試験中の吐き気で入試に失敗!メンタルを回復させる親子の食事とは?【受験専門の心療内科】
吐き気は、単に不快だと言うだけの問題ではありません。
脳の扁桃体と呼ばれる部分が暴走を起こしていることが多いのです。
その悪影響で、吐き気が出るだけでなく、問題を解くための思考力や判断力も連動して低下してしまっていることが 、最新の脳医学の研究で解明されてきました。
この作用によって、試験中に実力が発揮できなくなってしまい、学力があっても入試に落ちる危険性があるのです。
ただし、こうした症状は、家庭での食事の仕方を改めることで、かなり改善できます。
さらに、正しい食事のとり方を受験生だけに押し付けるのではなく、ご家族がみんなで一緒に取り組むと、さらに改善効果が高まることがわかっています。
ご家庭で食事をとるときに、どのような点に気をつければ、脳の扁桃体の暴走を抑えられるのか?
具体的には、ご家族は、どのように食事に取り組めばいいのか?
受験生を専門に診療している心療内科医としての経験と専門知識をもとに、わかりやすく解説します。
試験中の吐き気で入試に落ちる理由とは?
試験を受けているとき、緊張して吐き気がした経験がある受験生は、それが、たとえ軽い吐き気であっても、油断しないでいただきたいです。
「吐き気なんて我慢するればいいんだ・・・」と思っている人も多いようです。
でも、受験生にとって本当に怖いことは、単に不快だということではありません。
脳が、試験の問題を解く能力を低下させている危険性があるということが最大の問題なのです。
原因は脳の扁桃体の過剰な刺激!
吐き気がする最大の要因は、脳の中にある扁桃体という部分で、不安感が過剰に作られているためです。
そのため、胃が食べ物を消化するための胃液の分泌や、蠕動運動という活動が困難になります。
そこで脳は、だったら、いっそうのこと、嘔吐することで胃の中を空っぽにしておけばいい・・・と判断するわけです。
ただし、受験生にとっては問題はそれだけではなく、扁桃体の過剰な活動によって、脳内の背外側前頭前野という部分の活動が低下してしまっていることです。
これが、学力があっても入試に落ちてしまう元凶となるのです。
入試の本番で最大化する脳の機能低下!
脳の背外側前頭前野は、ワーキングメモリーという思考力や判断力を生み出す上で中心になる機能を担っています。
この能力が低下するため、試験の点数は、本来の学力よりかなり低下してしまうわけです。
模擬テストで、ほんの少し吐き気を感じた程度の受験生は、そのときは脳内で生じた問題はわずかかもしれません。
しかし、大半の受験生が、本番の入試に臨むときにプレッシャーを感じて、模擬テストの時よりはるかに大きなストレスを抱えます。
その結果、多くの受験生が、模擬テストとは比べ物にならないほど脳の機能低下は激しくとなるのが一般的です。
場合によっては頭が真っ白になって、白紙で提出することになる受験生もいます。
そうならないよう、受験生ご本人も受験生の親御様も、今から対策を講じていただきたいです。
吐き気で入試に落ちる危険な食事習慣とは?
このように脳の扁桃体の暴走によって試験の日に吐き気を催す受験生には、いくつか、原因となる間違った食事の仕方をしているという共通点があります。
ぜひ、受験生や親御様は、今すぐ、セルフチェックをしていただきたいです。
【吐き気で入試に落ちる危険な食事習慣】
①朝食を食べていない。
②朝食は流動食など噛まずに食べられる食事しかとっていない。
③朝食や夕食を家族と一緒にとっていない。
④食事中に食べている料理の味や香りについて、家族と話すことがない。
⑤食事中に家族を表情などをよく見ながら談笑することがない。
家族との食事が受験生の脳に及ぼす効果とは?
①と②の朝食の取り方は、とても大事です。
これについては、後ほど、「朝食トレーニング」という、受験生の脳と心の状態を簡単に回復させることができる朝食の取り方をご紹介します。
ここでは、まず、家族との食事がなぜ重要なのか、メンタル医学の研究結果を踏まえ、解説しましょう。
実は人間の消化器官は、もともと、家族と一緒に食事を取ることを前提に発達してきたものです。
先史時代の遺跡を分析した研究でも、ほぼ例外なく、家族がともに食事をとっていたことが証明されています。
また、胃の働きを分析した研究でも、一人で食べるときより家族とともに食べたほうが、胃液の分泌や胃の蠕動運動など、胃の働きが改善することがわかっています。
さらに、こうした状態が家族との食事で繰り返されることにより、脳の扁桃体の活動が穏やかになり、それによってストレスを受けても暴走しにくくなる効果があるのです。
その結果、入試の本番という極めて緊張感の高まる状況でも、脳が正常に働き続けてくれるわけです。
家族の表情を見ながら食べるとストレス緩和!
