БЛОГ/Bava44

ロシア映画の他、日本では主流ではない、非公式的な映画作品や映画批評等の紹介。

総務省の資料でみるテレビ業界の実体

2013年03月31日 | Weblog
テレビ関係を管轄する総務省のHPを見ていたら、いろいろと面白い資料が出てきたので、紹介したいと思う。

    

(参考記事)
広告不況でもテレビは高給確保、東電は107万減 -年収&生涯賃金2012
「高給のテレビ各社は、映画製作や不動産ビジネスなど“副業”がけん引する形で業績が回復基調。給与は下げ止まったとみられるが、収益源である広告収入については苦戦が続いている。視聴者のテレビ離れが進む中、魅力あるコンテンツ作りという原点回帰こそ引き続き求められているのは間違いない。」
http://president.jp/articles/-/8814

テレビ業界は多チャンネル化で放送枠が拡大したことによって、大量の映像コンテンツを放映しなければならないという構造的問題を抱え込んでいる。その一方で、広告収入の方は減少し続けているというから凄まじい状況である。この歪みは、下請けの制作会社に低賃金で大量のコンテンツを注文、奴隷労働をさせることによって押し付けているわけだが、それでも足りないので、古い映像コンテンツの再々利用、テレビ・ショッピングの垂れ流し、ライセンス料の安価な韓流ドラマの大量購入で穴埋めしているのである。しかしながら、そのような状況はテレビというものに対する魅力(?)を一層減少させるものだから、このジリ貧は止まることがない。産業構造的にはもう完全に破綻しているので、彼らが自分たちの給料を据え置きできるのも、時間の問題であろう。

一方、殿さま商売のNHKは、↓



国から助成金をもらって、組織的に「風評被害抑制」のための対外工作をしているようである。これで復興をアピールされても、報道内容の中立性に疑問がわくのだが、大丈夫なのだろうか? (状況から考えて、この子会社が天下り先である可能性もあると思う・・・。)
それも、この8億円という予算は、文化庁による映画製作助成金と同額であり、屈辱的な予算配分である。

「クールジャパン」に500億円のばら撒き

2013年02月24日 | Weblog
●「クール・ジャパン」:ハッタリの支援に500億円!
「財務省は1月29日、2013年度の財政投融資計画を発表した。そのなかで注目を集めているのが、「クール・ジャパン」事業に対する出資だ。発表によると、「クール・ジャパン」推進を目的とした官民出資の新会社設立のために、国が500億円を出資するという。新会社では、「クール・ジャパン」を海外展開する日本企業の経営支援を行うとのことだ。」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130214-00000004-rnijugo-sci#

上記の情報のソースは信用できないので、自分で調べてみた。↓

    
これらの資料を見れば分かるように、具体性のない、あいまいな出資先に500億円も出資するのである。それも、この機関は自己資金が50億円、事業規模が550億円なので、ほとんど国営である。こんなのが財務省を通過しているというのは、自民党のバラマキ体質がさっそく反映された結果なのだろう。(追記:後から調べたら、民主党政権時代の去年九月の段階で、すでに経産省内で400億円のバラマキ計画が出来ていたようである。エダノ最悪。)
この用途不明瞭な多額のバラマキによって、業界内格差が広がり、また、邦画製作バブルの第3波が発生して、作品の低品質化と供給過剰がさらに加速する可能性が高く、映画産業全体にとっては一利なしである。

経産省のホームページから拾ってきた、前年の映画政策関係の資料。↓

  
このように映画に詳しくもない経済人が、映画産業を巻き込んで、変な政策を推進しているのである。こんなバカなことを国策でやって、日本の映画産業が良くなるわけがないのであり、本当に屈辱的で恥ずかしく腹立たしい。
映画助成というのは、市場原理の中では淘汰されてしまうような、新人監督のデビュー作や芸術性の高い映画に対して、適切な方法で適切な額を支給することである。それによって、産業内部の極端な歪みを抑え、映画産業の衰退・停滞を防ぐものなのである。
決して市場原理の中で、バブルを誘発させたり、多額のバラマキをしたりして、産業構造に悪影響を与えることではない。それも輸出で儲けることを前提とした文化政策など、言語道断である。アイドルやB級グルメが、世界で評価されるような日本の文化・芸術であるとは、正気の人間の発想ではなく、こんなのが世界に通用するわけがないのである。



