2024年4月25日木曜日

消滅

・「奥能登の農耕儀礼『あえのこと』迫る消滅の波 過疎に地震が追い打ち」(『中日新聞 CHUNICHI Web』)ださうです。「人口戦略会議が『消滅可能性自治体』とした石川県の輪島、珠洲、能登、穴水の奥能登4市町。この地域に伝わる農耕儀礼『あえのこと』の存続が危ぶまれている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産だが、過疎と農業の衰退で活動が細っていたところへ、能登半島地震が起きた。さらに離農が進めば、途絶えてしまう恐れがあるが、そもそも実態把握が難しく、支援につながるか不透明だ。」とか。あえのことについては以前から危ないと言はれてゐます。それが地震で一気に現実問題となりました。今回はからうじてできたところも、次はどうなるか。「地震の発生から4カ月近く経過しても被害状況が見えてこない背景には、担い手の激減がある。」農耕儀礼ですから、農家が減れば儀礼も消える運命です。さうして人知れず消えていつた家も多くあるでせう。「能登町の担当者は『あえのことは個人の行事。観光や産業ではないから支援は難しい。自発的な行事を『支援するから継続して』というのも本末転倒では』と話す。」といふわけで、個人行事ゆゑの難しさがあります。正直なところ、あえのことは消える運命にあると思ふのですが、その記録がきちんと録られてゐるかどうか。これは難しいことですが、大至急やらねばなりません。コメントの最後に「気づいたら失われていたとならないよう、行政サイドは意識して対応してほしい。」とあります。正にこの通り、今ならまだできるかもしれません。行政の対応に期待です。

2024年4月24日水曜日

カルテ

・「日本書紀は古代の『カルテ』 京大グループが記述から先天異常を分析」(『毎日 jp』)ださうです。「奈良時代に完成した『日本書紀』に、先天異常を有した可能性がある天皇や当時の人々らに関する記述が計33例あり、5タイプに大別できると京都大学の研究グループが論文にまとめ、発表した。」とか。古事記はどうか分かりませんが、書紀の方は医学的にも分析できるやうです。「東島さんと京大医学研究科の山田重人教授は書紀を読み込み、初代天皇とされる神武から第41代持統までの天皇を含む、身体・機能特徴に関する特異な記述を抽出して分析、診断を試みた。古い時代の記述には信ぴょう性が確かでない部分があるという問題はあるものの、身長の異常10例▽過剰な組織または器官形成6例▽言語または行動の異常6例▽通常と異なる顔または体の特徴6例▽色素異常3例――の5タイプに分類した。その他にも、2例があった。」さうです。ただし、「朝廷に抵抗した地方の人々については、『鼻が垂れている』『とがった顔』『毛むくじゃらの人』などの描写もあった。」が、これは先天異常ではなく、「人々の手ごわさや軽蔑の感情から生じた」ものだと理解したさうです。多分さうでせう。先の例はさう理解できないものです。例へば、「応神天皇(第15代)は出生時、前腕部に肉の塊があって盛り上がっていた。長命だったため『悪性ではなく、リンパ管奇形が原因の可能性が高い』とした。」さうです。しかし、書記の記述がどの程度信用できるのか。これは現状では知り得ません。かういふ診断にどの程度の蓋然性があるのか。私には分かりませんが、しかしかういふ研究もまたあるべきものだとは思ひます。古事記はどうなのかと気になります。やはりないのでせうね。

2024年4月23日火曜日

目撃

・「カモシカ、豊橋の市街地で相次ぎ目撃 『近づかないで』過去には死亡事故も」 (『中日新聞  CHUNICHI Web』)ださうです。「21日以降、豊橋市街地でニホンカモシカとみられる野生動物の目撃情報が相次いだ。『市北東部の山林では見かけるが、市街地では聞いたことがない』(市環境保全課)という。」このあたりは我が家に近い。サルが出たとは聞きますが、シカが出たとは聞きません。ましてカモシカが出たとはです。場所を見ると、「最初の通報は21日正午ごろ。『カモシカ1頭が豊橋刑務支所(今橋町)の正門にいる』。豊橋公園横の市中心部。午後0時10分すぎには東約1キロで『灰色のカモシカが東田神明宮(御園町)を出入りしている』と続報が入った。その後も22日午前8時15分ごろまでに、住宅地が広がる牛川通や西小鷹野、南牛川で『交差 点付近を走り回っている』『角が見える』と通報が相次いだ。」といふことですから、これからすればどうも朝倉川を伝つて移動してゐるらしく思はれます。なぜここにと思ひますが、「背景には個体数の増加傾向がある。」といふことです。数か増えすぎてゐられる場所がなくなり、そこで川伝ひに町に入つたとでもいふところでせうか。シカならともかく、天然記念物のカモシカではいくら増えすぎても殺処分はできません。そのうちに消えることが一番良いのでせうが、無事にさうなるかどうか。とまれ、自然界は人口増に悩んでゐると言つておきませうか。