ご家族と、ただ一緒に食事を取るだけでも一定の効果はありますが、さらに、ご家族の顔をよく見ながら食事をとると、その効果がさらにパワーアップします。
表情を通してコミュニケーションをとると、食事によるストレス緩和作用が、よりいっそう高まってくれるからです。
また、こうした食生活をしている家族は、うつ症状がでにくく、また、勉強や仕事でも、しっかり集中力が高まることがわかっています。
それは、脳の扁桃体の活動が健康な状態を維持できているためです。
人間の遺伝子に刻み込まれたメンタルの秘密!
もともと人類は、バンド(小規模家族集団)とよばれる単位で、大自然の中でくらいしていました。
私たちのメンタルに影響を与える遺伝子は、バンドの時代のライフスタイルに適応するように進化していることが進化心理学の研究で解明されています。
だからこそ人間のメンタルは、辛いことがあってストレスが高まった場合に、家族で食事を取るときに、お互いに顔を見ながら談笑することで、ストレスを一気にリセットできる仕組みが進化したのです。
いつ肉食動物に襲われるかもしれない当時の生活に脳も心も負けなかったのは、家族との食事も一定の効果をもたらしていたわけです。
それが、遺伝子を通して現代人のメンタルにも受け継がれているのです。
受験生に食事の味や香りを尋ねよう?
受験生の親御様に、ぜひ、実践していただきたいのは、今、食べている料理について、味や香りがづなのか、受験生に尋ねるということです。
慌ただしい生活をしている受験生は、食事なんて、ただ、胃に流し込んで栄養素を補給できればいいんだと思っている人が少なくありません。
しかし、レントゲンで胃を撮影しながら食事をとっていただくと、味や香りを意識しただけで、食べる前なのに胃が動き出す様子がわかります。
逆に言えば、味や香りを意識せずに食事をとることは、胃にとっても脳の扁桃体にとっても、とても不自然なことをしているということです。
その積み重ねが、入試の最中の吐き気と、扁桃体の暴走による思考力や集中力の低下に結実するのです。
機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia)とは?
主に心理的な要因で吐き気や胸焼けがすることに対し、数年前に、機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia)が正式な病名として認められました。
これは慢性的な症状に限って使用される病名で、試験のときだけ一過性の吐き気がする場合は、機能性ディスペプシアの診断基準を満たしません。
ただし、入試のときに一過性の症状として吐き気などが起こる場合も、脳の扁桃体で起こっている現象は、ほぼ同じだということがわかっています。
試験のときに吐き気がするというのは、ただ不快だという、それだけの話しで済ませてはいけないということです。
入試の予防に役立つ朝食のとり方!
先ほど少し触れた、朝食の取り方を工夫する「朝食トレーニング」によって、入試の吐き気を予防できるということも、機能性ディスペプシアの研究から明らかになってきたことです。
また、朝食の様子をご家族が観察したり、ご自分でセルフチェックを行うと、機能性ディスペプシアの危険性はある程度、判断できるのです。
「朝食トレーニング」はどのように行えばいいのかを含め、詳しくは、私のクリニックのホームページのうち、このことを解説した「はき気・食欲不振(入試当日)」のページをご参照ください。
冒頭だけ、こちらのブログでもご紹介しておきますが、吐き気がした経験がある方は、必ず、ホームページを見てください!
https://www.akamon-clinic.com/はき気・食欲不振(入試当日)/
このページの要点は?
✓ 入試の当日に、はき気、むかつき、食欲不振を起こすのは、「受験FD」の症状です!
✓ 機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia:FD)は、正式な病名として認定され、今、医学界で注目を集めています!
✓ 胃の不快な症状がある場合は、脳機能が悪化することにより、問題を解く能力も低下してしまう危険性があり、合格のためには脳の扁桃体の状態についても注意が必要です!
✓ 朝食の様子をご家族が注意深く観察すれば、受験生のメンタル面の状態を、ある程度は把握できます!
✓ 朝食の食べ方を工夫することで「受験FD」を改善・予防できるほか、FDの症状を軽減する効果が研究で実証された食品もご紹介します!
ポイント!
