察(2011年)
フォーブス世界長者番付・億万長者ランキング(2023年版)

日経 9月13日
米下院議長、大統領弾劾調査を強行 民主党は猛反発

 

(次回、バイデン弾劾調査、トランプ訴訟のその後)