特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

寝込んだネコ

2024-05-18 06:08:11 | 動物死骸特殊清掃
若い男性から問い合わせの電話が入った。

消毒消臭作業の依頼だった。話を聞いてみると、お気に入りの自家用車のエンジンルームにネコが入り込み、そのまま死んで腐っていたらしい。それが臭くて臭くて仕方がないとのこと。特に、エアコンを動かしたら、通風口から悪臭がモロにでてきて、それが原因で彼女とも険悪な状態になっているから何とかしてほしいとのこと。

「ちょっと、やっかいな仕事になりそうだな」

と思いながら、とにかく現場へ行ってみた。


男性は車好きらしく、車は格好よくドレスアップされたスポーツカーだった。ボンネットを開けてみると、確かに骨と毛皮だけになったネコの死骸があった。屋外だったこともあり、私にとって本件の異臭は人間の腐乱臭に比べたら全く平気なレベル。
仕事の難易度を考えると、引き受けるかどうか迷った。

男性も、インターネットを使って色々な業者に当たったらしかったが、実際に相談に乗って現場に参上したのは私だけだったらしく、懇願モードだった。
事情を察して、

「完全にきれいにできる保証はできないが、できるかぎりやる」

という条件で引き受けた。通常は前受けする料金も、私の提案で出来高の後払いで合意。


エンジンルームは色々な機械が入り組んでいて、死骸も部分的に少しづつ取っていくしかなかった。脚だけ、尻尾だけ、胴体一部だけ・・・と少しづつ。人間の腐乱遺体とは別の感覚で気持ち悪かった。手袋を通して伝わる死骸の感触は、何とも言えないものがあった。特に、ネコって怪談話にもよく登場するし、その気持ち悪さがお分かりいただけるだろうか。眼球がない頭部を首からちぎって取るときは、さすがに鳥肌が立った。それでも、手が届く所はまだマシで、手が届かないところは色々な道具を駆使してなんとか全身を除去。

次は、腐敗液の除去である。動物も人間と同じように腐敗液がでるもので、エンジンルームの各所に垂れていた。これが、更にやっかいだった。手が届かないどころか、直視できないところにも付着している可能性があったからだ。

車のエンジンルームは水気を嫌う部品もあるので、慎重に洗浄剤・消臭剤を使用。あとは、もう車の下に潜って作業するしかなかった。これが最悪!洗浄剤も腐敗液も引力に従って下に垂れてくる。下に垂れるということは、私に向かって垂れ落ちてくるということである。それでも、きれいにするにはそうするしかなかった。

「顔にかかんなきゃいいや」

と、私は、開き直りながらやったが、結局、顔にもかかってしまった。辛かった!


作業を見ていた男性は

「スイマセン、スイマセン」

と何度も言っていた。


どうにかこうにか、作業は完了。見た目にはきれいになった。
あとはエンジンをかけて不具合がないか、エアコンを動かして悪臭が出ないかをチェック。
エンジンルームに不具合はなかったものの、悪臭はまだわずかに残っていた。車を動かす時は、常に通風スイッチをONにしてしばらく様子をみてもらうことにした。それでも男性はかなり喜んでくれて、満額の料金を領収。


一ヶ月くらいして、臭いがどうなったか気になったので男性に電話してみた。やはり、時間経過とともに臭いが薄くなり、今は全く臭わなくなったとにこと。あらためて礼を言われた。私にも職人魂があるのか、嬉しかった。
険悪になっていた彼女とは別れたらしく、今は新しい彼女がいるとのこと。

車は乗り換えずに、女を乗り換えたということか。
めでたし、めでたし。


トラックバック 2006/06/17 09:07:22投稿分より

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Thanks

2024-05-17 05:27:27 | その他
このブログを書き始めて一ヶ月が経った。書き始めた動機は同僚の提案である。私は、この特殊な仕事を人知れず黙々とやってきたし、これからもそうやっていくつもりでいた。

その同僚は、せっかく(?)こんな珍しい仕事をやっている私が持つ経験や考えを世間にアウトプットしていくことで、何かメリットが得られると考えたのだろうか。

現場業務で手一杯の私は余計な仕事が増えるので、正直言うと嫌だったのだが、あまりにアナログ人間過ぎて時代に取り残されているような危機感も持っていたので、とりあえず書き始めることにした。

拙く幼稚な文章かもしれないし、思いをうまく表現できていないかもしれない。
しかし、そんな私のブロクを見ず知らずの方々が読んでくれ、感想・意見・疑問などを書き込んでくれているのに驚いている。

