旧暦5月17日、どういう加減か夏前になると15夜から2~3日過ぎてからの方が潮が引くので今日が干潟観察月和(つきより)。
新月と満月でも潮の引き具合は微妙に違うし時差もある、この辺の原理を分かりやすく説明してくれてるページが無いものかと思うのだが未だによく分からない。
昨夜のうちに粗方種の部分だけに仕分けした種枝、ガーゼ、マーキング用の鉄筋が播種の三点セットだ。
まず広げたガーゼに砂を敷いて、アマモの種枝を乗せ、両端を織り込んで巻き寿司のようにくるくる丸めてゴムで縛る。
個人的にアマモ巻きと名付けたこのメソッド、はっきり言って水産試験場のパクリです。
通常試験場のアマモ場再生事業では、花枝から種を取りだしいくつかの工程を経て沈殿する完熟した種だけを使用するらしい。
当初は同じ方法をと考えたのだが、ものすごく手間がかかるし寒い冬の夜中に播種作業をしなければならず、考えただけでも気がめいる。
それに試験場のように資金があるわけではないので余分な経費はかけられない、出来る限り楽しく安くが長続きする絶対条件なので間の面倒な工程をすっ飛ばして花枝を直接ガーゼ巻きにして埋設あるいは放置することにした。
ここいらが趣味の範囲でやってるお気楽さ、誰に頼まれたわけでもないので忙しかったり面倒くさかったら「やーめた~」という禁じ手さえも自在に繰り出せるのである。
とはいっても一応この方法に至るまでに最初は流れアマモから始まって5年くらい様々な定植実験を行っていて、この方法でいけるのではないかというある程度の確信があっての中抜き飛ばしメソッドだ。
試験場では砂じゃなくて腐葉土でガーゼ巻きを作ったりしてるが、過去の実験結果から発芽条件は問題ないので砂は単にアマモ巻きが浮かない為のウエイト代わり。
今回の播種計画は当初迷いに迷った、昨年植えたアマモ巻きの発芽率がかなり悪く、方向性を見失ったのだ。
しかし観察を続けるうちに、予想外の結果が出ているのがわかった。
今年5/17
のアマモ分布図
をごらんいただきたい。
注目すべきポイントは沖合いに埋めたアマモ巻きの発芽結果と、CDブロックの防波堤沿いに自然発生した個体数の多さだ。
干上がる場所に植えたアマモは水温が上がると葉先が痛んで花をつけにくいのでかなり沖合いの干上がらないところへ植えたところ発芽率がかなり低下した。
更に手抜きしようとアマモ巻きを放置しただけのところにいたってはほとんど発芽していない。
ところが意図せぬ結果で、どうやら放置したアマモの種は波に打ち寄せられてCDブロックの波打ち際で自然発芽しているみたいなのだ。
干潟の全体図
をご覧いただきたい。
南側Aブロックの右端に下水溝があるのだが、この上流にはノリ加工場があって汚水が流れ込んでくる。
汚水といってもほとんどが海水と真水だが、最盛期の真冬には排水溝近くの海面が赤く染まるくらいノリの処理水が流れ出てくる。
赤色はノリのカスだが一緒に加工時に使われている酸が流れ込んでくる。
その他生活排水も流れ込んで来て、排水溝周辺の下場は磯焼けしているのか海草類はあまり生えていない。
因果関係ははっきりしないのだが、これが干潟減少の大きな要因の一つではないかと思っている。
まあそれやこれやで、今年の播種は排水溝を避けて北側のCDブロックをメインにと思っていた矢先、意図せぬ結果としてCDブロックに自然発生のアマモが大量に現れた。
元々このCDブロック(特にCブロック)のあたりはなぜかほかのエリアよりえぐれていて干上がらない。
海藻類も多く水没しないため観察条件としては悪いので、今までなんとなく忌避していたエリアだった。
しかし今回の結果を見てよくよく考えてみると、これら観察にとっての悪条件は逆にアマモの発芽にとっては好条件だったと思えるのだ。
更にこのエリアのえぐれている原因を推測するに、防波堤で直接は見えないが実は山頂近くからある谷筋の出口付近で台風ともなれば大量の雨水が流れ込むはずのエリアである。
過去の巨石調査で山の地形は知り尽くしているし、事実すぐ上の谷筋に大水で出来たと思われるかなりのえぐれを確認している。
表層以外にも、地下水脈もコンコンと流入していて干潟一番の水脈ではないかと思われる。
なんか蟲師みたいな世界になってきたが、アマモの発芽に雨水が重要な役割を果たすのは周知の事実、いままでブラックボックスだったCDブロックはこの干潟で一番条件の良い場所である可能性が出てきた。
事実今年生えたアマモの中ではこのエリアが一番良い状態で、花枝も出てきてる。
逆に沖合いのエリアの発芽率が悪かったのは雨水がら遠いことに原因があるとすれば辻褄が合う。
それと気になるのは発芽後の葉の状態が良くないのである。
葉先がちぎれたり変な藻類がこびりついて、盛んに分けつはするが30センチほどの薄汚れた葉ばかりで花株が出ない。
原因としては、おそらく干潟のエッジ部分であり駆け上がり地形となっているので、波が立つポイントとなっていて葉先が波に揉まれて欠損しているのではないかと思われる。
これも一回だけでは確定出来ないので、昨年と同じ場所の1mほど沖合いにアマモ巻きを植え、発芽率と地下茎による越年が見られるかの比較検証を行う。
あくまで推測につぐ推測の推論だが、こんな小さい干潟でもわずかばかりの高低差や山の地形水脈等でかなりの変化があることが見て取れる。
底の浅い干潟なれど、改めて里海の奥深さを思い知らされた思いだ。
ともあれ今年でデーター取りと実験段階を終え、来年は実践段階へ移行することになりそうだ。
この辺は漁師的感覚というか潮時が来たなみたいな感覚なのでうまく説明できないが、とにかく来年は一発勝負をかけてみたい気分が高まってきた。
と、ふつふつと沸いてくる妄想にふけりながら55個のアマモ巻きを植え終わった。
植えたところには必ず先を丸めた鉄筋でマーキングをして今年の播種作業を終了、来年の春どんな結果が待ち受けているのか楽しみである。
おまけ偏
Aブロックには生えてるコアマモが他のブロックにはまったく生えないので、Dブロックに3本の地下茎を移植してみた。
2010年の猛暑で一度は消失したコアマモだが、2011年ほんの10株ほどを島内の別の場所から移植したところ、驚くほどの勢いで復活し以前の倍ほどの群生になっている。
こちらもどうなるか楽しみだ。
今回の経費
ガーゼ 802円
D10鉄筋 536円
計 1338円 也
アマモの播種三点セット、種とガーゼと鉄筋
ガーゼに砂を敷いてアマモの種を巻き巻きアマモ巻き
今年は55個植えてみる
おうおう、花が咲いている。花枝は単独で出てくるのが多い
良い枝ぶり
植えた後は鉄筋でマーキング
お~、ここにも花が、、、
良い感じに生えてる、このあたりのが一番元気だな
今回の経費1338円也