夏への扉、再びーー日々の泡

甲南大学文学部教授、日本中世文学専攻、田中貴子です。ブログ再開しました。

お知らせ

2013年12月21日 | Weblog
 更新がほぼ滞っておりますことをおわび申し上げます。

 ただ今、本サイトのリニューアルを準備しています。きなこの日常が中心となっているブログですが、日々の情報発信

はtwitter(@takakotanaka)に移ってしまっていますので、ブログの管理が難しくなったためです。

 今後は、以下のような内容になる予定です。

 *きなこと私の日常雑感・・・きなこの写真とともにお送りします。twitterでは書けない長いものなどが中心。
 
 *貴子ゼミ・・・ほかの日本文学専攻の学生さんにも使っていただけるような情報も発信します。

 *学生に読んでほしいおすすめ本・・・主に学生さん向けに、日本文学、古典文学などにかかわるおすすめ本を適宜紹介。

 *(仮)猫の事務所・・・友人Kと二人で、猫、日本文化、京都などを主とする事務所を作りました。Kは京都検定一級保持者
             で、私とはお寺で知り合い、お互い「猫持ち」です。仕事のお手伝いもしてもらっています。
             Kと私の仕事の窓口となるコーナーです。

 
 では、しばらくお待ちくださいまし。   

壇ノ浦町にて

2013年03月09日 | Weblog
 下関を32年ぶりに再訪した。サバティカル中、一度もプライベートな旅行へ行かなかっ

たので、今頃になって後悔し始め、少し暖かくなった時期を見計らって赴いたのである。

赤間神宮には学部生のときに訪れたことがあるが、当時は国鉄の周遊券を学割で買って、と

いう貧乏旅行だったので、下関名物のふく(ふぐをこういうのだそうだ)やら鯨やら雲丹や

らにはご縁がなく、今回は気心の知れた友人M(同業者。中世文学専攻)と「食い物旅」に

出かけたのである。

 目的はそのほかに、見逃していた平家関係遺跡と見学し、門司港から下関唐戸地区にある

レトロ近代建築を眺めることであった。そのなかに、市立水族館「海響館」にいるという

平家蟹を実見することも含まれていた。実は、まだ実物は見たことがなかったのだ。

 門司港から渡船で下関に着いたのが午後早く。赤間神宮で「安徳天皇縁起」の写真の

載った図録を買い、長門本平家物語のレプリカ(実物は焼けた)を見て、学部生のとき

はナガトボンといっても何のことかわからなかったな、と思い出に浸る。平家物語の

場面が万遍なく描かれながら、「安徳天皇の縁起」と称されるのはなぜか、などとくだ

くだ話しながら、国道を徒歩で壇ノ浦古戦場跡へ。すると、二人して「あっ」と立ち

止まり、同じ方向へカメラを向けていた。

 それが、冒頭の写真。壇ノ浦町なんですね、ここは。

 こんなもん撮るのはわれわれくらいだろうと苦笑しながら、車の往来激しい海岸沿い

の国道を行くと、突然、私が地図を見ていたNEXUS7の画面が、

 はた・・・

と消えた。石の多い海岸からは、思ったより速い潮が望まれる。ざざざ、ざっぱーん、

と寄せる波の音も荒く、いかにも、ぐっしょり濡れた甲冑をまとった平家の残党が

上がってきそうな雰囲気で、夜暗くなってからは歩きたくない道だった。

 なぜNEXUS7くんが沈黙したのかは、不明である。宿に帰ったときは、息を吹き返

していた。

 ぞわ、とした背中の冷気を振り払うように、Mと私はそのあと古い居酒屋「三枡」

でふくと鯨とちいちいいかなどを食べ、かつ飲み、生きている者の特権を味わった

のだった。

 「波の下にも都はござろうが」

 「波の上にはふぐがござる、と」

 あー、食べた、飲んだ。気分は太田和彦である(この店は、太田氏が紹介してもいる)

 なお、ちいちいいかとは、水揚げしたとき「ちいちい」と鳴くからそう

呼ばれるみみいかの類で、ホタルイカのように酢味噌で食べるのだが、私は、お正月

に見た「宇宙人王さんとの遭遇」というイタリア映画の「イカ型宇宙人の王さん」を

食べているような気がしたことを付け加えておこう。

きなこが新聞に載ります!

