自分はおそらく他の人よりも、新興宗教について詳しいだろうと思います。
 
一時期熱心に新興宗教にハマっていた時期がありました。それは、「信仰していた」というわけではなく、「調べていた」という程度なのですが、新興宗教には、キリスト教や仏教という、何千年もの歴史を持つような既存宗教とは決定的に違ったものがあり、そういった既存宗教の草創期を見ているようで、面白い気がしたためです。
 
何より私は無神論者ですし、それを通り過ぎて唯物論者かもしれません。日本人に典型かもしれませんが、おみくじに一喜一憂し、葬式は仏式で合掌しますが、神も仏も、その存在を信じたことはありません。
 
清水富美加さんの行動について
幸福の科学について
レプロについて
 
の三本立てです。
 
 
 
清水富美加さんの行動について
 
これについて、洗脳だと考えるのはおそらく間違いです。
 
日本では宗教に熱心だったり、特に新興宗教を信仰していたりすると、すぐさま「洗脳」と考えられます。
 
しかしおそらく「洗脳」とは定義が非常に難しいと思うのです。
 
例えば、私たちは直接地球を外から見たことがないけれど、地球は丸くて、太陽の周りを1年かけて回っているのだと考えます。
 
それはなぜか? 教科書にそう書いてあったし、テレビや新聞でそう言っているし、宇宙飛行士がそう言うし。でもそれはすべて外部から与えられた情報です。
 
「洗脳」というのは一般に、外部から与えられた情報を意図的に操作することで行われます。
 
例えばアメリカかどこかで、テロリストに連れ去られた少女がテロリストになった例がありました。それはテロリストが少女に対して、「警察は敵だ」という情報だけを与えて、そのほかの、テロリストに不都合な情報を与えなかったので、そう考えてしまったのです。
 
私たちは小学校や中学校など学校教育で「洗脳」されているのだと言うことができるかもしれません。
 
占い師と共同生活しておかしなことをし始めたらそれは洗脳で間違いないかもしれませんが、例えばイスラム教徒が一日5度、聖地メッカの方向を向いて祈りを捧げるのを「洗脳されている」と思うでしょうか?
 
日本は新興宗教について、悲劇的な歴史を歩んできた国ですから、特に新興宗教に対する警戒心が強いのだと思いますが、だからといって、その信者全員が「洗脳されている」と考えるのはおかしい話です。
 
清水富美加さんについても、ご両親が幸福の科学の信者だったということですから、その環境の中に育って、ごく当たり前にその内容を信じたのでしょう。それは洗脳ではなく、私たちが、「地球は丸く、太陽の周りを1年かけて回っている」と考えるのと同じように、日常の中にあったのだろうと思います。
 
ただ一方で、清水富美加さんの行動については疑問が残ります。
 
なぜ今?
 
彼女にはたくさんの仕事があるわけですし、今回の件でたくさんの大人に迷惑をかけました。それを彼女自身も認識しているようですし、確かに思想信条はその人を形成する根幹ですから、大切なのはわかります。
 
ただ、突然そういう意向を示したことで、多くの人々が不幸になったのは事実なはずで、それを肯定する宗教は存在してはいけないと考えます。
 
当然レプロという事務所の体制にも問題はありますが(後述)、仕事をする大人の振る舞いとして、突然仕事を「しない」というのは、不適切な対応だったでしょう。
 
 
幸福の科学について
 
幸福の科学は、おそらく創価学会に次いで日本で勢いのある宗教団体です。
 
道でありがたそうな言葉が書いてある本を配っていたりするのを見たことがあるかもしれません。
 
幸福の科学は、オウム真理教に類するような、典型的な融合型新宗教です。
 
創価学会は、元をたどれば仏教の日蓮宗。そこから分離した新興宗教から分離した新興宗教です。枝葉の末端とは言え、その教義の多くは日蓮宗当初のものと通じます。
 
しかし、オウム真理教や幸福の科学は、そういう既存の宗教の教えを垣根を越えて融合させ、そこに自分の論理を結びつけることで、強固に体系的な教義を構築します。
 
例えばキリスト教の教えでは元々地球は世界の中心にある平面世界でした。それが球だということになり、地球は世界の中心にあるわけではないとなり、その教義はズタズタです。
 
