とんとん・にっき

とんとん・にっき」にお立ち寄りいただき、ありがとうございます。




*写真の上でクリックすると、より大きな画像をご覧になれます。


*コメントはいつでも受け付けています。




1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

難波和彦の「住まいをよむ」を読んだ!

 

難波和彦の「住まいをよむ」(NHK出版:2024年1月1日)を読みました。

 

戦後日本における住まいの在り方、

人と住まいとの関係性を読み解く。

本テキストでは、主に戦後日本の住まいの在り方に注目し、戦後復興において日本政府が中心に据えた住宅政策や諸制度を概観しながら、住まいにまつわるさまざまな事象(行政・施工法・金融制度・建築業・街づくり等)を、その後のバブル期とその崩壊、人口減少や過疎化に伴う住宅事情の変化までを視野に、時代をおって解説、読み解いていく。
住まいは、建築材料を組み合わせて建設される物理的な空間だが、重要なのは、そこに住むひと・家族の生活が営まれる場所だということ。言い換えれば、住まいとはハードとソフトが渾然一体となった存在なのである。また、住まいには集合住宅やアパートといった形態があり、そこに住む人たちのコミュニティや街づくりにも大きく関係する都市の構成要因でもある。
これらを踏まえ、建築家として第一線で活躍してきた著者が、日本の住まいをめぐる戦後史をたどり、住まいづくりの基本的な考え方、快適な住まい=快適な街づくりのためにできること、すべきことを解説・提言する。

 

目次

はじめに

第一回 住まいの現在

第二回 家族と住まいの変容

第三回 住まいと住宅政策

第四回 住まいの標準化と工業化

第五回 消費社会の住まい

第六回 住まいのはたらき

第七回 小さな家

第八回 住まいがつくる街

第九回 集まって住む

第十回 エコハウスの条件

第十一回 住まいの儀式

第十二回 建築教育の伝統

第十三回 私の仕事

 

難波和彦:

1947年、大阪府生まれ。東京大学大学院建築学専攻博士課程修了。現在は、東京大学名誉教授、(株)難波和彦・界工作舎代表。代表作品に、田上町立竹の友幼稚園、EXマシン、なおび幼稚園、アタゴ深谷工場、箱の家シリーズなどがあり、主な著書に「建築の四層構造サスティナブル・デザインをめぐる思考」(LIXIL出版)、「東京大学建築学科難波研究室活動全記録」(角川学芸出版)、「進化する箱」(TOTO出版)、「新・住宅論」(左右社)などがある。

 

過去の関連記事:

「被災地支援 建築家の提案」

難波和彦の「建築の理・難波和彦における技術と歴史」を読んだ!

「東京大学建築学科 難波研究室 活動全記録」が届いた!

難波和彦の「建築の四層構造 サスティナブル・デザインをめぐる思考」が届いた!

「建築家は住宅で何を考えているのか」を読んだ!

 

難波和彦の手持ちの著作を、下に載せておきます。

 

「新・住宅論」

2020年7月31日第1刷発行

著者:難波和彦

発行所:左右社

 

「メタル建築史 もうひとつの近代建築史」

2016年11月25日第1刷発行

著者:難波和彦

発行所:鹿島出版会

 

「建築家の読書塾」

2015年12月24日発行

編著者:難波和彦

発行所:みすず書房

 

「新しい住宅の世界」

発行:2013年3月20日

著者:難波和彦

発行所:放送大学教育振興会

 

「建築の理(ことわり)―難波和彦における技術と歴史」
2010年10月10日第1版発行

編著者:難波和彦、伊藤毅、鈴木博之、佐々木睦朗、石山修武、前真之

発行所:株式会社彰国社


とんとん・にっき-kotowa

 

「東京大学建築学科難波研究室活動全記録」
発行日:2010年9月25日初版発行

著者:東京大学建築学科難波研究室

発行所:株式会社角川学芸出版

発売元:株式会社角川グループパブリッシング

とんとん・にっき-nan2

 

「建築の四層構造サスティナブルデザインをめぐる思考」
発行日:2009年3月1日初版発行

著者:難波和彦

発行所:INAX出版

とんとん・にっき-nan1

 

「建築家は住宅で何を考えているのか」

東京大学建築デザイン研究室編

著者:難波和彦・千葉学・山代悟

発行:2008年9月30日第一版第一刷

定価:本体1400円(税別)
発行所:PHP研究所
とんとん・にっき-nan1


「箱の家に住みたい」

著者:難波和彦

発行:2000年9月25日初版発行

定価:本体1800円+税
発行所:王国社
とんとん・にっき-nan2

 

 

 

安倍公房の「飛ぶ男」を読んだ!

