お宝映画・番組私的見聞録
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本郷功次郎の出演映画 その3

続けて本郷功次郎だが、今回は60年である。この年はなんと13本もの映画に出演しており、ホームの大映京都の時代劇だけでなく、大映東京の現代劇にもたびたび出演というハードな時期であった。
「二人の武蔵」は、五味康祐原作。長谷川一夫演じる平田武蔵と市川雷蔵演じる岡本武蔵が登場する。平田の方は俗に言う宮本武蔵で、勝新太郎演じる佐々木小次郎と対決する。勝新は小次郎ってイメージではないが、武蔵のイメージでもない気がする。本郷の役は岡本武蔵と親友となる棒術使いの夢想権之助。他に中村玉緒、宇治みさ子、林成年、鶴見丈二、中村鴈治郎など。
「千姫御殿」はタイトル通り、山本富士子演じる徳川秀忠の娘・千姫が主役。千姫がこもる吉田御殿に公儀の隠密である本郷演じる喜八郎が潜入するが、二人は愛し合うようになってしまう。しかし、喜八郎が隠密と知った千姫は落胆し尼となり、喜八郎は切腹となるといったお話。共演は小林勝彦、中村玉緒、山田五十鈴、志村喬、中村鴈治郎など。
「あゝ特別攻撃隊」は特攻隊を描いた戦記物。本郷はトップクレジットつまり主役で野口啓二、三田村元の若手が続く。他に野添ひとみ、宮川和子、北原義郎、高松英郎など。
「大江山酒天童子」は、川口松太郎原作で、大江山の鬼退治を描く物語である。酒吞童子とも表記される妖怪、つまり鬼の首領が酒天童子を演じるのが長谷川一夫。対する源頼光に市川雷蔵で、その四天王が勝新太郎(渡辺綱)、本郷功次郎(坂田金時)、島田竜三(碓井貞光)、林成年(卜部季武)という面々。中村玉緒は勝新演じる綱の妹役で雷蔵演じる頼光の恋人という設定。ちなみに、勝と玉緒の結婚は翌61年である。鬼側は左幸子(茨木童子)、千葉敏郎(鬼童丸)など。他に山本富士子、金田一敦子、浜田ゆう子、小沢栄太郎、根上淳、田崎潤など。
本作の妖怪は怪獣の造形で知られる大橋史典が担当しているという。伝説では、本郷が演じる坂田金時の幼名は金太郎。あの童話でお馴染みの鉞担いだ金太郎のことである。漫画「銀魂」の主人公・坂田銀時の名はこれをもじったもの。
「勝利と敗北」は「大江山酒天童子」の併映作品だが、こちらは現代劇でボクシング映画で当時の実際のチャンピオンたちが顔を出している。両作に出演しているのは本郷くらいである。主演は川口浩で、三田村元、本郷と続いている。三人ともボクサーの役だ。他に若尾文子、野添ひとみ、新珠三千代(東宝)、船越英二、高松英郎、安部徹、山村聰など。江波杏子がノンクレジットで出演している(ホステスの役)。
「続次郎長富士」はタイトル通り59年公開の「次郎長富士」の続編である。長谷川一夫の次郎長と勝新太郎の森の石松、鬼吉の林成年は前作と同じだが、他は役柄または役者が変更となっている。例えば、市川雷蔵は吉良の仁吉から山上藤一郎に、本郷も小政から小松村七五郎になっている。次郎長一家は中村豊、鶴見丈二、北原義郎、小林勝彦などが演じる。他に中村玉緒、根上淳、近藤美恵子、毛利郁子、阿井美千子に加え、佐々十郎、楠トシエ、堺駿二なども登場する。
この後、「素敵な野郎」「俺の涙は甘くない」「誰よりも君を愛す」という現代劇が続いており、いずれも本郷が主演である。「誰よりも君を愛す」には、飯田久彦が「スリービート」、内田裕也が「スリーガイズ」のメンバーとして出演している。

