私と、世界三大投資家のジム・ロジャーズ氏との共著『大暴落 金融バブル大崩壊と日本破綻へのシナリオ』が26日にプレジデント社から発売される。今週と、来週2回に分けてその読みどころを紹介したい。

ジムさんは、次の経済危機について「私の人生で最大の危機になる」とその規模の大きさを強調する。米国、欧州、中国を巻き込んで起こる「世界同時不況」になると予想している。

私は、やや感覚が異なり、集中的に日本に悲劇が訪れると考えている。コロナで世界の中央銀行は債務を拡大した。しかし各国の中央銀行は引き締めや回収をはじめている。日本だけが「お金をバラまき続けている」、政治もポピュリズムで、財政健全化は進む気配がない。

コロナ前のアベノミクスから大量の国債を発行しており、金利が上昇すれば、政府は予算を組めなくなる。日本は固有の理由で、破綻しかねない。大暴落や、世界大不況が2024年以降、いつ訪れてもおかしくないという見方は一致した。

ジムさんは、「世界中に不満を抱えている人が数多くいる」ことを根拠にする。バラマキが、手っ取り早い不満の解決手段だが、やがて効果はなくなり、「その後大きな痛みを伴う」という。不満がたまった国民が増えると、戦争が勃発するとも指摘している。

最近の世界情勢を見ても、第三次世界大戦の兆候も見受けられる。為替については「1ドル=360円」の時代に逆戻りするという考えで完全に一致した。

ジムさんは「借金を減らす」そして「出生率を上げるか、移民を受け入れる」のが解決策だというが、「政治家や日本人はそれを好まない。だから円安はいっそう進む」と警鐘を鳴らす。

日本国債の格付けは、「実際の国の健康度よりも高くなっている」ともいう。政府や日銀は、不安はないとアピールするが、ジムさんいわく、「政治家や中銀は国民に真実を伝えないこと」があり、「すべてをうのみにしてはならない」とも指摘する。

実際、実質賃金はマイナスの中で、岸田文雄首相だけが経済の好循環をアピールしている。中国の不動産バブルが日本にどう影響するかも意見交換した。

ジムさんは中長期でみて次の覇権国は中国という考えだが、「今回の中国の不動産バブル崩壊について、長期化はしないと思うが、元に戻るまでには、それなりの時間がかかるだろう」という。

私はこれに対しては、楽観視している。中国は共産主義の強権的な体制下で、財政危機に陥れば、日本ほどポピュリズムを意識せずに政策修正を行える。実際にワタミがマカオに出店した高価格帯のブランド「饗和民」は絶好調だ。中国の富裕層はそれでもかなりの数がいて強いということだ。

今週も現地に行きこの目で確認してくる。現在、書店にはNISAや、FIREの本が並ぶ中で、真逆のタイトルの「大暴落」だが、大暴落から資産を守ってほしいのが本書の趣旨だ。「人の行く裏に道あり花の山」だと思っていただきたい。
(ワタミ代表取締役会長兼社長CEO)



【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より