 

安倍公房の「飛ぶ男」(新潮文庫:令和6年3月1日発行)を読みました。

 

鬼才・安倍公房 幻の遺作

死後、フロッピーディスクに残されていた原稿が

待望の文庫化!

 

ある夏の朝。時速2、滑空する物体がいた。<飛ぶ男>の出現である。目撃者は3人。暴力団の男、男性不信の女、とある中学教師・・・。突如発射された2発の銃弾は、飛ぶ男と中学教師を強く結びつけ、奇妙な部屋へと女を誘う。世界文学の最先端として存在し続けた作家が、最後に創造した不条理な世界とは。死後フロッピーデスクに残されていた表題作のほか「さまざまな父」を収録。

 

初期の作品である「砂の女」、「他人の顔」から、後期の「方舟さくら丸」、そして未完の遺作となったこの「飛ぶ男」に至るまで、安倍公房の作品には一貫した問いかけがあると感じる。それは、人間は常に閉ざされた王国を自分の内部に作り上げようとする、が、それは決して自己完結した宮殿として完成することはない。むしろ閉ざされた空間は何らかの方法で世界に向かって開かれなければならない。そうでなければ生命は生命たることができない。その方策を何とかしてでも探究しなければならない。こんな問いかけである。言い換えれば、安倍公房は終生、内部の内部に外部との絡路を探し求めた作家、ということができると思う。

・・・

安倍公房は「飛ぶ男」において、内部の内部から外部への絡路を開くための画期的な実験を、時空を自在に飛行する”飛ぶ男”の言葉を駆使して行おうとしていた。硬直した分断の言葉に流動性を与えようとした。つまり言語の粘性を溶かそうとした。もし「飛ぶ男」がかんせいしていたなら、世界は、あるいはホモ・サピエンスは、もう少しだけ利他と共生に接近した、新しい<Y>のありかたに気づけたかもしれない。この意味において、進歩と調和ではなく、むしろ停滞と分断がさらに進行する今こそ、安倍公房は読み直されるべきだし、こうして「飛ぶ男」が文庫化される現代的意味があると思われる。

(「安倍公房―内部の内部に外部を探し求めた作家―」福岡伸一)

 

安倍公房:

東京生まれ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。62年に発表した「砂の女」は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、「緑色のストッキング」で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。73年より演劇集団「安倍公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、92(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。93年急性心不全で急逝。2012年、読売新聞の取材により、ノーベル文学賞受賞寸前だったことが明らかにされた。

 

「安倍公房とわたし山口果林」

2013年8月1日第1刷発行

著者:山口果林

発行所:講談社

山口果林の「安部公房とわたし」を読んだ!

 

「方舟さくら丸」

<純文学書下ろし特別作品>

1984年11月15日発行

著者:安倍公房

発行所:新潮社

 

 

イ・ソルヒ監督の「ビニールハウス」を観た!

 

イ・ソルヒ監督の「ビニールハウス」を観てきました。
 
挑発的な惹句「半地下はまだマシ」
 
以下、シネマトゥデイによる。
 

見どころ:

貧困や孤独や介護といった現代の社会問題をテーマに描くサスペンス。ビニールハウスで暮らす訪問看護師が住む場所を失い、訪問先の老人を事故で死なせてしまう。監督などを手掛けるのはイ・ソルヒ。ドラマ「誰も知らない」などのキム・ソヒョンのほか、ヤン・ジェソン、シン・ヨンスク、ウォン・ミウォンらがキャストに名を連ねる。