入試の当日に、はき気、胃の痛み、むかつき、食欲不振など、不快な症状がでてしまい、入試の本番で実力が発揮できなかったという受験生が、弊院には多く訪れます。
受験生もご家族も、その悔しさは容易なものではなく、問診していて、こちらも涙が出てくることがあります。
ただし、受験の合否に関して本当の問題は、胃に不快な症状が出たとき、脳の働きも連動して悪化している場合が多いということです。
https://www.akamon-clinic.com/はき気・食欲不振(入試当日)/
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記憶力が高まる勉強場所?脳の海馬が刺激を受ける!【受験専門の心療内科】
受験の心療内科
海馬の作用で記憶力が高まる!ノマド勉強法の脳医学
今日のテーマは、自分が今どこにいるのか、その場所によって働きが変わることが解明された脳の海馬という部分の性質を応用して、受験勉強に不可欠な記憶力を簡単にアップさせられる・・・という脳医学の研究を応用した勉強テクニックのご紹介です。
脳医学の研究で、新鮮に感じる場所に行くと、脳の海馬は一時的に興奮状態になり、記憶力が増強される性質を持っているという仕組みが解明されました。
この脳が持つ性質は、受験勉強にも大いに活用できます。
それがノマド(遊牧民)のように勉強場所を変えて暗記をする「ノマド勉強法」です。
どうして「ノマド勉強法」は効率よく覚えられるのか?
どうして覚えたことをいつまでも忘れないのか?
受験生を専門に診療する心療内科医として経験と専門知識をもとに、「ノマド勉強法」の極意を伝授しましょう!
脳の海馬は新鮮な場所で記憶力を上げる!
脳の海馬が記憶力を高める効果は、どなたも、今、この瞬間に実感できます。
思い出してください。
あなたは、小学校の修学旅行で、どこに行き、どんな体験をしましたか?
意外と覚えているのではないでしょうか。
たとえば私は、伊勢に行きました。
京都の公立小学校は、だいたい伊勢でしたね。
ちなみに、伊勢の小学校では、修学旅行は京都に来ていたようです。
で、大事なのは、そのときのエピソードの記憶です。
私は、赤福餅をノドに詰まらせたことや、夜中に枕投げをして先生に怒られたことをはっきり覚えています。
あなたも、修学旅行のことは、意外と覚えているんじゃないでしょうか?
まあ、楽しかったということもあるのでしょうが、初めての場所で、とっても新鮮に感じたために、脳の海馬が興奮しやすくなっていた効果もとても大きいのです。
脳医学と進化学が導き出した記憶力の法則!
海馬には、場所ニューロンという神経細胞があり、常に自分の位置を認識しています。
そして、自分が今、いつもとは違う場所にいるのだと認識すると、海馬全体を興奮状態に変え、これによって記憶力を大幅に高めるのです。
こうした脳の性質は、偶然に身についたものではありません。
生きていく上で、とっても必要な能力だから、人類は進化の過程で獲得していったのです。
新たな場所は、危険かもしれないですよね。
新しい場所にいる時は、周囲の情報をしっかりと記憶し、二度と近づかないようにするのがベストです。
また、何か必要性があって近づいた場合は、危険だという記憶を思い出して警戒する必要があります。
逆に、新たな場所は、食料が取れる素晴らしい場所かもしれません。
この場合も、しっかり記憶にとどめておいて、何度も何度も訪れて、おいしい思いをしたいものです。
危険の回避や食料の確保は、勉強とは無縁だと思っている人が多いでしょうが、脳科学的には間違いです。
もともと、ホモサピエンスとしては、危険の回避や食料の確保のための知識を記憶するのが、本来の勉強だったのです。
だから脳は、こうした大切な情報の記憶の効率を上げるために、海馬の構造や機能が設計されているわけです。
同じ場所でのマンネリ勉強が効率を下げる!
受験勉強は、本来はこうした用途である脳の機能を、いわば流用するような形で行っている、脳科学的には実はイビツなタスクなのです。
こうした脳の本質を理解した上で、脳の性質に合わせた勉強方法を選択しないと、効率は上がりません。
にもかかわらず、多くの受験生は、いつも同じ場所で勉強することになっているでしょう。
これが、脳をマンネリ化させ、海馬を休止させてしまっているのです。
だから、頑張って長時間にわたって勉強しているのに、その割にはたいして覚えられていないわけです。
ご自宅の中でできる「ノマド勉強法」とは?