本郷功次郎の出演映画 その2

引き続き本郷功次郎である。59年はあと5本ある。
「鳴門の花嫁」は勝新太郎主演の時代劇。島田竜三、中村玉緒、林成年、青山京子、毛利郁子など。本郷は家老の息子で密使として阿波に向かう役。島田は58~67年ころまで活躍した役者で主演作も何本かあるのだが、詳しいプロフィールは不明である。林は長谷川一夫の息子。
デビューから時代劇が続いていたが、ここで初の現代劇「海軍兵学校物語 あゝ江田島」に出演。しかも主役扱いである。「扱い」としたのは、クレジット上は本郷がトップなのだが、事実上の主役は同期入社である野口啓二と小林勝彦なのだ。野口と小林は12期ニューフェイスに先んじて行われた「俺たちは狂ってない」の出演者募集で採用されているコンビ。ちなみに、ニューフェイス入社の森矢雄二(平林一雄)も出演者の一人であった。野口は主演デビューしながらも、三年ほどで姿を消している。実際、自分も最近までその存在を知らなかったりする。また、本郷と同期の12期ニューフェイスの中に袴光夫という名前が見られる。これは後に放送作家として活躍するはかま満男(本名・袴充夫)のことであろう。当時の年齢も21歳で一致しているし、かぶるような名前でもない。はかまのプロフィールには「大映ニューフェイス」というのは無いようなので、すぐに辞めたか入社しなかったか、ということだろう。
他の出演者だが、石井竜一、仁木多鶴子、根上淳、北原義郎、菅原謙次などでニューフェイスの1年先輩である三田村元に(新人)がついている(出演者はほぼ新人だが)。小林の弟役で「赤胴鈴之助」で主演となる桃山太郎が、またやはり1年先輩の藤巻潤が本名の藤巻公義で出演している。藤巻の本名時代はほぼチョイ役ばかりで、入社は後の本郷が先にスターとして扱われていたのである。
「貴族の階段」はタイトルからは想像しにくいが、二二六事件を背景としており、森雅之、叶順子、金田一敦子、菅原謙次、友田輝、滝沢修、志村喬などが出演している。本郷は近衛の見習い士官で、金田一の兄、その親友の叶に気があるという役。事件には妹に睡眠薬を飲まされ参加できないのである。金田一敦子、叶順子は共に10期ニューフェイス。金田一敦子は言語学者金田一京助の血筋であるが、60年には引退してしまう。
「風来物語任侠編」は日露戦争当時の東京を背景としたメロドラマで「姿三四郎」で知られる富田常雄の原作。主演は長谷川一夫で、小林勝彦、仁木多鶴子、中村玉緒、根上淳、田崎潤、山田五十鈴などが共演。本郷は仁木と恋仲となる苦学生、小林は国会議員の息子だが家を出て社会主義運動に加わる若者で、中村玉緒と恋仲という役。話は逸れるが、本郷は必殺シリーズには一度だけ「暗闇仕留人」に悪役で出演したことがある。悪徳奉行の役だが、その部下の与力を小林勝彦が演じているのだ。大映時代の同期などと当時は知る由もないが、今調べるとそいう繋がりのあるキャスティングは結構あったりする。
「浮かれ三度笠」は市川雷蔵主演の時代劇で、本郷はクレジット二番手の準主役だ。他に中村玉緒、左幸子、島田竜三、新東宝から移籍の宇治みさ子など。