 

あらすじ:

貧困のため、ビニールハウス暮らしをするムンジョン(キム・ソヒョン)は、少年院にいる息子と再び一緒に暮らすことを願っていた。その資金を稼ぐため、彼女は盲目の老人テガンと、その妻で重度の認知症を患うファオクの訪問介護士として働く。ある日、ファオクが突然風呂場で暴れ出し、ムンジョンと揉み合う中で後頭部を床に打ちつけ命を落としてしまう。困ったムンジョンは、同じく認知症を患う自らの母親をファオクの身代わりにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画『ビニールハウス』予告編 (youtube.com)

 

朝日新聞:2024年3月22日

井上隆史の「大江健三郎論  怪物作家の『本当ノ事』」を読んだ!

井上隆史の「大江健三郎論  怪物作家の『本当ノ事』」(光文社新書:2024年2月29日初版第1刷発行)を読みました。

 

東京大学でフランス文学を学んでいた学生時代の作品「奇妙な仕事」以降、常に文学界の先頭を走り続けてきた大江健三郎。1958年に「飼育」で芥川賞、67年に『万延元年のフットボール』で谷崎潤一郎賞、73年に『洪水はわが魂に及び』で野間文芸賞、83年に『「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち』で読売文学賞、同年、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛次郎賞、そして94年には川端康成についで日本で2人目のノーベル文学賞受賞者となった。
新しい戦前と言われる今日、代表作を初期から順に読み進めることで、「民主主義者」「平和主義者」としての大江像に再考を迫る。

 

本当に戦後民主主義者なのか?

その作品世界を丹念に追うことで、「従来の大江像」を覆す。

 

大江自身の「本当ノ事」は、

いまだ明らかになっていないのではないか。

 

大江は戦後民主主義を代表する知識人という枠には決して収まらない存在であり、大江文学の真の魅力は、そういう評価とは別の場所、むしろそれを裏切る場所にあるのかもしれないということです。

(「はじめに」より)

 

目次

第一章 三つの処女作
第二章 純粋天皇の胎水しぶく
第三章 アナルセックスと赤ん坊殺し
第四章 オレハ本当ノ事ヲイッタ
第五章 三島由紀夫の死
第六章 レイン・ツリーとイーヨー
第七章 ピンチランナーは生還するか
第八章 あいまいな日本の私
第九章 おかしな二人組
第十章 大江健三郎の「本当ノ事」

 

井上隆史:

1963年生まれ。東京大学文学部卒業。白百合女子大学文学部教授。専門は日本近代文学。著書に『暴流(ぼる)の人 三島由紀夫』(平凡社、読売文学賞・やまなし文学賞)、『三島由紀夫 幻の遺作を読む』(光文社新書)、『三島由紀夫『豊饒の海』VS野間宏『青年の環』』(新典社選書)、『三島由紀夫の愛した美術』(共著・新潮社)、『決定版 三島由紀夫全集 第42巻 年譜・書誌』(共著・新潮社)、『津島佑子の世界』(編著・水声社)などがある。

 

大江健三郎 江藤淳 全対話

2024年2月25日初版発行

著者:大江健三郎・江藤淳

発行所:中央公論新社

 

過去の関連記事:

大江健三郎さんお別れの会 作家らしのぶ

大江健三郎賞 8年の軌跡!

「大江健三郎 作家自身を語る」を読んだ!

大江健三郎の「晩年様式集 イン・レイト・スタイル」を読んだ!

大江健三郎の「読む人間」を読んだ!
大江健三郎の「定義集」を読んだ!
世田谷文学館で「知の巨匠加藤周一ウィーク」大江健三郎編を聞く!
大江健三郎の「水死」を読んだ!
大江健三郎の「﨟たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」を読む!
大江健三郎について

 

これから読む本、読まなければならない本

全て購入済み

 

ユリイカ7月臨時増刊号

「総特集*大江健三郎――1935-2023」

2023年7月15日発行

発行所:青土社

 

「犠牲の森で 大江健三郎の死生観」

2023年3月17日初版

著者:菊間晴子

発行所:一般財団法人 東京大学出版会

 

「大江健三郎の『義』」

2022年10月18日第1刷発行

著者:尾崎真理子

発行所:講談社

 

「大江健三郎と『晩年の仕事』」

2022年3月22日第1刷発行

著者:工藤庸子

発行所:講談社

 

「大江健三郎全小説全解説」

2020年9月15日第1刷発行

著者:尾崎真理子

発行所:講談社

 

江國香織の「ひとりでカラカサさしてゆく」を読んだ!