私は、ブログを書くばかりで、肝心の掲載ホームページはほとんど見ていない。いや、正確にいうと見ているヒマがないのである。
反響などは、その同僚が伝えてくれているのである。
最初は、

「仮に読者からの反応があったとしても誹謗中傷的なものがほとんど」「野次馬的な嫌がらせが多い」

等とかなり悲観的・否定的に考えていた。

それには理由がある。


特殊清掃という仕事は、一般的には蔑まれ・嫌悪され・奇異に思われる仕事だからである。実際にも、依頼者(遺族)から

「よくこんな仕事できるよなぁ」

的な軽蔑発言を受けたことが何度もある。もちろん、その人達は私には聞こえないつもりで話しているのだが、バッチリ聞こえてしまっている。

また、言葉ではなくても、その態度で明らかに見下されてバカにされていると感じることも多いのも実情。経験の浅い頃は、そういう事にいちいち引っ掛かって気落ちしていたが、今はそんな程度のことは気にならない。
決して開き直っている訳ではなく、そういう事実は事実として素直に受け入れているのである。

したがって、

「このブログには読者が付かないか、読者が付いて反応があったとしても、誹謗中傷的なものがほとんどだろう」

と悲観的に考えていたのである。


しかし、実際は違った。
意外や意外、激励や肯定的な書き込みがほとんどで、驚きと同時にとても嬉しかった。

正直言うと、自分の職業に後悔がないわけでもない。二度とない人生で、よりによってこんな仕事をしているのだから。


ちなみに、私が幼い頃、初めて「なりたい」と思った職業はプロ野球選手である。
遠い昔に描いていた夢と今の現実を対比すると、自分でも笑うしかない。
世の中には色々な仕事があるし、若いうちはわざわざこんな仕事を選ばなくてもよかったのである。しかし、若かった私は死体業を自ら選び、極めつつある?のである。これも、私の人生の運命(さだめ)なのか・・・(苦笑)。

ブログというものは返信するのが礼儀らしいが、アナログ人間の私はそんなことも知らない。同僚からは、

「書き込んでくれた人に返事を書いた方がいい」

と言われるが、私にはその時間がない。

ついては、この場をかりて、私のブログへの書き込みをしてくれた方々、特に私の仕事へ励ましや肯定的な意見を寄せてくれた方々に感謝の気持ちを伝えたい。本来なら、一人一人に返事を書きたいところだが、私の本来の仕事は特殊清掃であるので、ブログに優先して時間を使えない事情も察してもらいながら、気が向いたら、
今後も継続して購読・書き込みをお願いしたい。

また、疑問や質問的な書き込みに対しては、リアルタイム・個別にお応えすることができないので、ブログを通してお応えしていこうと考えている。ついては、お尋ねの件は少し気長にお待ちいただけるとありがたい。


何はともあれ、見ず知らずの皆さん、どうもありがとう。皆さんの励ましにの力をもらって、今日も私は特殊清掃の現場で戦い続ける。



トラックバック 2006/06/16 08:40:28投稿分より

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臭いなぁ

2024-05-16 05:42:15 | 腐乱死体
「腐乱死体の匂いって、例えて言うとどんな臭い?」

と尋ねられることがある。返事に困る。何故なら、何にも例えられない臭いだからである。そもそも、臭いだけじゃなく、音・味・色など、五感で受けるものを代替的に表現し伝えるのは難しい。特に腐乱死体の臭いなんて、世間一般に似たような匂いがないからなお更である。とにかく、腐乱死体は臭い!としか言えない。

腐乱死体の臭いに興味のある人は割と多く居そうだが、どんな臭いなのか具体的に伝えられなくて残念だ(申し訳ない)。ちなみに、ウ○コや腐敗ゴミどころのレベルじゃないんで。
多分、代替物をもって腐乱死体の臭いを作ることも無理だと思う(やってみる意味もないが)。自分で試作して「こんな臭いでどうか?」とくれぐれも送って来ないように。


ちなみに、遺体からの臭いには死臭というものもある。私は死臭・腐敗臭・腐乱臭をレベル毎に分けて捉えている。通常の遺体は死臭がする。これも独特の臭いだが、我慢できないレベルではない(スタッフの中には死臭好きもいる)。腐敗臭はだいぶ悪臭なので、我慢できない人が大半であろう。腐乱臭ともなると、ほとんどの人がノックダウンだ。吐く人もいるかもしれない。

私の場合は、嗚咽は日常茶飯事で喉まで上がってきたことは何度かあるが、口から外へ吐いたことは一度もない。もともとこの仕事に向いていたのだろうか?