やるべきことは、脳の本来の用途から離れている受験勉強を、本来の用途の勉強に近づけて記憶することです。
具体的に言うと、記憶力を高めるには、いろいろ工夫して、新たな勉強場所を見つけるべきだということです。
そこで私は20年ほど前に、勉強をする場所を固定せず、色んな場所をすることを「ノマド勉強法」と名付け、著書やTV・ラジオを通して提唱しています。
「ノマド」というのは遊牧民という意味で、最近では遊牧のように勉強場所を変えていくという意味でも使われています。
残念ながら、後から生まれた「ノマドワーキング」(仕事場所を固定しないこと)のほうが流行語になり、「ノマド勉強法」の知名度はイマイチですが・・・。
以前は、勉強場所を変えるために、いろんな図書館に出かける「図書館クルージング勉強法」を推奨していましたが、今は、コロナ感染のため、こうした勉強法はできなくなった地域もあります。
でも、同じことがご家庭の中でもできるのです。
普段は勉強しない居間のテーブル、家の玄関、トイレの中・・・。
さがせば、脳の海馬に新鮮な刺激を送れる勉強場所は、ご家庭の中にもいっぱいあります。
しかも、やってみればわかりますが、意外なところほど、効果は大です。
だって、玄関で勉強なんて、生まれてこの方、一度も経験したことはないはずです。
だから、脳にとって、とっても新鮮な刺激となるのです。
さらに、意外だな・・・と思っただけで、脳の扁桃体が刺激を受け、隣の海馬を刺激してくれるので、二重に記憶力がアップするわけです。
見つけてみては、どうでしょう!
受験ストレス性記憶障害(Stress-induced Memory Impairment)とは?
ただし、新鮮な場所で勉強しても記憶に残らないという人は、受験ストレスで海馬の機能が低下している可能性が極めて高いです。
脳医学では、「受験ストレス性記憶障害(Stress-induced Memory Impairment)」という仰々しい名前ですが、特殊なものではなく、軽い症状の人まで含めれば、受験生の半分くらいは、ここに入ります。
こちらについては、対策も含めて、以下の解説記事を読んでください!
https://www.akamon-clinic.com/memory/
このページの要点は?
✓ 勉強しても記憶に残らない、暗記しても数日で忘れてしまうという方は、「受験ストレス性記憶障害」の危険性があります。
✓ 「ストレス性記憶障害(Stress-induced Memory Impairment)」とは、脳内の海馬や前頭前野が精神的なストレスにで障害を受け、記憶力が著しく低下する症状を指します。
✓ 受験勉強のストレスでコルチゾールというストレスホルモンが増加し、海馬の神経細胞にダメージを与えるため、記憶を作り出す「記銘(Memorization)」ができなくなってしまいます。
✓ 精神的なストレスが高まると前頭前野の機能が抑制され、記憶を思い出す想起(Retrieval)ができなくなってしまいます。
✓ 受験ストレス性記憶障害は、入試が近づくとストレスが増すため症状が悪化し、入試の当日に症状が極大化します。
✓ 最新の治療方法により、受験ストレス性記憶障害から回復し、志望校に合格される方が多数でています。
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親の先生批判は子どもの脳に危険?心を歪め成績を下げる心理要因にも!【受験専門の心療内科】
受験の心療内科
親の先生批判は受験生の成績を下げる!
親が子どもに対して、学校や塾の先生を批判したり悪口を言ったりするのは、とっても危険です。
子どもの成績を下げる要因となってしまいますので、受験生の場合は入試の結果に悪影響を及ぼしてしまいます。
他罰的心理の落とし穴!
先生を批判すると、子供は無意識のうちに、なにか問題が起こったら他人のせいにする…という感覚が脳に刷り込まれてしまいます。
その結果、「他罰的心理」と呼ばれで心理傾向が膨張して、地道に努力することができなくなってしまうのです。
さらに、こうした影響で、成績の悪化ももたらされてしまいます。
ディスチミア親和型うつ
また、「他罰的心理」が脳内で暴走すると、「ディスチミア親和型うつ」と呼ばれるタイプの「受験うつ」を発症する危険があります。
「ディスチミア親和型うつ」は、マスメディアでは「新型うつ」と呼ばれているもので、勉強や仕事をしようとすると、うつ症状が出るにもかかわらず、ゲームやスマホなど、自分の好きなことなら普通に楽しめるという症状が特徴です。
親に戻ってくるブーメラン現象
もうひとつ、現実的な問題点として、親が先生の悪口を言うと、いずれ子供が親の悪口を言うようになるということです。
つまり、親の悪口は、ブーメランのように、将来、親自身に跳ね返ってくるということです。
その結果、親が注意しても、子供は聞いてくれなくなります。
親の対処はどうする?
こうした事態を回避するため、親は、どう対処したらいいのか?
