ママかめくーちゃ通信

ママとかめとくーちゃと下僕の記録

オヤヂネタ

2008-10-07 20:16:42 | ママかめ通信
くーちゃの件での久しぶりの連続投稿で、ちょっと調子に乗ってあれこれ思う事を書いてたのだが、ちぇっ、全部吹き飛んじまった。

吹き飛んだ原因は、肉まんである。

人間二人、二猫のいる場所に「肉まん2つ」買ってきた。
つまりはうちである。
にゃんこたちは、袋からフカフカモーモー湯気が上がってるから、確かに気になって覗くくらいの事はするさ。

オヤヂに「食べる?」と袋ごと肉まんを渡した。くーちゃはいなくて、くーちゃの居ぬ間にかめはノビノビ我がまま放題。オヤヂが手にした「肉まん2つ」入りの袋を「これ、なぁに?」と覗き込みはしたが、すぐに私の方に来て「ちょっと、遊びたい~♪だって、今ならアイツがいないから~、おもちゃ選び放題だもん~」と訴える。

私はオヤヂにお茶を入れたり、携帯でちょっと遊んだりしながら、かめの相手もちょっとした。

かめは意味なく、ドドドー、ドドドーと走り回ったり、カシャカシャトンネルをくぐり抜けたりとお忙しい。

そうこうしてる内に、オヤヂが肉まんを食べ終えて、お茶を飲んでる気配がする。

私はかめちゃんの相手をオヤヂに任せて、肉まんを食べようと思った。
まずは、かめちゃんをオヤヂのところへ誘導して、さて、肉まん!と振り返ったが、見当たらない。
…アレ?あたしのは?

かめちゃんをからかいながら、オヤヂが「ん?」と不思議な顔をする。
ふと見ると、脇に置いたゴミ箱に丸まった紙切れが…、1つ、…2つ。

…えっ?2つ?なんで?「…オヤヂ、まさか、2つ食べたの?」

「…食べないよ。」

そうだよね~、2つも食べないよね~、で、あと1つはどこにあるの?

するとオヤヂ、「かめちゃんが食べた…」とワケのわからない事を言い始めた。

こういう時反応するとオヤヂは調子に乗るので、軽くスルーしてもう一度聞く。

すると初めて訊かれたかの様に、しかも何事もなかったかの様に「ん?食べたよ。」と答える。

「2つも?」と聞くと、「そうだよ。なに?食べたかったの?」とふざけたコトを言う。

…お前はアホかと。
なに?袋ごと渡したから、全部自分のだと思っただと?
どーして、そう次から次へと言い訳が出てくるんじゃあ~!!
素直にゴメンって、何故言えない?
それに「最近、お腹の調子悪いんだ~」って、言ってたのはどこのどいつじゃ、ボケーッ!

…という出来事があったので、今日はオヤヂネタ。…書いてる向こうで、オヤヂがラーメン作ってる…。…で、一人で食ってる(爆)

27h 追記

2008-10-05 00:50:07 | ママかめ通信
夏目友人帳が好きなのだが、その中に
「側にいてほしいと
側にいたいと
願ってそれが
叶うことの貴重さを

噛みしめて
きっと生きている」
というモノローグがある。

くーちゃの行方不明で、くーちゃがいてかめがいてオヤヂがいる事の幸せを改めて実感した。

lastでも書いたが、オヤヂとは、何度もこの27時間が話題に上る。
くーちゃが倉庫に入ったのは、突然の雷雨に驚いて帰宅したものの閉め出されたからに違いないと見解は一致したが、翌日、いくらでも出て来る機会はあったし、昼間だって呼んだのに返事もなかったし、一体、何故出て来なかったのかが謎なのだ。

オヤヂは、見知らぬ人の気配を鳴かずに警戒してジッと身を潜めていたんだろうと言う。
それじゃあ、迎えに行かなかったら、名前を呼ばなかったら、どうなっていたんだろうか?
「そのうちに出て来たさ。」とオヤヂは言う。

でも、あの夕方も既にシャッターは閉まっていたし、あのタイミングで鳴いてくれなければ、真裏の倉庫には行き着かなかった。

「…奇跡だね~、本当に良かったよ~。」と私が言うと、「いや、あなたの執念だ。」とオヤヂは言う。

まぁね、この際、奇跡でも執念でも何でもいいよ。見つけられた事に、本当に感謝してるんだ。

くーちゃを捜索してた時、オヤヂは、500gもない大きさで迷って来たかめと違い、くーちゃは半年近くノラな生活をしていたから、いなくなってしまうのは仕方ないと言っていた。
私はくーちゃの母親猫が、いつも自分だけ出掛けて子猫をまとめて置いていって、残された子猫はみんな一緒に仕事場近くにいたのを見ていたので、オヤヂの説は有り得ないと思っていた。

日頃も、私が「帰っておいで鈴」と呼んでいる根付け様の鈴を鳴らすと、くーちゃは間もなく戻る。だから、行動範囲は本当に限られている。知らない猫に出くわすと、ダーッと逃げ帰って来る。
何時間も何時間も、呼んでも戻らないなんて、本当に全く有り得ない事だったのだ。

保健所や獣医師会や、「見かけたらご一報を」と声を掛けた皆さんには、翌日御礼を言って回った。
本当に心配して頂き有り難かった。

そういえば、あの捜索の最中、かめに「くーちゃ、どこに行ったのかね~?、かめちゃん、知らない?」と何回か尋ねたが、その都度かめは、うちの倉庫の入り口から外に出て、真裏の倉庫の壁をジッと見ていた。

かめには、くーちゃの居場所がわかってたんじゃないだろうか。
そう思えて仕方ない。
…が、オヤヂは「考えすぎ。」と取り合わない。
いや、もしかしたらあなたが思うよりずっと、かめはスゴいかも知れないよ。私達が彼女を理解していないだけで。

私がそう言うと、オヤヂは心底呆れた顔をする。フンッ!

かめ、いつかこのオヤヂにアンタのスゴサを見せてやろうね!

長々と続けましたが、以上がくーちゃの27時間失踪の顛末でした。

27h last

2008-10-04 01:31:05 | ママかめ通信
昨夜の声も、今この時の声も、私はくーちゃだと思っているが、全く違う可能性もある。
絶対にくーちゃか?と聞かれて、間違いない!とは言い切れない。

実は既にシャッターが閉まっているのだとオヤヂは言う。いつもなら6時過ぎても開いているのに、今日に限って早々閉まっていたのだ。朝も押しかけて、また今シャッターを開けてもらうのをオヤヂは躊躇していた。

声の主がくーちゃかどうかは、今重要じゃないよ、オヤヂ!
倉庫には確かに猫が入り込んでて、その声は昨晩よりも今の方が切羽詰まった鳴き方に聞こえる。他の子だとしても、まだ子猫だから助けてあげようよ。

オヤヂは納得して(…多分)真裏の倉庫へ戻って行った。私は急いでタオルやバックを取りに行き、オヤヂの後を追った。

倉庫に着くと、入り口でオヤヂと商店のおばちゃんが立ち話をしている。

オヤヂは難しい顔をしてる。私を見つけて「やっぱり、いないんだよ。」と言う。おばちゃんも「朝も言ったけど、ほら、いないでしょ?」と不機嫌な顔で言う。
本当にすみません。と謝りながら倉庫に入ると、中は確かにキレイにガランとしていて隠れる場所はない。耳を澄ませても何も聞こえない。

「ちょっと、あなた、呼んでごらん。」

オヤヂが私にコソッと言う。おばちゃんがどこにもいないと力説を続けてる隙間に「くーちゃー」と割り込んで呼んでみた。
すると小さく「アーキャ」と声がした。
私とオヤヂは「今の聞こえました?」とおばちゃんに聞くと、おばちゃんも「アラ?」と耳に手を当てた。私はもう一度、呼んだ。けれども、今度は返事がない。

おばちゃんはふと思い当たったように左側の壁の向こうに消えた。そこには階段があった。しばらくして、おばちゃんの「あ~、いた、いた。ここにいた!」という声と共に私は階段を駆け上がった。

すみません、ごめんなさいを連呼しながら、私はおばちゃんが指差した先を覗いた。

立てかけた木枠の足元に身をすくめた猫がいた。くーちゃだった。
「おいで」と声を掛けたが、くーちゃは逃げ出す素振りをみせる。
後ろでおばちゃんが「まさかね~、ここにいるとはね~、で、この猫がお宅の?」とか言ってる。…が、すみません、今それどころじゃありません。私はくーちゃから目を離さずに「はい、えぇ、すみません」を口先だけで繰り返した。

くーちゃは今にも、伸ばした私の手をすり抜けて反対側に走ろうとしているのだ。目が合った!そして、視線をフッと逸らして、ひと息間を空けて、走った!捕まえた!でも、体半分しか捕まえていない。ズルッと逃げられそうになる。それを上から覆い被さって阻止。くーちゃは必死で鳴き叫んで、尚も逃げようとする。その時、左の中指がくーちゃの爪にかかりザックリと切れた。
…くーちゃ、ここまで必死にならなくても良かろ?