●BD拡大会議で露呈した、パッケージ・メディアの衰退
http://news.mynavi.jp/articles/2013/02/15/bd_kaigi/index.html
前年に引き続き、突っ込みどころが満載のBD拡大会議である。 まず、記事のタイトルに「2014年のセルディスク市場でBD比率50%超えの見通し」と書いてあるが、これはDVDの売り上げが落ち込む中で相対的にBDの割合が高くなるという意味である。また、「セルディスク市場は2012年に底を打ち2013年は緩やかに成長」とあるが、これは6年連続のマイナス成長からは一時的に抜け出すはずだという希望である。一事が万事、見栄ばかりであり、現実逃避も甚だしい。

ただ、真っ当な部分の情報に関しては解説を付けていきたい。
・(2012年の日本の)「セルディスク市場のBD比率は31.6%。日本以外の各国のセルディスク市場におけるBD比率は、アメリカの26.7%を筆頭に、ドイツ25.6%、フランス20%、イギリス15.1%、オーストラリア14.5%と続く(いずれもDEG調べ)。」
日本はアニメ需要・コレクター需要が強いため、比較的パッケージが強く、高品質メディアであるブルーレイが他国よりもよく売れる。ただ、世界的に見ればブルーレイが全然売れていないということが、この数字からは分かると思う。では、これらの国ではDVDが売れているのかというと、実はそうでもなく、かなり落ち込んでいる。つまりこのことは、パッケージ市場全体が世界的に崩壊しているのだと考えていいと思う。(それに比例して、世界的に映像コンテンツのライセンス料が下落している。つまり、映画の経済的価値が下落しているのである!)

・「DVDも含めたセルディスク市場全体でのジャンル別成長率では、日本アニメが前年比5.4%のマイナス、洋画が19%のマイナス、邦画が24.6%のマイナスと、シェアの高い3ジャンルの成長率がマイナスに転じていることが紹介された(日本アニメのシェアが23.2%、洋画が12.3%、邦画が5.1%)。一方で、音楽ビデオは前年比13.7%のプラス成長となっており、ジャンル別シェアでも今や33.4%という巨大市場となっている。」
去年も書いたが、音楽ビデオの躍進は某アイドル・グループのソフトが大量に売れたからである。それらに比べて、はるかに安定的な基盤をもつ映画がマイナス成長しているだけでなく、頼みのアニメまでマイナス成長ということで、日本でパッケージ市場の根幹が本格的に壊れてきていることが分かる。

・「単価下落でやや縮小するレンタル市場、急速に成長するダウンロード販売などのデジタル配信市場」
レンタル市場でおきていることは前に書いた通りであり、多くの人が実感として薄利多売を意識していると思う。ネット配信については、最近、YouTubeが東京都内に撮影スタジオ(YouTube Space Tokyo)をオープンしたというニュースがあったように、本格的な時代を迎えつつあるようである・・・。



●映画のデジタル化について思うこと
一年前まで、私は映画のデジタル化に抵抗感があったのだが、最近はそれほどでもなく、素直にそれを受け入れている。私が問題視しているのは、映画や映画館のデジタル化ではなく、家庭におけるデジタル製品の発展スピードの速さであり、それが映画館を抜いてしまうのではという点にある。『スター・ウォーズ エピソード1』などは2K撮影らしいが、今では家庭で4Kの時代である。映画は技術に依存した文化であるが、デジタルのように変化の早いものの上に依存したため、映画作品や映画館の方が技術発展に取り残されてしまっている。私はそこに「映画」の終焉の時期が来ていることを感じる。(もちろん、プロの手による映画の質を重視する文化的風土があれば話は別だが・・・。)