 

江國香織の「ひとりでカラカサさしてゆく」(新潮社:2021年12月20日発行)を読みました。

 

ほしいものも、

行きたいところも、

会いたい人も、

ここには

もう

なんにも

ないの――。

 

三人はなぜ、大晦日の夜に

一緒に命を絶ったのか。

 

人生における

いくつもの喪失、

いくつもの終焉を

描く物語。

 

「人間は、

泣くのとたべるのとを

いっぺんにはできない

ようになっている

らしいですよ」

 

大晦日の夜、ホテルに集まった八十歳杉の三人の男女。彼らは酒を飲んで共に過ごした過去を懐かしみ、そして一緒に命を絶った。三人にいったい何があったのか…。妻でも、夫でも、子どもでも、親友でも、理解できないことはある。唐突な死をきっかけに思いがけず動き出す、残された者たちの日常を通して浮かび上がるのは――。

 

ラスト…

「いままで言ったことがなかったけど」勉が突然口を開いた。

「俺は二人に感謝してるよ。いや、今回のことだけじゃなくて、ずっとさ、あんたがたあみたいなのとおなじ時代を生きられてよかったと思っている」「やめて」知佐子がぴしゃりと言う。「しみじみしちゃうじゃないの。そんなこと、言われなくたってわ」完爾もまったく同意見だった。「もうすぐ新年ね」声をあかるくして知佐子が言った。「どんな年になるのかしらね」完爾は娘と息子の顔を思い浮かべる。それぞれの配偶者や、かなりいい子に育ったと思っている孫の顔も。いまごろそれぞれの場所で、正月を迎える準備をしているだろう。そして、まだしばらくこの世を生きるだろう。扉があき、三人は客室フロアを自分たちの部屋に向かって歩いていく。もうすぐ終ると完爾は思い、ホテルなんてひさあしぶりだなと勉は思った。そして知佐子はだ男性二人をかわるがわる眺め、またしても、二人ともりゅうとしている、と思った。

 

江國香織:

 1964年東京都生まれ。87年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、89年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、92年「こうばしい日々」で坪田譲治文学賞、「きらきらひかる」で紫式部文学賞、99年「ぼくの小鳥ちゃん」で路傍の石文学賞、2002年「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」で山本周五郎賞、04年「号泣する準備はできていた」で直木賞、07年「がらくた」で島清恋愛文学賞、10年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、12年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、15年「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」でt二崎潤一郎賞を受賞。他の著書に「ちょうちんそで」「彼女たちの場合は」「去年の雪」など多数。小説のほか詩やエッセイ、翻訳も手掛けている。

 

過去の関連記事:

江國香織の「とるにたらないもの」を読んだ!

江國香織の「川のある街」を読んだ!

江國香織の「シェニール織とか黄肉のメロンとか」を読んだ!

江國香織の「ちょうちんそで」を読んだ!

江國香織の「犬とハモニカ」を読んだ!

江國香織の「抱擁、あるいはライスには塩を」を読んだ!

江國香織の「真昼なのに昏い部屋」を読んだ!

江國香織の「スイートリトルライズ」を読んだ!

江國香織の「日のあたる白い壁」を読む!

江國香織の「がらくた」を読んだ!

江國香織の「間宮兄弟」を読んだ!
江國香織の「ぬるい眠り」を読んだ!

江國香織の「きらきらひかる」読了。

「東京タワー」、あるいは江國香織について・1

「東京タワー」、あるいは江國香織について・2

田中慎弥の「完全犯罪の恋」を読んだ!