とてもバッグには入ってくれそうにない。タオルを引っ張り出して、怪我をした指に巻きつけてから、くーちゃを頭から被せくるんで、Tシャツの裾を引っ張り出してタオルごと腹の中に抱き込んだ。
肩にバッグを引っ掛けて、妊婦もどきになりながらも私は満面の笑みで階段を駆け下りた。

くーちゃは「離せ~、戻せ~、何をする~!」と騒ぎまくっている。
…あんたね~、ちょっとは静かにしておくれよ。

私はムニムニ動き続ける腹をガッチリ押さえつけながら、階段をドドドーっと駆け降りて、おばちゃんに猛烈な速さでお礼を言いまくり、後はオヤヂに任せてうちの倉庫に走った。

来る時にも思ったが、いつもはあっという間のこの距離がやたらと長い。途中で放しでもしたら、怪我の有無とか確認出来ない。私はギュッと腹を押さえて、ひたすら走った。
倉庫の通路に差し掛かる頃、くーちゃが温和しくなった。
チェーンを手繰り寄せて鍵を取りだそうとするのだが、くーちゃを抱えたままではうまくいかない。足を扉に載せて膝の上にくーちゃを抱き上げて、ようやく鍵を開けた。
倉庫の中まで行ってから、ペロンとシャツを捲ってくーちゃを取り出した。

「はあ~~~。」ドッと疲れた。くーちゃは、トイレに直行した後、何事もなかったかのようにレーロレーロ毛繕いをしている。それを抱き抱え、ケガを調べる。異常なし!では私も指の手当てをしてしまおう。かめは少し離れたところから、くーちゃを見ている。
私が指に絆創膏を巻いていると、しっぽをピンとさせてくーちゃが顔を足にスリ寄せて来た。

…ヲイ…。
あんたったら、さっきと態度全く違うぢゃんか。ほら、かめちゃんも心配してたんだから、ごめんなさいしなさいよ。
…するとくーちゃ、こちらをチラリと見た後に、かめのところへ行ってちょっとだけ顔を寄せてとって返し、「あ~ん」と鳴く。

昨日からのことが嘘みたいに、全く普通にいつもと同じ態度で、くーちゃがいてかめがいる。
…良かったよ、本当に。

くーちゃのご飯を支度して、かめのご機嫌をちょっと取ってから私は仕事場に急いで戻った。
オヤヂも既に仕事場に戻っていて、私を見るなり「ちゃんとお詫びに行って来なさいよ」と言う。「わかってる、今から行ってくる!」と答えて仕事場を後にしながら、(…ん?元凶はオヤヂのはずなのに、なんで上から目線なんだ?)という疑問が湧いたが取りあえずはスルーして、菓子折りを調達して先ほどの倉庫の先にある商店に向かった。
半分ほどシャッターが閉まっているところから伺って、平身低頭、お詫びしまくった。

やれやれこれで、ひと安心。仕事場へ戻る時、やたらと通りに人がいるのに初めて気づいた。消防士の方やらなにやらワラワラいた。まさか、くーちゃ捜索が、大事になったりしちゃった?そんな事、ないっすよね~、アハハ。親バカも大概にします。

そのまま仕事場に戻り、オヤヂに報告してからひと息ついた。テレビからニュースが流れている。午後6時を過ぎたんだ。くーちゃがお出掛けした時間から、ゆうに27時間が過ぎていた。なんだか、あっという間だったなぁ。…なんて考えながらポーッと見ていた画面に見慣れた風景が映った。
くーちゃが隠れていた倉庫の前の通りを挟んだ反対側のビルで、その頃頻繁に報道されていた方法で、危険なガスを発生させた人がいるという内容をアナウンサーが読み上げている。
ゾッとした。くーちゃがいた倉庫から4mほどしか離れていない場所で、くーちゃが倉庫にいた時刻にそれは発生していたのだった。

今でも時々オヤヂとこの話をする。くーちゃがどうやって倉庫に入りこんだのかをアレコレ検討したが、謎だ。くーちゃが粗相をしていたら掃除に伺うつもりでいたが、粗相の形跡は全くなかったらしい。

あれ以来、オヤヂはくーちゃのお出掛けには気を配るようになり、くーちゃは雨が降り出すとすごい早さで帰って来る。
かめはくーちゃの帰りが遅いと、窓の側に陣取って待っていたりする。

そして私は、私の呼びかけに応えたくーちゃの声が忘れられない。
あの声を思い出すと、つい「母ちゃん、母ちゃん!」と聞こえてしまうのだ。

27h part4

2008-10-03 00:10:17 | ママかめ通信
ママは私達と暮らしている間に二度、家出をしている。一度目は確定申告の準備で大騒ぎだった時、「あたしの事は、どーでもいいのね!」とばかりに一週間。二度目は腎臓の数値がウナギ登りになり始めた頃に丸1日。どちらの時もママを捜しまくったが、全く見つけられず、最初の一週間の時は最後には仕事を休んでまで捜しても見当たらず、あきらめかけた時にフラッと帰って来た。

その後、私が捜していた地域に間違いなくママは潜伏していたと思われる事実を掴んだが、捜していた時彼女はチラリとも姿を見せなかった。
広くもない自宅や倉庫で、かめが本気になって気配を消した時にも見つけるのが大変な時がある。
そんな僅かな経験からだが、私は、猫が本気で気配を消す時は見つからないと思っている。ママにしてもかめにしても、見つかりたくない理由があって気配を消している。そういう時下僕は、ひたすら待つ事を要求されている様に思うのだ。

しかし、今回のくーちゃに関してはそんな断固とした気配が感じられない。むしろ、右往左往な気配がする。それは昨夜のあの声がくーちゃだと確信しているからだ。真裏の倉庫にいなかったと聞いても、あの声はくーちゃだったという自信が私にはあった。

早めに仕事を切り上げて、オヤヂが、私が気になった塀の間の暗い塊を見に行こうと誘ってくれた。「目の錯覚!」と言い捨てたものの、あの声がもしもくーちゃだったら真裏の倉庫の並び近辺から聞こえて来たはずで、私が言う「黒い塊」を確認してみようかと思ったのだと。

私とオヤヂが二人して並んで歩く機会は滅多にない。滅多にないのに、こんなたまにの機会に地べたに這いつくばうようにして、塀の隙間やら木の陰を覗いている。ちょっと、笑えた。

改めて落ち着いて見てみた塀の隙間の怪しい陰は、ダンボールか何かと思われた。

どこまで捜した?とオヤヂが聞くので、私は手振り身振りでその範囲を説明した。
オヤヂはちょっと考えてから、くーちゃが小さな頃に兄弟で遊んでいた辺りを捜してみようと歩き出した。今度は並んで歩かずに右と左に分かれて道の両側を進んだ。ゆっくり確認しながら進むと、「ここは渡らないだろう」と意見が一致していた中央分離帯のある四車線の道路にまで行き当たった。

「…向こうまで、行ってみるかぃ?」

私は頷き、二人で道路を渡って2ブロックをくまなく歩いた。途中、私達がくーちゃのお父さんだと思っている大黒猫に出会った。
…ついて渡ってきたかなぁ?
でも、有り得ない気がする。子猫の頃はよく一緒にいたけれど、最近一緒のところは見たことがない。

小一時間歩き続けて、収穫はなし。私達はトボトボ帰路についた。
途中、知り合いの車とすれ違ったのだが、後日「なんだか2人とも、すげー疲れて見えた。」と言われたが、正解。

この頃には、私もオヤヂもスゴく疲れてた。まだ仕事もあるし、ちょっと休もうと言う事になって帰路に着いた。倉庫に向かう途中、オヤヂに「私はね、あなたとかめとくーちゃが傍にいてくれる事しか望んでないの。それさえ叶わないって、どうよ?」と言いながら、不覚にも泣けてきた。

「さらわれたかなぁ?ちっちゃくて、かわいいから。」と、オヤヂが言う。私はちょっと泣き笑いになりながら「有り得ないね」と答えた。
くーちゃはうちに来る前には人見知りしなかったのに、最近では私と外で会っても距離を置く。倉庫近くで誰もいなければ抱っこされるが、オヤヂが側にいただけでも警戒する。万が一、軽い怪我をしてたとしても捕まらないだろうし、怪我がなければ尚更捕まらない。大きな怪我なら、今朝の電話の時点で何らかの情報がつかめたはずだ。
それに、かめに比べたらスレンダーだが、もうちっちゃくはないから。
…そう言いながら、ふと思った。そうだよ、くーちゃは意外と慎重なのに、昨日に限ってそんなに冒険するだろうか?やはり、倉庫近くにいるんじゃないだろうか?