やはり、私には、慣れと防臭マスクが一番の防御となっている。防臭マスクといっても、消防や警察が使っているような高価で高品質のマスクではないので、着けてないよりはマシという程度のものである。

昔の友人に、

「トイレでウ○コをする時は口で息をすればいい」

という奴がいた。鼻に臭いを感じさせない工夫なのだろうが、どうも納得できない。特に特殊清掃の現場では、とても口で息をする気にはなれない。科学的な根拠はないけど、身体にスゴク悪いような気がするから。この気持ち分かるかな?分かるでしょ?


口で息をするくらいなら、鼻が壊れてもいいから鼻で息をしたい。これからも。


トラックバック 2006/06/15 09:34:13投稿分より

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自死の選択

2024-05-15 05:37:39 | 自殺 事故 片づけ
ここ数年、日本人の自殺者数は高いままである。私のような職業ではない人でも知っている、目新しくもないニュースである。インターネットの自殺サイトも活発に動いているようである。

今日も日本のあちこちで、約100人が自らの命を絶っている。
ブログにも一案件だけ載せたが、当社にも自殺志願者が電話をしてくることがたまにある。もちろん、自殺現場の跡片付けをしたことも数知れず。

自殺理由はさまざまだろうし、それぞれの人にそれぞれの事情があるのだろう。

「自分の命は自分のものか?」

などと言う哲学的・宗教的な話は別に置いておいて、毎日のように死体と関わっている私が自殺について思うことを簡単に書いてみたい。


人間は死にたくなくてもいつかは死ななければならない。人生は二度ないし、人生という時間には必ず終わりがある。一旦生まれてからは、あとは死に向かって進んでいるだけである。そんなことは私が言うまでもない。

死にたい人は死ねばいい。生きていたくない理由があるのだろうから。自殺は悪いことではない。世の中には、自殺志願者の悩みや苦しみを理解できない者が、上っ面の同情心やきれい事で自殺を否定し罪悪視する風潮があるが、そんなのは無責任な連中の身勝手である。
私は、自殺志願者の人生の一部にでも責任を持てる者だけが、その人の人生への介入が許されるものと考える。

しかし、これだけは言っておきたい。

「自分には死ぬ権利はあっても、他人に迷惑をかけたり他人を不幸にする権利はない!」と。

逆に言えば、自殺しようとする人は、誰にも迷惑をかけず、誰も不幸にしない手段や時期を熟考して、それが実現できるように死ねばいい。

私が知る限りでは、自殺はどんなかたちであれ、他人に多大な迷惑をかけ他人を不幸にしている。私だって、自然死と自殺の現場では気持悪さが違う。

結局のところ、私も自殺を否定・反対しているように思われるかもしれないが、決してそうではない。私は自殺を肯定も反対もしない。自殺現場の跡片付けをしている私だからこそ言える感想を記したまで。

私は自殺現場の後始末も仕事として多くやっているが、仮に自殺者がゼロになったって心配無用。おまんま(御飯)が食えなくなることはない。日本(特に都市部)では自殺がなくなっても孤独死の現場だけで充分仕事になるから。


今日のブログは硬い話でつまらないかもしれないが、自殺を考えている人・生きていることに疲れている人の参考になれば幸い。自殺の跡は悲惨!だぞー。


トラックバック 2006/06/14 10:48:24投稿分より


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骨を折るなぁ

2024-05-14 04:26:06 | 遺体処置
特殊清掃をやっていると、小骨がでてくることがよくある。小骨と言えば魚を食べるときのことを思いだすが、ここでいう小骨は人骨である。手足の指の骨は小さくて目立ちにくく、忙しい警察も拾い損ねることが多いのだろう。それ以前に、警察官も「いちいち拾ってられるか!」と言う心境だろう。
特殊清掃をやる中では人体の色んなモノがある。頭髪はほとんどの現場にある。余談になるが、一般的にも髪の毛って、結構気持ち悪い感じを与えるものではないだろうか。
今回のモノは人骨である。
作業中にでてくる骨は、一応、拾い分けて保管するようにしている。このブログを何度か読んでくれた方は既にお分かりだろうが、骨と言っても白くてきれいな骨ではない。腐乱液や腐敗肉片が着いたスゴク汚く臭い代物である。
当然、拾った骨は遺族に返す。
困るのは遺族が欲しがらないケースである。少しでも返しやすくするため、できる限りきれいにした状態にする。ひとつひとつを磨いていく作業は、特殊清掃料金には含まれない個人的なボランティアである。そのうえで、遺族を説得する。
当社でやっている遺品供養の話を交えながら、「このまま放置して、何か起こっても責任持てませんよ・・・」と意味深なことを言うと、引き取ってくれる。
面倒臭い作業なので、気づかなければゴミと一緒にして処分するところだが、遺骨と気づいていながらゴミ扱いするのは良心が咎めるので、結局、拾ってしまう私である。

