このブログは洗足音楽大学の授業How to Improvise の予習復習用に書いております。
履修学生の方に特化した内容です。
クラス内で使う專門用語なども出てきます。
御理解の上お楽しみください。
前回は、ブルースとは何か?
それは
「AAB形式の12小節の曲」である〜
と、いうお話をしました。
今回は・・・
ブルースのメロディの秘密
と、いうお話をしたいと思います・・・
ブルースとは誠に不思議な音楽です。
クラシックと対極に進化した音楽、と言えるでしょう。
ヨーロッパ発のクラシック音楽は和声(コード進行)を主役として進化してきました。
メロディはコード進行の僕(しもべ)のようなものです。
「和声」がメロディのみならずその楽曲の個性を決定するくらい、影響力を持っています。
モーツァルトの曲とか、知らない人が聴いても和声を間違えたら分かると思います(怖〜〜〜)
それに対してブルースはメロディが絶対的なヒーローです。
いかなるコード進行があろうとも「わしはわしやから〜」といって譲りません。
そんなブルースってどこから来たのでしょう?
ブルースの誕生は諸説ありますが、1800年代(19世紀)頃
映画「ハリエット」は正にその時代です。
映画を見れば解ると思いますが、この時代に、生きる為に必要不可欠な何か(祈りとも、芸術とも、エンターテイメントとも、宗教とも、呼べる何か)が存在したのは確かな事です。
それはものすごいパワーを持っていました。
ブルースの原型と言われている「ワークソング」や「フィールド・ハラー」のDNAは明らかに現在の Pops,R&B,Soul,Rock その他多数の音楽のなかに残されています。
和声が変わろうが、テクノロジーが発達しようが、金があろうが無かろうが・・・・アナログかデジタルか?そんなの関係ないのです。
そのパワーは全く衰えずに、私たちの琴線を震わせ続けているのです。
ぐだぐだいってもしょうがないのでので、先に進みます・・・
ブルースは時代が変わってもある一つの共通点を持っています。
それが今回の主役、ブルース・スケールです。
Minor Blues Scale
Major Blues Scale
「?これってペンタじゃない?」
その通り!ペンタトニック(5音階)に1音(blue note )を足した6音スケールです。
このスケールがブルースのメロディの素になっています。
少しだけメロディの素、ペンタの歴史をたどってみましょう。
Johnny Lee Moore with 12 Mississippi Convicts
G♭マイナーペンタです(Gbmコードで伴奏してみましょう)
"Jody" (Prison work song)
これまたG♭マイナーペンタ(Gbmコードで伴奏してみましょう)
これらは「ワーク・ソング」と呼ばれる作業時の掛け声のようなもので、日本でいう「ヨイトマケの歌」です。(母ちゃんの為ならエンヤコーラ〜)
労働者達は互いに「息を合わせる為に・・・励ます為に・・・苦しさを忘れる為に・・・」ワークソングを歌っていたのです(想いを馳せてください)
Work Songというタイトルの有名なスタンダード・ナンバーもあります。
譜例1)
この曲のメロディにもMinor Blues Scaleが使われています。
「ブルース・スケールの使用法」
ブルース・スケールはブルースのコード進行の上で大変心地よく響きます。
この「響きます」というところがミソで(実は)ブルースのコード進行はブルース・スケールに伴奏を付けているような物?なんです…
Blues in C のコードは次の3つです。
C F G
or
C7 F7 G7
いわゆるトニック、サブドミナント、ドミナントです。
この三つのコードの上でブルース・スケールはどんな表情をみせるか?
ブルースの各コードを弾きながらメロディ(ブルース・スケール)を弾いてみましょう。
まずはブルース・スケールの性格をつかんでください。
右手でマイナー・ブルース・スケールをランダムに弾きながら、
左手でコードを弾いて見てください。
Ex1)
Ex2)
テンポは自由です。
歌いながらやっても気分いいですよ(渋めに・・・)
マイナー・ブルース・スケールがブルースの各コード上でどのように響くのか?それを味わいながら確認してください。
ブルース・スケールに限らず、スケールを練習する時に効果的な方法は「伴奏と共に弾く」ということです。
ピアノの方はもちろん左手を使っていただき、その他の楽器の形はマイナスワンやループマシン、DTMなどを駆使してスケール練習をしてみて下さい。
そのほうが気分もいいし、サウンドも覚えられて一石二三鳥位の効果はあると思います。
次はジャズ・ブルース in C の各コード上で同じ事をしてみましょう。
これらのコードを弾きながら右手で弾いたり歌ってみたりください
Ex3) Jazz Blues進行の上でブルース・スケールを弾く(各コードをルバートで弾きましょう)
ブルース・スケールはコードに対して使うのではなくキー(調)に対して使います
キーが C ならば C ブルース・スケール(マイナー or メジャー)
キーが Cm ならばC ブルース・スケール(マイナー)
を使います。
コード進行のことは考えなくて良いのです(楽でしょ〜?)
あなたがコードを意識しないでブルース・スケールを弾いてもコードが変われば違った表情を見せるのです。
どんな服を来ても似合うお洒落な奴?と言ったところでしょうか?
クラシック音楽やジャズの理論ではコード進行に対して、濁った音を使ってはいけない!という、「しきたり」がありますが、ブルースにおいてはそれは通用しません!