また、上記で書いたように、映像ソフト市場がここまで衰退してしまうと、やはり(抵抗感はあるものの)ネット配信に期待せざるを得ないと感じるようになっている。実際にアメリカのように、アマゾンやグーグルといった高いカリスマ性とイノベーション能力を持つ企業がいるところでは、すでにネット配信がビジネスとしてかなりの程度成功している(すでに50億ドル市場!)。勿論彼らは小売業としての儲けをしっかりと採ってから、残りをハリウッドに渡しているので、ハリウッドの儲けは映像ソフトほどではない。しかしながら、それらのネット企業はインディペンデントやクラシック、外国映画の配信もおこなっており、文化的に委縮し続けるシネコンよりも、はるかに価値があることをやっている。映画と観客をつなぐ媒体としては優れた点があるのである。
ネットで深刻な海賊版対策も、今は、国家やハリウッドがやかましく言っているだけだが、ネット企業(シリコンバレー)側にビジネスとしてのうま味が出てくれば、連中も徐々に「工夫を凝らす」というやり方で、ビジネスを発展させようとするだろうから、そのやり方には少し期待してもいいのではないかと思っている。



●メディアに対する世代による価値観の違い
以前、たまたま見たNHKの番組のなかで、テレビに対する意識の変化というものを紹介していた。それによれば、今の30~50代はビデオ録画再生機の登場でテレビ番組を録画したりしていた世代であり、それをすることに慣れている人たちなのだという。一方、10代~20代はケータイやPCの登場でテレビに対して関心がなく、録画することもない世代で、見たい番組があった場合は(合法・違法を問わず)ネットのアーカイブで気軽に見るのだという。

個人的に、このような俯瞰の仕方はあまりしないので、なるほどと思った。これを映画業界的に言い換えると、前者は映像ソフト世代、後者はスマホで、“共有された”ネット動画を見る世代といえるだろう。そう考えると、映画関係でも、ジェネレーション・ギャップが顕著化しているのではないかと思う。若い世代でレンタル店離れが起きているのも、このような根本の部分の価値観が影響している可能性がある。また、BDレコーダーが全然売れないというのも、価値観の変化に全く対応したものではないからだといえる。オタクの人たちのほとんどが年齢で30代以上という“高齢化”がおきているのも、同様である。


ところで、「メディア芸術」推進派のオジサンたちが、何かの記事で、今の若者は子供の頃からコンテンツの消費を大量におこなっている世代なので、これからこの分野は(経済的に)大きく成長するだろうと楽観的に語っていたことがあった。
しかしながら、実際は多メディア・多チャンネル化で供給過剰をおこしているコンテンツに対して、湯水のように大量消費をしているだけであり、あまり“ありがたみ”を感じていないところはあると思う。それはビジネスにも若手創作家の登場にもあまり将来性が期待できない状況なのではないかと感じる。私自身、80円レンタルだとか、あまりにも容易に入手できるようになったカルト映画に対して、ドライな感情を抱いているし、ネットに氾濫する違法動画にもうんざりである。映画の文化的基盤の方はすでに壊れてしまっているのではないかと感じる。

「メディア芸術」で映画産業崩壊

2013年02月09日 | Weblog
日本の映画産業を巻き込む形で推進されている、国の「クールジャパン×メディア芸術」政策であるが、この路線の基本的な狙いというのは、
1、 映像コンテンツの輸出で大儲けする。
2、 外国人が日本製コンテンツに親しめば、日本に対する好感度が高まるので、もしかしたら日本の工業製品を買ってくれたり、日本へ観光旅行に来てくれたりするかもしれない。一石三鳥のぼろ儲けになる。
というものである。つまり、これらを推進する連中にとって映画作品は、金儲けの道具であるだけでなく、日本という国のブランド力を高めるためのプロモーション(の道具)なのである。それを国策でやろうというのだから、どこの国の権力者も下心は一緒だなと思わせるが、日本の場合、厳しい財政でお金が出せないというケチ臭さである。結果として、日本映画ブーム・日本映画バブルを国家主導でねつ造・扇動して、それに踊らされた民間の資金を大いに利用するというやり方をとった。(資料:需要の増加を煽る文化庁)



このやり方の場合、「市場原理に基づいた政策をしています」というポーズをとることが出来、(特に日本人がセンシティヴに反応する)国家が文化領域に積極関与することへの批判を封じこめることが出来る都合の良さがある。国にとっては痛みも責任も全く伴わない、保身を前提とした極めて安楽な方法である。実際に、エダノ前経産大臣は、日本のコンテンツ製作助成金が韓国よりもはるかに少ないことについて「国家が前面に出るのではなく、民間の潜在能力を活用する形で」といったような“聞こえの良い”ことを言っていた。お墨付きを与えて推進はするが、責任は回避するという見事なやり口といえよう。(資料:民間資金の“活用”で、ハリウッド化を夢見る文化庁)