2013年03月02日 | Weblog
みなさま、ずいぶん長らくのご無沙汰でした。サバティカル後半は籠って執筆に苦しんでおり、

ブログを更新する余力もなかったのでありました。「きなこ日本文学全集」も39回配本で

止まっているし。しかし、新年度からは少し趣向を変えたことも考えておりますので、平に

ご容赦を。

 さて、変わらず元気で貫録もずいぶん増したきなこですが、このたび、朝日新聞の夕刊

「かぞくの肖像」に掲載して頂くことになりました。

 このコーナーは、伴侶動物と一緒の写真とともにインタビューを載せるものですが、写真

慣れしていない子たちは撮影にたいそう時間がかかるそうで、実はにこにこして写っている

「飼い主さん」の手を見ると、しっかと猫や犬をホールドしているさまが観察できるのだそう

です。ある作家さんなどは、日ごろあまり仲良くない犬を無理やり押さえて撮影したところ、

あとで噛まれたとか。撮影には数時間がかかるとも聞きました。

 きなこの場合も、ふだん私一人なので人慣れしていませんので、男性カメラマンがごつい

一眼レフを向けてくるのにびびりまくりました。あらかじめ、記者Tさんから「隠れやすい

部屋の扉は閉めておいてくださいね」と聞いていたので、書斎、書庫、押し入れなどを閉め

ておきました。ふだん自由に出入りしていた場所に突然戸がたったのですから、きなこも

何やら不穏なものを感じた様子。前日、執拗にブラッシングする私にも、不審の目を向けて

おりました。

 撮影は、しかしながら比較的短時間ですみ、結局は私がソファーの上にきなこをホールド

してカメラにおさまりました。きなこがカメラ目線になっても私がよそを向いていたりしま

したが、出来上がった写真は、T記者に言わせると「きなこくんが堂々としていて、それを

気遣う貴子さんのほうが無防備に弱点をさらしている」ものだそうです。

 撮影終了後、私ときなこはどっと疲れが出たようで、ごはんも早々に早めに床についたの

でした。

 掲載は、3月7日(木曜日)夕刊です。全国版ですので、どちらででもご覧いただけるかと

思います。幼少時のTV出演に引き続き、きなこの久々の「業績」ですので、今度助教から

准教授に昇任させてやらなければな、と思っているところ。くりこが文筆派だったのに比べ、

きなこはヴィジュアル系が得意のようでした。なお、写真は「きのこ」の本といっしょの

きなこです。きのこときなこ。色と形はなんとなく似ています。

サバティカル日記・半分過ぎた・・・

2012年09月26日 | Weblog
更新が滞っておりますが、みなさまお変わりありませんでしょうか。

すでにサバティカル期間が半分過ぎようとしています。この夏は調査と学会とに

日々を費やし、時に執筆も行う、という、いわば助走期間でした。あれもしよう、

これもしたい、と考えているうち、今年のテーマである「九相図」が思わぬ展開

になり、今はなぜか圓山応挙の画集と睨めっこしています。来年春刊行予定の拙著

の構想はほぼ出来上がり、少しずつ書いているのですが、どんどん新しいことが

わかるにつれ、ものすごい大風呂敷を広げることになりました。なんせ、サブタイトル

が「万葉集から幽霊画まで」ですから。「九相図」というものが、日本中世、近世

の文化事象にかかわっているという思いを強く感じます。ま、いくつかの「新説」

は本が出てのお楽しみということにしておきましょう。

結局、論文にならないようなことをぼうっと考えることが出来たのは、四月だけで

ありました。その後はいつもの生活の繰り返しで、外国にも行かず(行けず。これ

については『まほら』次号に書きました)、ふらふらもせず、狭い街のあちこち

を移動するのが関の山でした。

普段読めないような本を読む、ということもほぼできず、唯一、今まで読み通して

いなかった『ドグラ・マグラ』を最後までじっくり読んだくらいですが、これは

本書に「九相図」に相当すると思われる「六死美人絵巻」が登場するからです。

夢野久作は禅僧でもありますので、どこかで九相図を見た可能性はあるのですが、

いったいどんなものだったかはついにわからず。しかし、夢野が残した日記を

同僚から借りてざっと目を通せたのは面白い読書体験でした。

しかし、『ドグラ・マグラ』は以前、桂枝雀が正木博士を演じている映画で

見ていたのですが、あの映画は『ドグラ・マグラ』ではなく、「枝雀を見る

ための映画」といったほうがよいものでした。なお、本書はフランス語訳さ

れているらしいのですが、ようこんなもん訳せたな、と感心しきりです。

「外道祭文」て、フランス語では何ていうんだろう・・・。

「九相図」を仕上げたら、光文社の古典新訳で『好色五人女』の現代語訳

をやります。久々に、注釈的研究に基づく仕事ですが、こちらも調べれば

調べるほどわからないことが出てきます。時間さえあれば、こうした「手作業」

は面白いものですが。やはり、「手作業」は古典研究の原点であると感じ入った

次第。

あと半年、鉢巻締め直して励むことにいたしまする。

特に面白味のない(と、自分もよくわかっている)近況報告でした。(ブログ

更新しないと、広告に占領されるからね)


きなこの誕生日

2012年07月26日 | Weblog
 調べものに飛び回っていたら、あらら、7月も末になってしまいました。お蔭さま

で、サバティカルの研究計画は順調に進んでおります。そして、たくさんの方とご

縁を結びました。

 さて、このたびきなこが4歳の誕生日を迎えました。人間ならば30代突入という

くらいでしょうか。そこで、今まで「高学歴不ワーキングリッチ」だったきなこ

を、猫研究所の助教に採用することとしました。



    辞令
                2012年7月26日

 田中きなこ 博士(猫)

上記の者を、猫研究所の助教として採用する。任期は定めない。

俸給 猫1号級 (ロイヤルカナン毎食分、ならびに鶏ささみ、ヨーグルト)

なお、体重オーバーの際は、減給することがある。


 きなこの論文は、いつCiNIIに登録されるのでしょうか?

がんばれ、きなこ。