まず、内閣府による「外交に関する世論調査」をご確認ください。

 平成19年10月調査(2008年9月現在で最新のもの)
http://www8.cao.go.jp/survey/h19/h19-gaiko/index.html

 その中から、韓国に対する親近感。
http://www8.cao.go.jp/survey/h19/h19-gaiko/images/z12.gif

005

 この表を見る限り、日本人の対韓感情は愛憎半ばといったところでしょうか。

 こういった数字は別にして、日本のネット上では「麻生太郎は日韓トンネル推進派だ」という主張が、麻生太郎に対するネガティブキャンペーンの一環と受け取られることがあります。その是非、その理由はさておき、ここでは「麻生太郎は日韓トンネル推進派だ」という主張に明確な根拠があるのか、この主張には妥当性があるのか、ということに関して検証してみたいと思います。

 まず、「オープンコンテントの百科事典」「フリー百科事典」と銘打たれている『ウィキペディア』から確認してみましょう。ウィキペディアの検索窓に『日韓トンネル研究会』と入力しボタンを押すと、以下のようなページが表示されます。

006

 あらかじめ確認しておいていただきたいのは、この『ウィキペディア』なるネット上の百科事典は原則的に「誰でも」内容を編集できるものだということです。それ故、毎日毎日内容が書き換えられるということもありえます。そういったこともあり、ここではある特定の時点でのウィキペディアの記述内容を基にして検証をしたいと思います。

 2008年9月11日06時12分時点のウィキペディアにおける『日韓トンネル研究会』に関する記述は以下の通りです。
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E6%97%A5%E9%9F%93%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A&direction=next&oldid=21676672

 この中で「麻生太郎」の文字が出てくるのは二ヶ所です。

自民党の「夢実現21世紀会議(議長:麻生太郎)」でも検討されており、~

日韓トンネル研究会顧問議員
 ・麻生太郎:衆議院議員・自民党幹事長


 このうち、まず最初に麻生太郎の文字が出てくる項目、同じウィキペディア内の『夢実現21世紀会議』から内容を抜粋して引用してみましょう。
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%A4%A2%E5%AE%9F%E7%8F%BE21%E4%B8%96%E7%B4%80%E4%BC%9A%E8%AD%B0&oldid=21585762
2008年9月3日04時13分時点

夢実現21世紀会議は(中略)4つの委員会からなる。

 議長は麻生太郎衆議院議員。

 ・教育環境の夢実現検討委員会
   教育をテーマに、国民の夢を実現するための政策提言をまとめている。

 ・自然にふれあう夢実現検討委員会
   自然をテーマに自民党が「みんなの夢」を募集するなど、景色や農業など自然に関する夢を実現するための政策提言をまとめている。

 ・21世紀限りなくチャレンジする党、自民党員をつくる委員会

 ・国づくりの夢実現検討委員会
   統一協会系グループ事業の一環である日韓トンネル研究会の高橋彦治・濱建介にヒアリング調査を行うなどをして、日韓トンネル計画を推進している。

 「21世紀限りなくチャレンジする党、自民党員をつくる委員会」に関してだけ説明が省かれているのも不可解なのですが、もっと不可解なことがあります。

・教育環境の夢実現検討委員会
 ~ための政策提言 をまとめている

・自然にふれあう夢実現検討委員会
 ~ための政策提言をまとめている

・国づくりの夢実現検討委員会
 ~日韓トンネル計画を推進している。
 他の2委員会については「政策提言をまとめている」という表現にとどまっているにもかかわらず、国づくりの夢実現検討委員会についてだけは日韓トンネル計画を「推進している」という表現が使われています。

 自民党のホームページを確認すると、2003年6月19日付けのニュースの中で
http://www.jimin.jp/jimin/daily/03_06/19/150619a.shtml

 この構想(※注:日韓海底トンネル構想のこと)についてわが党は夢実現21世紀会議の「国づくりの夢実現検討委員会」が実現に向けた政策提言を発表している。

とあります。

 また、統一教会の『文鮮明師の紹介』ページには、自民党の機関紙『自由民主』2003年7月1日号の記事が掲載されています。
http://www.chojin.com/tunnel/jiyu030701.htm

