なんと急遽アレン教授に随行してフランスへ出張することになり、
ようやく暇になるかと思いきや、加速度的に忙しくなってまいりました。

いま同級生のGeorgesと行っている研究は
株主重視の英米型金融資本主義と、
従業員や社会への責任を重視する
日独型ステークホルダー資本主義のもとでの
企業行動の差異に焦点をあてています。

この金融危機で、自動車や家電の大手多国籍企業は
一様に需要減に直面し、生産・雇用調整を余儀なくされているのですが、
企業行動を細かく追ってみると、各々ずいぶん違った選択をしています。

国内での正社員の解雇を避けるために
配転、ワークシェアリング、賃金・賞与の削減、新規・中途採用の中止、
派遣社員の削減、早期退職の募集などあらゆる策を講じることが
法令や判例で要請されている国は
実は日本やドイツなど限られた国のみで(Ultima Ratio Principle)、
企業によっては増配と大量解雇がセットだったり、
派遣社員の削減については当然なので発表すらしないという企業もあります。

その要因を分析してみると、
たとえばフランスのように(非公式ではありますが)政府の支援と引き換えに
国内の雇用維持を約束させる国があったり、
逆にアメリカのようにAuto Bailout法案を可決する前提として
大量解雇によるスリム化を政府が要請する国もあります。

また、ドイツでは取締役会メンバーの半数が従業員代表のため
解雇や工場閉鎖を容易に決定できない仕組みになっており、
日本でも取締役の大半が現/元社員なので
役員が減俸などで痛みわけをすることが一般的です。

国内で正社員を解雇できない企業は
海外拠点での雇用調整に乗り出すことが多いのですが、
その対象国は途上国に加えて英米が突出しています。

こういった研究結果をまとめた発表が、以下です。

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Corporate governance and the current crisis


アレン教授には危機におけるコーポレート・ガバナンスの重要性についての見解をお話しいただきます。アングロサクソン型の株主優遇は資源の効率的再配分を促すため好景気のときはうまく機能しますが、現在のような危機においては、現に米国、英国その他世界中で見られるような不安定を招きます。企業は大量解雇を行い、失業率が急上昇し、それが社会に大きく跳ね返ってきています。1990年代の日本ではこのような状況は見られませんでした。ステークホルダーによるガバナンスはこういった危機において非常に大きな利点を持っていると言えます。

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欧州コーポレート・ガバナンス協会での議論は
チャタムハウス・ルールに則って行われ、外部には匿名扱いとなるため、
アレン教授がその場で何を話してくださるのか楽しみにしています。


・・・というわけで・・・
今週末に書くつもりだった報告は、パリ出張後になりそうです。すみません。
しかも、そんなに大した報告じゃありません。さらにすみません。
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ご無沙汰しております。

ちょうど今週末はワシントンDCの桜が満開で、
日帰りでお花見ツアーに行ってまいりましたので
その様子をお届けします。

National Cherry Blossom Festivalも今ではすそ野が広がり
日米だけでなくアジアとアメリカの友好を記念する行事になっているようです。

国を象徴するこんな綺麗な木を3000本贈って
相手国の首都に植えさせるなんて、なんてスマートな外交なんだ!と
現地で会ったアメリカ人が驚嘆しておりました。

お花見やディナーの相手をしてくださった皆様、ありがとうございました。

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じつは今ファイナンスのF. Allen教授と個別研究をしているのですが、
教授が来週パリに出張して研究結果の一部を発表することになったので
いそいで成果の取りまとめ作業をしておりまして、
ひとつご報告したいことがあるのにまだできていません。

おそらく、今週後半には・・・!



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春休みは仲良し12人で南の島に行ってきました。

白砂のビーチに面したプール付きの大きな家を借りて
毎日ハウスキーパーさんにどんちゃん騒ぎの後始末をしてもらって
カート3台分の買い出しを連日しても追いつかないほど食べて飲んだわりに
とっても割安な旅行でした。いぇい。

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昼は、ダイビングや乗馬、海釣り、ジョギングなど
各々リゾートアクティビティに精を出します。
目の前の海に潜ってサンマみたいな魚を手づかみしてきた子もいました。

みんながプールサイドで読んでいるのは
How to get richとかGood to Greatとか・・・やっぱりMBAっぽい本ばかり。

レポートを仕上げようとした子は、案の定、全然進んでいませんでした。


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夜は、wiiテニス大会を開催したら
みんな深夜にひとりで特訓しているのでやたら上手で
素人のわたしひとりが本気で腕を大振りしてまわりをなぐりまくりました。

トランプの大貧民ゲーム(asshole)では
キングが勝手に統治ルールを設定していいことにしたら
「わたし(I,my,me)と言ってはならない」と絶妙なルールを決めた子がいて、
とっさに「Oh My God.」とか「My turn!」と口走って
罰ゲームで飲まされる子が続出しました。

ブラックジャックも、現金の代わりに好きな酒を賭け
ディーラーが負けたら全部混ぜて飲むことにしたら、
過酷すぎて脱落者が続出しました。

街にも何度か繰り出しましたが、
結局覚えているのはそんなシーンばかりです。

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入学当初からずっとお世話になった仲間も
あと2ヶ月で卒業し、皆バラバラになります。