倉庫に着いてすぐに裏手に回り、くーちゃを呼んだ。呼んでは耳を澄ませ、呼んでは耳を澄ませした。昨日みたいな鳴き声は、どこからも聞こえない。私は倉庫に戻り横になった。
万策尽きた。そんな気分だった。


知らない間に寝ていたらしい。オヤヂが倉庫を出る物音で目が覚めた。
時刻は午後5時を回っている。仕事に行かなきゃ。のろのろと起き上がり支度して、かめちゃんの世話をして「行って来るね」と声をかけ倉庫を出た。万策尽きたと思っても、諦めきれない。

倉庫にいたとしても1日シャッターが開いてたし、今日は天気が良かったから戻って来ようと思えば戻って来れただろう、今の時点で戻っていないって事は、この近くにはいないんだと思うよ。
私がくーちゃに呼びかけても返事がなく、がっかりして戻った時にオヤヂはそう言ったけれども、私は諦めきれない。仕事場に行く前にもう一度倉庫の裏に回ってくーちゃを呼んでみよう。

ガサガサ草を掻き分けて、私は再度くーちゃを呼んだ。

「くーちゃー、くーちゃー!」

「くー?くーちゃー!」
私の呼びかけを聞くとかめが反応して落ち着かなくなる。だから、最初、その声はかめの声かと思ったのだ。

間を空けて、ちょっと逸りだした気持ちを抑えながら、私は呼んだ。
「くーちゃー!くーちゃん!」


…すると


「アーキャ、アーキャ、アーキャ!」と必死な感じの声が聞こえた。私も必死に呼びかける。
すると何度も何度も「アーキャ、アーキャ、アーキャ!」と声がする。

くーちゃだ!くーちゃだ!今度は間違いない!

私は仕事場に急いだ。

「オヤヂ!くーちゃがいた!呼ぶと返事する!でも、どこかわからない!」

オヤヂは仕事場の戸締まりをしながら「表にまわるから、あなたはずっと呼びかけなさい!」と言うと、珍しく小走りで仕事場を後にした。

私は「まかせて!」と返事して倉庫裏に戻った。私の声が途切れたのに「アーキャ!アーキャ!」と声がしてる。いつの間にか、かめが「アーゴ、アーゴ」鳴いている。
そこに私も参加した。

「くーちゃ!」
「アーゴー!」
「アーキャ!」

「くーちゃ!」
「アーゴー!」
「アーキャ!」

私たちの声が重なって、スゴい事になった。…が、後で苦情が来ようと何だろうとやめるわけにはいかない。

そこへオヤヂがやって来た。
「場所がわかった!今度は壁に耳をつけて確認したから、大丈夫だ。」

「それって、それって、どこの壁?」

かめ達の「アーゴ」「アーキャ」の騒ぎの中、私はオヤヂに聞いた。

「…声は、真裏の商店の倉庫から聞こえた!」

…続く

27h part3

2008-10-02 09:54:31 | ママかめ通信
目が覚めたのは、倉庫の扉が開く音が聞こえたからだ。
時計を見れば、午前6時30分。眠ってたのは、ほんの1時間程度か。
見渡せば、オヤヂの姿はない。仕入れの為に早出してるかもしれない真裏の倉庫に行ってくれたみたいだ。お昼寝したとはいえ、オヤヂだって眠たいだろうに、悪いなぁと思いながらも、起きるのがしんどい。
脇を見たら、かめが爆睡している。かめも慌てふためいた私に付き合って、不安な時には必ず探し出して来るピンクのパタパタを引きずりながら私の後を追ったり、外に出てはすぐに戻るを繰り返したり、オヤヂに八つ当たりしたりと忙しかったものね。起きたら、くーちゃが戻ってて、かめちゃん、驚くよ、きっと。私はオヤヂの持ち帰る吉報にワクワクしながら、ウトウト微睡んでいた。
すると、オヤヂが戻った気配がした。かめまで私と飛び起きて、オヤヂを待った。

帰って来たオヤヂは期待たっぷりな私とかめに「それがさ~、まだ誰もいない。トラックすら動かしてない。」と済まなさそうに言う。

…あら~、そうなの…。ならば仕方ない、8時30分まで待とうということになった。

まだ時間があるし、目も覚めた。気がつけば昨晩は、お風呂にも入らず寝ちゃったから、今の内に済ませて迎えに行こうということにした。
こういう時の時計は、なかなか進まない。お風呂を済ませても、まだ1時間以上ある。

私はただ、かめの世話をしたり、意味もなくウロウロしたりしていた。今思えば、自分が真裏の倉庫に行って待っていればよさそうなものだが、私は行けなかったのだ。オヤヂは何にも言わなかったが、全部承知で自ら倉庫に行ってくれたのだ。万が一、昨日の声がくーちゃでなかったら、万が一、くーちゃだったとしても何か起こっていたら。まずは自分が行って、様子を見てこようと思ってくれたらしい。

8時が過ぎた。オヤヂは「まだ早いかな」と言いながら、倉庫に出掛けた。
私はかめに「もうすぐだよ、もうすぐ、くーちゃは帰って来るよ。」と話しかけながら、じっと待った。そして、あっという間にオヤヂが帰って来た。あまりの早さに「まだ誰もいなかったの?」と聞くと、「いや、もう来てて、倉庫は開いてたよ。」と言う。

「え?それで、くーちゃは?」私はオヤヂがふざけてくーちゃを隠しているんだと思い、オヤヂの周りを点検しながら聞いた。

「それがさ、いなかったんだ。」と言う。

…嘘でしょう?だって、昨日、鳴いてたじゃん。オヤヂだって、聞いたでしょう?

しかし、くーちゃは倉庫にいなかったのだと言う。オヤヂの結論は、昨日の声はくーちゃではなかった、くーちゃだとしても倉庫ではなく、その並びのどこかにいるのかもしれない。

「儚い望みだったね~…」私はもう心底ガッカリした。倉庫にいるから安心だなんて思い込んで、夜明けに寒くなっても大丈夫だなんて勝手に決めつけて、私はなんてバカなんだろう。他に何が出来るだろう。どこを探せばいいんだろう。
私はふと仕事場に置いてある雑誌に猫帰りのおまじないを見かけたのを思い出して、急いで仕事場に行く事にした。
やるだけやった、という時、オヤヂの切り替えは早い。
「もう、見つからないよ、仕方ないよ。やるだけやったじゃん。」
そんな事ない!まだ、探し足りないよ。
でも、オヤヂはちゃんと協力してくれたよ。後は私が頑張るよ。

私はかめをオヤヂに頼んで仕事場に向かった。

「立ちわかれ因幡の山の峰に生ふる松とし聞かばいまかへりこむ」

仕事場についてすぐに雑誌を見つけた。これは中納言行平が、彼の猫がいなくなった時に「待ってるって聞いたから帰って来たよ」と猫が帰って来るように詠んだとか。
昨晩はうろ覚えだったから繰り返し「松とし聞かばいまかへりこむ」ばかりを呟きながら探していたけど、今朝は紙に書いて行こう。記事の最後は「ただし、これで猫が帰ってきたという話は未だに聞いたことがない。」と締めくくられていたが、読まなかった事にする。

ついでに10枚ばかり即席のカードを作った。

くーちゃの特徴と連絡先。「もし何かご迷惑な事が御座いましたら、お知らせください」と書き添えた。私にはどうしても昨夜の声がくーちゃに思えて仕方ない。商店の並びのどこかの塀の隙間やどこかに挟まってるかもしれない。記憶を辿り、並びの商店とその向かい側の商店を数えた。合わせても10枚あれば足りるだろう。