007

 この構想(※注:日韓海底トンネル構想のこと)については、わが党も夢実現二十一世紀会議の国づくりの夢実現検討委員会(委員長・木村太郎衆院議員)が三月に、国民から募集した「夢」を下に、実現に向けた政策提言を発表している

とあります。

 おや、どちらの情報にも「推進している」とは一言も書かれていませんね。「政策提言を発表している」と書かれているのみです。いつから提言(考え・意見を皆の前に示すこと)という言葉には、推進(積極的に行動して物事を進行させる)の意味が含まれるようになったのでしょうか。いやいや不思議なこともあるものです。ウィキペディアの『夢実現21世紀会議』の項目を記入した人物は、何を意図して「推進している」という言葉をわざわざ使ったのか、可能であれば確認してみたいものです。

 そもそも、日韓トンネル研究会の役員からヒアリングを行ったのは、自民党の外交調査会であって、夢実現21世紀会議ではありませんね。ウィキペディアの『夢実現21世紀会議』にはあたかも、夢実現21世紀会議内の国づくりの夢実現検討委員会がヒアリングを行ったかのごとく記載されていますが、これは事実誤認、もしくはデマゴギーの類と言わざるをえません。

 自民党の夢実現21世紀会議に関してはネット上の情報が少ないため、自民党に電話をして問い合わせました。しかし、さんざんたらい回しにされたあげく、得られた情報は「それは党(政務調査会)の部会じゃないでしょ」とか「いやーそういう名前は党の中では聞いたことがないですね」とか、その程度でした(2008年9月19日現在)。こちらとしては、夢実現21世紀会議は現在でも機能しているのか、その提言内容は定期的にチェックされ実際の政策立案に活かされているのか等々、確認をしたかったのですが、残念ながら有用な情報はまったく手に入りませんでした。

 小渕優子ホームページ Report 2003 クロスロード 2003年8月号巻頭Interview より
http://www.obuchiyuko.com/report_mc03.php

[小渕]
自民党はこれからの国民の“夢”をできるだけ政策に反映し、実現するために政務調査会に「夢実現21世紀会議」を設置しています。麻生政調会長が議長を務められていますが、私はそこの「自然にふれあう夢実現検討委員会」の委員長をやらせていただいています。

[麻生]
秋のキャンペーンで全国から募集した「みんなの夢」、ずいぶんたくさんの応募がありましたね。大賞16編が決まったけれど、ほかにも夢のある提言がいろいろありました。自民党は国民と一緒に政治を進めていきたいと思っているので、小渕先生にもよろしくお顧いします。群馬は農業に従事している人が多いが、あなたは農業問題にとくに力を入れているそうですが頑張って下さい。


 夢実現21世紀会議が自民党の政務調査会内に設置されたのは間違いないようですが、もう5,6年前の話ですので、自民党内部でもすっかり忘れ去られた存在なのでしょうか。

 自民党の現在の機構図をご確認ください。
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/chart/index.html

008

 夢実現21世紀会議という組織名を、機構図の中に発見することはできません。

 自民党ホームページ 2003年1月16日付けニュース より
http://www.jimin.jp/jimin/daily/03_01/16/150116c.shtml

■ 小泉総裁に「感激した」 みんなの夢大賞・表彰式

 昨年実施した「みんなの夢大賞」の表彰式が16日、党大会に先立って行われ、小泉純一郎総裁から各受賞者へ賞状が手渡された。


 時系列を整理しましょう。

2002年秋 「みんなの夢」が募集される。
2003年1月 「みんなの夢大賞」の表彰式が行われる。
2003年3月 寄せられた「夢」に基づき、夢実現21世紀会議内の国づくりの夢実現検討委員会が政策提言を行った。

 現在2008年ですが、2003年当時の「夢」はどこに行ってしまったのでしょうか。提言されただけで、推進されることなく、もう忘却の彼方に打ち捨てられてしまったのでしょうか。ウィキペディアの中に、その答えはあるのでしょうか。