骨ついでの話で、別の家での出来事。
故人を棺に納める際、故人が生前好きだったケンタッキーフライドチキンを棺に入れてやるかどうかで遺族が揉めだした。
「本人の大好物だったんだから入れてやりたい」という人もいれば「火葬したら遺骨とチキンの骨が混ざるからダメ」という人もいて、収拾がつかなかった。
遺族は真面目に議論しているのだが、正直、聞いていて可笑しかった。
結局、私にアドバイスを求めてきた。
冷静に考えれば、チキンの骨なんかは燃えてなくなるはずなのだが、こういった場面では両方の顔を立てる必要があるため、「ご本人も、いくら好物でも骨までは食べてなかったはず。だから骨を外して肉だけ入れてあげたらどうか。」とアドバイス。
この程度のことが「グッドアイデア!」と言うことになり、全員合意でそうすることになった。すごく感謝されたのだが、バカバカしく思えて仕方がなかった。



トラックバック 2006/06/13 08:27:02投稿分より

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血の海と家族

2024-05-13 06:36:07 | 特殊清掃 消臭消毒
マンションの一室、和室で中年女性が手首を切って自殺した。同居の夫や子供達がいる家だった。依頼者は故人の夫。

私が現場に着いた時はもう遺体はなく、血が4畳分くらいに広がっていた。よく「血の海」と言うが、まさにそんな感じ。部屋中に血生臭い匂いが充満していたし、視覚的にもかなりインパクトのある光景だった。特殊清掃をやっていても、血の海状態の現場は少ない。

「人間の身体って、こんなに血が入ってんだぁ・・・」と妙に感心するくらいだった。

とりあえず、作業料金の見積書を書いて御主人と話した。夫は予想外に平静で、子供達も普通に家の中を往来していた。とても妻・母が自殺したような動揺は家族には見えなかった。なんとも言えない妙な感じだった。
それどころか、夫は作業費用の見積りに対して、細かい質問を連発して値切ってきた。

私は、ビジネスライクな感覚は持ちつつも(仕事だから当然)人の不幸につけ込むような見積りはしないし、料金についての駆け引きもほとんどしないので、仕方なくわずかな値引きには応じたが、それでは満足できない夫は更に値引きを要求してきた。

雰囲気的には、リフォームや引越しの際の料金交渉をやっているようなノリで、違和感を覚えた。妻が自殺したばかりの和室は血の海になったままだというのに、そう高くもないお金のことばかりに気にしている夫って一体・・・。

私自身が苛立ちはじめ、

「値引きはできない」

「当社に発注しなくてもいい」旨を伝えた。


すると、ようやく夫も折れて、渋々注文書にサイン。
血液は畳や床板に染み込んで凝固する前に拭き取った方がいいので、イレギュラーだったが、血の拭き取り作業だけはその場で急いで取り掛かった。全部の血を拭き取るのに、相当量の吸水紙を使った。そして、翌日、畳を撤去。周りの住民に配慮する必要もあり、一枚一枚を不透明のシートに包んで搬出。最後に除菌消臭剤を噴霧して作業を完了した。
別に、礼を言ってもらう必要もないが、夫も子供達も終始無愛想なままで、気分が浮かないままでの仕事となった。こういう仕事だからこそ、元気にやりたかったのに・・・。


自殺したのがどんな奥さんだったのかは知らないが、残された家族が手厚く供養してあげるよう願うしかなかった。


トラックバック 2006/06/12 08:58:05投稿分より

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遺族の嘘

2024-05-12 04:45:18 | 遺品整理
遺品回収の依頼で見積りに出向いた。依頼者は中年女性。現場は公営団地。
「独り暮らしをしていた父親が亡くなったので、遺品を処分したい」とのことだった。


とりあえず、現場へ。亡くなった場所は病院とのこと。
しかし、部屋に入ったら、かすかに死体の腐敗臭がする。

「男の独り暮らしで不衛生な生活をしていたので、臭くてスイマセン・・・」

と依頼者は言うが、ゴミの臭いと死体の臭いくらいは嗅ぎ分けられる。
念のため言っておくが自慢してるわけじゃないんで。

「亡くなってから、そう時間が経っていないうちに発見されたせいで臭いが薄いだけ、間違いなく故人はここで死んでいる。依頼者が言うように病院で亡くなった訳ではない。」と確信。