「何?コード?ふん、知らんがな〜何でもええからワシについてきたらええねん」(素敵)
メロディはメロディ、コード進行はコード進行(俺は俺、おまえはおまえ)なのです。
前述のブルースの初期の「ワークソング」や「フィールドハラー」のなかには、現代のいろんな音楽の中に生きているメロディ達がたくさん見られます。
現代の R&B、ゴスペル、Soul 等は、ブルースが服(コード進行)を着替えただけ・・・とも言えます。
ブルース・スケールを使ってスキャットをするのも良い練習になります。
ゴスペルやソウルのボーカリストがやるような「コブシ」をイメージしてみてください。「歌」こそブルースを練習する最も最高のツールと言えるでしょう。
ブルースは元を辿れば「歌」の音楽です。スケールという目に見える形にするから「お固い印象」になってしまいますが歌った時に「あ?きもちいいい〜」となればそれでいいのです。ブルースの伴奏(YouTubeにあるよ)で歌って気分良くなってください。
「先生〜」
「ハイなんでしょう?」
「さっきからマイナー・ブルース・スケールの話ばっかりですが、メジャーさんが可哀想ではありませんか?」
「すいません、忘れてました・・・」
「Major Blues Scaleの使い方」
メジャー・ブルース・スケールはこちらです
マイナー・ブルース・スケールはメジャーの時もマイナーの時も使用可ですがメジャー・ブルース・スケールは注意が必要です。
メジャーコードの時はもちろん、sounds good !です。
譜例2)音をだして確かめてみてください。
ブルーノートである -3rd の音がメジャートライアドの3rdに対するアプローチ・ノートとしても機能するし、#9にもなります。
譜例3)
譜例4)
それに対してマイナー・コードの上では注意が必要です。
譜例5)音をだして確かめてみてください。
Cm の -3rd とブルース・スケール内のメジャー3度は♭9になってしまい、伸ばす音としては扱いにくいという訳です。
従って、ブルース進行に
メジャー・ブルース・スケールを当てはめる場合は注意が必要です。
それを耳で確かめてみましょう。
譜例6)メジャー・ブルース・スケールをBlues進行に当てはめてみた
赤い矢印の音に違和感があります(よね?)
注意は必要ですが、効果的に使えば sounds very good !
作戦を練りましょう!
名付けて・・・
ブルース・スケール!メジャー&マイナー友達大作戦!
ハイ〜、というわけで
3コードブルースを少し大人っぽく?してみましょう。
譜例7)最もシンプルなブルース進行
譜例8)メジャー&マイナー友達大作戦!を使ってみると・・・(弾いてください)
どうですか?
Ⅰ(トニック)とⅣ7(サブドミ)とⅤ7(ドミナント)のサウンド・カラーが
メジャー&マイナーの2つのブルース・スケールを使うことによって
サウンドの輪郭がくっきりしたと思いませんか?
メジャー&マイナー友達大作戦!はシンプルですが効果的なアドリブ・テクニックで、この手法を使いこなしている素晴らしい演奏家は数多くいます。
「1625」いわゆる循環コード進行を・・・メジャー&マイナー友達大作戦!で弾いてみると・・・
この様に緊張と緩和を作ることができますね?
この現象を利用して
ブルース、ゴスペル、 R&B
等のミュージシャン達は
ブルースを表現しているのです・・・
エリック・クラプトン、ピーター・グリーン、ミック・テイラー、スティービー・レイ・ヴォーン、ジョージ・ベンソン、コーネル・デュプリー、エリック・ゲイル、デヴィッド・スピノザ、ジョン・トロペイなど
ギタリストはこのテクニックに長けた方が多くいます。
スティービー・ワンダー、ダニー・ハサウェイ、マーヴィン・ゲイ、アル・グリーン等の演奏も参考にしてください(授業内で聞きましょう〜)
ここで皆さんに質問ですが、(譜例7)のようにメジャー&マイナー・ブルース・スケールを特定のコードの上で配置すると何故?コード・サウンドの輪郭がくっきりするのでしょうか?
ちょっと考えてみてください・・・
どうですか?
理屈を使って、ブルース・スケールとコード・トーンをぶつからないようにするという方法はあります・・・が
ブルースのミュージシャン達は耳を使ってカラーの使い分けをしているのだと思います。
緊張したい!=マイナー
落ち着きたい〜=メジャー
悲しい=マイナー
明るい=メジャー
ブルースっぽく=マイナー
カントリーっぽく=メジャー
R&B=マイナー
ポップ=メジャー
耳を使って、メジャーとマイナーを言ったり来たり・・・混ぜたり・・・
それが一番自然ですね
ブルースという音楽の一端を垣間みていただけたら幸いです。
それでは最後にジャズ・ブルース進行にメジャー&マイナー・ブルース・スケールを当てはめてみましょう。
譜例9)ジャズ・ブルース進行 in C
必ずしもこのスケールの配置でなくてはいけないという訳ではありませんが、それなりの理由があってスケールを決めています。それを自分なりにアナライズして学習材料にしてください。
そして自分で工夫しながらメジャー&マイナー友達大作戦!を作ってみてください。
こんな感じです〜
譜例10)
皆さんは各スケールの特徴に慣れる為に書きソロを作る事をお勧めします。
最後に「マイナー・ブルース・スケール」「メジャー・ブルース・スケール」
それぞれの書きソロを載せておきますので参考にしてください。
譜例11)「マイナー・ブルース・スケール」
譜例12)「メジャー・ブルース・スケール」
来週はブルースのコード進行についてお話し致します。
こちらの本は今回の授業内容をさらに深められる内容です。
興味あれば是非〜
私の本もよろしく〜〜