そして、気は進まなかったが、電話を取り出し、ある番号を調べた。午前9時になるのを待って、私は先程調べた番号にかけた。
それは保健所である。
もしアクシデントが起こっていたら、引き取りを依頼されるはずだ。
まずは、猫が行方不明だと告げた。
特徴と、仕事場の住所を伝えた。出掛けた時間は午後3時前。19時間経過していると伝えた。
応対してくれた女性は優しい口調で「ご心配でしょう。少しお待ちくださいね。端末でリストの照会をしますからね。」と言う。それは、どういうリスト?とわかっていながらもつい聞いてしまいたくなった。
しばらくして「該当なし」という答えに本当にホッとしたが、まだ午前中だ、100%クリアではない。担当の方は「猫の場合は見つかるまでに時間が掛かる場合がありますからね、もう少し、待ってみてください。あと獣医師会には連絡されましたか?迷子の子を獣医師に預けにみえる方もいらっしゃるので、そちらにも連絡してネットワークに載せて頂いたらどうでしょうか?」と薦められた。電話番号を聞いて獣医師会に同じ説明をした。獣医師会にも、まだ該当なしという答え。

くーちゃは、絶対無事に決まってると思いながらも、この連絡はしておかねばと思っていたから、少し肩の荷がおりた。

次に並びの商店に連絡先のカードを持って、一件ずつ伺った。ウナギの寝床みたいな店もあって、裏にある庭まで通してもらったり、塀と塀の隙間を覗いたりした。天気は良かったが、塀の間は暗い。懐中電灯も奥までは照らせない。ずっと向こうの、あの暗い塊はくーちゃが丸まっているんじゃないか?何ヶ所もそんな場所が見つかる。
結局手書きのカードは並びの商店で終わってしまい、通りの反対側の分は足りなかった。そして、もう仕事場に戻らねばならない時間だ。私は後ろ髪を思いっきり引っ張られながらも、仕事場に戻った。

仕事場にはオヤヂが来ていた。「くーちゃは帰って来た?」と聞くと「全然!」という答え。逆にどうだった?と聞くから、一番気になった暗い塊の話をしたら言下に「目の錯覚!」と切り捨てられた。

くーちゃがいなかろうと、仕事は仕事…。

それでも頭の中はくーちゃでいっぱい。バタバタ忙しい中でも、猫を探してると宣伝しまくった。

その中のお一人が「あら、それは心配ねー。13日の金曜日までに見つかるといいけど…。フフ」と笑った。
言われるまで気づかなかったけれど、あー、確かに2008年の6月13日は金曜日だわよね…、ホントだわ~。と応対しながら、そのからかう様な物言いに、振り向きざまにぶん殴ってやろうかとちょっと思った私だった。
けれど、そんなものかもね。たかが猫1匹に大騒ぎしてるなんて、端から見たら、滑稽でからかいたくもなるのよね。

時間は刻々と過ぎていく。もうすぐ、くーちゃがお出掛けしてから24時間経とうとしていた。

…続く

27h part2

2008-10-01 15:10:48 | ママかめ通信
この6月、私とオヤヂが楽しみにしていたのが、サッカーのユーロ2008だ。私たちはJリーグの選手名より、プレミアリーグやリーガエスパニョーラの選手名の方が知った名前が多い。
早めに外食をして、ちょっと仮眠して、夜中に始まるユーロの試合をリアルタイムで見ようと楽しみにしていた。

ところがくーちゃの不在で、全くそれどころではなくなった…、のは私だけで、オヤヂはすっかり観戦モード。試合前に今夜の対戦カードの予選の様子なんかを見てる。

広くはない倉庫の掃除はすぐに終わってしまった。くーちゃが帰って来る気配はない。かめは、少し離れたところから私の関心が自分に戻って来るのをジッと待ってる。

…ああ、ごめんね、かめ。あなたを蔑ろにしているワケではないんだよ。私はかめに駆け寄って、抱っこしようと手を差し伸べた途端、フンっとばかりに逃げられた。
…かめちゃん、そりゃないよ、ハア~。

私を振ったかめは、ごろごろしながらユーロの予習をしているオヤヂのメタボな腹に陣取り「あたしは不機嫌~、今とっても不機嫌~。」のアピールの為に、オヤヂの顔の前でしっぽをバタバタさせている。

私も、ちょっと休憩~。ハァー、くーちゃはいったい何処にいるんだよぉ…。

ひと息ついたところで、オヤヂに昼間の様子を聞いてみた。
オヤヂの語るところによると…。


オヤヂが倉庫に戻ったのは、午後2時を少し回った頃。
その時は、かめもくーちゃもようやくお昼寝から覚めた感じだったらしい。オヤヂがごろごろしていたら、くーちゃが窓を開けよと要求したらしい。下僕見習いのオヤヂは言われるがままに窓を開け、まずくーちゃが出かけ、かめがその後に続いた。その時間が、確か午後3時前頃だという。

…そして、オヤヂの記憶はここで途切れた。
下僕見習いの分際でその後ひたすら惰眠を貪ったオヤヂは、かめが開けた窓から凄い勢いで飛び込んで来た時にそのメタボな腹を踏みつけられ「ウッ!」となって一瞬覚醒した。その後、雨に気付いて窓に鍵を掛け、また寝たというのだ。

…ちょっと、待って!それじゃぁ、くーちゃを締め出したワケ?

「帰って来れば、わかると思ってさ~。」

一度寝たら起きないあなたが、くーちゃが帰って来たのに気付くワケないっしょ!

事の次第を確認したら、またドーッと不安と疲れが押し寄せた。

雷に驚いて走って帰って来るくーちゃが、窓が閉まってて右往左往する様子が思い浮かんで、私はたまらない気持ちになった。

オヤヂに「あのさぁ…」と話し掛けた途端、オヤヂはビクッと体を一瞬固くさせて「ハイ?」と返事をした。

ん?なんで緊張した感じで返事してんの?

「…殴られると思って…。」

……殴んねーよ、バァカ!

「私はね、出かけたところを見ていないまま、帰って来ない状況がキツいの。」と、オヤヂに伝えた。オヤヂは「その気持ちは何となくわかる。」と言った。

そっかぁ、わかってくれるのか、それならいいよ、仕方ないよ。今更何言ったところで、時間が戻るワケじゃないし。

そうこうしているうちにユーロが始まった。
私はまだ探していない、倉庫の裏側を捜索してみる事にした。民家が密集しているので、あまり懐中電灯などは使えないので遠慮していたが、残すはこちら側の捜索だけになっている。

私は画面に広がる緑のピッチに背を向けて、倉庫の裏に回った。

鈴は鳴らさず、小さな声で「くーちゃ、くーちゃ」と呼びながら雨でずっぷり濡れた草をかき分けながら、くーちゃの痕跡を探した。

ここは、くーちゃがまだ小さかった頃、他の兄弟達と転げ回って遊びながら母猫を待ってた場所だ。他の兄弟達がブロックを駆け上って遊んでるのを、今は亡きチビトラと羨ましげに見上げていたくーちゃ。小さくて、弱々しくて、目と鼻がいつもグチャグチャで、オヤヂも私もくーちゃが元気に成長するかどうか、正直不安だった。それがものの一週間でぐんぐん元気になって、今やかめをも凌ぐ元気な娘になってきたのに、ここまででお別れなの?

私は壊れた板塀や、古い発泡スチロールを退かしながらくーちゃを呼んだ。

その時、「アーン、アーン」と声がした。その声が、若い。この辺りでくーちゃより若い猫は今いない。空耳か?ずっと遠くの猫の声か?
私は再度くーちゃを呼んだ。その声は私に応えるように「アーンアーン」と続く。

「オヤヂ!オヤヂ!」
私は声の主がくーちゃだと確信し、オヤヂを呼んだ。
「くーちゃがいる!近くで鳴いてる!」

いつもは腰の重いオヤヂだが、この時はさすがに責任を感じていたのか、すぐにやってきた。

私が呼ぶ。それに応えるように声がする。

「ね、ね、くーちゃでしょ?」

オヤヂは「わからないな。違う気もする。」と言いながら、耳を澄ませている。

そして二人同時に疑問が湧いた。

声がするのに、居場所がわからないのは何故だ?怪我をしてたら、こんなに元気に鳴かないだろう。何かに挟まってるとしても、こんな朝方に探せないだろう。

声はまだ続いている。
「…くーちゃ…」
いろいろ考えても、なにがなんだかわからなくなってきた私の声はだんだん萎んだ。

するとオヤヂ、倉庫の反対側に行ったかと思ったら戻って来て「わかった!」と言う。

「くーちゃは表側の商店の倉庫の中だ。」と言う。

その倉庫は、うちの倉庫の真裏で、確かに中にいるとしたら声が響く。
雷に驚いて、倉庫で雨宿りしているうちにヒドい雨でシャッターが閉められたとしたら、確かに帰って来れないし、捜しても見つかるはずがない。
その推理は的を得ているように思えた。そうだ、そうに違いないと思った。だとしたら、今夜は出来ることがない。仕入れに出掛けるだろうから、朝一番に行ってみよう。
良かった、とにかく居場所はわかった。中にいるなら安心だ。