 

田中慎弥の「完全犯罪の恋」(講談社文庫:2022年11月15日第1刷発行)を読みました。

 

「すごい小説を読んでしまった。
私はこの先も、何度も自分の血を辿るように
この作品を読み返すと思う」
――紗倉まな

「人は恋すると、罪を犯す。
運命でも必然でもなく、独りよがりの果てに。
その罪を明かさないのが、何よりの罰」
ーー中江有里

 

芥川賞受賞後ますます飛躍する田中慎弥が、過去と現在、下関と東京を往還しながら描く、初の恋愛小説。


「私の顔、見覚えありませんか」
突然現れたのは、初めて恋仲になった女性の娘だった。

芥川賞を受賞し上京したものの、変わらず華やかさのない生活を送る四十男である「田中」。編集者と待ち合わせていた新宿で、女子大生とおぼしき若い女性から声を掛けられる。「教えてください。どうして母と別れたんですか」下関の高校で、自分ほど読書をする人間はいないと思っていた。その自意識をあっさり打ち破った才女・真木山緑に、田中は恋をした。ドストエフスキー、川端康成、三島由紀夫……。本の話を重ねながら進んでいく関係に夢中になった田中だったが……。

 

田中慎弥:

1972年山口県生まれ。山口県立下関中央工業高校卒業。05年、「冷たい水の羊」で第37回新潮新人賞受賞。08年、「蛹」で第34回川端康成文学賞受賞。同年、「蛹」を収録した作品集「切れた鎖」で第21回三島由紀夫賞受賞。12年、「共喰い」で第146回(平成23年度下半期)芥川龍之介賞受賞。同作は13年9月、映画化された。19年、「ひよこ太陽」で第47回泉鏡花文学賞受賞。他の著書に、「燃える家」「宰相A」「地を這うものの記録」などがある。

 

過去の関連記事:

田中伸弥の「共喰い」を読んだ!

原作:田中慎弥、監督:青山真治の「共喰い」を観た!

川賞に円城塔さん・田中慎弥さん 直木賞に葉室麟さん

 

 

エマニュエル・トッド他の「人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来」を読んだ!

 

エマニュエル・トッド、マルクス・ガブリエル、フランシス・フクヤマの「人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来」(朝日新聞出版:2024年2月28日第1刷発行)を読みました。

 

ウクライナで、パレスチナで命が失われ、世界大戦はすぐそこにある。ビッグデータを餌に進化するAIは専制者と結びついて自由社会を脅かし、人間の価値や自律性すら侵食しかねない。テクノロジーが進むほど破壊的で不確実になる未来──世界最高の知性が全方位から見通す。

 

制御不能の暴力と、人間を凌駕し始めたテクノロジー。「暴走列車」に乗った人類の終着点はどこにあるのか?全世界で頻発する戦争により、歴史は“暗い過去”へと逆戻りしつつある。一方で、データを餌に肥え続けるAIは、飛躍的な進歩を遂げ、「ビッグテック」という新たな権力者と結託し、自由社会を脅かしている。人類中心で紡がれてきた「歴史」は、次のフェーズへ移行する―。それでもなお、われわれはまだ「歴史のかじ取り」ができるのだろうか?世界最高の知性が、人類の行き着く先を大胆に予測する。

 

ウクライナ侵攻をはじめとした戦争や紛争で世界の行く末が見えにくくなっているなか、エマニュエル・トッド氏(フランスの人類学者/歴史学者)は「戦争とは、結局のところ、現実を確かめる究極の試金石だ」と強調し、「驚くべきことにロシアが世界から好かれている」と指摘。「自らを自由民主主義の価値観の旗手だと考える西側諸国は完全に時代遅れだ」「アメリカのさらなる悪化に備えなければならない」と説いています。

フランシス・フクヤマ氏(アメリカの政治学者)は、ウクライナ侵攻について「欧州全体の政治的な秩序に対する紛争だ」と読み解きます。目にするのは「多極的な世界」だとし、世界は「直面する課題ごとに異なる同盟関係が形成されていく」とします。