これらを推し進めた結果として、当然のことながら浮ついた資金が映画界に流入し、需要をはるかに超えた濫作・公開バブル、異常なまでの供給過剰がおこるのである。

2012年の劇場公開本数を見よ!
公開本数983本(内訳:邦画554本、洋画429本)
前年から184本の増加(邦画113本、洋画71本が増加)。二年前からだと267本の増加(邦画146本、洋画121本の増加)である。さらに、二年連続でスクリーン数が減少しており、興行の崩壊が同時進行で起きている。

私は、日本映画製作者連盟が発表した2012年分の統計をみて、にわかには信じられなかった。2011年でさえ、かなりの供給過剰だったのに、こんなのはいくらなんでも酷すぎる。
ここ十年間、震災の影響を除いて映画観客数(需要)に大幅な増減は存在しないのだが、10年前まで邦画は年に300本程度だったのである。1年で100本以上増えるのは絶対に供給異常なのであり、映画というメディアの存在形態それ自体に質的・構造的変化が起きていることが間違いない状態である。ここまで来たら、既存の映画産業の維持はもはや不可能であり、とれる対策は何もない。

“売れていない”はずの洋画の公開本数が増えているのにも、ちゃんとした理由がある。公開する映画の本数が多すぎるため、映画一本当たりの売り上げが大幅に下落しているのである。そしてその下落分を補うために、洋画の配給会社はさらに公開本数を増やして、数の力で総売り上げを維持するという、負のスパイラルに陥っているのである。また、聞いたことのないような、小規模な新興配給会社も乱立しており、去年までの円高によって洋画をたくさん買い付けたという噂である。これで国内の映画市場は滅茶苦茶である。

そもそも、一部の邦画が売れるのは、国内向けマーケティングに特化し(過ぎてガラパゴス化し)た、大手メディアが関与した作品だけである。ところが、経済学者どもは、国内でこれだけ日本のコンテンツが売れるのだから、これを海外に売れば大儲けだろうと考える。この根本の部分における認識のズレを抱えたまま、文化政策が決定され、映画産業に「メディア芸術」を押し付けても、上手くいくわけがない。


アホの文化庁職員どもは、金儲けのついでに、文化振興も出来ると考えているようだが、こいつらの考える「文化」とは一体何なのだろうか? 左団扇の国家公務員だから、完全にコモンセンスがいかれているのだろう。

http://www.cinematoday.jp/page/N0046420
↑これが映画業界の現実である。



●来年夏から4K放送開始
総務省が、来年の夏からCSで(超高画質の)4K放送を開始させることを決定したようである。4Kテレビの方はもう販売されているので、時間の問題だとは思っていたが、結構早く始まるようで少し驚きである。もちろんこれには、地デジ特需のあとでジリ貧している家電業界からの要望もあったのだと推測され、いろいろと背景があるのだろうと思う。
ただ問題なのは、消費者側からの要望ではなく、メーカー・供給側の要請で開始されるという点であり、普及のための下地が消費者サイドに出来ているとは言い難いことである。地デジ同様の上からの押しつけという面があることが不安要因であろう。

それで、この4Kという代物なのだが、実は映画業界へもたらすインパクトには非常に複雑なものがあり、反応に困るとしか言いようがない状況である。技術発展のスピードに、文化形態(作品観賞の在り方)が全く追いついていないのだから、困惑して当然である。本当に、どのように対応するつもりなのだろうか?




ポーランド映画の記事の続きは、今からやります・・・。

現代ポーランドの映画助成システム1

2013年01月17日 | Weblog
初めに書いておきたいのだが、文化庁の「メディア芸術」政策にしろ、経産省の「クールジャパン」戦略にしろ、これらは経済人の主導の下で、世界の映像産業についての全くの無理解・非常識に基づいて作られており、日本の映像文化の実体に悪影響を及ぼすことが必至の愚策である。
日本の映画産業は、伝統的にも文化的にも産業構造的にも、ヨーロッパ型の映画産業に近く、これらの国の映画政策を批判的に応用することこそが、日本にとって有益であると私は断言できる。特に、この手の政策では評判がよいフランスとポーランドの映画助成制度を参考にすることが得策だと考えられるのである。