私達は安堵して、夜が明けるまで一休みすることにした。

朝になれば、くーちゃに会える。良かった、本当に良かった。

私達は、そう信じて疑わなかった。閉じ込められてしまったくーちゃの様子をアレコレ想像しては、そのおまぬけぶりを話題にした。

本当に本当に、あの声がくーちゃで、居場所も確定できた、そう信じて疑わなかったのだ。姿を見なくなって15時間が過ぎている。それでも、あと2時間もすれば、くーちゃに会える。

…けれど、事はそう簡単ではなかったのだ。

…続く

27h part1

2008-09-30 23:10:36 | ママかめ通信
もう時効というわけではないが、ほとぼりは冷めた頃かと思うので、我が家の放蕩娘くーちゃの大事件(下僕にとってはね)を記録しておこうかと思う。

それは6月の初め、まだ「ゲリラ豪雨」なんて名付けられてもいなかった頃、生まれてからこんなにヒドい雷雨を経験した事のないくーちゃにその災難は降りかかった。

朝の番組で「アマタツ!」が「雷に注意!」と説明していた時間帯には全くの晴天で、雷雨の話は関東の一部の話だろうとタカを括っていた。

その日の夜は仕事が休みで、久しぶりにオヤヂが外食に行こうと言い出した。

休みの時オヤヂは全くの休みだが、実は私は休めない。休みの夜にしなければならない事があるので、それを終えなければ食事に行けない。
だからこの日、倉庫にかめとくーちゃも連れてきておいてオヤヂと待機させ、用事が済み次第食事に行く事にした。

私の予定では、午後1時から取りかかっても午後7時頃まではかかる。その間、かめやくーちゃの様子を見に行く余裕はない。その為の「倉庫待ち」であり、「オヤヂ待機」である。
オヤヂは早い時間からとっとと倉庫に行き、私は作業を始めた。


手元が急に暗くなったのは、午後4時を過ぎたところだった。
外を見るといつの間にか真っ暗である。

さっきまで本当に晴れていたのに、この雨雲は一体なんだ?…と思っているうちに「ドッカーン」と雷が鳴り、ドッシャーンと雨が続いた。

私はちょっとイヤ~な予感がした。しかし、かめとくーちゃはオヤヂといる。思わず首を竦ませてしまうほどの大きな音を立てて雷は鳴り続けているが、オヤヂがいれば大丈夫だろう。大丈夫に違いない。取り敢えず、早く終わらせてしまおう。その時はとにかく、仕掛った作業を中断出来ない状況でもあったので、ひたすら「オヤヂがいるから大丈夫、オヤヂがいるから大丈夫。」と呪文のように唱えては作業を進めた。

その後も、雨は強く降り続いた。
夕立とかのレベルを遥かに越えて、ザンザン降っている。
結局、作業が終わった7時30分を過ぎても雨足は衰えなかった。
こんな雨でも、食事に行くのかな?とオヤヂに連絡すると「傘さして行けばいいじゃん?」と軽い答え。取り敢えず仕事場に来てもらう事にした。それから傘さして行くか、タクシーを呼ぶか決めればいい。オヤヂはこの雨の強さに気付いてないに違いない。

倉庫から仕事場のほんのわずかな間にも足元をグシャグシャに濡らしてオヤヂが来た時には、8時を回っていた。
後片付けをほぼ終わらせながら「かめとくーちゃは雷に驚いたでしょう?大丈夫だった?今どうしてる?」とオヤヂに聞いた。

オヤヂは倉庫に行ってから今まで殆ど眠っていたらしい。まだボンヤリした顔で、タオルで足元を拭きながら「かめは寝てるけど、くーちゃはいないよ。」と事も無げに言う。

えっ?今、なんて言った?

「だから~、くーちゃはまだ帰ってなくて~、かめは寝てるよ。ところで、雨、スゴいね~、タクシー、呼ぶ?」

…まだ、帰ってない?帰ってないって、どういう事?こんなに雨が降ってるのに、帰って来ないって、変でしょう?捜しに言った?

…と、なるべく努力して穏やかに聞くと、オヤヂ、ヘラッと「ん?捜すも何も、今まで寝てたもん。」と答える。

…この、この、役立たずー!何の為にあの子達と倉庫にいたのよ!猫の世話も出来ないの?何してたのよー!

私は外の雨音に負けないくらいの大声でオヤヂを怒鳴りつけていた。
なのにオヤヂは「大丈夫だよ~、どこかで雨宿りしてるよ。それよりさ~、腹減った~、どこに行く?」ときた。

…あのね、よぉくよぉく覚えておきなさいよ!私はあの子達の無事が確認出来ないのに出掛けたり出来ないの。行くんなら、あなた、1人で行きなさいよ。私は今から捜しに行く!

それを聞いたオヤヂ「あ~、そりゃそりゃご苦労様。」と言いやがった。聞いた次の瞬間、私の鉄槌がオヤヂにぶちかまされたのは書くまでもないが、書いておく。

私は残りの片付けを済ませてから、雨の中に出掛けた。片付けを済ませてから出掛けたのは、オヤヂに任せて出掛けて、戻った時にそのまんまの様子で残されてる可能性が高く、怒りが倍増するに違いなく、それを回避するためには片付けて行かなくてはならないのだ。

世間様はオヤヂを「優しいダンナ」と言う。それは間違いないが、コレほどアテにできないダンナも珍しい。たまにその鬱憤が溜まりに溜まり、大爆発します、私。

オヤヂの事はさて置き、私は雨の中、帰っておいでの時に鳴らす鈴と懐中電灯、怪我をしていた時に備えてタオルとバッグを肩に掛けて雨の中に出掛けた。

気が急いているので、つい小走りになる。
くーちゃの立ち寄り先は大体把握しているつもりだが、怯えて隠れているとしたら思いがけない場所に逃げ込んだ可能性が高い。走ってはいけない。ゆっくりゆっくり…。雨が強い。さした傘にくーちゃはびびるかもしれないが、迎えに来たと分かれば、姿は見せるはずだ。

垣根の根元に目を凝らし、神社の軒下に体を入れて懐中電灯で照らすも誰もいない。
仕事場と倉庫を中心に、まず南、東、北、通りを渡ってみる。全く気配がない。自宅まで戻ってから、もう一度、ぐるりぐるりと角を回り、道路に這いつくばって懐中電灯を翳しながら仕事場へ向かう。全く気配がない。くーちゃどころか、車も、人もいない。

11時を過ぎた頃に雨が小降りになり始めた。もしかしたら、帰って来てるかもしれない。
くーちゃが戻っている様子をイメージしながら、倉庫に戻る。

「帰ってきたー?」
入り口でオヤヂに尋ねると、のんびりした口調で「ま~だだよ~。」という返事が聞こえてきた。
その暢気な口調にドッと疲れが出た。かめがトテトテやって来て、私の開けた戸口から外を窺う。
「かめちゃん、くーちゃはどこにいるんだろうね~。」

私は入り口に腰掛けて、ちょっと休んだ。かめは入り口のすぐ外に出て、北側の上方をずっと見上げている。一点を見つめたままのかめの様子に、もしやと慌てて外に出て同じ方を見上げるが、そこにくーちゃの姿はない。

でも、かめの様子は今にもくーちゃがその方向から飛び出して来るかのようだ。私はその辺りの壁に登って、向こう側を覗いたり、塀の間を照らしたりしたが何もない。

そのうちにかめは倉庫に入ってしまった。私もなんだか疲れて、ちょっと休む事にした。
雨は殆どあがり始めているし、雨宿りしていたなら戻って来れる程度の降りだ。

ところが疲れているのに、座っていられないのだ。夜中だというのに、私は唐突に倉庫の掃除を始めてしまった。ジッとしていると心配が形になってしまいそうで、動かずにいられないのだ。そんな心配はいらないという思いもある。その二つの気持ちが交錯して落としどころが見つからない。ひたすら、ワッサワッサ掃除を続けた。

そんな私の様子を見ていたオヤヂが「12時には帰って来るよ。」と声を掛けた。
私はなんだか急に心細くなって「…その自信はどこから来るの?根拠はあるの?」と聞いてみた。
答えなんてわかってるのに、聞いてみた。