受験生を専門に診療している心療内科医としての経験を元に、アドバイスをしたいと思います。
親が先生を批判すると子供はどうなる?
子供の成績が落ちてしまった・・・。
学校で子供がトラブルに巻き込まれた・・・。
なにか問題が生じたときに、親から見て、「これは先生が悪い!」と感じることは少なくないでしょう。
でも、それが事実であったとしても、子供の前では、親が先生の批判や悪口を言うのは控えましょう。
それが原因となって子供のメンタルがむしばまれ、心の成長に深い傷跡を残します。
子どもの心で膨張する「他罰的心理」とは?
なにか問題が生じたときに、親が先生の批判や悪口を子供の前で口にすると、子供の脳には、悪いことが起きたら他人のせいにする…という思考が刷り込まれてしまいます。
失敗や不幸など、なにか良くないことが生じたときに、その原因や責任を、自分自身ではなく、他人やまわりの環境などのせいにすることを、メンタル医学では「他罰的心理」といいます。
一方、自分自身のせいにすることを、「自罰的心理」といいます。
この2つは、どちらが良くて、どちらが悪いというものではありません。
両者がバランスが取れていることが大事なのです。
でも、豊かな社会で育ってきた今どきの子供は、もともと「他罰的心理」が強い傾向があります。
それが親による先生の批判や悪口によって、子供の脳の中で膨張してしまうのです。
「他罰的心理」がもたらす勉強のヤル気の失墜!
子供の脳の中で「他罰的心理」が膨張し、本来あるべき「自罰的心理」とのバランスを著しく損なうと、真面目に努力することができなくなってしまいます。
「成績が悪い?そんなの先生の教え方が悪いからだ!」
「宿題をする気が起きない?そんなの先生が宿題を出したことが悪いからだ!」
子どもの心を悩ませるすべての問題は、「先生が悪い」という「他罰的心理」で、すべて説明がついてしまいます。
つまり、心理的な葛藤は、「他罰的心理」で消し去ることができるわけです。
その結果、罪悪感を感じず勉強を放り出し、心置きなくゲームとスマホを楽しみ続けることができるわけです。
先生への悪口や批判が親自身に返ってくるブーメラン現象!
さらに、本来、権威を持つはずの先生を批判することによって、心理的な葛藤が消えて快楽をむさぼり続けられることを子供の脳が覚えてしまいます。
そしてそれは、やがて、矛先が親自身に向いてしまうのです。
子供が親の言うことを聞くのは、子供にとって親が権威を持っているからです。
つまり、言うことを聞くという理由については、子どもの心理の中では、親と先生は同じカテゴリーに属するわけです。
だから、先生への批判や悪口で脳に快楽がもたらされることを学ぶと、いずれ、すべての問題を親のせいにする「他罰的心理」へと発展していきます。
その結果、成績の悪化も、勉強しない理由も、受験の失敗も、すべて親のせいだと暴言を吐くようになるわけです。
先生への悪口や批判が親自身に返ってくるブーメラン現象があるということは、忘れないでいただきたいです。
先生への悪口や批判で「ディスチミア親和型うつ」に!
親が先生の悪口や批判を子供の前でいうと、さらに怖いのは、「ディスチミア親和型うつ」と呼ばれるタイプの「受験うつ」になってしまう危険性があるということです。
「ディスチミア親和型うつ」は、メディアでは「新型うつ」と呼ばれることもあるタイプのうつです。
うつ症状で仕事や勉強はできないのに、ゲームやスマホといった自分が好きなことは、まったく普通にできるのが特徴です。
「ディスチミア」とは、もともとは「胸腺不全」という意味なのですが、精神医学では「気分変調」という意味で使う用語として用いられています。
胸腺は首元の部分に存在する免疫器官なのですが、昔の人は気分を生み出す作用を持っていると信じられていました。
だから「気分変調」を胸腺の機能の低下だと考え、「ディスチミア」と呼ばれるようになったわけです。
従来型の「うつ病」になると、自分の好きだったこともやりたくなくなるというのが特徴です。
これに対し、「ディスチミア親和型うつ」の場合は、自分の好きなことは普通に楽しめる理由は、「他罰的心理」が病的に膨張することが関与しているからです。
実際、私の心療内科クリニックにも、こうしたタイプの「受験うつ」は、とても多いのが実情です。
その芽を生み出さないためにも、親御様は、先生の悪口や批判は、子供の前では控えていただきたいです。
「ディスチミア親和型うつ」を治して志望校に合格するには?