 以上の検証内容をかんがみれば、麻生太郎が夢実現21世紀会議の議長を務めていたという事実のみを根拠にして、「麻生太郎は日韓トンネル推進派だ」と主張するのは牽強付会というか、我田引水というか、荒唐無稽というか、そういった類の話である、と結論付けても差し支えないと思われます。

 次に、「日韓トンネル研究会顧問議員」として名前が挙げられている件について検証してみましょう。

 この点についての検証は、『日韓トンネルプロジェクト ネオ・シルクロードの起点から』を引用することから始めたいと思います。

009

 この本は1993年に世界日報社から発売されたものです。編著は国際ハイウェイ建設事業団、監修は佐々保雄となっています。その222,223ページに資料篇として、「日韓トンネル研究会役員」「日韓トンネル研究会九州支部役員」の名簿が載せられています。

 これは1992年現在の名簿のようですが、この中に名前の出ている現・前・元国会議員をピックアップしてみます。

日韓トンネル研究会役員
●顧問
沓掛 哲男  参議院議員(元建設省技監)
野沢 太三  参議院議員(元日本国有鉄道施設局長)

010

日韓トンネル研究会九州支部役員
●顧問
山崎 拓   衆議院議員
太田 誠一  衆議院議員
古賀 誠   衆議院議員
麻生 太郎  衆議院議員
自見 庄三郎 衆議院議員
三原 朝彦  衆議院議員
古賀 一成  衆議院議員
愛野 興一郎 衆議院議員
坂井 隆憲  衆議院議員
倉成 正   衆議院議員
久間 章生  衆議院議員
金子 原二郎 衆議院議員
虎島 和夫  衆議院議員
光武 顕   衆議院議員
高木 義明  衆議院議員
初村 滝一郎 参議院議員
合馬 敬   参議院議員
三原 朝雄  元衆議院議員
松田 九郎  前衆議院議員
小渕 正義  前衆議院議員
北橋 健次  前衆議院議員 ※注:健治の誤りか
遠藤 政夫  前参議院議員
宮島 滉   前参議院議員


008

 全部で25名です。

 一方、ウィキペディアの『日韓トンネル研究会』によれば、「日韓トンネル研究会顧問議員」として15名の名前が挙げられています。

麻生太郎
太田誠一
古賀誠
久間章生
自見庄三郎
三原朝彦
古賀一成
坂井隆憲
倉成正
金子原二郎
虎島和夫
光武顕
高木義明
初村滝一郎
合馬敬


 さて、ここで疑問が生まれます。ウィキペディアの日韓トンネル研究会顧問議員15名は、一体どんなリストを元に記載されているものなのでしょうか。『日韓トンネルプロジェクト ネオ・シルクロードの起点から』の名簿を元にしていれば、25名の名前が載っていなければおかしいわけですし、物故者はリストから外してあるので15名と少ないのかと思いきや、すでに鬼籍に入った人物もウィキペディアではリストアップされています。一体どんな基準で、何を根拠に、ウィキペディアのリストは作成されているのでしょうか。

 ウィキペディアの日韓トンネル研究会顧問議員の記載には以下のようなくだりもあります。

主に自民党の九州選出の元・現国会議員が研究会の顧問を務めている

 そもそも、故人となった人物があの世から顧問を務めることはできないと思うのですが、おかしなリストと共に、おかしな日本語が平然と使われています。

 ウィキペディアの記載内容には疑問点が多々あります。繰り返しになる部分もありますが、箇条書きにしてみましょう。

・1992年時のリスト25名から、どういった基準で15名に絞られているのかまったく不明。
・ウィキペディアに名前の挙げられている15名は、全員が九州支部の顧問。それ以外の2名を無視しているのは何故か?
・「日韓トンネル研究会」の顧問議員は、沓掛、野沢の2名であって、他23名(リストアップされている15名)は全員日韓トンネル研究会「九州支部」の顧問である。ウィキペディアにはなぜ日韓トンネル研究会九州支部顧問議員と表記しないのか。

 このように見てみると、どんな情報を元に、どんな根拠に基づいて、「日韓トンネル研究会顧問議員」なるリストを作成しているのか、まったくもって不明です。このウィキペディアの情報の信頼性は、甚だ怪しいものだと言わざるを得ません。そもそも、15名のリストの情報源がウィキペディア上にまったく明示されていません。これをデマゴギー怪文書の類と言わずして、なんと言うのでしょうか。