オヤヂはニッコリ笑って「根拠はね、…ない。」と言いやがった。

…やっぱりね。

…続く

キュンと寒い…。

2008-09-30 13:15:27 | ママかめ通信
かめは「秋土用」に産まれたに違いないと勝手に思い込んでる。

最近でこそおデブになってワサワサな毛並みだが、一頃はつるんとウナギみたいな毛並みだった。皮が薄い感じで宮沢賢治言うところの「釜猫」とはかめみたいな子に違いないと勝手に思ってる。

ほんのちょっと寒くなっただけで、上掛けの微かな隙間に鼻を突っ込んで来て「中に入れて~」と強引に入って来る。

片足の膝を曲げて寝かせてかめのアゴが乗せられるようにして、もう片足は上掛けが掛からないように膝を立てる。
この姿勢で耐える下僕は、30分程度経つと足がつり、苦行を強いられる。今年は早くもそんな気温がやって来たのである。

しかし去年の冬、良いものを発見!
テント形のペットベッドである。

これが優れものな理由は、使わない時は45cm角の固めのスポンジについたカバーにあるポケットにテント部分を折り畳んで仕舞える上、骨組みとスポンジも簡単に外せて丸洗い出来るのだ。
そしてテント部分は透けるので、かめが外が気になった時に内側から様子を窺える。

しかも980円という安さ!
最初に見つけた時はひとつだけ購入したが、組み立てた途端にかめとくーちゃの争奪戦になったので、急ぎ追加でもうひとつ買ってきた。

あまりの人気にきっとグレも喜ぶだろうと、うちのは黄色のネルみたいな生地だが、同じ形のデニム地をグレにもプレゼントした。グレは一年中使ってると梅ちゃんが喜んでくれている。

これが出現すると、かめもくーちゃも中で寛ぐ。下僕の足もつらずに済む。

しかし、まだまだ微妙に暑かったりして、二人してノソノソ出てきては、下僕の膝枕を争って喧嘩になる。

譲るのはいつもかめで、仕方なくオヤヂの腹に陣取っては「ア~、面白くない!」とオヤヂの足をチマチマ噛んで憂さを晴らしている。オヤヂの脹ら脛の踵に近い辺りがところどころ赤いのは、そういうワケがあるのだ。

ペットベッドと同時期に購入したのがカシャカシャ音が鳴る袋状のオモチャである。

かめちゃんは大変な小心さんなので、この見慣れない、ショッキングピンクとケバケバしいオレンジの物体にビビり、慎重に慎重に探索を始めた矢先に「ソレ、なに~?」とすっ飛んで来たくーちゃに奪われてしまい、以来このオモチャはくーちゃに譲ってしまった。

くーちゃは遠くにいても「カシャカシャ」と音がすると、スッゴい勢いですっ飛んで来て袋の中でワクワクしている。

かめはそれを知りながらわざわざ近くを通ってくーちゃをからかうのだが、大抵の時は大反撃を喰らって痛い目にあっているのだ。

パッケージに「猫の88%がお気に入り!」と書いてあったが、確かにくーちゃの気に入り方はハンパではない。

隠れて遊んで、ふざけてワクワクして、そしてふと気付くと袋の穴からはみ出しながら爆睡していたりする。

子猫ならいざ知らず、一歳半を過ぎ、リーチはかめの1.5倍、座れば頭ひとつかめよりデカいくーちゃが、虚ろな目つきをした途端にコトンと遊び疲れてそのまんま眠りこけるまで夢中になるのだから、コレも我が家の優れもの認定である。

最近、コレのトンネルバージョンも発見。これも主にはくーちゃが使うが、かめも時々遊んでいる。どちらのカシャカシャも材質がプラスチック系なので、袋の中の温度が少し暖かい。。暑い時期は何度も通り抜けて遊んでいるが、最近は中に潜んでハンター気分を盛り上げるのに良いらしい。袋の中は微妙に暖かい。…で、睡魔に襲われ、獲物(下僕の足とか、ドン臭いかめ姉とか)を待ち続けるうちにコトンと寝てしまう。

この冬は、テント型ペットベッドとこのカシャカシャ袋が活躍しそうである。

置き土産

2008-09-26 18:30:53 | ママかめ通信
アブサン物語を読んだのは遥か昔。
アブサンの後日談が出たと聞いて読んでみた。

新しい猫は迎えない。アブサンの代わりになってしまう新しい猫にも代わりを立てられるアブサンにも失礼だし、何よりアブサンの余韻に浸っているのだという件には同感した。

ママがまだ元気いっぱいな頃から、私はいつか来るママとの別れが嫌でたまらなかった。耐えられずおかしくなると自分でも思っていたし、ママと私の濃密な関係を端で見ていたオヤヂも「きっとあなたは変になる!」と断言していた。

ママと別れて多少は変になったのは確かだが、その衝撃の緩衝役になってくれたのは、間違いなくかめである。

私は、かめの唐突なまでの登場は、ママの配慮ではないかと思ったことが一度ならずあった。

ママが弱虫な私を気遣って、猫の神様にお願いしてかめを送り込んでもらったものの、やっぱりちょっと面白くなくてクールな態度を取ったみたいな。そんな風に思う事もあった。

不思議な事にかめの眼の色は、金色からママと同じ緑にいつしか変わり、何の血縁もないはずなのに、ふとした拍子に表情や仕草が似ていて時々驚かされる事がある。

だからと言って、かめがママの代わりだと思った事はない。それは約一年ほどだけれど、一緒に暮らしたからだ。病気がわかってからかめに会っても、闘病が終わってからかめに会っても、私達はかめと暮らしていなかったと思う。

今思えばかめの登場したタイミングは、本当に「この時期しかない!」タイミングだったのだ。

私にはかめがママの置き土産に思えるのだ。

そんな事を考えていた時のこと。
大切にしていた小さなパートナーを亡くして久しいある方が、今年に入ってから新しい小さなパートナーを迎えるかもしれないと口にし始めた。

迎える気持ちになった本当の動機はわからないが、とにかくブリーダーを探して行き当たる事が出来た。

ところが、ブリーダーにメールを出した日に、先住の子が夢に出てきた、これは先住の子がヤキモチを妬いてるからではないかと言い出した。

そして「どう思います?」と聞かれた。

どう思うも何も、ただの夢でしょ…。

しばらくして今度はブリーダーのお宅に伺う前日に台風が来た、やっぱりあの子は新しい子が来るのがイヤなのかもしれない、そしてまたしても「どう思います?」ときた。

ついイラッとして「そんなバカな事があるワケないじゃん!」と怒ってしまった。

そもそも先住の子をそんな風に思う事や、なんでもかんでも先住の子の所為にする考え方が聞いていて気持ちが悪い。

ニ度と同じ様な話を持ち込まないで頂きたいものである。

世の中、いろんな人がいる。

お土産

2008-08-03 22:34:33 | ママかめ通信
ママの娘チーは、ママに似ず狩りが大好きだった。しっかり渦巻きのある、見た目全くのアメショだった彼女はおやぢのお気に入りだった。彼は今でもチーを懐かしむ。

「フゥーンフゥーン」という声を出しながら帰宅する時、チーの口には必ず獲物がくわえられていた。その声を聞くと、猫共全員集合の合図である。ママも一緒になって獲物が来ると馳せ参じた。まるでチーが家長みたいだった。そんな彼女はある日、兄弟猫のにーにと自分の子供のウリを引き連れ出奔。にーにとウリはしばらくしてからちょっと寄ったりしたが、チーはそれっきりだ。

チーの獲物は、カエル、トカゲ、雀、ネズミ、そして、鳩…。

朝起きたら、家中に舞う羽毛。慌てて布団を調べるも、無事。何だろう?とあちこち見ながら台所に行くと、鳩の首だけが転がっていた。後は羽毛が舞うだけで何も残っていなかった。

ママは虫専門だった。そのほとんどは蝉や蛾で、チーの様な総毛立つお土産はなかった。

かめも虫専門だ。小さなバッタやコオロギ程度で、それはおもちゃを持ち帰る程度の感覚に近い。

くーちゃがまだとっても小さかった頃、くーちゃのお母さん猫が「いつもお世話になりまして…」とでも言うように文鳥の首だけ置いていった事がある。…一体、どこの文鳥なのー?!人目につく前にササッと文鳥をお弔いして、「気持ちは有りがたいけども、もうお礼はいらないからね。」とくーちゃのお母さんに得々言い聞かせた。

血は争えないのか、子猫の頃に捕ってもらった獲物を捕るようになるのかはわからないが、くーちゃの初土産は雀の子。

今の時期、巣立ちの練習や、巣が狭くなったりでヒナ受難の季節だが、そんな中のヒナがたまたまくーちゃの初土産になってしまった。

すぐに引き離したものの、ヒナには気の毒な事になった。

くーちゃはその日から二羽目のヒナを探して、グーンと外出時間が伸びた。炎天下に長く出掛け、たまたま首輪装着の時期と重なってしまい、首周りに汗疹がでた。

ホントに、くーちゃってば!!