マルクス・ガブリエル氏(ドイツの哲学者)は、「資本主義や近代性は、普遍的な道徳的価値と社会経済システムを一致させることを約束しています。うまくいかなければ、信じられなくなり信頼性を失う」としたうえで、「これが今、不平等によって自由民主主義に起きている。資本主義は、もはや解放につながらない」と説明しています。

 

目次

1 戦争、ニヒリズム、耐えがたい不平等を超えて(エマニュエル・トッド 現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている;フランシス・フクヤマ 「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地)
2 「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?(スティーブ・ロー 技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?;メレディス・ウィテカー×安宅和人×手塚眞 鼎談 進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か)
3 支配者はだれか?私たちはどう生きるか?(マルクス・ガブリエル 戦争とテクノロジーの彼岸 「人間性」の哲学;岩間陽子×中島隆博 対談)

 

トッド,エマニュエル[トッド,エマニュエル] [Todd,Emmanuel]
歴史家、文化人類学者、人口学者。1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言

ガブリエル,マルクス[ガブリエル,マルクス] [Gabriel,Markus]
哲学者。1980年ドイツ生まれ。古代から現代にいたる西洋哲学の緻密な読解から「新しい実在論」を提唱し、注目を集めた。「哲学界のロックスター」の異名を持ち、伝統あるボン大学において史上最年少の29歳で正教授に就任した

フクヤマ,フランシス[フクヤマ,フランシス] [Fukuyama,Francis]
政治学者。1952年アメリカ生まれ。1989年に発売した論文「歴史の終わり?」で、西側諸国の自由民主主義が、人間のイデオロギー的進化の終着点なのではないかとの見方を示した

浅田彰の「構造と力 記号論を超えて」を読んだ!

 

浅田彰の「構造と力 記号論を超えて」(中央公論新社:2023年12月25日初版発行、2024年1月15日再販発行)を読みました。

 

「構造と力」がついに文庫化された。、刊行は983年、当時26歳の浅田彰を世に知らしめた本書は、80年代の出版界を沸かせた新しい学知の動き、いわゆる「ニュー・アカデミズム」の代表的一冊である。現在は2023年であり、それからちょうど40年になる。長きにわたり、伝説の本として語られ、読み継がれてきた。

「構造と力」は、日本におけるフランス現代思想の受容に大きな役割を果たした。本書は、「チャート式参考書」のように書こうとした、と「あとがき」で述べられているが、複雑怪奇に見えたフランスの構造主義~ポスト構造主義の理論を、驚くべき鮮やかさで整理している。削ぎ落し、圧縮している。(千葉雅也「解説」より)

 

シラケつつノリ、ノリつつシラケる――。最先端の知の位相を、縦横に、そして軽やかに架橋する。
1983年の初刊以来、40年にわたり読みつがれてきた名著、待望の文庫化!
ポストモダン/現代思想をはじめて明晰に体系化、1980年代には、「ニュー・アカデミズム」を代表する一冊として、社会現象にもなった。しかし、冷戦終結後30年を経て、世界はいまだポストモダンのパースペクティブを描けていない。本書の理論は、混迷する現代社会・思想状況を理解するうえで、今なお新しい。
〈解説〉千葉雅也

 

浅田彰:

1957年、神戸市に生まれる。京都大学経済学部卒業。京都大学人文科学研究所および経済研究所を経て、京都芸術大学(旧京都造形芸術大学)教授に。現在、ICA(Institute of Contemporary Arts)Kyoto所長。83年、「構造と力」を発表、翌年「逃走論」における「スキゾ/パラノ」のパラダイムとともに、時代を画する理論を提示した。その後、哲学・思想史のみならず、美術、建築、音楽、舞踊、映画、文学ほか多種多様な分野において批評活動を展開。ほかの著書に、「ヘルメスの音楽」「映画の世紀末」「20世紀文化の臨界」など。

 

「逃走論」

ちくま文庫

1986年12月1日第1刷

2023年6月5日第23刷

著者:浅田彰

発行所:筑摩書房

 

朝日新聞:2024年3月2日

 

過去の関連記事:

千葉雅也の「現代思想入門 人生が変わる哲学。」を読んだ!