そこで、フランスの映画政策については、日本でもある程度は紹介されていると思うので、私が労をとる必要はないのだが、現代ポーランドの映画助成システムについては、おそらく日本では全く知られていない領域だろうから、以前から何とかして紹介したいとは考えていた。そのために非力を顧みず、ポーランドの映画史家イェジ・プワジェフスキの「ポーランド映画 市場経済への回帰」の英訳などを読んだりしたのだが、ロシア映画ならばともかく私のポーランド映画に対する知識が乏しいため、うまく紹介の文章がまとまらないので困っていた。
ところが年末にロシアのネット上に、図星をついた記事が現れて、歓喜感涙である。以下はそのロシア語からの翻訳であり、私も多少これについては調べているので訳注もうまく挿めると思う。


●「ポーランドにおける映画と国家:ポーランド映画協会はどのように機能しているか?」
(本題のインタビューに入る前に、長い前置きみたいなのがあって、この部分は要約する。)
ロシアのある映画館※1が、マルチン・アダムチャクの「2005年以降のポーランドにおける映画の出資・助成システム」という本を出版したので※2、今回はその本に関連したインタビュー記事である。

・ポーランド映画協会(PISF)について
ポーランドでは1989年の社会主義政権崩壊後、映画産業が市場経済のシステムへ移行する過程で文化的にも産業的にも極端に衰退したため、90年代末にフランスをモデルにした映画助成システムの構築が提起され、2005年に国会での承認を経て、ポーランド映画協会(polish film institute)として本格的活動に入った。映画協会の財源は主に、映像産業から1.5%の税を取り立てることによって成立している。税の取り立て対象は、以下である。

映画館 (チケット代、及び上映前のCM放映の売り上げ金から1.5%)
配給会社 (映画の販売・貸出の売り上げ金から1.5%)
テレビ局 (CM・テレビ通販番組の放映の売り上げ金から1.5%)
ビデオ販売業者 (ビデオ売り上げから1.5%)
ケーブルテレビ局 (サービス代の売り上げから1.5%)
当然のことながら、これらの業者は負担増加に反対し、映画助成法案への反対キャンペーンを繰り広げ、国会での承認後も、文化省の越権行為だとして法廷闘争にまで持ち込むゴタゴタがあったようである。

・ポーランド映画協会の収支の内訳
ここではプワジェフスキの「市場経済への回帰」に載っていた資料から、2008年度の収支(約3800万ユーロ)を紹介する。

〈収入〉
10% 国家からの助成
7%  文化広報基金
36% 地上波テレビ局
17% ビデオ販売業者
9%  ケーブルテレビ
4%  映画館
1%  配給会社
16% その他
映画協会自身も出資者として、(映画に利益が出た場合に)資金の還流を受ける立場にあり、それも収入になるという。

〈支出〉
32% 長編劇映画製作助成
14% デビュー作製作助成
9%  潜在的ヒット作の製作助成
5%  ドキュメンタリー映画製作助成
5%  アニメーション映画製作助成
4%  その他、映画産業への助成
3%  脚本の購入、及び脚本家への助成
5%  興行への助成
5%  配給及びマーケティングへの助成
11% 映画文化の広報(国内向け)
4%  外国へのポーランド映画の広報
2%  映画教室(cinema workshop)の開催助成
1%  映画賞への助成
このうち「潜在的ヒット作の製作助成」というのは、自国の商業映画に対する支援である。
ポーランド映画協会の映画出資方法は三種類で、助成(返済義務なし)、貸付け、貸付け保証(これは外部から資金を借り入れる際に、映画協会が連帯保証人になるという意味だと思われる)がある。このうち助成がほとんどを占め、貸付けは稀、貸付け保証に至っては一度も利用されたことがないという。

(ようやく本題のインタビューに入る)
・・・・・


註・解説
※1 この映画館はこれ以前にも、ユニ・フランスのジョエル・シャプロン氏によるフランス映画産業についての本を出版していて、館内で無料で配布しているようである。シャプロン氏の本は、ロシアでは映画人の間で広く読まれているようであり、ロシアの映画政策会議にも強い影響を与えているという。ロシアでは、それまでフランスの映画政策についてはそれ程詳しくは知らなかったが故に、フランスの映画助成制度を空想的に過大評価していた部分もあったという。