首輪は外し、帰る度に水で首周りから肩から拭いて汗疹がヒドくならないようにひたすら願う。

今日も今日とて、いくら外気温が熱湯みたいな暑さでも、彼女は狩場へ向かう。

けれど、そう易々と獲物はいませんよ。
30分で獲物をくわえて帰って来るなんて技は、歴々の猫の中でもチーくらいなものですからね。

通りすがりの猫さんが、あまりの暑さにいつまでも「涼ませて~」と来るのに、こんなに暑い中、ばかばか出掛けたがるおばかさんはくーちゃ位なもんですよ!

最近はくーちゃの帰りが遅いとかめが落ち着かない事が多いんだから、サッサと帰って来なさい!

下僕の心が休まる日はありません。

季節はずれの鈴の音

2008-07-30 22:45:00 | ママかめ通信
…シャンシャンシャン…

サンタクロースの橇の音だ。

…寒い…、寒い…。
寝ぼけながら、布団を探すが、見当たらない。

サンタクロースの季節なんだから、寒いに決まってる。早いなぁ、もうクリスマスかよ。もう年末か~。

この前まで、発熱人体並みの気温だったのに…。あ~、寒い!

ついに寒さで目が覚めた。!クリスマスなワケないじゃん、まだ7月だよ。
何でこんなに寒いんだよ!アッ!バカおやぢ、冷房つけっぱなしだ!えっ?設定温度19度?!このアホたれがー!

蹴りを入れてやろうと振り返ると、私の上掛けまで巻きつけて、みの虫と化したおやぢが寝てる。…コイツは、全く…。

暑がりなおやぢはキンキンに冷えた部屋が好きだ。私は寒いのに弱い。別の部屋で寝る!と宣言したが、猫どもがみんな私の所に行くから嫌だと言う。寝る時までクーラーをかけるならタイマーをセットしろと言ったのに、また忘れたらしい。しかも19度設定!クーラーを切って、おやぢをボコボコ蹴りまくって、上掛けを引っ剥がし、さぁもう一度寝るぞ!と横になってふと気づいた。

あの鈴の音は何だったんだ?…と思った次の瞬間、ひときわ大きくテンポが上がった「シャンシャンシャン」が聞こえ、ダーンっとくーちゃが飛び込んで来た。

くーちゃがなかなか大きくならないなんて心配して獣医さんに相談したら「でも3Kgありますけど?」と呆れられてから幾ひさし、今や彼女は筋骨隆々なマッチョな猫に成長した。

その彼女が勢いつけて激突すると、私は吹っ飛ぶ。大袈裟ではなく、ぶつかってくる位置によって、ガッと倒れる。
今宵も、窓を覗こうと屈んだ喉もとに突進されて、バカンと転けた。

くーちゃは無事に着地して「腹減ったー!」と飛び回ってる。

…今、参りますとも。と、下僕は呟いたとさ。

ガッガッとご飯を貪るくーちゃの首には、シャンシャンシャンの音の元、首輪が光ってる。

今までいくつの首輪を試した事か…。
付けた途端に嫌がって外しにかかり下顎が引っかかり慌てた首輪もあれば、首輪に付いた鈴を嫌ってぐるぐる回し続けた首輪もあれば、「もっと小さい鈴ぢゃなきゃダメなんだよ。」とおやぢが知ったかぶって言うから小さい鈴で作った首輪もあれば、つけて30分でどこかに外して来た首輪もあった。

そんなに嫌いなら、もーいいやって思ってたが、「蓄光タイプ光る首輪」というコピーに惹かれてついつい新しい首輪を買ってしまった。
また嫌がられるかな~と思いつつ、コソッと付けた。今までは何をしていても付けた途端に「何これ、何これ、イヤー!」だったのが、…アレ?平気っぽい。
鈴だって、そんなに小さくないよ。でも、平気なのかい?

一体、今までのと何が違うの??

くーちゃはこの首輪が嫌ではないらしく、嫌どころか鈴がツボらしく、今日も季節はずれの橇の音を高らかに鳴らしながら元気に走り回って走り回って、突然コロンと爆睡するのだった。

母はそんなくーちゃも、そんなくーちゃを呆れ顔で見ているかめも大好きです。

かめ、心境の変化?

2008-07-29 22:36:44 | ママかめ通信
かめが500gという小ささだったから、ママとは問題なく慣れてくれると思ったが、既に腎不全の症状が顕れていたせいか、ママはあまりかめを構わなかった記憶がある。
私は私で、ママとの時間を大事にしたい気持ちが強かったから、かめに不必要な我慢を強いたと思う。

具合が悪いなりにママは、狩りしてきた虫をかめに渡したりはしたけれど、ママが子ども達にしていた様なしつこい程に丁寧な毛繕いをしてあげていた覚えはない。

くーちゃは5猫兄弟の中でも小さい子で、同じように体の小さいトラといつもいつも一緒にいた。お互いにベッタリくっついて眠り、毛繕いしあう姿をよく見かけた。

半年位をそうやって過ごしていたくーちゃにとっては、毛繕いは当たり前な事だからかめにも当たり前に毛繕いの為に近寄るのに、その度に前足で眉間を押さえられむーんと押し返されるものだから、いつもケンカになった。

かめはくーちゃが散歩に出掛けるとあからさまに喜んだし、帰ってくればふてくされた。

寒くなったら猫団子になるなんて事は全くなく、それぞれに別のテントが必要だった。

…それが最近、かめにビミョーな変化が生じている。

きっかけはくーちゃの27時間失踪事件だったように思う。この話は又いずれ詳しく書くが、この時、くーちゃを探して右往左往していた私が、かめに「くーちゃがどこにいるか教えてよ~」と泣きついた時、かめはちゃんと教えてくれたのだ。教えてくれたのだが、私が理解できなかったのだ。
27時間後にくーちゃが戻って来た時、かめは、あっけらかんとしているくーちゃに執拗に近づいて、なんだかブツクサ言っているようにみえた。

だからといってかめとくーちゃの関係が劇的に変わったワケではなく、何となく何となく変わって、それが目に見えた形になってきた。

かめはくーちゃの毛繕いを即座にむーんと押し返さず、ジッと我慢してるうちに「アレ?なんだか気持ちよいかも~」な様子になる事が増えたし、くーちゃの帰りを心配してアチコチで待ちわびては私に「探しに行かないの?ねぇー、ねぇー?お迎えに行かないの?」と訴える。

それなのにかめを残してくーちゃを探し回っていると、「あたしはココよ、あたしはココよ!」とウルサく主張する。そういう時はいちいち戻って「かめはちゃんとお家にいてお利口だね~」と撫でに戻らねばいけない。

くーちゃの帰りが待ちきれず、かめだけ残して仕事に行くと、かめのライナスの毛布、ショッキングピンクのパタパタを引っ張り出して来て玄関に「あたしは一人で寂しいです。」とメッセージを残す。

くーちゃが一緒にいる時はそんなメッセージはない。けれどママが一緒だった頃には、仕事に行く度に残してあった。
それを思うと、少しかめが不憫になる。

だからこそ、ここ最近のかめの変化は嬉しく、微笑ましい。

くーちゃはまだまだ単純な年齢だし、心配する意味も判らないでいる。
それでも一応はいろいろ考えたり我慢を覚えたり、くーちゃはくーちゃなりにきっと大変だと思う。けれど彼女は基本的に天真爛漫だ。そして、かめはくーちゃを見て、彼女なりに羽目の外し方を覚え始めた。


そんなくーちゃはやっぱり今日も放蕩三昧だった。ふと「かめちゃんが心配してたんだから、心配かけてゴメンね、アリガトってしなさいよ。」と言ってみた。そんな事言ったところで解るワケないよね。と思っていたら、お水にもご飯にも、お気に入りのラグにも目もくれず、まっすぐに香箱座りのかめの前に行き、額を下げてかめに舐めてもらいに行ったのだ。

以前なら、そして最近だって場合によってはそのままバトルになる。どーする、かめ?!と固唾を飲んで成り行きを見守った。すると、かめは普通にくーちゃの額をぺろんぺろんと舐めた。
くーちゃも申し訳程度にぺろっとかめを舐めてからクルッと振り向き、「ゴメンねしたよ。お腹空いた~!」とばかりにニャァと鳴く。

くーちゃ、お利口でした!かめもとっても良い子でした!よし、マタタビ、奮発しちゃる!