本郷功次郎の出演映画

大瀬康一と大映では共演が多かったということで、今回からは本郷功次郎である。
本郷と言えば、近年は「特捜最前線」の橘警部のイメージが強いと思うが、大映では若手スターの一人であった。三船敏郎とか高倉健のように、俳優になるつもりは全くなかった状態から名優になった例は結構あるが、本郷も俳優になる気などなかったという。
38年岡山県生まれで、大学は立教で柔道部に所属していた。芸名っぽいが本名である。俳優になった経緯はかなり特殊で、本郷の叔母は柔道着姿の彼の写真をいつも持ち歩いていたという。その夫(つまり叔父)は大映の重役である松山英夫の友人で、たまたま本郷の写真が松山の目に留まったという。大映では菅原謙次に続く柔道スターを探しており、松山が叔母から写真を借りて社長の永田雅一に見せたところ「すぐに連れてこい」という話になった。
大映本社で松山と市川崑による面接があったが、本郷にその気はなく「日本映画はつまらないから見ません」とまで言い放ったが、説得されて「柔道映画なら」ということで承諾したのだった。こうして第12期大映ニューフェイスとして58年に入社。同期には浜田ゆう子、森矢雄二、大川修などで、直前に「俺たちは狂ってない」で公募デビューした野口啓二、小林勝彦も同期扱いかもしれない。
59年に柔道映画「講道館に陽は上る」でデビュー。主演扱いは菅原謙次のようだが、本郷は事実上の主役という感じ。他に浦路洋子、中村玉緒、須賀不二夫、佐々木孝丸など。実はこの2カ月ほど前に公開された「最高殊勲夫人」にも出演しているが、ノンクレジットである。同じような役の同期、森矢、大川はクレジットされているが、スター候補の本郷はあくまでもテスト出演の扱いということだろう。
59年の本郷は「講道館に陽は上る」以外にも8本の映画に出演と、デビュー年からフル回転である。
「紅あざみ」は勝新太郎主演の時代劇。芹沢鴨が局長のころの新選組と勤皇浪士との対立を描いており、「紅あざみ」とは浪士を助ける謎の人物。正体はもちろん勝新で、本郷は浪士の一人吉村の役だが新選組に斬られてしまう。芹沢役は小堀阿吉男で、隊士・伝九郎は千葉敏郎。他に鶴見丈二、黒川弥太郎、近藤美恵子、青山京子など。
「次郎長富士」はお馴染み清水次郎長一家を描いた大映オールスターキャストお時代劇。主役の次郎長には長谷川一夫、吉良に吉に市川雷蔵、森の石松に勝新太郎。クレジットでは以下、根上淳、鶴見丈二、船越英二と続き、次に小政役の本郷。新人としてはかなり上位で期待されていたことがわかる。他の次郎長一家に黒川弥太郎、島田竜三、林成年、千葉敏郎、石井竜一、品川隆二など。女優陣も若尾文子、京マチ子、山本富士子といったスターが出演している。
「濡れ髪三度笠」は市川雷蔵主演の時代劇。本郷は雷蔵に続く二番手クレジットで、11代将軍家斉の38番目の若君・長之助の役。雷蔵演じる半次郎に同行する弥次喜多の役に中田ダイマル・ラケット。他に淡路恵子、中村玉緒、楠トシエなどで、長之助を狙う刺客に千葉敏郎。和田弘とマヒナスターズが「宿の若い衆」で出演している。

大瀬康一の出演映画 その5

もう1回、大瀬康一である。
62年から始まった「隠密剣士」は人気を呼び、高視聴率をマーク。65年第10部まで続くことになる。大瀬は63年はこれに専念したようで、映画出演はなかった。64年になっても番組は続いていたが、この「隠密剣士」が映画化されることになったのである。しかも古巣である東映が製作することになった。
映画「隠密剣士」は基本的なスタッフはテレビ版と同じで、監督は船床定男、脚本は伊上勝が務める。秋草新太郎・大瀬康一、霧の遁兵衛・牧冬吉は当然同じだが、馬場周作少年は大森俊介ではなく竹内満になっている。吞海和尚もテレビと同じ宇佐美淳也で、テレビ版では美川洋一郎、大宮敏が演じた松平定信を加賀邦男が演じた。逆にこの後、放送された8部9部の定信役も加賀が演じることになる。
対峙する甲賀竜四郎役は天津敏。テレビ版でも風摩小太郎、甲賀の金剛と敵忍者の首領といえば、天津敏が演じているので、妥当なキャスティングではあるが、これは大瀬とは大映で共演した友田輝が演じていたキャラである。第2部「忍法甲賀衆」で登場するが、天津敏、牧冬吉もこの2部から登場。共に敵キャラの甲賀十三忍の一人を演じていたのだ。
映画オリジナルキャストは藤純子、品川隆二、尾形伸之介、国一太郎など東映勢で、藤はデビューして1年くらい、竜四郎の妹であるくノ一を演じる。ちなみに父である俊藤浩滋も本作には「企画」として関わっている。品川は伊賀同心つまり遁兵衛の同僚の役。尾形や国は通常は悪役が多いが役名だけだと伊賀か甲賀か不明である。他に唐沢民賢、大前均、有川正治、川浪公次郎、岩尾正隆、宍戸大全など。
その約5か月後に「続隠密剣士」が公開される。大瀬、牧、宇佐美、加賀などは前作と同役だが、周作役はテレビ版の大森俊介に戻っている。前作はスケジュールの都合だったらしい。天津敏は5部6部に登場した風摩忍者の首領・風摩小太郎として登場。その妹のくノ一・朧もテレビ版と同じ佐賀直子が演じた。敵の風摩忍者を原健策、吉田義夫、楠本健二、大前均、有川正治、加藤浩、岡田千代などが演じる。花沢徳衛も風魔の老忍者だが小太郎の考えには疑問を持っているという設定だ。
この時期に放送されていた第8部「忍法まぼろし衆」は東映京都で撮影が行われ、東映の大部屋役者も結構出演しているようだ。