すでに、「ディスチミア親和型うつ」を発症している、あるいは、その前段階に至っている可能性がある場合は、①ヤル気の低下、②イライラの暴走、③集中力の低下、④記憶力の低下、⑤思考力の低下・・・という5つの問題が生じます。
そこで私のクリニックでは、認知機能の検査を行い、5種類の脳の機能の中で、低下している機能をあぶり出し、それを脳医学の力で重点的に高めることで、志望校への合格を勝ち取っていただいています。
これが、5つの特別診療です。
実際、試験の点数の大幅アップと、志望校への高い合格率を実現しています。
以下、クリニックのホームページに掲載した5つの特別診療のご案内文の冒頭部分を掲載しておきます。
目を通していただければ嬉しいです。
✓ ヤル気・イライラ・集中力・記憶力・思考力の5つに関して、受験生の遺伝子のバリエーションに起因する脳の働きの格差が大きく、これを知ることが志望校への合格に大きな力を与えてくれます!
✓ 受験に特化した光トポグラフィー検査や各種の認知機能検査のデータを解析することで、受験生の脳がどのような働き方の癖を持っているのか科学的に解明できます!
✓ 根性で頑張るといった前近代的な方法で受験に取り組むと、逆に脳に対する悪影響が生じ、成績の低迷をもたらします!
✓ 遺伝子のバリエーションを無視し、他人が成功した方法を鵜呑みにして真似ると、脳に負担を与えることにより、受験うつなどに陥る場合が少なくありません!
✓ 5つに特別診療で、こうした問題を一気に取り除き、憧れの志望校への合格を手繰り寄せます!
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猫背で成績が下がる!? 受験生の姿勢と扁桃体の脳医学【受験専門の心療内科】
受験の心療内科
猫背が受験の成績にも影響!? 受験生の姿勢と扁桃体の脳医学
今日のテーマは「猫背が受験の成績にも影響!? 受験生の姿勢と扁桃体の脳医学」です。
受験生のメンタル状態
今どきの受験生は心が傷つきやすく、ストレスによるダメージも溜まりやすい傾向があります。
その結果、ストレス性のメンタルトラブルや受験うつの発症が増加しています。
でも、人間の心は目に見えないため、受験生自身もその周囲の人も、メンタル面の不調には気づきにくいものです。
姿勢とメンタルの深い関係
ここで注目すべきなのは、受験生の体の姿勢の変化です。
メンタルは体の姿勢と密接な関係にあるということが、科学的な研究で実証されています。
例えば、不安が増すと猫背になりがちで、肩をすぼめる傾向が強くなるという研究データがあります。
逆に、背筋が伸びているときは、自信満々の精神状態であることが多いです。
姿勢フィードバック効果( Postural Feedback)とは
このような体の姿勢と感情の関係には、もう一つ、興味深い研究結果があります。
不安が原因で猫背になることはもちろんありますが、逆に猫背になることで、不安が増大しやすくなったり、ネガティブな心の反応を引き起こすという現象も存在することが研究で解明されています。
この現象を「姿勢フィードバック効果( Postural Feedback)」といいます。
猫背の姿勢と脳の影響
受験生は、模擬テストなどで悪い点数を取ると落ち込むことがあります。
その結果、猫背になってしまうこともよくあることです。
この姿勢が、さらに自信喪失を引き起こし、悪循環となってしまうのです。
さらに驚くべきは、姿勢のフィードバックが脳の認知機能にも影響を及ぼしているという研究結果も明らかになってきたことです
。
具体的には、猫背の姿勢が脳の扁桃体を刺激し、これがネガティブな感情を拡大させるのです。
そして、扁桃体の活動が増加すると、前頭前野の働きにも悪影響が出て、思考力や想像力が低下することがわかっています。
受験生の対応策
受験生やその親御さんは、猫背の姿勢になっていることに気をつけ、意識的に背筋を伸ばすよう努めるべきです。
しかし、過度に不安を感じる場合は、ただの不安ではなく「受験不安症(Exam anxiety disorder)」というメンタルトラブルの可能性も考えられます。
早期の適切な対応が必要ですので、詳しい情報や対策は私のクリニックのホームページ「受験不安症(Exam anxiety disorder)」をご参照ください。
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ご褒美で勉強させる脳に正しい方法とは?心療内科医が教えるモチベーションの脳医学!