 ウィキペディアの情報の信頼性をさらに揺るがす資料をご覧いただきましょう。

 以下に示すのは2008年現在での、日韓トンネル研究会の役員名簿です。1992年時のリストは公に出版された刊行物に記載されていたものですが、こちらは一般の流通ルートに乗っているものではありませんので、個人情報に配慮した形で一部を伏せています。

 1992年時の元・前・現国会議員リストと、2008年時の役員リストで重複している人物のみピックアップしましょう。

東京本部
●会長
 野沢 太三(1992年時顧問)
●顧問
 沓掛 哲夫(1992年時顧問)

012

九州支部
●顧問
 北橋 健治 (1992年時顧問) ※現北九州市長
 自見 庄三郎(1992年時顧問)
 高木 義明 (1992年時顧問)
 三原 朝彦 (1992年時顧問)
 金子 原二郎(1992年時顧問) ※現長崎県知事


013

 重複しているのは、25名中わずか7名です。

 さらに、1992年時には顧問ではなかったが、2008年時の役員リストには顧問として記載されている前・元国会議員をリストアップします。

九州支部
●顧問
 宮島 大典
 松谷 蒼一郎


 2名が新しく名を連ねているようです。

 一方、1992年時には顧問として名前が挙がっていたが、2008年時の役員リストからは外れている元・前・現国会議員は以下の通りです。

九州支部
●顧問
山崎 拓   衆議院議員
太田 誠一  衆議院議員
古賀 誠   衆議院議員
麻生 太郎  衆議院議員
古賀 一成  衆議院議員
愛野 興一郎 衆議院議員
坂井 隆憲  衆議院議員
倉成 正   衆議院議員
久間 章生  衆議院議員
虎島 和夫  衆議院議員
光武 顕   衆議院議員
初村 滝一郎 参議院議員
合馬 敬   参議院議員
三原 朝雄  元衆議院議員
松田 九郎  前衆議院議員
小渕 正義  前衆議院議員
遠藤 政夫  前参議院議員
宮島 滉   前参議院議員


 なんと25名中18名が1992年時のリストから外れています。

 最新のリストに基づいていれば、ウィキペディアにて日韓トンネル研究会顧問議員として名前が挙がるのは8名。それに加えて1名は現在日韓トンネル研究会の会長職に就いているので、最大9名。にもかかわらず、現在ウィキペディアに名前が挙げられているのは15名。その15名のうち、現在も顧問である人物は5名しかいない。一体残り10名は何なのか。
 ますますウィキペディア情報の信憑性・信頼性への疑いを深めざるをえません。

 ここまで読んで、ウィキペディアに無責任な情報を平然と記載している人物は、いやしかし、と思っているかもしれません。

「2008年時の役員名簿と称するものは、でっち上げ、もしくは捏造されたものではないか?」


 もしそう思うのなら、ここに提示された2008年時の役員名簿が偽物であると証明すればいい。日韓トンネル研究会に問い合わせ、現行の役員名簿を入手すればいい。もっとも、その前に現在ウィキペディアに記載されている15名のリストの根拠を明示してからにしていただきたいと思いますが。

 まず自らがウィキペディアに記載している情報の根拠を示し、その後、こちらの情報の疑わしさを証明すればよろしい。それをせずに、2008年時のリストの真偽を疑う声を上げたとしても、それはよく言って難癖、言葉を選ばずに言えばチンピラの言い掛かりのようなものです。

 「麻生太郎は日韓トンネル推進派だ」という主張の論拠となっている、「麻生太郎は日韓トンネル研究会の顧問議員である」という情報が信憑性のないものである以上、その情報を根拠にした「麻生太郎は日韓トンネル推進派だ」という主張も、当然信憑性のないものであると断言せざるをえません。

 以上、ウィキペディアの記載2点について検証をしてみました。

 これ以外にも、「麻生太郎は日韓トンネル推進派だ」という主張の根拠として挙げられそうな情報について整理しておきましょう。
 例えばこのような主張です。

麻生太郎は日韓友好議連の副会長である。当然日韓トンネルを推進する立場に違いない!