大瀬はこの64年には、もう1作映画に出演している。松竹の「忍法破り・必殺」で、これが初の松竹作品出演となる。これも忍者がらみの時代劇で、主演は長門勇。大瀬と丹波哲郎と当時のポスターではその三人の名が大きめに載っている。しかし三人とも忍者ではなく、長門は足軽、丹下は武将、そして大瀬は少林寺拳法の使い手という役だ。意外なのは彼等より竹脇無我の扱いが小さいこと。長門の仲間の足軽役で、女好きという設定。調べて見ると竹脇の初主演は翌65年になってからで、まだ「スター」ではなかったようだ。他の出演者は路加奈子、山東昭子、堀雄二、名和宏など。
ちなみに、この64年に大瀬は7歳年上の女優・高千穂ひづると結婚している。特に共演経験は見当たらず、その出会いは不明だが、高千穂は53~57年まで東映に所属していたので、同じ東映の大部屋にいた大瀬と出会っていた可能性はある。とはいえ、スター女優と無名の大部屋俳優しかも年下と付き合うという可能性は低い気がする。まあ、ある程度大瀬の名が知れてから、映画共演以外で会ったのだろうと推測する。

大瀬康一の出演映画 その4

引き続き大瀬康一である。62年の後半からだ。
「中山七里」は、長谷川伸原作の股旅もので、主演は市川雷蔵、中村玉緒で、大瀬はこの二人との共演は初だ。というかこれが初の時代劇出演ということになるのだろうか。本作は6月公開で「隠密剣士」は10月からなので、この時点では「月光仮面の人」なのである。中村玉緒が、雷蔵の自害した乳房と大瀬の駆け落ち相手の二役を演じている。他の出演者は柳永二郎、沢村宗之助、富田仲次郎など。
「長脇差忠臣蔵」は、市川雷蔵、勝新太郎を始めとした大映オールスターキャストによる時代劇。長脇差は「ながどす」と読む。「忠臣蔵」なのに、8月公開なのだが、ヤクザの仇討ちを「忠臣蔵」に見立てたものである。大作のように感じてしまうが、上映時間は71分と短い。「忠臣蔵」で言う浅野内匠頭にあたるのが宇津井健だが、宇津井は時代劇は少ないし、死ぬ役というのも少ない気がする。大石内蔵助にあたるのが当然、市川雷蔵であり、吉良上野介にあたるのが名和宏ということになる。実在の人物も何人か含まれており、勝新の大前田英五郎や本郷功次郎の有栖川宮、島田正吾の清水次郎長、そして大瀬康一の桂小五郎などがいる。他には小林勝彦、丹羽又三郎、林成年、友田輝、女優陣では藤村志保、阿井美千子、浦路洋子、近藤恵美子、月丘夢路、悪役となるのが名和の他は、上田吉二郎、嵐三右衛門、そして天知茂などである。
「あした逢う人」は本郷功次郎、橋幸夫主演の青春もので、タイトルは橋幸夫のシングルのタイトルでもある。ヒロイン役に叶順子、三条江梨子。橋と三条は高校三年生の役だが、当時は共に19歳で年相応の役だった。デビューが若いためもう少し年長なイメージがあった。前作の「江梨子」でのコンビであり、三条は魔子から江梨子に芸名を変えている。彼女は新東宝から59年に「シークレットフェイス」としてデビュー。別に覆面をしていたわけではなく、正確には「シークレットネーム」というべきか。翌60年から三条魔子を名乗り、61年新東宝の倒産により大映に移籍していた。最終的には魔子に芸名を戻し、71年の大映倒産と共に引退している。橋はデビュー3年目だが、この62年は13枚ものシングルをリリースしている。大瀬は平井という役だが、その役柄は不明だ。
「秦・始皇帝」は、タイトル通り秦の始皇帝の生涯を描いた大映オールスターキャストによる2時間40分の超大作。大映創立20周年記念作品で、「釈迦」に続く2作目となる70ミリ映画である。主演つまり始皇帝役は勝新太郎で、出演者クレジットは縦スクロール形式なので、正確にはピンではないが一人独立したピン扱いなのは勝の他、市川雷蔵、長谷川一夫、山本富士子、叶順子、山田五十鈴、若尾文子である。何気に叶順子が混じっているのが凄いが彼女は翌63年に引退。これは強い照明により眼を悪くしたためで、このままでは失明してしまう恐れがあったためだという。大瀬は趙の貴公子の役で、勝、本郷功次郎、川口浩、川崎敬三、宇津井健に続く6番手に名前がある。他にも高松英郎、根上淳、中村玉緒、東野英治郎、宮口精二、中村鴈治郎など。制作費もかかっているが興行的には失敗に終わったようである。
この辺りで、前述の様に大瀬に宣弘社から「隠密剣士」の声がかかるのである。恩義もあって、断れなかったということで、大瀬は映画の世界を一旦離れて、再びテレビの世界へと戻って行くのである。
 