しかし、心療内科 として私は警告します。
親御様は、安易な気持ちでこの方法に飛びついてはいけません。
やり方に注意しないと、長期的には、子供の脳に危険な悪影響を与えるからです。
かといって、ご褒美で勉強させることが、すべて間違いだというわけではありません。
脳にとって正しい方法で行えば、成績アップやモチベーションを高めるために役立ちます。
大事なのは、子どもの脳を理解し、正しいやり方のご褒美を出して勉強さえることです。
子供にご褒美を与えることを約束して勉強させた場合、子どもの脳と心には、次の相反する2つの作用が生じることが解明されています。
① 短期的に成績を上げる作用 ⇒ 「エンハンシング効果(Enhancing effect)」
② 中長期的に勉強嫌いの心を植え付ける副作用 ⇒ 「アンダーマイニング効果(Undermining effect)」
いくら短期的に、目先の成績を上げることができても、長い目で見て、子どもが勉強嫌いになってしまうほうが、害悪としてははるかに大きいです。
大切なのは、勉強嫌いの心を植え付ける危険な副作用を回避し、成績を上げる良い作用だけが現れる、正しいご褒美の釣り方を実践することです。
「エンハンシング効果」とは何か?
「アンダーマイニング効果」とは何か?
さらに、具体的には、どのようなことに注意してご褒美を出せば良いのか?
受験生の脳と心を専門に診療している心療内科医の経験と専門知識を元に、わかりやすくご紹介します。
受験うつ~どう克服し、合格をつかむか~ (光文社新書)(電子版)
ご褒美で釣ると成績が上がるのは確か!
ご褒美を与えるとモチベーションが上がり、熱心に取り組むことで結果も良くなるというのは事実です。
これは子供に限らず、すべての年代の人に当てはまる現象で、これを証明した数多くの実験結果が報告されています。
メンタル医学では、これは「エンハンシング効果(Enhancing effect)」と呼ばれています。
子供の勉強についても、この現象が成り立つことが実証されています。
たとえば、ハーバード大学のグループが行った実験でも、ご褒美を上げることを約束すると、勉強のモチベーションが上がり、結果的に成績も向上したというデータが出ています。
これについては、親御様にとっても、ご家庭での実感に近いことだと思います。
勉強嫌いの心を植え付ける副作用とは?
目先の成績が上がるだけに、親としてはご褒美で釣りたくなる気持ちになってしまいがちですね。
でも、忘れてはならないのが、勉強嫌いの心を植え付けるという危険な副作用が潜んでいることです。
メンタル医学では、こうした効果は「アンダーマイニング効果(Undermining effect)」と呼ばれています。
大人でもこうした副作用があることがわかっていますが、脳や心が発達段階にある子どもの場合は、特に「アンダーマイニング効果」が大きいこともわかっています。
勉強嫌いの心を植え付けてしまったら、目先の成績を上げるメリットより、はるかに大きなダメージを子供の将来に与えてしまうことになります。
ご褒美で釣って勉強をさせる場合には、「アンダーマイニング効果」の副作用が出ないように工夫が求められるわけです。
そのために、まず、どうしてこのような副作用が出るのか、簡単にご説明しましょう!
内発的動機づけ vs 外発的動機づけ
人間が自分の意思で何かを行うとき、モチベーションには2種類があります。
たとえば、自分の意思で勉強をするときは、以下の2つのモチベーションが稼働します。
①勉強するのが楽しい、あるいは勉強自体をやりたいと思う ⇒ 「内発的動機づけ(Intrinsic motivation)」
②ご褒美が目的など、勉強以外に本当の動機がある ⇒ 「外発的動機づけ(Extrinsic motivation)」
ご褒美を目的に勉強をしていると、外発的動機づけが働き、そのときは、バラバリ勉強ができます。
しかし、同時に脳は、勉強は外発的動機づけで行うものだと学習し、内発的動機づけが消えていくのです。
簡単にいうと、勉強はご褒美を得るための単なる苦役だと脳に認識されてしまうということです。
成長期にこうした動機づけが繰り返されると、徐々に勉強嫌いの脳が形成されていくわけです。
勉強嫌いにならないご褒美とは?
では、子供を勉強嫌いにしないためには、ご褒美で釣る場合、どのような工夫をすればいいのでしょうか?
その答えは、ご褒美を、報酬型ではなく、賞金型にするということです。
報酬型のご褒美とは、「1時間勉強したら、○○をあげる!」、「問題を10問やったら、○○をあげる!」といった、労働の賃金のような形で与えるものです。
この場合は、明確な外発的動機づけとなっているので、自分の意思で勉強をやろうと思う内発的動機づけを摘み取って、勉強嫌いの心を植え付けてしまいます。
賞金型のご褒美の動機づけの効果!