※2 このアダムチャクの本の表紙には、ロシアでは劇場公開されなかったワイダの『カティンの森』の写真が使われている。ヤヌシュ・ヴルブレフスキによれば、この映画のロシアでの配給権を獲得した会社が実はダミーで、映画を公開させないためだけにわざわざ権利を確保したのだという。ご苦労なことだ。


1月はかなり忙しいので、次の更新は来月になる予定。

絶対に成功しない「クールジャパン」戦略その2

2013年01月17日 | Weblog
1月に入ってからはいろいろと忙しくなったので、書いておきたいことをためてしまった。それでまず、年末にヤフーのニュースのトップにまた変な記事が現れたので、これを紹介して、始末することから始めたい。

http://biz-journal.jp/i/2012/12/post_1241.html

↑(有象無象にいる)この手の連中は、日本のコンテンツが売れるという先入観に囚われ過ぎて、それを前提としてしまっており、その理念には「日本文化はすごい」という下衆な愛国的自惚れが透けてみえてしまっている。また、「作品を観賞する」という価値観がなく、「コンテンツを消費する」という価値観を持っており、受け手のことが全く理解できていない。海外での、各国文化に根ざした好みの違いはマーケティングによって乗り越えられるというのも、文化産業を頭から完全に舐めきった考えであり、絶対に世界では通用しない。

そもそもこの手の経済ジャーナリストがコンテンツ産業について知っているのは、ハリウッドの世界制覇と日本における韓流ブームという、どちらかといえば例外的現象であり、普遍的なケースではない。文化産業に対するイメージが根本的におかしいのであり、この分野における世界的視野を全く感じさせない。それに「クールジャパン」戦略というのは、厳しい財政のなか少ない予算で多く儲けるために、ハッタリを効かすという言語道断のものなのであり、これに迎合しようとすること自体がモラルに反している。



実は、「クールジャパン×メディア芸術」路線に完全に合致し、尚且つ完全な失敗に終わった作品がある。それは日露合作アニメ『ファー○ト・スク○ッド』である。これは作品的にもビジネス的にも失敗しただけでなく、これ以降、ロシアで同様の企画が現れないことでもケッ作な作品だった。つまり、ロシアの映像関係者の間で「この路線はもう駄目だな」という認識を与えてしまい、事実上とどめを刺してしまったのである。 いや、一作品だけで終わって本当に良かった。

あべ政権のクールジャパン戦略大臣には、強硬な保守派の某女性議員がなっているようだが、正直映像産業に詳しいとは思えず、韓流に嫉妬して歯ぎしりするのが関の山だと思う。誇ってもよいのは、大日本な自惚れではなく実力だけなのだから、如何にして、世界に通用するような実力をつけていくかを謙虚に考えなさい。


「米国はコンテンツ産業の売上高(50~60兆円)のうち、約17%(9~10兆円)を海外市場で稼ぎ出している。それに対して、日本は売上高(約14兆円)の4.3%程度(約0.6兆円)しか海外市場で稼いでいない。そのうち、95.5%はゲ-ム分野(ソフト・ハ-ドも含む)が占め、アニメ、音楽、映画などは数%を占めるにすぎない。」「アニメの国内市場規模は2006年をピ-クに減少に転じつつあり、ゲ-ムのそれも08年を境に縮小傾向にある。」
http://biz-journal.jp/2012/10/post_780_2.html
これが巨大ガラパゴス市場の実態でしょう。

「韓流ブーム、映画だけが不振のワケ」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/01/05/2013010500466.html
日本よりも “うまくやっている”韓国でさえ、映画の輸出ビジネスなんてこんなものです。



●2012年の映画興行市場
2012年の北米市場は、観客数が13億6千万人(1.36 billions)と持ち直しており、一人当たりの鑑賞回数も4.1回ぐらいに回復しているものと思われる。もっとも、それが楽観視できる数値かどうかは人によるだろうが。↓ 


指摘しておきたいのは、ハリウッド・メジャーが以前にも増してハイリスク・ハイリターン構造に陥っており、投資額が大きすぎるため興行収入が多くても比較的儲けが少ないことである。また、独立系映画の方は売り上げが落ちているという噂も聞くので、産業内部の格差が広がっているようである。