大瀬康一の出演映画 その3

続けて大瀬康一である。62年は8本の大映作品に出演したようだ。
「誘拐」は高木彬光原作のサスペンスもの。タイトル通り誘拐事件を描いている。主演は宇津井健で、クレジット順では次が万里昌代で、新東宝からの移籍組が1~2番手だ。以下、川崎敬三、大瀬康一、高松英郎、小沢栄太郎、中田康子と続いている。他に根上淳、北原義郎、友田輝、渋沢詩子など。
悪徳金貸しの小沢栄太郎の一人息子が誘拐される。身内からも憎まれているような男で、後妻である中田康子や腹違いの弟である川崎敬三も恨みを持っていた。ちなみに、小沢と川崎は実年齢で24歳差。腹違いとはいえ、兄弟には見えないと思う。この事件はある誘拐事件を参考にしており、その担当弁護士が宇津井健で、その妻が万里昌代である。高松英郎は本事件の担当警部補で、部下の刑事に普段は悪役の藤山浩二や原田詃など。大瀬は広津という役だが、その役柄は不明である。
「雪の降る街に」は、秋田県を舞台にした恋愛ドラマ。主演扱いがよくわからないが、おそらく小桜純子で、続いて高原巧、山崎努、大瀬康一、三津田健という具合のようだ。他に川口浩、渚まゆみ、高松英郎、姿三千子、当銀長次郎など。
高原は地元の野球部で超高校級と言われている投手で、山崎はその兄。大瀬はプロ野球の選手で小桜がその妹だ。小桜は山崎に惹かれるが、山崎は弟をかばって死んでしまうというような話。山﨑はご存知の通り黒澤映画「天国と地獄」の犯人役で一躍雄目になるが、それは翌63年のことだ。60年から映画には準主演級で主に東宝作品に出演しており、この「雪の降る街に」は初の大映出演と思われる。小桜純子は60年代前半に主に大映時代劇で活躍していた女優で、本作のような現代劇出演は少ない。小桜京子とは特に関係はないと思われる。高原巧は詳細不明だが、恐らくニューフェイスで、この62年に三本ほど映画出演の記録がある。すぐに引退してしまった人なのだろう。当銀長次郎は東宝で活動していた当銀長太郎の双子の弟だそうな。
「B・G物語 易入門」は。黄小蛾の小説「易入門」の映画化作品である。「B・G」はビジネスガール、今で言うOLである。ストーリ上は四人のBG(万里昌代、渋沢詩子、宮川和子、加茂良子)が中心となるが、クレジット的には田宮二郎、大瀬康一、竹村洋介、作者の黄小蛾(特別出演)が先のようだ。最終的には田宮と万里が婚約する。大瀬の役は宮川の恋人で株式課の社員。竹村洋介は竹村南海児の名で前年まで活動しており、基本的には端役が多い。70年代後半から80年代に活動していた同名の俳優がいるが、若かったし別人であろう。
「仲良し音頭 日本一だよ」はさサラリーマン喜劇もの。主演は本郷功次郎で、叶順子、大瀬康一、三条江梨子(魔子)が続く。大瀬はTVディレクターの役。他に中村鴈治郎、浪花千栄子、南都雄二、ミヤコ蝶々、中条静夫など。タイトルは「日本一だよ」と「仲良し音頭」という二つの歌のタイトルを繋いだもので、前者は村田英雄、島倉千代子、五月みどりなどで歌っており本作にも「歌手」の役で出演している。また、特別出演として長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、若尾文子、京マチ子、山本富士子といったスターたちが本人役で出演している。