クロがくーちゃになった理由

2008-07-19 22:12:02 | ママかめ通信
ブログをたまにしか書かないと、不自然な事が起きる。

当初、単純に黒猫だから「クロ」と名付けられたおチビさんは、スルスルっと大きくなった途端、意外な事実が判明した。
クロでは単純だからと、一時期はくーろんとも呼んでいたのだが、そのお名前も今は昔。

ある晴れた朝、彼女が日向ぼっこをしていた時のこと。
くにゃくにゃと気持ちよさ気に体をくねらせるのをオヤヂと見ていた時だった。

「…あれ?」とオヤヂが目を凝らしたのと同時に、私もガバッと身を起こして彼女を凝視した。

そしてオヤヂに「今、何か見えた?」と聞くと、「…うん。」と答えるオヤヂ。

お互いに目の錯覚だと思ったから、確認せずにはいられなかったのだ。
でもオヤヂにも見えたし、私も見た。

当の本人は、我関せずとばかりに日だまりの中、レーロレーロと毛繕いしている。

毛並みが濡れるとますますクッキリハッキリしてきた。
なんと、この娘には肩から腕に向かって三本の縦縞があるのだ!
その上、漆黒ではなく、濃い茶色な毛色なのだ。チビな時には色も柄も凝縮されていてわからなかったのだ!

「…バッタもん?…」
振り返りながらついオヤヂに問いかけてしまった。オヤヂはゲラゲラ笑いっぱなしである。
豹のような黒猫に出会ってみたいなぁという私の夢が、真っ黒くろすけなおチビの保護で叶ったかに見えたのに、実は焦げ茶で柄入りだったのである。

ま、うちの子に迎えたのは、毛色云々よりも人懐っこい性格だったから一緒に暮らせるだろうと思ったのが一番の動機だけれどね。それにしたって、縞まであるとは(笑)

それ以来彼女は「クロ」とも「くーろン」とも呼ばれなくなったのである。
見た目、黒くもあり茶色でもあるので「くーちゃ」と呼ばれる事になった。

そして何故か「クロ」と呼ばれても反応が薄かったのに、「あんたは黒茶色だったから、くーちゃにお名前変更!」と言い聞かせた後は、「くーちゃ!」と呼ぶとテッテッテッとやって来る。

ついでにかめまで「かーちゃ」と呼ばれてもドッドッドッと寄って来るようになった。
けれども、ついついかめを「くーちゃ」と呼び間違えると、一瞬ピクッと固まって「いま、くーちゃっていったでしょ?!」とばかりにじろりと睨まれるダメダメな下僕である。

そして、ちゃんと認識してくれる名前を見つけられた事が、その後とっても助けられることになるのだ。

まいご札

2008-07-13 14:20:29 | ママかめ通信
一時期HPを立ち上げてた頃に「効果あった!」と喜んで頂いたことのあるまいご札。

内田百聞著「ノラや」によれば、出奔した仔が出掛けたであろう戸口辺りにご飯茶碗の下に人知れず敷くらしいとある。

「待ってるって聞いたから、帰ってきましたよ」って事らしい。

先月、くーちゃが27時間行方知れずになった時にはひたすら呟きながら探し回ったが、無事保護したから、効果はあるのかも。

くーちゃだけでなく、ママにしても誰にしても、猫の出奔というものは本当に堪える。

それが文字通り骨身に滲みているだけに、余所の猫さんの出奔も他人事ではないのだけれど…。

2007年の秋、仕事場付近は春先に生まれた子猫軍団プラス大人猫の集団が町内会で大問題になっていた。事故死した子猫もいたが、その子をうちの仕事場の玄関先に置かれたりもした。

それならばうちが何とかしますわよと、大人猫も含め落ち着き先を探し回り、そうこうするうち二匹残った片方のチビ虎がまたしても玄関先で亡くなっており、見かねて最後の黒チビをうちで引き取り、ひとまず猫密集地域ではなくなった。

同じ頃、少し離れた場所でも同じように問題視されている猫密集地域があり、避妊せず母猫を面倒みてたら春の子猫秋の子猫とたんまり溜まってしまった家があった。

知らない方ではなかったので、早い時期に猫の為にも避妊を勧めたが「不自然な事はしたくない」と言われたので、それ以上は何も言えなかった。しばらく前にその中の子猫が車に轢かれ、その子だけは家に入れて他の子達はサッシの向こうにいる状況となった。

私たちが何とか仕事場近辺の猫達の行き先を模索していた頃、そのお宅も猫密集度で苦情を受けていた。手伝おうにもこちらも手一杯。ちょっと待って~と思っていた矢先、「外の子はみんな捨てて来た。」と悪びれた風もなく報告を受けた。

実はこの方の親戚にあたる方が、子猫だったママをうちの仕事場付近に捨てたと以前本人から聞いた事がある。初めて遭った頃のママは、上下の切歯はなく、推定4年近くのノラ生活で声が潰れ鳴き声が出なかった。
さぞや大変だったろうと思うと、いつも胸が痛んだ。その親戚が里親を探してくれていたら…。
ママが亡くなった後に知ったママの事実は、やり場のない怒りと悔しさを私に残した。

そしてまたしても、平然と「捨てて来た」と言う。私はやるせなかった。

しばらくして、私の仕事場近辺の猫密度は解消された。難しいと思われた大人猫も優しいお宅に引き取られた。
仕事場付近は通りすがりの猫はいるが、常駐猫さんはいなくなったのだ。
ようやく落ち着いて、くーちゃとかめの仲を取り持つ事に専念していた矢先、件の方からメールが来た。

「最近、そちらの周辺の猫が少なくなったみたいですが、うちの方に来ていませんか?又最近増えているんです。」

最初は何を言わんとしているのかわからなかったのだが、要はそちらにいた猫を捨てに来たんじゃないの?という事らしい。言葉がなかった。

第一、うちの近辺にいたのは黒や白黒やミケだ。あちらは見かけた限り、オールトラ猫。こちらに唯一いたチビトラは既に亡くなっている。どう考えても有り得ないでしょう?

やんわりと、それはないと思うと返信したらば、直接確認にみえた。

里親を探した事は敢えて言わずに、毛色が違うと思うよと伝えた。が、それでも疑っている感じだったので、つい、有り得ないから!と強く言ってしまった。

すると私の言葉を不信がりながら「じゃぁ、捨てた場所から戻って来たのかな?怖~い。」と言う。

もぅね、どうとでも考えて下さい。

それ以来、ちょっと距離を置いてみたら、その方は持論を曲げることなく、私を「猫を捨てて押し付けた人」に仕立て上げて納得しているらしい。

もう、好きにしてください。

あれから半年。
先日何気に通りかかるとまたしても子猫がいた。懲りないなぁと呆れた。そして間もなく、そのお宅に貼り紙がしてあった。

一度は通り過ぎたものの、今度は里親探しをしてるのかな?と気になって読んでみることにした。

すると、先に事故に遭って家猫にした子を「探しています」という貼り紙だった。
詳しい特徴の記載はなく、いなくなった日時と「大切な子です」としか書かれていない。

…と、ここで話は戻るのだ。猫が出奔した時の気持ちは痛いほど解る。
その子の安否も気になる。でもね、それでもね、こちらからあの方に何かしらの行動をする気が起きないのだ。

それでもね…。
せめて貼り紙がある内は、仕事帰りの夜中に遠回りしながら路地を走り、「稲葉の山の~」を呟きながら帰る事にしている。

すでに6月

2008-06-08 06:18:41 | ママかめ通信
20049
昨年末から本気で忙しかった。
以前なら大丈夫だったのかもしれないけど、年齢的に大変になってきたりしたのかな?
体力に微妙に自身がなくなったりして・・・。

昨年12月に突然発情したくろは体重2.5kgなのを確認して、かめちゃんよりも一年近く早い避妊手術。
小さい事を懸念していたのですが、この月齢には珍しく卵巣膿腫があったクロ。
年末の忙しいときに連れて行かなくても・・・と反対したオヤヂを振り切っての決断は正解だったらしい。

今年に入って、クロの体重がぐんぐん増えて
それに連れ、彼女が真正のクロ猫でないことが判明・・・。

いろんなお話はまた今度。ゆっくり書きに参ります。