日本の市場では、興行収入は震災前の水準にまでほぼ回復しているようだが、邦高洋低の傾向も一段と進行しているようである。なぜ邦画が売れるのかというと、日本の大手メディアがメディアミックスで「映画」以外の需要をかき集めているからであり、「映画」への需要それ自体は減っていると私はみている。それに邦画バブルの時と違い、100億円以上のヒット作はないのが特徴で、これは映像コンテンツ需要がネットや映像ソフト、多チャンネル化したテレビに分散しているので、映画館へ向かう流れが減っているからだと思われる。
それに邦画が好調だ(?)と言われていても、ビジネス的に成功している邦画というのは毎年作られる数百本の日本映画の内せいぜい30本程度であるから、邦画の内部でも格差が広がっていることは認識しておかなければいけない。表に出ないから気づかれないが、200本ぐらいはお蔵入りの不良債権映画になっているのである。この有様で、クールジャパンだとか「我が国の強み」だとかを主張するのは、正気ではない。


洋画・邦画共に、シリーズものとファミリー層向けアニメに映画産業が支配されている状況は、はっきり言って情けない。これがマーケティング至上主義による画一化の成果であろう。文化産業としては末期症状である。特にハリウッドは『ジョン・カーター』、『バトルシップ』といった非続編もの大作がコケ、さらに前者は会社幹部が左遷されたこともあって、より一層リスク回避の保守化をみせている。SPEの社長などはわざわざ映画業界に「シリーズもの大作とファミリー層向けアニメの重要性を強調」しているらしいが、自分で自分の首を絞めているだけである。



●衰退する映像ソフト市場
私がなぜ、映像ソフト市場を重視するのかというと、これの規模がとても大きいからである。北米の映画興行市場(映画館でのチケット売り上げ)は108億ドル程度だが、映像ソフト市場は一時期210億ドルもあった。後者の衰退がいかに危険なものか分かると思う。
それで、2012年の北米ホームエンターテイメント市場だが、セル市場が前年から-5.5%、レンタル市場は-12%、ネット配信が+28%となっている。総売り上げでみた場合は、ネット配信の大幅な伸びがDVDの落ち込み分をカバーできるところまで来ており、前年と同じ180億ドル市場となっている。しかしながら、光メディアと比べてネット配信は利益率がよくないので、これは統計上の誤魔化しにすぎず、映画会社の“儲け”は減っている。

また、BD市場の方は2011年に前年比120%だったが、12年は前年比110%未満と一桁成長になっているようである。面白いことにカタログ・タイトル、つまり旧作映画BDの売り上げが前年比125%と、市場をけん引しており、これは逆を言えば新譜の売れ行き鈍化を意味している。映画会社にとって旧作映画需要(=コレクション需要)は貯金の切り崩しみたいなもので、いずれ消費者の欲しいタイトルがなくなり先細る。よって、ここに頼るのはあまり良い傾向ではない。


↑この表で見た場合、だいたいのイメージとして、2012年はDVDが10未満、BDが3、ネット配信が5強で計18 billionsである。(11年分は速報値を基にしており、やや実際と異なる。)

次に日本の映像ソフト市場について見ていく。 出典:JVA


2011年は震災の影響で、2週間分の売り上げが丸ごと吹っ飛んだのだが、2012年はその11年と比べてもマイナス成長と、非常に厳しい状態になっている。成長分野のBDもセル市場は前年同期比113%と、あと2~3年で頭打ちである。それもこちらは新作タイトル数の増加に売り上げが追いついておらず、売れていない作品がかなりの数あると思う。
レンタル市場は、近所のツ●ヤなどを見るとそれほど酷くないような気がするが、100円レンタルや、「新作含め5本で1000円」などの薄利多売レンタルによって、売り上げや回転率は落ち込んでいるのだと思われる。

日本映像ソフト協会の会報を読むと、レンタル市場で薄利多売がおきていることをはっきり認識しているようだったが、「薄利多売=映画の単価の下落=いくら作っても出しても儲からない」という構造であることを理解しておく必要がある。そして薄利多売はコンテンツの供給過剰をもたらし、さらなる単価の下落につながってしまうのである。これはもう、そういう産業構造になってしまったのだから、どうしようもない。私はもう、さじ投げた。