小谷野敦のブログ

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'''TRA'''(てぃーあーるえー)は、トランスジェンダーの権利擁護運動(transgender rights activist)の略、その運動を推し進める人物をさす。woke とも呼ばれる。
==概要==
生物学的事実を無視して、ジェンダーは二個以上あり、人間もジェンダーは社会的構築物であって変更可能であり、またそれは当人の性自認によって決定可能であり、性器などの手術すら不要だと主張し、そのイデオロギーを他者や社会、国家に認めさせるため言論活動を行う人びとの総称。当人たちはこれを蔑称と見なしているため、日本版ウィキペディアでは立項すらされていないが、英語版ではtransgender rights movement として立項されている。

この思想は[[フーコー]]のポストモダン思想から派生し、[[ジュディス・バトラー]]が拡大し定着させたもので、21世紀に入ってから英国で真っ先に広まり、国の政策にも影響したが、様々な問題が起こって、現在の首相リシ・スナクは、「性は二つである」という立場をとっており、各国では揺り戻しが起きているが、ドイツや日本のようにこれから始めようとしている国もある。フェミニズムの一つを装っているが、実際はミソジニー的なものだと言われており、このイデオロギーに反対するフェミニストは「[[ターフ]]=terf(transgender exclusive radical feminist)」と呼ばれ、激しい闘争を繰り広げている。トランスジェンダリズムとも言われ、これは本来同性愛とは相容れないものと見る人もいるが、同性愛者でTRAだという人物もいる。また「連帯する者」という意味で「トランスアライ」または「アライ」などとも呼ばれる。

英国では、生物学を無視したトランスジェンダー運動に真っ先に異論を唱えたのが作家[[J・K・ローリング]]で、そのためローリングは多くの抗議や脅迫を受けた。また生物学者の多く([[リチャード・ドーキンス]]や[[長谷川真理子]])はこの思想を疑問視している。

自身がトランスジェンダーであるケースは少ないが、「[[ノンバイナリー]]」を自称することもある。「男でも女でもない」という意味である。TRAは多くの場合、虹のマークをシンボルにしている。これは[[LGBT]]の支持を意味するレインボー・フラッグから来ているが、LGBとトランスは存在の位相が全く違うので、TRAを「LGBT活動家」などと呼ぶのは混乱を誤解を招くものである。

日本でこの問題が表面化したのは2020年以後のことで、社会学者でフェミニストとされる[[武蔵大学]]教授の[[千田有紀]]が、「「女」の境界線を引きなおす: 「ターフ」をめぐる対立を超えて」を『[[現代思想]]』2020年3月号に寄稿し、ターフに一定の理解を見せたことがTRAの憤激をかい、日本史の大学院生である[[高島鈴]](りん)が「都市の骨を拾え」という『現代思想』2021年11月号掲載の論考の冒頭で、千田の文章が掲載されたことを強く非難し、あたかも差別事件のように扱い、だがその理由についてはまったく触れないという事件があった。

また[[芥川賞]]作家の[[笙野頼子]]はかねて論争的なフェミニスト作家だったが、長く主として『[[群像]]』に小説を掲載してきた。だが、2021年12月の同誌に「質屋七回ワクチン二回」を掲載して以来、小説中で反TRAの思想を表明したとして同誌からパージされ(笙野によればはっきりとそのように講談社の意思として告げられたという)、[[鳥影社]]の『季刊文科』に掲載の場を求め、それらを『笙野頼子発禁小説集』として鳥影社から出版(2022年5月)、以後も『女肉男食』など、反TRAとしての著作を刊行しているが、『群像』を含め五大文芸誌には発表の場を与えられていない。笙野は、トランスジェンダー活動によってペニスのある者が女として認められることは、女をこの世から抹消する行為だとして「女消(めけし)」だと批判している。

2020年春から『文藝』([[河出書房新社]])の編集長となった坂上(さかのうえ)陽子もTRAと見られ、立て続けにTRAと見られる[[水上文]]を重用し、笙野頼子が[[日本文藝家協会]]の「文藝家協会ニュース」に載せた反TRAの文章への反論を水上、[[李琴峰]]に書かせ、笙野の反論は掲載しなかったという。

フェミニストの団体である[[ウィメンズアクションネットワーク]](WAN)では、2023年にTRAに賛同する人物が署名をしたが、中には[[上野千鶴子]]、[[岡野八代]]、[[清末愛砂]]らがいた。千田有紀はその直後、WANの理事を辞任した。ほかにフェミニストでは、[[牟田和恵]]・大阪大学名誉教授がターフの立場をとっている。

2023年暮れには、[[KADOKAWA]]から翻訳刊行予定だった『あの子もトランスジェンダーになった』という、思春期のうちにトランスジェンダー移行措置をとることの危険性を説いた[[アビゲイル・シュライヤー]]の著書を、抗議とデモの予告によって刊行停止に追い込んだが、TRAは、自分らで脅しておいて「決めたのは出版社です」というヤクザと同じ論法を用いている。この予定されたデモには、暴力的なことで知られる「レイシストしばき隊」が参加する予定だったという。

TRAは、異論を唱える者とちゃんと議論をしようとせず、男性器のある者がなぜ女性なのかといった疑問を述べること自体が差別だと主張し、そのような人物とは「ノーディベート」で議論をせず「ノープラットフォーミング」で議論の場を与えないという態度をとる。そして自分たちに異論を唱える者を「差別主義者」と呼んだり、「トランスヘイター」「トランスフォビア」などのレッテルを貼り、トランスジェンダーの当時者と自分たちのイデオロギーをごっちゃにすることによって自分たちを正当化しようとする。批判に対して反論することがあるとしても、それは概ね、トランスジェンダーの人たちがどれほど苦労しているかを知れ、と言うにとどまり、理論的な議論はできない。
反TRAの活動をした者は「キャンセル」されるということが上記のように存在するが、大学教員が辞職させられたことはまだない。TRAの重要な人物である[[清水晶子]]・東大教授は、キャンセルすると騒ぎになってかえってその人物や書物が目立ってしまうので逆効果だと述べたことがある。TRA批判者である[[栗原裕一郎]]によると、TRAは敵本人ではなく、所属組織やその原稿を掲載した媒体に対して抗議運動をするという。また、X(旧ツイッター)上では、女性の発言者に対しては激しい攻撃を加えるが、男性に対してはそれほどでもないという傾向があり、「トランス女性」が実際には男であることと考え合わせ、TRAにはミソジニーと男性崇拝の傾向があるとする者もいる。

==日本における主要なTRA==
*清水晶子(1971- )[[東京大学]]表象文科論教授(英文学・クイア理論)
*[[高井ゆと里]](1990- )[[群馬大学]]准教授(哲学)
*[[三木那由他]](1985- )[[大阪大学]]講師(哲学)トランスジェンダー当事者
*水上文(1992- )文芸評論家
*李琴峰(1989- )台湾国籍の芥川賞作家
*高島鈴(1995- )日本史学者
*[[小宮友根]](1977- )[[東北学院大学]]准教授(社会学)
*[[藤野可織]](1980- )芥川賞作家
*[[小山田浩子]](1983- )芥川賞作家
*[[桜庭一樹]](1971- )[[直木賞]]作家
*[[川野芽生]](1990- )歌人・作家
*[[隠岐さや香]](1975- )東大教育学部教授(科学史)
*[[能町みね子]](1979- )エッセイスト、トランスジェンダー当事者
*遠藤まめ太(1987- )トランスジェンダー当事者

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[[Category:政治運動]]