見積金額を少しでも安くするためか、世間体が悪いからか、「病院で死去」とウソをついているようだった。


私は自信たっぷりに

「失礼ですが、故人はここで亡くなってますよね!?」

と依頼者に言ってみた。


私の強気でストレートな物腰に、「抵抗するとマズイ」と判断したのだろうか、依頼者は気まずそうにそれを認めた。そして、こういう仕事は依頼者との信頼関係が大事であることを説明して、大きなウソはつかないようにお願いした。

故人がどこで亡くなっていようが、気にすることはない。そんなことが気になるくらいなら、そもそも私はこんな仕事はしていない。そんな類のことを依頼者に話して、心の荷を軽くしてもらった。
雨降って地固まり、その後はお互い気持ちのいい関係で仕事をすることができた。


故人が生きていた物理的な形跡はなくなったが、故人は遺族の心の中に残り、私の仕事を通じて遺族が心の荷を降ろしてくれれば幸いである(きれいにまとめ過ぎ?)。


  • トラックバック 2006/06/11 08:27:28投稿分より

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格差社会

2024-05-11 04:31:25 | 遺品整理
きれいに晴れ渡った青空が広がる気持ちのいいある日の午前。
現場は都内某所の高級住宅地。そこに建つ高級マンション。
そのマンションに住人達は、どの人も裕福そうで、私の単なる先入観かもしれないが、どことなく品の良さを感じる人達ばかりだった。駐車場の車も高級車ばかり。
それを当たり前のように乗っている。


依頼された仕事とは言え、私ごときが出入りするのも申し訳ないような気分がする程であった。

そのマンションの高層階の一室で独り暮らしの年配女性が腐乱状態で発見された。キッチンで倒れて、そのまま亡くなったらしい。
依頼者は、故人の息子。

「始めから、施行できる装備できてくれ」

とのことだったので、電話で聞いた現場状況から判断して、それに合わせた作業仕様で出向いた。

見積りのため部屋入ったら、いつもの悪臭はするものの、間取りは広々していて窓から見える景色もよく、置いてある物も高そうな物ばかりだった。

とりあえず、見積書を書いて、内容の説明に入ろうとしたら、依頼者は

「全てお任せしますから、そのまま作業に入って下さい」

と金額や作業内容を詳しく聞こうともしない。

「せめて料金だけでも了承もらわないと」

と金額を伝えたら、

「いくらかかってもいい」

「こんな仕事をお願いするのだから、高めにしても構いませんよ」

と寛容かつ丁寧な対応。好意に甘えて、少し高めに見積書を書き直して、作業を開始した。

「一体、どんな仕事をして、どのくらいの収入があればこんな高級マンションに住めるのだろうか・・・。」

と羨ましいやら感心するやら。自分の暮らしとの格差に複雑な思いを抱えながら作業を進めて無事完了。

帰り際も、依頼者男性は

「ありがとうございました」

と丁寧に礼を言ってくれた。礼儀正しく、感じのいい依頼者だった。



・・・同じ日の午後、千葉県某所の市営団地で見積依頼があった。
大規模な老朽団地で、間取りも2DKと狭い。こちらは特殊清掃の依頼ではなく、遺品回収(ゴミ処分)の依頼(家主は病院で死去)。

部屋の中は汚れて散らかり、生活用品とゴミの区別がつかないくらいだった。
遺族は部屋にある物の買い取りを強く希望していたが、どれもこれも、とても買い取れるような価値がある物ではなく、買い取りは全て断った。

しかし、執拗に

「これはまだ使える。これはまだ新しい。これは欲しがる人がいるはず。」

等と言ってしつこかった。しかも、私を業者扱いして横柄な物言いで。

更に、実際の遺品回収費用を見積もったら、細かい値引き交渉に入ってきて、どうにも話が進まなかった。少々の値引きは仕方がないが、遺族の希望する価格と私の提示した料金にあまりに格差があったし、その態度も気に入らなかったので、その場は私の方から断って引き上げた。


問題発言に発展する前に締めるが、その日は一日のうちに午前と午後に分けて二軒の集合住宅に訪問し、二つの遺族と接した訳だが、この大きな格差に思うこと感じることが多い私であった。


トラックバック 2006/06/10 08:49:22投稿分より


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ゴミがごみごみ

2024-05-10 05:05:55 | ゴミ部屋 ゴミ屋敷
ゴミ屋敷の話である。少し前に10chのある番組の企画で「汚宅拝見」というのをやっていたが、まさにそれである。
ゴミを「これでもか!」という程、溜め込んでいる人って結構いるものなのである。