 

多和田葉子の「エクソフォニー 母語の外へ出る旅」を読んだ!

 

多和田葉子の「エクソフォニー 母語の外へ出る旅」(岩波現代文庫:2012年10月16日第1刷発行、2019年10月4日第7刷発行)を読みました。

 

多和田葉子の本領発揮、なかなか読み応えのあるエッセイでした。

 

エクソフォニーとは,ドイツ語で母語の外に出た状態一般を指す.自分を包んでいる母語の響きからちょっと外に出てみると,どんな文学世界が展けるのか.ドイツ語と日本語で創作活動を行う著者にとって,言語の越境は文学の本質的主題.その岩盤を穿つ,鋭敏で情趣に富むエッセーはことばの世界の深遠さを照らしだす.(解説=リービ英雄)

■編集部からのメッセージ
本書の書名は耳慣れない言葉です.英語やドイツ語の辞典に掲載されているわけではありませんが,母語の外に出た状態一般を指す言葉であると言えます.このエクソフォニーという言葉は,ドイツ語と日本語の双方で旺盛な創作活動を続けてきた著者にとって,極めて重要な意味を持っています.なぜなら言語の越境とは著者の文学の本質的主題であるからです.
本書第一部は,世界各地の都市を歩きながら,越境する言語について深められてきた思索の一端が平明でみずみずしいことばによって,開陳されています.世界の多くの街で著者は母語の外へ出る楽しみを語り続けています.ただそれは単なる楽しみだけではありません.
たとえばソウルを訪ねた際には「日本人のせいでエクソフォニーを強いられた歴史を持つ国に行くと,エクソフォニーという言葉にも急に暗い影がさす」と著者は書いています.
また日本語とドイツ語で小説を書く著者を苛立たせるのは,「夢を見る時は何語で見るのか」と質問された時だといいます.なぜなら日本語とドイツ語だけでなく,(全くできない)スペイン語の悪夢さえも見ることがあるからだそうです.(あなたは本質的にはドイツ人になってしまったのではないかとか,魂はやっぱり日本人なのではないかというよくありがちな問いかけを一蹴しながら),著者は夢の中でもたくさんの舌を使って,多様な言葉を話そうとしているのだと言いたいのでしょう.
本書は,異言語の内部で,書き言葉の表現の可能性について鋭く問い続けている著者ならではの鋭くやわらかいエッセイです.言語の越境によって何が見えてきたのか.それは自らの文学をいかに規定したのか.自己の立脚点に真摯に向き合った文章は,言葉に正面から向き合おうというすべての読者にとって,多くの発見をもたらしてくれそうです.
本書は2003年小社より刊行された単行本の復刊で,解説を同じく越境の作家であるリービ英雄氏が執筆しています.

 

目次

第一部 母語の外へ出る旅
1 ダカール エクソフォニーは常識
2 ベルリン 植民地の呪縛
3 ロサンジェルス 言語のあいだの詩的な峡谷
4 パリ 一つの言語は一つの言語ではない
5 ケープタウン 夢は何語で見る?
6 奥会津 言語移民の特権について
7 バーゼル 国境の越え方
8 ソウル 押し付けられたエクソフォニー
9 ウィーン 移民の言語を排斥する
10 ハンブルク 声をもとめて
11 ゲインズヴィル 世界文学,再考
12 ワイマール 小さな言語,大きな言語
13 ソフィア 言葉そのものの宿る場所
14 北京 移り住む文字たち
15 フライブルク 音楽と言葉
16 ボストン 英語は他の言語を変えたか
17 チュービンゲン 未知の言語からの翻訳
18 バルセロナ 舞台動物たち
19 モスクワ 売れなくても構わない
20 マルセイユ 言葉が解体する地平
第二部 実践編 ドイツ語の冒険
1 空間の世話をする人
2 ただのちっぽけな言葉
3 嘘つきの言葉
4 単語の中に隠された手足や内臓の話
5 月の誤訳
6 引く話
7 言葉を綴る
8 からだからだ
9 衣装
10 感じる意味
著作リスト
解説・リービ英雄

 