 事実を確認しますと、まず、麻生太郎は、日韓「友好」議連の副会長ではありません。日韓議連の副会長、それも12人いる副会長のうちの一人ではあることは確かです。しかし、そもそも国会議員の組織する議員連盟に日韓「友好」議連などというものは存在しないようですよ。

 文字通り日韓トンネル計画を推進しようという議員連盟として、「日韓海底トンネル推進議連」というものがあるようです。
 メンバーは以下の通り

 衛藤征士郎ホームページ トピックニュース 2008年2月21日付け より
http://www.seishiro.jp/topics/20080221/topics2.html


15日 日韓海底トンネル推進議員連盟 発起人会を開催しました

発起人会の代表を衛藤征士郎代議士が努め超党派の議員連盟を目指すことから
各党の代表が集い同会が行われました。
 自民党からは、衛藤征士郎代議士 太田誠一代議士 野田毅代議士
 公明党からは、神崎武法代議士 東順二代議士
 民主党からは、鳩山由紀夫代議士、高木義明代議士
 社民党からは、重野安正代議士
 国民新党からは、亀井久興代議士(代理)
各党の代表議員は上記の通りです。


 衛藤征士郎ホームページ 今月の話題 2008年3月26日付け より
http://www.seishiro.jp/wadai/200803/index.html

014

 ここに日韓海底トンネル推進議連のメンバーとして挙げられている14名の氏名を書き出します。

野田 毅   (副会長)
保岡 興治  (常任理事)
保利 耕輔  (所属なし)
衛藤 征士郎 (常任理事)
太田 誠一  (所属なし)
仲村 正治  (一般)
中山 成彬  (所属なし)
谷川 弥一  (一般
神崎 武法  (顧問)
東 順治   (所属なし)
高木 義明  (副幹事長)
鳩山 由紀夫 (顧問)
亀井 郁夫  (一般)
重野 安正  (所属なし)

( )内は、日韓議連における役職ないし所属の状態です。

 先に述べた日韓議連との重複具合を調べてみると、日韓海底トンネル推進議連14名中、日韓議連にも属しているのは9名。残り5名は日韓議連には所属していない。

 もしも日韓議連が日韓トンネル推進派の集団だとしたら、200名以上のメンバーの中から日韓海底トンネル推進議連に9名しか参加しないということはありえないでしょう。となれば、日韓議連と日韓トンネルは切り離して考えることが妥当と思われます。

 すなわち、日韓議連所属議員、即、日韓トンネル推進派ではないということです。論理の必然として、日韓海底トンネル推進議連に属していない麻生太郎を、日韓議連に属しているという理由だけで、日韓トンネル推進派などとレッテルを貼る行為は、現実を直視しない病的妄想行為と言われても仕方ないのではないでしょうか。

 以上、長々と見てまいりましたが、現時点で結論として言えることは、

「麻生太郎は日韓トンネル推進派だ」という主張には確たる根拠も妥当性もなく、こういった主張は
「流言蜚語」「デマゴギー」もしくは「ネガティブキャンペーン」にすぎない。

ということです。

 さらに言うならば、ウィキペディアに記載されている情報の信憑性がどの程度担保されているのか、甚だ疑問に思わざるをえません。少なくとも、麻生太郎に関連するウィキペディア上の情報については、そのまま真実であると受け入れるのは甚だ危険、甚だ無謀なことであると言わざるをえないでしょう

 私個人としてはウィキペディアを利用することも多いので、今回明らかになったようなウソ、偽情報、デマゴギー、ネガティブキャンペーンなどがウィキペディアから一掃される日が一日も早く来ることを願ってやみません。しかし現状では、ウィキペディアの情報は疑わしいものだとあらかじめ身構えていなければ、自らの持つ情報の精度・確度は保てないと覚悟しておく必要があるようです。