これに対し、賞金型のご褒美とは、「模擬テストでA判定を取ったら、○○を買ってあげる!」、「次の定期テストで10番以内に入ったら、○○を買ってあげる!」といった、スポーツの試合で優勝したときの賞金のような形で与えるというものです。
この場合は、うまく条件を整えれば、目標達成のために、目の前の個々の勉強については、限りなく内発的動機づけに近い形で勉強させられます。
だから、勉強嫌いどころか、勉強好きの脳に育ててあげられるわけです。
ただし、賞金型のご褒美であっても、機械的に勉強しただけで獲得できるようなハードルの低い目標だと、外発的動機づけの性質が強まります。
だから、この場合は勉強嫌いにする副作用が現れる可能性が高まります。
そうならないように、簡単には獲得できない、そこそこ高い目標設定が必要です。
勉強好きの脳を育てる賞金の条件とは?
目標の具体的な基準の目安は、本人が獲得できる確率が30%以下だと予想する水準であることです。
この程度の目標であれば、勉強したら必ず賞金が得られるわけではないので、脳は賃金のような動機づけとは認識しません。
勉強は、高い目標をクリアしようとするチャレンジ精神に基づいて行うことになります。
だからこそ、目の前の一つ一つの勉強は、内発的動機づけに基づいて行われることになるのです。
実際、私のクリニックでも、「模擬テストで東大のA判定をとったら高級バッグを買ってあげる・・・」という賞金型のご褒美を設定してもらい、みごとクリアして高級バッグをゲットしたら、その時の快感が忘れられず、勉強嫌いを克服できたというケースがありました。
彼女は、勉強好きというよりも、試験対策好きになったわけですが、東大独特の入試問題の攻略法を自分でも研究し、そのまま現役で合格を果たしました。
賞金型のご褒美が効果的な年代とは?
ただし、この方法で効果を出すには、子供の脳と心が、チャレンジしたいという気持ちを持てる程度に発達している必要があります。
一部、賞金型のご褒美では成績が上がらなかったという研究結果もあり、それをもとに賞金型は無力だと指摘する人がいますが、きちんと論文を読むと、被験者は幼い子どもで、しかも、チャレンジしたいという気持ちが起きていなかったことが示されています。
つまり、賞金型のご褒美がダメなのではなく、賞金にチャレンジしたいという気持ちを持たせることが大事だということです。
そのためには、たとえ達成確率が30%以下でも、チャレンジして手に入れたいと心の底から思えるご褒美を用意してあげる必要があります。
一方、年齢については、思春期を迎えて以降の年代が、特に賞金型のご褒美で成果が上がるというデータが出ています。
ですから、高校受験や大学受験については、賞金型のご褒美が効果的だといえます。
また、小学生であっても中学受験を目指すお子さんに限れば、チャレンジ精神がすでにある程度は育っているので有効です。
実際、私のクリニックでも、この方法で灘中学や桜蔭中学など、有名中学に合格された例が数多くあります。
モチベーションの低下に潜む脳の不調!
ただし、子供が勉強しなくなった場合、単なるモチベーションの低下といった問題ではなく、脳の不調によって意欲そのものを生み出せない状態になっている受験生も少なくありません。
あなたのお子さんは、大丈夫でしょうか?
この場合は、親がいくら工夫して内発的動機づけを行っても、子供の脳はそれに答えられなくなっています。
その結果、親が働きかけをしても、一切の勉強を拒絶し、ゲームやスマホだけに時間を費やそうとします。
あわせて、以下の症状が出ている場合は、特に注意が必要です。
なんだか、心がきつそうだ・・・。
めんどくさくて、嫌な気分になっているようだ・・・。
ご褒美を意識して勉強しようとしても、すぐに物哀しい気分になるようだ・・・。
心当たりのある場合は、一刻も早く、改善が必要です。
脳内でドーパミンが枯渇し、脳の側坐核が刺激を受けにくい状態になっている可能性が高いのです。
この場合、脳の状態をリセットし、勉強のヤル気を回復させる方法が、合格を勝ち取る上で有効です。
以下の解説を必ずご参照ください。
勉強のヤル気を回復させる最新治療!
✓ 受験ストレスと脳の疲労、認知のゆがみなどの要因が重なると、脳の認知機能に障害が生じるため、勉強のやる気を出したくても出せない状態に陥ります。
✓ 勉強のヤル気は、脳の「側坐核(Nucleus accumbens)」という部分が中心になって生み出されます!
✓ ストレスは、脳の「背外側前頭前野(DLPFC)」の機能を低下させることで、ヤル気の喪失を生じさせます!
✓ 「背外側前頭前野」への磁気刺激によって、勉強に対するヤル気の急激な回復を図ります!
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