大瀬康一の出演映画 その2

前回に続き、大瀬康一である。61年は「若い仲間」以外にも4本ほど出演している。
「投資令嬢」は、女子大生を主人公とした恋愛ドラマだが、そこにタイトル通り投資などビジネスの話が絡んでくる。主演は叶順子で、その親友が野添ひとみ、宮川和子。彼女らの憧れの大学教授が根上淳。叶が助けられたことをきっかけに恋する青年が大瀬康一だが、彼は野添と見合いをすることになる、というような話。東野英治郎が大瀬の父役で、松村達雄、藤間紫が叶の両親で、渥美清が叶の見合い相手役で登場。クレジットでは6番手の扱いだった。他に丸井太郎と三角八郎の「ピンボケコンビ」などが出演している。
「背広姿の渡り鳥」は、日活の「渡り鳥シリーズ」の影響を受けているであろうアクションドラマである。その「渡り鳥」が大瀬で、クレジットもトップだが、ストーリー的には佐川満男(当時ミツオ)が主役っぽい。80年代以降は、主に役者として活躍している佐川だが、元々は人気歌手である。ちなみに、あの佐川一政は甥にあたる。この後、病気などもあり低迷期もある。伊東ゆかりと71年に結婚するが、75年に離婚している。他の出演者は、三木裕子、村瀬幸子、友田輝、上田吉二郎などである。
「男の銘柄」の主演は筑波久子で、その夫役が大瀬である。お互いに浮気をするが、結局は元鞘に収まるといったような話だ。大瀬の浮気相手が渋沢詩子で、筑波の相手は丹羽又三郎、根上淳、石井竜一など。筑波久子は、第3期日活ニューフェイスで、二谷英明や小林旭が同期である。「肉体派女優」として人気があったが、本人はそれを嫌がり60年限りで日活を去っている。62年からはほぼ東映で活動するので、大映への出演は本作のみのようである。64年に女優を引退し渡米。今は米国の映画プロデューサーとして活躍している。丹羽又三郎と言えば、我々世代には「仮面ライダー」のブラック将軍というイメージ。大映ではほぼ時代劇で活躍していたので、現代劇出演は珍しかったりする。実は丹羽も75年に引退し渡米している。現在は帰国し、高齢だが(89歳)芸能活動を再開しているようだ。
「強くなる男」は、本郷功次郎主演のアクションもの。ヒロインは叶順子で、新東宝からの移籍組である宇津井健、万里昌代が3~4番手扱い。大瀬は本郷の友人といったような役柄でクレジット上は5番手扱いだが、まあ脇役だろう。他に多々良純、中村鴈治郎、若松和子、スリー・ファンキーズ、スリー・グレイセス、村上不二夫、橋本力など。スリーファンキーズは学生のような役での出演らしい。当時のメンバーは恐らく長沢純、高倉一志(藤健次)、高橋元太郎だと思われる。スリー・グレイセスは女工の役らしい。宇津井健にとって本作は大映での2作目で、後に主演もあるが、こういった準主役的な役が多かった。余談だが、大瀬康一と言えば「月光仮面」、宇津井健と言えば「スーパージャイアンツ」で知られるが、本作に出演の村上不二夫は「遊星王子」をテレビで演じ、橋本力は後に「大魔神」(の中の人)を演じることになる。

