ウンブリア州でワインの生産量が最も多いDOCはオルヴィエート(Orvieto)です。州のDOCワイン生産量の約8割を占めています。
 
イタリア半島中央部にはエルトリア人という先住民族が住んでいました。エルトリアはローマとの戦いを繰り返しましたが、紀元前260年ころにローマによって征服されました。
 
オルヴィエート はエルトリア人が築いた城塞都市の一つで、町は丘の上にあります。DOCオルヴィエート はこの地域の7つの自治体で構成しています。昔からトレッビアーノ(Trebbiano)という白ぶどうを使ったワインを造ってきました。現地では、トレッビアーノの中から選んだ優れたクローンの品種だとしてプロカニコ(Procanico)と呼んでいます。
 
この地ではワインを低温の凝灰岩の洞窟の中で保存していたため、発酵が完全に終わらずに糖分を残した甘口ワインが造られてきました。現在は、「オルヴィエート」と「オルヴィエート・クラシコ」という名前で白ワインを造っています。
 
最近では赤ワインも造られています。DOCロッソ・オリヴィエターノ(Rosso Orvietano)が1998年に成立しました。アリアニコ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、 サンジョヴェーゼなどを使った赤ワインのDOCです。
 
 
ウンブリア州はトスカーナ州の東隣の州です。面積もワインの生産量もトスカーナ州のおよそ3分の1です。トスカーナ―州ではDOCまたはDOCGのワインが生産されるワインに占める割合がおよそ3分の1であるのに対し、ウンブリア州のそれはおよそ6分の1です。
 
ウンブリア州の赤ワインは、ウンブリア州出身のワイン醸造家リカルド・コタレッラ(Riccard Cotarella)氏の貢献などがあって、1980年代に品質が大きく向上しと言われます。
 
ウンブリア州には二つのDOCGがあります。モンテファルコ・サグランティーノ(Montefalco Sagrantino)と

 

(Torgiano Rosso Riserva)です。DOCからDOCGに格上げされたのは、前者が1992年、後者は1991年です。
 
 モンテファルコ・サグランティーノはサグランティーノという土着品種のぶどうを使います。赤、パッシート、薄甘口があります。パッシートは、ぶどうを乾燥させて糖度を高めた状態で発酵させて造るワインです。
 トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァはサンジョヴェーゼをベースにした赤ワインです。
 
イタリア・トスカーナ州の中央部にサン・ジミニャーノ(San Gimignano)という人口7000人ほどの街があります。この街にはたくさんの高い塔があり、ユネスコの世界遺産に登録されています。塔は中世の貴族が権力と財力を誇示するために競って建てられました。現在は14の塔が残っています。
この街の近郊で「ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ」(Vernaccia di San Gimignano)という品種の白ワイン用ぶどうが栽培されています。ここで造られる白ワインは、DOCGに位置づけられています。
「ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ」は1966年にDOCを取得しました。当時はまだDOCGの格付けはなく、DOCが最上級でした。1993年にDOCGに昇格しました。
トスカーナ州には8つのDOCGがありますが、「ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ」だけが白ワインを生産しています。他の7つのDOCGはすべて赤ワインの生産地区です。
・ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ
    Vernaccia di San Gimignano
・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
    Brunello di Montalcino
・カルミニャーノ
   Carmignano
・キャンティ
    Chanti
・キャンティ・クラシコ
    Chanti Classico
・ヴィーノ・ノービレ・モンテプルチアーノ
    Vino Nobile di Montepulciano
・モレッリーノ・スカンサーノ
        Morellino Scansano
 
トスカーナ州のDOCルールにこだわらずに質の高いワインを造ろうとする動きは1960年代からありました。それらのワインが国際的に認められるようになると、英語圏ではスーパー・タスカン(SuperTuscans)と呼ばれるようになりました。
 
 トスカーナのワインはサンジョヴェーゼを主体にして造られていますが、スーパー・タスカンと称される「サッシカイア(Sassicaia )」、「

 

(Tignanello )」、「ソライア(Solaia)」などワインは、カベルネソービニヨンを主体とするか、またはサンジョヴェーゼにブレンドしています。
 
「サッシカイア」が世界に注目されるきっかけになったのは、英国のワイン専門誌「Decanter」が1978年に行ったブラインド・テイスティングです。世界11カ国からノミネートされた33のカベルネ系品種を使ったワインの中で「サッシカイア」がトップに選ばれました。
 
スーパー・タスカンの誕生に貢献した一人にGiacomo Tachis(ジャコモ・タキス)氏がいます。Tachis氏は、1954年にピエモンテ州Albaの公立ワイン専門学校を卒業後、Antinori社(「ティニャネッロや「ソライア」の製造元)の技術ディレクターを勤めたり、1993年に同社を退社した後は、ワインの研究・開発に関するコンサルタントとして活躍し、「サッシカイア」の製造にも関わりました。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリア・トスカーナ州のフィレンツェとシエナを結ぶ高速道路の東側を走る国道222号線は、「キャンティ街道」と呼ばれます。この街道に沿ってシエナから北に12キロ行った場所にフォンテルートリ(Fonterutoli)という町があります。
 
フォンテルートリに伝わる話があります。昔、フィレンツェ共和国とシエナ共和国は領土を巡って争っていました。争いに行き詰った2つの共和国は1208年に一つの取り決めを行いました。鶏が朝を告げる鳴き声を上げたら、それぞれの町から騎士を出発させ、2人の騎士が出会った場所を境界にしようという取り決めでした。
 
シエナの騎士は白い鶏が鳴くのを待って、北に向かって街道を走りました。一方、フィレンツエの騎士は黒い鶏が鳴くのを聞いて、南に向かって街道を走りました。
 
2人の騎士が走り始めた時刻は、だいぶ差がありました。フィレンツェの黒い鶏は、前日から餌を与えられていなかったので、夜明けを待ちきれず、早々と鳴き声を上げたのです。
 
2人の騎士が出会った場所がフォンテルートリです。フィレンツエは領土を大きく拡大し、キャンティ地域のほとんどはフィレンツエに属することになりました。
 
「キャンティ・クラシコ」のボトルネックにある黒い鶏のマークはConsorzio Vino Chianti Classico(「キャンティ・クラシコ」ワイン協会)の商標です。ちなみに黒い鶏はイタリア語ではガッロ・ネーロ(Gallo Nero)と言います。