普段は特殊清掃・遺品回収がメインの仕事だが、時々、ゴミ屋敷の片付依頼も入ってくる。
当社は、ただのゴミ処分業者ではないので、住人が亡くなっている上での遺品回収ということで依頼を受けるのだが、実際はゴミ屋敷の片付けである。

私はこういう仕事はかなり苦手である。地道に単調にコツコツやらなければならないことが苦手なのである。それが体力仕事だったらなお更で。同じやるなら特殊清掃の方がよっぽどいい。


ある程度分別してトラックに積み込んでいく。分別作業の手間のかかることといったら、そりゃ大変。そして、運び出しても運び出してもゴミは減らない。

最もやっかいなのは、遺族から「○○を探してほしい」と特定の物を探し出すことを頼まれたときである。例えば、印鑑・預金通帳・年金手帳・写真など。山のようなゴミの中からこんな小さな物を探し出すなんて、気が遠くなるような話である。それでも、やれるだけはやってみる。その代わり、値引きなしで遺族にも手伝ってもらう。

「貴重品につき、探し出せない場合でも責任はとれない」

と言えば、イヤイヤでも手伝う。


不衛生で細かい作業なので、やってるうちに遺族も嫌気がさしてきてイライラし始める。そのうち、探し物が「いる」「いらない」とか言って内輪揉めを始めることも少なくない。

それでも、まあまあの金額が残った預金通帳なんかがでてくると、急に元気になって仕事を再開。私も含めてだが、人間って本当に強欲で面白い生き物である。

とにかく、ゴミを溜める人には、本人にしか分からない趣向・感覚があるのだろうが、私には到底理解できない。
そんなことを言うと、

「そういう仕事をしているオマエの感覚の方がよっぽど理解できないよ!」

と言われそうだが(苦笑)。


ま、何はともあれ、ゴミ屋敷は遠い地の他人事と思ってたら大間違い。ひょっとしたら、貴方の隣家がゴミ屋敷になっている可能性があるかもよ。


トラックバック 2006/06/09 投稿分より

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宝探し競争

2024-05-09 05:33:32 | 腐乱死体
腐乱死体で発見される故人は、やはり独居が多い。
前ブログにも載せたが、独居でない珍しいケースもあるが。

「お金持ち」とまではいかなくても、一般的には誰しもそれなりの御宝を持っているものである。生命保険証券・株券・預金通帳・現金をはじめ、新型のAV機器やブランド品などである。

普段は疎遠・不仲にしていた遺族達も、こうおう時はハイエナのように集まってきて、宝探しを始める。臭くて汚い現場でもお構いなし。ビニールの簡易カッパ・ビニール手袋・マスクを着用して、人よりも先に御宝を発見すべく、欲望を剥き出しに目の色を変えて探しまくるのである。

そうなれば、身内と言えども競争相手・ライバルである。さながら、死体に群がるハイエナのようである。遺族がハイエナなら、私はウジかもしれない?が・・・(苦笑)

その無神経さには、苛立ちを覚えるくらいである。でも、これが人間の悲しい性か。
可笑しいのは、せっかく発見した「御宝」が「汚宝」になってでてくることである。

例えば、高級ブランド品に腐敗液やウジがついていると、

内心「ざまぁ見ろ」と思ってしまう。

遺族は、そういう品物を私にきれいにして欲しそうにするが、

「壊したら責任とれないし、それは私の受けた仕事の範囲に入っていないから」

と断る。

「せっかく御宝を探しに来たんだから、汚宝でも喜んで持って行けよ!」

と思う。


生前は疎遠にしていながら、本人が死んでからそそくさとやって来て、御宝だけを頂戴して帰ろうなんて虫が良すぎる。
そういう人達は、欲が強いばかりか猜疑心も強くなっている。

「死んだ故人も悔しい思いをしているかもな」

と思いながら、私は私で特殊清掃の作業に励むのであるが、その私の動きにも注目してくる。


私は、故人の御宝を盗んだりはしないよ。汚い仕事はしていても、心までは汚したくないと思っているから。


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独居男の悲哀

2024-05-08 05:52:50 | 特殊清掃
若年から中年の孤独死も案外多いものである(自殺ではなく)。

そんな現場に共通して言えるのはエログッズの多さである。
エロ本・AV類が山ほどでてくる。普通は、古いものや見飽きたものは捨てていきそうなものだが、捨てるのが惜しいのか、そういう人はどんどん買い溜めていくのだろう。

