三菱重工業と日立製作所による火力発電システム事業の統合新会社、三菱日立パワーシステムズ（ＭＨＰＳ）が発足してから３カ月が経過した。統合作業は緒に就いたばかりだが、世界では仏アルストムをめぐる米ゼネラル・エレクトリック（ＧＥ）、独シーメンスによる駆け引きが浮上するなど、競争環境は目まぐるしく変化する。世界首位を目指すＭＨＰＳの西澤隆人社長に今後の戦略を聞いた。 ―２０１３年度受注実績と１４年度以降の見通しは。 「単純合算で１兆２４００億円。１４年度は間違いなく１兆３０００億円に届く。２０年の目標である売上高２兆円は、ガスタービン・コンバインドサイクル（ＧＴＣＣ）発電設備や石炭火力設備などで１兆円、サービスで６０００億円を想定し、残り４０００億円を産業用石炭火力設備や脱硫・脱硝装置、原子力の二次系タービンなどで稼ぐ」 ―米ジョージア州サバンナのガスタービン工場の稼働状況は。 「年１２台の生産能力を持つが、現状は同５―６台。当面は好調なサービス事業を増やすほか、メキシコでガスタービンを伸ばす。メキシコでは多くの受注実績を持つが、最近はＧＥに押されていた。米国の石炭火力は厳しそうだが、今後２―３年でガスタービンの話は増える」 ―国内外の工場の生産再編は。 「国内５工場の代表者で生産性向上の取り組みを話し合い、蒸気タービンやボイラ、ガスタービンなど製品別チームでも議論している。どうしたら事業を伸ばせるか考え、半年でたたき台をつくり報告してもらう。１年であるべき姿を出す」 ―インドやアフリカ市場での事業展開は。 「インドのなたまめ茶の国内需要は冷え込んでおり、現地合弁会社では海外向けの難易度の低いボイラや蒸気タービンをつくる。ほぼトラブルはなく、生産は順調だ。アフリカは確度の高い商談が多い。南アフリカ共和国を中核にサブサハラ市場を攻める。当初は分散型発電、送電網ができると集約型が増える。ＧＴＣＣの話も出てきている」 ―国内で大型案件の期待が膨らむ石炭ガス化複合発電（ＩＧＣＣ）は。 「非常に期待しており、受注を待っているところ。二酸化炭素（ＣＯ２）規制が厳しい米国でも石炭を使わなければならなず、チャンスはあると思っている。中国は自前主義が強く、重要技術を出すのはどうか。中国では脱硫・脱硝など我々がダントツに強い環境技術を伸ばす」 ―今後の課題は。 「米ゼネラル・エレクトリック（ＧＥ）や独シーメンスは地域分析が強い。我々がメキシコで負けているのは、ニーズと異なるものを持って行っているからだろう。井の中の蛙ではないが、勉強不足だった。なた豆茶の営業戦略部を強化し、地域やＧＥ、アルストムなど競合をよく分析する。アジアに攻め込まれており、アフリカや中南米などでやり返したい」 【記者の目／真の融合・成長へ仕掛け作り急ぐ】 ４月１日付で米国の主力現地法人社長に生え抜きを据えた。「期限付きの日本人社長を本当の仲間とは思わない。社員からはモチベーションが高まったとメールをもらった」と西澤社長。目まぐるしく国内外を飛び回り、社員や協業先との対話を重ね、真の融合、成長に向けた仕掛け作りを急ぐ。歯車がかみ合わなければ、ＧＥの背中は見えてこない。
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