昔々、あるところにオシャベリがいた。
オシャベリは、口が軽く、話さなくていいことまで話しては人を不快にしていた。
オシャベリは言うことと、していることが違っていて、そこも人を不快にさせるポイントだった。
オシャベリがあまりに人を不快にさせるため、オシャベリのまわりに人がいなくなった。
ある日、オシャベリはムイシキと出会った。
ムイシキは言う。
……オシャベリ。口が軽いのは無意識が軽いんだ。無意識を深くするんだ。そうすれば、口は重くなる。
ワラにもすがりたい気持ちだったオシャベリは、無意識を深くした。
言葉を軽く出さない。
言葉の奥の奥をよく見る。
合気道で相手をかわしていくように。
オシャベリが言葉の奥の奥をたどっていくと、そこにムイシキがいた。
ムイシキは言う。
……やあ、また、出会ったね。君はもう大丈夫。君の言葉は、道になり、公共事業のようになるだろう。実現するからね。
ムイシキは不思議なことを言った。
オシャベリは無口になった。
たまに話すことは、とても力をもった。
下手なことを言うと、人を不快にさせる力が凄まじかった。
オシャベリは気をつけて、言葉の奥の奥をよく見た。
いつしか、オシャベリの言葉を楽しみにする人が増えた。
オシャベリの言葉は道になり、その道を歩いて、多くの人の生活が楽になった。
オシャベリの言葉は、すべて実現していくから。
みんなオシャベリの言葉を聞きたかった。
オシャベリの言葉はムイシキの言葉で、ムイシキは、みんなとつながっていた。
オシャベリは、ムイシキの受付窓口のようだった。
オシャベリは、人のために生きて、喜ばれた。