男の本質と言ってしまえばそれまでだが、ほとんどの現場で、ちょっと異常な量がある。
その共通点は不思議である。

そんな現場で気の毒なのは遺族である。エログッズを溜め込んでいたのは故人で、遺族ではないのに、何故かどの遺族も

「お恥ずかしい・・・スイマセン。」

と謝ってくる。身内の恥は自分の恥だと思ってしまうのか。

別に謝るようなことでもないし、私も、謝られても何と言っていいか分からないので苦笑いするのみ。
フォローの言葉が見つからない。
そもそもエログッズを溜め込むことは悪事ではないので、謝る必要なんかないのだが。

それでも、遺族は恥ずかしい心情を抑えきれずに、理由もなく謝ってしまうのだろう。
そこが妙に可笑しい。

でも、本当に恥ずかしいのは、あの世に行った故人かもしれない。

「まさか自分の恥ずかしい趣味が他人に露呈してしまうとは・・・恥ずかしいッ!!」
と草葉の陰で赤面している?



独り暮らしの男性でエログッズがたくさんある方は、普段の健康管理に人一倍気をつけよう。腐乱死体で発見されるようなことがないように。


トラックバック 2006/06/07 投稿分より


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金がない

2024-05-07 06:16:26 | 特殊清掃
特殊清掃は原則として前金制でやらせてもらっている。

こういう現場に絡んだ人達は「訳あり」の人が多く、その昔は代金を回収できないままトンズラされたことが何度かあったからだ。
こんな仕事をやらせておいてお金も払わずバックレルなんて、当時を思い出すと泣けてくる。

「人を騙すより騙される方がいい」

とよく耳にするが、そんなのきれい事だ。



世の中には、騙してもいいような輩があちこちにいると思う(騙された私もそんな輩の一人だったのかも?)。


そんな現在の私でも情がないわけではない。
お金がないから後払い・分割払いを依頼してくる相手(依頼者)はよく観察してよく話す。
長年、こんな仕事をやっているせいか、人間観察には少々の自信がある。
その結果、現状で言うと断ることの方が多い。しかし、受けることもある。


アパートで独り暮らしをしていた20代の娘が腐乱死体で発見された。
自殺ではなく自然死だったらしいが、例によって現場はヒドイ状況だった。

両親は、同じ県内に住んでおり、最初の一度、遺体発見の時だけ現場に行ったっきりで、「もう二度と行きたくない」とのこと。
かなりのショックを受けたらしく(当然か)、母親は寝込んでしまっているような状況だった。

特殊清掃の依頼は父親からの電話。
とりあえず、鍵は不動産屋から借りて現場へ。
見積書をFAXしてから、再び電話でやりとり。
プライベートなことまで突っ込んで話を聞き、偽装ファミリーではなさそうであることは確認。

でも、肝心の「お金がない」と言う。
「娘の生命保険金が入ったら、必ず払うから先に清掃をやって下さい」と懇願された。

大家や不動産屋から「早くきれいにしろ!」とクレームをつけられているらしく、父親は困りきっていた。
生命保険となると一ヶ月以上は後になる。
過去に、この類の同情を引く手口で騙されたことも思い出しながら苦慮した。

結果、電話でしか話していない父親を信じて受けることにした。
父親の懐具合はどうあれ、若い娘を突然失って弱っている人を見捨てるわけにもいかなかったので(カッコいい?)、最悪は、代金が回収できないことも覚悟しておいた。若者の死は、それだけの思いを起させる何かがあるのだろうか。

結局、最初から最後まで依頼者と直接顔を合わせることがない、珍しいケースであった。



肝心の代金がどうなったか?
それは以降のブログに載せるかもしれないので、お楽しみに。


トラックバック 2006/06/06 投稿分より


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リサイクルの陰に

2024-05-06 05:18:28 | 遺品整理
当社は、遺体関係で色々なサービスや物品販売を手掛けている会社である。

私が担当する仕事のほとんどは特殊清掃だが、ただの遺品処理・遺品回収の仕事もたまにはある。

そこでよく遭遇するのが、リサイクル可能な電気製品・家具類の買い取りである。

当社も厳正に品定めをして、買い取れる物は買い取るが、私の買い取り基準はかなり辛い!一般のリサイクル業者なら安易に安値で買い取っていきそうなものでも、私は買わない。

その理由は色々あるが、まずは遺族が考えている程の価値がないものが圧倒的に多いこと、そして次はそれが「遺品である」ということである。妙ないわくがついた品である可能性が否定できないのである。

しかも、特殊清掃の現場で、遺族がリサイクル業者と電話で打ち合わせしている現場にも何度か遭遇したことがある。

そんな時は「これを売るつもりか?」と思う。

確かに、死体の腐敗液が直接付着している訳でもなく、ウジやハエは拭けばとれるもだが、これをリサイクル業者へ売ろうとするとは、良心の呵責はないのだろうか。

もちろん、品物は私きれいにしたうえで、遺族が別のところへ運んでからリサイクル業者へ引き渡すか、特殊清掃の完了後にリサイクル業者を呼んで見積りをさせるか、である。

百歩譲って、ただの遺品をリサイクルの回すのはよしとしても、腐乱現場にあった品物をリサイクル店に売るのは、好ましいとは思わない。



世の中には「知らぬが仏」ということがたくさんあり、それで世の中がうまく回っていることも承知しているが、リサイクル品を買うときは、くれぐれもご注意を。
その傍で、死体が腐っていたかもしれないからね。


トラックバック 2006/06/05 投稿分より

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アンビリーバボー!!!