みんな東京に遊びに行くねと言うけれど、
一生に何度そんな機会があるだろうか。

そう思うといとおしい、残りの日々です。
「大統領といえども一人じゃ大したことはできません。」

教授の紹介で講義しに来てくれたロビイストが
開口一番、得意げにそう言い放ちました。

彼が職業とするところのロビイングというのは日本でいう陳情にあたりますが、
その組織力、資金力、人脈、プロ意識、露出度、どれをとっても
アメリカにおいてはひとつのれっきとした産業。
ロビイストは登録制になっていて、ワシントンDCのKストリートに集積し
間接ロビイングは健全な民主主義の要素と認めた判決まで出ているそうです。

こういうシステムへの賛否は別として、
経営者予備軍はいずれお世話になる世界の力学を理解しておくべき
ということで、会場には口コミで結構な人数が集まっていました。


ビジネス側がロビイングをするときのコツとして彼が挙げたのは

①個人的な党派に関わらず、共和党・民主党どちらかに肩入れしないで
 両方に張ること。

②譲れない項目を上から順に3つまでリストにして押し込む。
 それ以上いろいろ言っても無駄。

③仲間を見つけて事前調整して声を大きくすることは常に有効。

④政権移行期に現職大統領にロビイングする人は誰もいない。
 次期大統領に全勢力を傾けるのが正解。

⑤ロビイストを選ぶときはDCで実際に会って、顧客リスト、分析力、
 ロビー方法(コンタクトリストの厚さ、アクセス先)をチェックして決める。

などでした。
書いてみると当たり前のことばかりですが・・・。


他にも彼が皮肉っぽく分析してみせたことのなかに
「長く国会議員をやっている人は
投票履歴や過去のスピーチの全てを洗われたら
だいたい弁明しきれないから大統領候補になりにくく、
逆にケネディやオバマのようなトラックレコードのない若手か
(共和党は特に)南部の州知事から選ぶことが多い」
というのがあり、アメリカらしいなと思いました。

4月2日の第2回G20金融サミットはイギリスが主催します。


既に「ロンドン・サミット 」と名づけられた公式ホームページができ

英ブラウン首相は今ちょうど根回しのためにワシントンを訪問しており

3月はお膳立てのための準備会合が目白押しで

4月25-26日の世銀IMF総会まで既にスケジュールに組み込まれており、

さすがイギリスの「グローバル世論」づくりのうまさが際だっています。


日本が気のいいお財布役を超える実力を発揮しようと思うなら

ぜひとも身につけたい政治力のひとつです。



それから、G20のメンバーについても

何となくGDP(経済力)でトップ20を選んでいるように思ってしまいますが、

実際はそんなにすぱっとキレイに決まるものでもありません。

民主主義・多数決の世の中では、メンバー国の決め方も戦略要素なのです。



先進国G20の決め方にはこれまで大きくわけて2通りありました。

「金融G20」は、原則として、経済規模で上位19カ国+EU。
G20財相・中央銀行総裁会議からそのままひっぱってきたメンバーです。


「環境G20」は、二酸化炭素の排出量で上位20カ国。

ポスト京都議定書を議論するために2005年から始まった

グレンイーグルズ対話*という閣僚会議のメンバーです。


*気候変動、クリーンエネルギー及び持続可能な開発に関する閣僚級対話


金融G20を地域ごとにまとめてみるとこうなります。


 アングロサクソン: アメリカ、カナダ、オーストラリア(、イギリス)
 ヨーロッパ:     フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、EU
 アジア:        日本、中国、インド、韓国、インドネシア
 中南米:       ブラジル、メキシコ、アルゼンチン
 その他:        ロシア、サウジ、トルコ、南アフリカ


これを環境G20にすると、

金融G20からサウジ・トルコ・アルゼンチン(・EU)が抜けて

スペイン・ポーランド・イラン・ナイジェリアが入ります。



日本はどう仕切っても両方メンバーなのですが、

いろいろ変則的なことが起こっていて、例えば・・・


①イランは上位国だが、金融G20には呼ばれず、環境G20は辞退して代わりにEU議長国が呼ばれたりしている。


②ヨーロッパ諸国(英、仏、独、伊)は金融G20にEUとしても議席をもっていて影響力が大きい。一方で、スペイン、オランダ、スウェーデンなど、本当は単独で金融G20に入れる経済規模の国もあるが、入れていない。特にG8のカナダ・ロシアよりもGDPの大きいスペインは、前回ワシントンでの第1回G20金融サミットの際に首相が「我が国も呼んで」とアピールしたが叶わず怒っていたところ、今回ロンドン・サミットではスペインもオランダもめでたく招待された模様。EU議長国ということでチェコも出席するので、ヨーロッパは7議席で単独最大勢力となった。


③京都議定書で数値約束をして苦しんでいるニュージーランドは環境G20に入っていない。


④地域のバランスをどう考えるかによって扱いの変わりやすい境界線上の国は、サウジ、ウクライナ、南アフリカ、ナイジェリア、エジプト、トルコ、ポーランドなど。


⑤アジアでメンバー国を増やすとすると次はタイ。日本と中国があとおししなければ絶対に呼ばれないけれど。



こうやって地図を眺めていると、

アジアの域内で争っている場合ではないと、つくづく思うのです。