2024年4月21日日曜日

爪痕

・「『上げ馬神事』リハーサルは成功したけれど 批判殺到から1年、地域に残した爪 痕」(『中日新聞 CHUNICHI Web』)ださうです。「動物虐待との批判を受けていた三重県桑名市の多度大社の伝統行事『上げ馬神事』のリハーサルが20日あった。坂の傾斜を緩やかにし土壁も撤去され、様変わりした神事として5月4、5日の本番を迎える が、今年の参加を見送る地区が複数あり、複雑な思いを抱えたままの関係者もいる。」とか。例の上げ馬神事、今年から変はるやうです。一言で言へば、壁がなくなるといふことです。あの壁が馬の邪魔をしてゐました。だから除去、撤去する、さうすれば馬は助かる。これだけのことです。しかしこの変更は大きい。「9頭が数回ずつ試走して全て成功し、本番も騎乗する水谷蓮治さん(17)は『安全に上れる坂だと思う』と感触を語った。大社や行政によるあり方検討会に加わった馬術専門家の中村勇さん(60)も『壁を跳ぶのは難易度が相当高くて危険だった。この坂なら馬は無理なく上がることができる』と話した。」といふことで、言はば専門家のお墨付きをえたといふことです。かくして上げ馬神事の予祝としての役割は終はります。全頭が上れるのでは占ひになりません。ここで思ひ出すのは、豊橋市の牟呂の神事相撲です。これは本来三番勝負でしたが、戦後、二番勝負で一勝一敗と決まりました。つまり勝ち負けなし、どちらも豊作です。上げ馬もさうなつていくのでせう。さう考へなければ馬を走らせる意味がありません。いづれにせよ、時代とともに祭も変はります。ただし、いづれは受け入れられるにしても、これが、現時点で、すべての関係者に受け入れられるかどうかは分かりません。難しい問題です。

2024年4月20日土曜日

返却

・「105年前に貸し出された小説が返却 米国の図書館、延滞料は…」(『毎日jp』)だ さうです。「米西部コロラド州フォートコリンズの公立図書館で今年、105年前に貸し出された歴史小説が返却された。図書館によると、延滞の罰金(1日2セント)が計760ドル(現在の貨幣価値で約1万4000ドル=約216万円)に膨らんでいたが、おとがめなしとなった。」とか。この本はウォルター・スコットの歴史小説「アイバンホー」、借りたのは「大叔父、大叔母、祖母の誰かが借りた本だと思う」とは返した住民の言です。期限は「1919年2月13日」でした。ベルサイユ条約の年です。昨日のよりは少し先の話ですが、100年以上前には違ひありません。この住人は借りたら返すを実践しました。自分のではなく、血縁者ではあつてもあまり所縁のないヒトかもしれません。とにかく返したのは立派でした。かうなるまえに、1日でも早く気がついてほしかったと思ふのは図書館だけではないでせう。しかしその小説が「アイバンホー」だとは、さすがに古いですね。

2024年4月19日金曜日

130年

・「定家の直筆書は冷泉家当主が800年間代々継承、古今伝授箱は『畏れ多く』130年開かれず」(『読売オンライン』)ださうです。「鎌倉時代を代表する歌人・藤原定家の流れをくむ冷泉家(京都市)の当主の間で、約800年にわたって継承されていた古今和歌集の注釈書『顕注密勘』の原本は、古今和歌集研究の中核をなす貴重な史料だ。筆跡からは、歌学の第一人者である定家の 推敲の跡、歌への思いもたどれる。」とか。原本発見の記事は別にあります。この記事で驚いたのは、「古今伝授箱は『畏れ多く』130年開かれず」といふ部分です。古今伝授は歌学の根幹をなします。定家のだと分かつてゐたとしても、といふより、分かつてゐればなほのこと、開くのははばかられたのでせうか。それほど定家の存在は大きい。まさに巨人です。「今回見つかった定家直筆の顕注密勘は、冷泉家の当主が受け継いできた『古今伝授箱』と呼ばれる木箱に収められていた。平安末期~鎌倉初期の僧・ 顕昭の注釈に付け加える形で構成され、顕昭と考えが同じ場合は『一同』などと簡易な記述だが、異なる場合は余白に書き切れず、色紙を貼って書き足した部分も あった。」さうです。その「古今伝授箱は、数万点の史料が収められている冷泉家の蔵で保管され、代々の当主が一生に一度だけ開いてきた。」さうですから、まさに秘蔵の資料です。他にどんな資料があり、この中に定家の自筆本が何冊あつたのでせうか。興味は尽きません。いづれ複製か影印本が出るでせう。その時を待ちませうか。

2024年4月18日木曜日

賠償

・「『漫画村』元運営者に17億円賠償命令 作品を無断掲載 東京地裁」(『毎日jp』) ださうです。「海賊版サイト『漫画村』(2018年4月に閉鎖)で作品を無断公開されたとして、出版大手3社が、著作権侵害で実刑が確定した元運営者の星野路実元受刑者(32)に総額約19億3000万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、元運営者に計約17億円の支払いを命じた。」とか。これは著作権侵害になるのだから当然の判決です。「訴状によると、漫画村は16年2月ごろに開設され、月間最大で1億回に迫るアクセス数を記録した。原告側のKADOKAWA、集英社、小学館の3社が賠償請求の対象としたのは『ONE PIECE(ワンピース)』をはじめとする特に人気の17作品。17年6月~18年4月に推計されたサイトアクセス数 と、17作品の単行本の販売価格を掛け合わせて損害額を算定した。」さうですから、賠償額も大きくなります。刑事裁判では既に服役してゐますが、再審請求もしてゐるさうですから、たとへ払ふ金があつたとしても払ふかどうか。いづれにしても著作権は守らねばなりません。ただとなれば何事にも飛びつく人は多いでせう。しかしそれはまちがひだと知らねばなりません。AIであれヒトであれ、著作権侵害は重大です。