 この件に関しては、動画で経緯をまとめてくださった方がいらっしゃいます。ぜひ、そちらをご覧ください。

いまさらだが『麻生・与謝野クーデター説』を振り返ってみる


 日本テレビ報道局政治部長を務めているらしい粕谷 賢之なる人物が、閻魔様に舌を引き抜かれ、未来永劫血の池地獄で過ごすことになったとしても、おそらくそれは彼の自業自得なのでしょう。
 ネット上のみならず、各種マスコミでも「麻生太郎の人権感覚の欠如」といった切り口で取り上げられるネタをまずご紹介します。

 『野中広務 差別と権力』 と題された本から、引用しましょう。

001

 ちなみにこの本は、講談社から2004年に発行された本で、著者は魚住 昭なる人物です。ページ数は350ページを超え、それなりの厚さの本に仕上がっています。表紙の絵は、なかなか似ているといってよいレベル。
 注意しなければならない点は、例えば政治家同士の話し合いの場面など、著者本人がその場にいなかったであろう場面も「著者がその現場にいて、眼前で見ていた聞いていたかのように」描写されていることです。『小説吉田学校』風といえばおわかりいただけますでしょうか。
 それはさておき、具体的に描写を確認してみましょう。

344ページ 8行目から

 永田町ほど差別意識の強い世界はない。彼(※注:野中広務のこと)が政界の出世階段を上がるたびに、それを妬むものたちは陰で野中の出自を問題にした。総裁選の最中にある有力代議士は私に言った。
「野中というのは総理になれるような種類の人間じゃないんだ」
 自民党代議士の証言によると、総裁選に立候補した元経企庁長官の麻生太郎は党大会の前日に開かれた大勇会(河野グループ)の会合で野中の名前を挙げながら、
「あんな部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」
と言い放った。


さらにこう続きます。

 麻生事務所は「地元・福岡の炭鉱にからむ被差別部落問題についての発言が誤解されて伝わったものだ」と弁明しているが、後に詳しく紹介する野中発言によると、大勇会の議員三人が麻生の差別発言を聞いたと証言しているという。

002

 この魚住記述「だけ」を根拠にすれば、「麻生は差別主義者だ!」といった言説にも一定の説得力が出てきます。
 しかし、まるっきり食い違う情報も存在します。

 『週刊文春 2008年3月27日号』 にて、「ポスト福田の「大本命」 麻生太郎が総理になれない理由」と題された記事です。この記事を書いているのは、政治ジャーナリスト 藤本 順一なる人物です。

53ページ3段目10行目から

 事の発端はこの一週間前、河野グループの例会で麻生が行った講演だった。この中に有力幹部を誹謗中傷する内容が含まれてたというのである。しかし、実際の講演内容は石炭六法の旧産炭地行政の歴史と現状に触れただけで、幹部を誹謗中傷した箇所はどこにもなかった。

さらにこう続きます。

 有力幹部はある通信社の宏池会担当記者からこのときの発言メモを入手していた。ところがこのメモは、麻生との後継者争いに敗れて河野グループを離脱したベテラン議員が、麻生憎しででっち上げたものだったことが、後に明らかになっている。


003

 魚住記述の内容と藤本記述の内容を照らし合わせれば、おそらく野中広務=有力幹部、なのでしょう。
 さて、魚住記述では

野中の名前を挙げながら、
「あんな部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」
と言い放った。


とありますが、
藤本記述では

石炭六法の旧産炭地行政の歴史と現状に触れただけで、幹部を誹謗中傷した箇所はどこにもなかった。

とあります。はてさて、どちらが真実なのでしょうか。それとも、どちらも真実ではないのでしょうか。

 この2つの記述を並べて比較したとき、健全な思考力をもっている日本人ならば、片方が真実でもう片方は虚偽、などという結論は導きだせないでしょう。にもかかわらず、魚住記述「だけ」を根拠として「麻生太郎は差別主義者だ!」などという麻生太郎に対する誹謗中傷、罵詈雑言、人権侵害がネット上のみならず、日本の各種マスコミにおいてもまかり通っているのが現状です。情報を多面的に収集・検証することなしに商売を続けていけるのですから、マスコミとはなんと楽な商売なのでしょうか。