大瀬康一の出演映画

今回からは、大瀬康一である。元祖テレビヒーローである「月光仮面」や「隠密剣士」で主演を演じた元祖ヒーロー俳優だ。「月光仮面」なんかは自分の生まれる前だし、リアルタイムでその活躍を見た記憶もないが、存在は子供の頃から知っていた気がする。
大瀬康一は37年生まれで、本名は大瀬一靉(かずなり)といい、見たこともない難しい字を使う名前である。役者としてのスタートは東映で、龍崎一郎の紹介だったと言い、大部屋俳優だったという。この時代に関しての記録などは無いので、通行人とかセリフもないような役ばかりだったのではないだろうか。
そんな彼が20歳のとき、58年2月スタートの連続テレビ映画「月光仮面」の主演に抜擢されたのである。オーディションがあり、声が良く、子供に好かれそうな顔立ちだったからというのが採用理由だそうだ。無名の大部屋俳優ということで出演料を抑えられるという側面もあった。本名だと難しすぎるので、原作者である川内康範から一文字もらい、大瀬康一を芸名とした。「月光仮面のおじさんは~」などと歌われているように20歳には見えなかったが、「おじさん」はないようなとも思ったりする。
「月光仮面」の後、同じスタッフによる「豹の眼」(59~60年)にも主演し、ヒーロー「笹りんどう」を演じている。
この「豹の眼」終了後に大映と契約し、10数本の映画に出演しているのだが、その出演作についてははあまり知られていない気がするので、それを追っていきたい。
その一作目となるのが「弾痕街の友情」(60年)で、いきなりの主演である。大瀬と三田村元、大辻伺郎が少年院を脱走。大辻のみ成功する。残る二人も一年後には退院し、大瀬はボクサーに、三田村は刑事になる。消息不明だった大辻は殺し屋になっており、最終的には二人と対決することになる、というようなストーリー。共演は江波杏子。三木裕子、見明凡太郎、中条鈴夫、守田学哉など。
三田村元は35年生まれで、57年のミスター平凡に選出されたのを機に大映に入社。60~61年あたりは主演または準主演格だったが徐々に助演に回り63年には大映を退社。大辻も35年生まれだが、三田村とは逆に大部屋からその個性でのし上がっていった。我々世代には「ハレンチ学園」のヒゲゴジラ役で印象に深い役者だ。三田村は70年代の日活で「復活」するが、72年頃引退。実は大瀬も72年に引退している。大辻は73年に自死と、ほぼ同時期に姿を消したのである。
中条静夫の本作での役は「ザギンの三太」といい、三下で殺されてしまう役である。「ザ・ガードマン」で知られるようになる前はこういった役も多かったと思われる。
「若い仲間」(61年)は源氏鶏太原作のサラリーマン恋愛物とでも言うのだろうか。主演は本郷功次郎と叶順子。銀行が舞台で大瀬はその新入社員だが、実は財閥の御曹司。それを知った叶が彼を狙い、本郷と偽装恋人になって気を惹かせようとする。しかし偽装のはずが、いつしか本気になって…、というようなお話。共演は大辻伺郎、江波杏子、片山明彦、宮川和子、潮万太郎、三角八郎、丸井太郎など。

坂口祐三郎(坂口徹郎)の出演映画 その6

もう一度だけ坂口祐三郎である。
坂口徹を名乗っていた時代に出演した映画はまだある。「子連れ狼 三途の川の乳母車」(72年)がその一つだが、「子連れ狼」と言えば、萬屋錦之介主演のテレビ版のイメージが強いかもしれないが、映画版の主演は若山富三郎で、こちらの方が先である(テレビ版は翌73年から)。原作の小池一夫は主役の拝一刀は渡哲也か勝新太郎に演じて欲しいと思っていたが、渡は病気の為断念。そこへ原作のファンで一刀を演じるのは俺しかいないと意気込む若山が小池の元を訪れ、直談判したという。若山は小池の前で殺陣を披露し、一刀役を認めさせたのである。それとは別に、実弟である勝の元にテレビシリーズでの一刀役のファーが行く。勝も乗り気だったが、若山に「どうしてもやりたいんだ」と言われ、勝は「それなら俺がプロデュースするから、兄ちゃんが主演で映画にすればいい」という話になり、勝プロが権利を買い、若山が主演での映画化が決った。若山は当時、東映の専属スターだったため、社長の岡田茂に頭を下げ、出演を認めてもらったのである。勝が所属する大映の配給という前提で撮影に入ったが、大映は潰れると読んでいた勝が、密かに東宝と交渉を進めていた。実際に大映は倒産したため、東宝で公開されることになったのである。
話が横に逸れたが、若山版「子連れ狼」は全6作が作られたが、「三途の川の乳母車」はその2作目である。本作はとにかく刺客が一刀親子を襲う。柳生鞘香(松尾嘉代)率いる八人の別式女(鮎川いづみ、三島ゆり子、東三千、笠原玲子、水原麻紀、池田幸路、正楠衣麻、若山ゆかり)を倒したかと思えば、小林昭二率いる黒鍬衆も倒し、最後は公儀護送役の三兄弟(大木実、新田昌玄、岸田森)と戦う。坂口の役だが、三兄弟を倒そうとして全滅する阿波藩士の一人である。他に阿波藩士は水上保広、平泉征、国一太郎などが演じている。そういえば、坂口はデビュー時、「新黄金孔雀城 七人の騎士」で国一太郎と共に「七人の騎士」を演じていた。
プライベートでは、74年3月に、その「七人の騎士」等で共演した東映のお姫様女優である北条きく子と結婚披露宴を行ったが、翌4月には離婚という出来事もあった。
76年は「玉割り人ゆき 西の廓の夕月楼」に出演。R-18指定の東映ニューポルノ。主演は潤ますみ演じるゆきだが、坂口の役はタイトルにある夕月楼の主人で、準主役といえる。低予算で出演者も少ないが、久々の大役であることは確かだ。他に中島葵、成瀬正、長島隆一、森崎由紀など。潤ますみはデビューは東映だが、72~74年にかけては日活ロマンポルノで活躍。フリーになって再び東映のポルノ路線作品に出演していた。
この後、坂口徹郎に改名。ドラマ「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」(78年)に準レギュラーとして出演。映画「宇宙からのメッセージ」のテレビシリーズ。東映の特撮ものだが、東京ではなく京都撮影所が制作を担当している。それもあってか、時代劇がメインの坂口や西田良、白井滋郎などが出演している。主演は劇場版にも出演の真田広之で、共演は織田あきら、島田歌穂、藤山律子、堀田真三など。坂口の役はレジスタンスのリーダー。劇場版にも出演しているという情報もあるが、クレジットに名前は無い。
92年くらいまでは、坂口徹郎だったようだが、最終的には坂口祐三郎に戻している。