多和田葉子:
1960年東京生まれ.高校時代第二外国語としてドイツ語を習い始める.早稲田大学第一文学部ロシア文学科卒業.ハンブルク大学修士課程,チューリッヒ大学博士課程修了.文学博士(ドイツ文学).82年よりハンブルク在住.91年「かかとを失くして」(群像新人文学賞),93年「犬婿入り」(芥川賞).2000年『ヒナギクのお茶の場合』(泉鏡花賞),02年『球形時間』(Bunkamura ドゥマゴ文学賞),03年『容疑者の夜行列車』(伊藤整文学賞・谷崎潤一郎賞),11年『尼僧とキューピッドの弓』(紫式部文学賞)『雪の練習生』(野間文芸賞)等の日本語での受賞作品とともに,ドイツ語の作家としても旺盛な創作活動を展開している.

 

過去の関連記事:

多和田葉子の「ゴットハルト鉄道」を読んだ!

多和田葉子の「パウル・ツェランと中国の天使」を読んだ!

多和田葉子の「太陽諸島」を読んだ!

多和田葉子の「容疑者の夜行列車」を読んだ!

多和田葉子の「穴あきエフの初恋祭り」を読んだ!

紫綬褒章を受章した作家の多和田葉子のコメント!

多和田葉子の「星に仄めかされて」を読んだ!

多和田葉子の「地球にちりばめられて」を読んだ!

多和田葉子の「雪の練習生」を読んだ!

多和田葉子の「飛魂」を読んだ!

多和田葉子の「百年の散歩」を読んだ!

多和田葉子の「犬婿入り」を読んだ!

多和田葉子の「献灯史」を読んだ!

多和田葉子の「言葉で歩く日記」を読んだ

和田誠のエッセイ集が42年ぶり復刊!

「開けば和田さんに会える」平野レミの“宝物” 貴重なプライベートに迫る和田誠のエッセイが42年ぶり復刊

 和田誠のエッセイを101本、イラストを79点した貴重なエッセイ集『わたくし大画報』(ポプラ社)が3月13日に発売した。妻・平野レミとのエピソードから、はじめての育児、「週刊文春」の表紙イラストや装丁の仕事まで。 谷川俊太郎や篠山紀信渥美清さん、向田邦子著名人との驚くべき交友録も盛りだくさんで、42年ぶりの復刊となる。

 

200冊以上の著作を残した和田誠。装丁やイラストのお仕事も加えると枚挙にいとまがないが、妻・平野レミも「和田さんは自分を表に出したりしない人」と言うように、自身や家族について書いた本は少ない。 

 

そんな”めったに自分を語らない”和田誠が、家族や仕事、趣味、交友関係などを書いた貴重なエッセイが『わたくし大画報』だ。NHK「趣味どきっ!」にて、平野レミが自身の本棚を紹介していたことをきっかけに、今回の復刊に至った。 

 

復刊に際し、平野レミは「この本は私の宝物。だって私のことが書いてあるんだから。和田さんは自分の世界をちゃんと持っていて、家に帰っても映画ばっかり見てる。自分の話もめったにしない。私のことをどう思ってるかもよく知らなかった。でもこの本を読んだら私や息子たちのことがたくさん、しかもおもしろおかしく書いてある。私のことなんて絶対に書かないと思ってたから驚いちゃった。こんなふうに見てたんだなって嬉しくなりました。ちゃんとチェックしてたのね。そういう和田さんですよ。(中略)和田さんはもういないけど、本を開けばまた和田さんに会える。ちょっとずつちょっとずつ読んでいます。たくさん会いたい気持ちを我慢して。だって、“お楽しみはこれからだ”ですから(笑)。」とコメントしている。

  

妻・平野レミや著名人の似顔絵のみならず、貴重な自画像など貴重なイラストを79点収録。エッセイは101本収録。プライベートな話から当時の書籍や映画、舞台などのカルチャーを知る手がかりともなるものまで多岐にわたる。ぜひチェックしてみよう。

 

 

 

 

 

過去の関連記事:

東京オペラシティ・アートギャラリーで「和田誠展」を観た!

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>