2024-05-05 04:57:43 | 特殊清掃
特殊清掃の最初の仕事は現場確認と費用見積である。
そこで初めて依頼者と会い、現場を見ることになる。
どんな現場でも、最初は使い捨てのビニール手袋(ディスポーサブルラテックスグローブ)を必ず着ける。
私はドアノブさえも素手では触らない。
そんな私を見て、自分はさんざん素手で触ってきた依頼者は不安そうな表情をする。

そして、ドアを開けて、すぐには中に入らずに、玄関からしばらく中を観察。
いきなり入ると、予測がつかない被害を被ることがあるからだ。
例えば、血液やウジが上から落ちてきたり、腐敗脂で滑って転んだり・・・。

中に入ると、まずは汚染個所の状況を確認する。それから間取りや家財道具の量・種類をみながら臭いをチェック(細かいことは企業秘密)。

問題は、汚染個所のチェックの際に起こった。手袋を着けているため、汚染されたものでも平気で触る。布団やカーペットをめくり上げたり、腐敗液のついた物品を動かしたり。

汚染部分のチェックは仕事の要なので、慎重かつ集中して行う。
汚染部分のチェックが終わると汚れた手袋を外すわけだが、そこでアンビリーバボー!な状況に気づいた。

なんと、手袋が破れていたのである!!!


手袋を外してみると・・・
案の上、手には腐敗液がシッカリ着いていた(ざんね~んっ!)。

速攻で見積りを中断して、手を洗って消毒。

それでも、臭いがなかなかとれない。

こんな仕事を長年やってながらも、腐敗液が身体の直接付着してしまうのはかなりのイレギュラーなケースで、普段からそこはかなり注意している。

それなのに、本作業じゃない見積段階で腐敗液を着けてしまうとは、我ながら情けなく悲しかった。

とりあえず、見積りは無事に済んで現場は退散。
嗅ぎたくないのについつい何度も手の臭いを嗅いでしまい、溜息をつきながらブルーなき分で帰路についた私であった。


トラックバック 2006/06/04 投稿分より


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コタツぽかぽか

2024-05-04 06:48:07 | 遺体処置
冬場の話である。年配の女性がコタツに入ったまま亡くなった。もちろん、コタツのスイッチはONのまましばらく放置されていた。

遺体の上半身(コタツからでている部分)はパンパンに膨れあがり、顔も生前の面影は全くなし。体表には無数の水泡(火傷した時の水ぶくれに空気を入れたみたいなもの)。水泡の中は腐敗ガスと深緑色の腐敗体液が溜まっていた。
下半身は?というと、コタツに入っていたせいで、上半身とは逆に干乾びて茶黒黒色のミイラ状態になっていた。冬は気温も低く空気も乾燥しているため、そのような状態になったと思われるが、勉強になった。
腐敗液はコタツ敷を越えて、その下の畳にまで染み込んでいた。
季節柄か、私の天敵であるウジ・ハエの姿はなかった。彼等は結構寒がりなのかもしれない。
故人の首を見ると、何かが首回り一周に渡って食い込んでいる。紐か何かが巻きついている?自殺か?と思っていたが、そんなのは警察が調査済みなので、私は詮索することではない。
でも、何が巻きついているのか気になったので、膨れ上がった首の肉を寄せて奥を見てみた。すると、その正体はネックレスだった。生前は胸元に垂れるくらいの長さだったはずのネックレスが首に食い込むくらいに首回りが腐敗膨張したのである。
遺体が腐っていく段階で、身体がどれだけ膨れ上がるものか、この話で具体的にお分かりいただけると思う。
ちなみに、ネックレスで首を締められているようで、なんだか気の毒な感じがして、そのネックレスは外してあげた。
それから、その部屋を特殊清掃したことは言うまでもないが、世の中にはコタツが火事の原因になることだってあるらしい。この現場は、火事にならなかっただけでも不幸中の幸いかもしれない。


トラックバック 2006/06/03 投稿分より


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