他の宗教でも同じように、科学が明らかにした事実と、教義が噛み合わず、矛盾して、仕方ないから不都合な科学の事実は無視する、ということにしています。
 
しかし、そういう科学の真実をあらかた知っている現代人が宗教を始めると、そういう矛盾は生まれません。
 
オウム真理教が宗教にも関わらず科学的になれたのもそこで、他の宗教では対立しがちな科学と宗教であっても、融合型新宗教はまるごと抱え込んでしまえるのです。
 
幸福の科学は仏教的なエッセンスを根幹に置きながらも、そこに相当な手を加えることで、現代に耐えうる強靭さを手に入れました。
 
幸福の科学という団体に関してだけ言えば、相当な野心を持った団体だと言えるでしょう。
 
オウム真理教が日本征服ひいては世界征服を言ったほどの具体性はないものの、学校を作り、政党を作っている幸福の科学ですから、相当規模を大きくしたいということについて野心があるのでしょう。
 
元々他の宗教とは違って、新興宗教には信仰心が必要とされますから、信者を増やす努力をしなくては、信者の数は変わらないどころか減ってしまうのが普通です。ですからこれくらい過剰な努力が見られてもおかしくはないのですが……。
 
特に幸福の科学では守護霊を用いて教祖・大川隆法のカリスマ性を証す手法がとられます。
 
これはヒンズー教におけるカースト制のようなもので、「信用できないかもしれないけれど、否定できない」という部分です。
 
カースト制は、「前世の行いに応じて生まれ変わる」というところに根拠を置く身分制度です。ですから、「お前は前世の行いが悪かったから奴隷に生まれたのだ」と言われればそれまでです。
 
その言葉は、「信用できないかもしれないけれど、否定できない」ものです。つまり、「私が奴隷に生まれたのは前世の行いが悪かったからではない」と証明するのは難しいということです。
 
背後霊についても、「それは俺の守護霊じゃない!」と言い張ったとしてもそれは証明できるはずがなく、信じる人にとっては説得力を持ってしまうのです。

(追記:2017/2/17)
清水富美加さんの告白本『全部、言っちゃうね。』が発売されることになりましたが、その出版を請け負ったのは、幸福の科学出版。

そもそも今回の問題にしろ、その根底は〝事務所と個人〟の関係のはずなのにそこに幸福の科学が出てきて、〝出家〟を持ち出してきたことから見ても、幸福の科学は今回の一連の出来事を宣伝道具としか見ていないのでしょう。
 
 
レプロについて
 
レプロという事務所の体制については、以前から疑問を投げかけてきました。
 
能年玲奈さんが退所し、のんと名前を変えて活動することを余儀なくされたことで多くの人がそれに気がついたところでしょう。
 
何がおかしいかといえば、「売り出し方がおかしい」に尽きるでしょう。
 
能年玲奈さんが「あまちゃん」で売れたのに、それからしばらくキャラを守るため作品に出さず、やっと出したと思ったら「ホットロード」に「海月姫」。どちらも大コケでした。
 
新垣結衣さんについても、近年までずっと「視聴率が取れない」と言わしめたのは、レプロの作品選びに理由があったのではないでしょうか?
 
今やZIPの司会を務める川島海荷さんも、特に売り出すというわけでもなく、地味に作品には出させ続け、珍妙なアイドルグループを結成させたかと思えば脱退させ。
 
個人的な思い入れのある稲葉友さんも、やっとドラマ初主演かと思えば、NGT48のプロモーションのようなBSドラマ。
 
清水富美加さんについては、仕事を選ばずに出した感は否めない。特にバラエティでねじり込み知名度を上げた後、話題性がありそうな映画やドラマに押し込む。
 
とにかく乱暴で、作品を選ぶことを知らないような。清水富美加さんが、その信条に反する仕事さえ押し付けられたのだとしたら、それはレプロの重大な過失です。
 
 
 
 
私自身は清水富美加さんの決断を批判するつもりはありません。
 
むしろこれを受けて、「洗脳」という言葉を持ち出してみたりする人々の方に、いま話題の不寛容が現れている気すらします。
 
トランプの悪口を言うのもいいが、まずは自分の他者に対する思考から、思い直すべきなのではないでしょうか。