 別の面からも検証してみましょう。再び上記魚住本から引用します。

352ページ 3行目から

 立ち上がった野中は、
「総務会長、この発言は、私の最後の発言と肝に銘じて申し上げます」
と断って、山崎拓の女性スキャンダルに触れた後で、政調会長の麻生のほうに顔を向けた。
「総務大臣に予定されておる麻生政調会長。あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』とおっしゃった。そのことを、私は大勇会の三人のメンバーに確認しました。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」
 野中の激しい言葉に総務会の空気は凍りついた。麻生は何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだった。


004

 自民党の総務会の現場に著者本人がいたのかどうか明記されていませんが、前後のくだりを読むとおそらくその場にはいなかったものと考えられます。ですので、一言一句の違いも無くこのような発言がなされたのか、本当に空気が凍りついたのか、目視で確認できるほど麻生太郎の顔が真っ赤になったのか、真実はその場にいた人間にしかわかりません。

 この件に関する麻生太郎の発言はこうです。

第162国会 総務委員会 第3号 2005年2月22日 の国会での総務大臣としての答弁です。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/162/0094/16202220094003c.html

○中村(哲)委員
 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
(中略)
 まず、野中広務前衆議院議員の発言に基づく案件でございます。
(中略)
 そこで、麻生総務大臣に伺います。この大勇会の会合で、野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなとおっしゃったことは事実でしょうか。

○麻生国務大臣
 私、ちょっとその本(※注:『野中広務 差別と権力』のこと)を読んでいないし、何という人が書かれたか知りませんけれども、その方の取材も受けたこともないし、面識もない、それをまず第一に申し上げておきたいと思います。
 それから、野中先生の発言は、私、その場にいましたから、総務大臣に予定されていると言われましたけれども、私は、総務大臣に予定されていたのはその次の日でありまして、前の日に自分が何大臣になるかということを知っていた大臣はゼロです。したがって、下を向いて赤くなりもしませんでしたから。正直申し上げて、今の記述はかなり違っていると思いますが、私は、その発言については事実とは全く違っていると思っております。
 大勇会の中でその種の話があったという三人というのが、どなたを指して三人と言っておられるのかは存じませんが、私どもの席では、昼食会の席だったので、かなりな数がいたという記憶がありますので、いずれにいたしましても、大勇会の席でその種の発言をしたことはありません。


 野中広務は、三人のメンバーに確認したと言い、麻生太郎はその種の発言をしたことはないと言う。さて、どちらの言っていることが真実なのでしょうか。それとも、どちらも真実ではないのでしょうか。

 コピペします。
 この2つの記述を並べて比較したとき、健全な思考力をもっている日本人ならば、片方が真実でもう片方は虚偽、などという結論は導きだせないでしょう。

 以下一部改変。
 にもかかわらず、野中発言とされるもの「だけ」を根拠として「麻生太郎は差別主義者だ!」などという麻生太郎に対する誹謗中傷、罵詈雑言、人権侵害がネット上のみならず、日本の各種マスコミにおいてもまかり通っているのが現状です。

 再びコピペ。
 情報を多面的に収集・検証することなしに商売を続けていけるのですから、マスコミとはなんと楽な商売なのでしょうか。

 魚住記述と野中発言、藤本記述と麻生発言、真っ向から内容が食い違っています。そのうち一方の情報「だけ」を根拠として、「麻生太郎は差別主義者だ!」と喧伝する。この手の行為は「報道」や「事実の再確認」などと呼ぶには値しないもので、品性下劣な「ネガティブキャンペーン」とか「プロパガンダ」と呼称すべきものではないでしょうか。

 紀元前ローマの軍人、カエサルの『ガリア戦記』には以下のようなくだりがあるそうです。
 Homines id quod volunt credunt.
 邦訳 : 人間は、自分が信じたいと望むことを喜んで信じるものである。

 あなたはどちらを信じたいですか?(笑)

 あなたがマスコミ業界の人間でなければ、自らジャーナリストなどと名乗っている人間でなければ、信じたい情報を信じればいい。もしそうでないのであれば、自分が、自分達が信じたい情報「だけ」を喧伝するなど恥知らずにも程がある。

 それとも、恥知らずでなければマスコミ業界で食っていくことはできないんでしょうかね?