坂口祐三郎(坂口徹)の出演映画 その5

さらに前回の続きで、坂口祐三郎である。
「仮面の忍者赤影」(67~68年)の主役に抜擢された坂口であったが、良くも悪くも影響を被ることになる。もちろん一気に名前が知れ渡ったが、素顔は仮面で隠される。基本二枚目役者なので、素顔を見せるための仮面を付けていないシーンも当初はあったのだが、それだと小さい子供はわからなかったらしい。そして結果的に顔見せが無くなってまったという。ある意味スーツアクターに近いのかも。しかし、顔をあまり見せなかった割には、坂口祐三郎=赤影という強いイメージが付いてしまったのである。
実はもう1本ドラマの話が来ていたという。本人は「新撰組血風録」の続編と言っていたので、それに該当するのは「俺は用心棒」(67年)ということになる。正確には島田順司(沖田総司)と遠藤辰雄(芹沢鴨)は「血風録」と同じ配役で出ているが、栗塚旭、左右田一平、国一太郎などは新撰組ではない違う役での登場だ。放送期間がかぶり、同じ東映京都とはいえ、赤影の主役である坂口は掛け持ちできる状況ではなかったのだ。坂口が「血風録」で演じた山崎烝は「俺は用心棒」にも登場するのだが、演じたのは西田良であった。坂口とは全く似ていない猿顔の大部屋役者だ。坂口が出演できなくなったので、台本が変わったらしいが、山崎烝の出番は10話程度だったようだ。ちなみに、西田良はノンクレジットだが「赤影」にも下忍(つまり斬られ役)として何度か出演している。
赤影を1年間演じたことは、前述の様に当初は悪影響も大きく役が付きにくくなったのである。68年は「待っていた用心棒」「大奥」「次郎長三国志」など東映テレビ時代劇をゲスト出演するくらいに留まっている。
69年、芸名を坂口徹に改名し「赤影」からの脱却を計った。ドラマ「あゝ忠臣蔵」には坂口徹として、大石瀬佐衛門役でレギュラー出演している。ちなみに、主役の大石内蔵助(山村聰)と同じ「大石」だが、分家の「大石」ということのようだ。
そんな中で「東映まんがまつり」の一作として公開されたのが「飛び出す冒険映画 仮面の忍者赤影」(69年)である。第1部である「金目教」編の再編集版だが、一部新作カットもあるようだ。その新作部分が「立体映像」になっており、劇場で赤と青のセロハンを両目に貼った仮面風の「立体メガネ」が配られ、立体パートになるとスクリーンから赤影や白影がメガネをするように観客に呼びかけるのである。自分も子どもの頃に映画館でこれを見た記憶がある。
主演者は基本テレビと同じになるが、前述のとおり坂口は祐三郎ではなく徹となっている。共演は金子吉延、牧冬吉、里見浩太朗、大辻伺郎、そして天津敏演じる甲賀幻妖斎率いる霞谷七人衆の岡田千代、阿波地大輔、近江雄二郎、芦田鉄雄、波多野博、大城泰である。もう一人は汐路章だがカットされているようだ。
70年も映画出演はなく、東映時代劇へのゲスト出演が主となっている。
71年は初の大映映画出演。映画テレビ通じて他社出演は初めてかもしれない。それが渥美マリ主演の「モナリザお京」である。坂口には少ない現代劇で、主演の渥美はスリ、川津祐介が宝石泥棒。坂口はクラブ支配人の仲村隆と結託している盗品宝石ブローカーという役である。主人公たちからは敵の役だ。本作から約半年後に大映は倒産するので、最初で最後の大映出演となったわけである。

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