温暖化に挑戦する人たち

今後の国連気候会合の動きを現地から紹介。ここでは特に国際的な約束を巡って市民社会がどう働きかけるかを追いかけます。

COP13終了

2007-12-16 18:03:55 | Weblog
15日、COP13現地報告を終了します。
2週間のご愛読?ありがとうございました。

会議の争点だった「ポスト2012」に向けた交渉は始まったばかりです。これから、次期削減目標、途上国の参加、適応、CDM、森林減少、技術移転・・等の具体的な議論に入っていきます。それぞれの議論において、“Climate Justice”(先進国の歴史的な責任、途上国の持続可能な開発に対する支援、先住民族やコミュニティーレベルの意思決定や人権の保障、女性の参加)が十分に検討されるように、日本の市民からも働きかけていかなければなりません。

今回の会議における日本の態度には、世界中から非難が集中しています。気候変動交渉における日本の信頼回復と、先進国の一員としての責任を果たしていく為にも、まずは、来年から始まる京都議定書の義務を達成できるかにかかっています。また、その達成方法(自国内での削減をあきらめて、不足分を海外から購入するようなことのないよう)においても、日本の姿勢が問われてきます。

FoE Japanは、今後も国際交渉における各国の動向の紹介と、Climate Justiceの重要性の理解と参加を促進して参ります。

(写真:バリのデンパサールでClimate Justiceを訴える)

COP13合意

2007-12-15 15:18:10 | Weblog
15日、当初3日~14日までの予定だった開催期間を一日延長し、ようやく合意に至りました。
結局、米国と日本の思惑通り、一切の数値目標を省いた形での「全ての国の参加」を含む決定文書となりました。

バリ会合の成果・・・
①妥協の末のバリ・ロードマップ合意
・2009年までに交渉をまとめる
・条約の下に、新たな特別作業部会を設置

②京都議定書の特別作業部会(AWG)では、今後10~15年以内に排出のピークを向かえ、2020年までに先進国の排出を25~40%削減させることに合意

③適応基金の合意
・GEFが暫定的な事務局の役割を担う
・理事会の設置
・3年おきのレビュー

一連の交渉プロセス及び結果を振り返ると、今後2年間の間に、先進国に大幅な削減目標を持たせ、京都議定書の性格を受け継ぎつつさらに強化された次期枠組を作り上げることがどんなに難しい挑戦であるかと不安にさせられます。しかしながら、一方で今回の米日(加)の横暴ぶりと、最終的に世界が彼らのわがままを受け入れざるをえなかったという事実を、放っておいていいのでしょうか?
会場の外では、気候変動の影響に脆弱な人々、先進国の利益のみを追求した緩和対策の被害者の代弁者達が、期間を通して“Climate Justice"を訴えてきました。残念ながら、彼らの声はなかなか会議場には届きません。会議場の外でも中でも、今尚「気候の不公平」が蔓延しています。




京都殺し

2007-12-14 16:34:14 | Weblog
バリ・マンデート(ロードマップ)の合意のために残されている課題は、
IPCCの科学的知見に基づいた温室効果ガス削減の削減目標幅を含めるか否か、先進国の責任と途上国の参加の在り方等です。

13日深夜、米国がCOP13の草案に対し、新たな提案を提出しました。この提案は、京都議定書の第一約束期間の約束よりもさらに、強力なものにしようとする、途上国を含む世界中の努力と決意を踏みにじるようなものです。
米国は、先進国の削減の在り方に関して、各国が国内の事情に応じて自由に対策を行うだけの法的拘束力を持たない、非常に緩い約束を提案しています。さらに、途上国を含めた提案になっており、先進工業国が第一に削減すべきである、歴史的及び現在の排出に対する責任から逃れようとしているのがみてとれます。

京都議定書の前に戻ってしまうようなこの後ろ向きの提案に対して、世界中から集まった参加者たちは、驚きとともにあきれ顔。世界のNGOからは「京都殺し」と非難されています。にもかかわらず、日本政府は未だ米国サポーターとして提案を支持しています。

省かれた数値目標

2007-12-14 14:49:55 | Weblog
13日の夜に出されたとんでもない米国提案と、日本の米国への強いサポートにより、14日の朝に出された最終議決案からは、きれいに削減の数値目標幅が省かれていました。
これまで、複雑な交渉ながらも、少しずつ前向きな合意に近づいてきていたのが一点、振り出しに戻された感じです。

写真:アメリカ提案と日本の対応等に対して厳しいコメントを発表するCAN(Climate Action Network)、右端がFoEインターナショナル


バリ、いよいよ閣僚級会合始まる

2007-12-12 22:57:23 | Weblog
今日から閣僚級会合が始まりました。
世界中の大臣が集まる会場には、これまでになく多くの人が溢れかえっているうえに、セキュリティーも強化されています。

ここ数日、深夜まで続いた事務レベルの交渉においても結論にいたらず、いくつもの課題が閣僚級にもちこされることになりました。
COPのハイレベルセグメントでは、インドネシアのユドヨノ大統領が、スピーチの中でIPCCとアル・ゴアのノーベル平和賞受賞、そしてオーストラリアの京都議定書批准に対し、祝辞を述べました。
各国のステートメント発表の中で、日本の鴨下一郎環境相は、条約の下ですべての主要排出国が入る新しい作業部会の設置を求め、日本お気に入りの「セクター別アプローチ」を提案するのみで、数値目標には言及しませんでした。

AWGは非公式会合を開催したが未だ合意に至らず明日に持ち込しです。

森林炭素パートナーシップ基金へのNGOの抗議

2007-12-12 00:10:13 | Weblog
“森林減少・劣化による排出量の削減(REDD)”を補完するための基金、「森林炭素パートナーシップ基金(FCPF)」の発足が世界銀行により本日正式に発表されました。REDDにおいて、世界銀行は市場メカニズムを導入することによりその資金源を確保しようとする構想を打ち出しており、その市場メカニズムを補完するための基金としてFCPFを設立しました。日本政府はこれに3年間で最大1000万ドル(約11億円)を拠出すると表明しています。

FoEと他の環境団体は、FCPFの発足発表会場にて、“世界銀行は森林から手を引け!”“世銀が立ち退けば森林は増える”、“森の人たちの住む場所をとるな、排出権取引は禁止しろ”と叫び、世銀に森林を取られ殺された先住民族になりきり、デモを行いました。世界銀行が森林に市場メカニズムをも持ち込むことにより、取引に参加する富んだ国々や企業が森林管理の長期商業契約を結ぶことにより、森林に依存して生活している10億人を超える先住民族や他の地域住民を森林から締め出し、今よりもさらに不利な立場に追いやられること懸念し、デモで訴えました。

ハッピバースデー トゥー 京都議定書!!

2007-12-11 13:39:56 | Weblog
京都議定書は1997年、我が国、日本の京都で採択されました。
その後10年、たくさんの苦労を乗り越えて、ようやく来年2008年に、第一約束期間を迎えることになります。

この記念すべき日、明日からの閣僚級会合を控えて、最後の詰めの作業が行われています。
もはや、ほとんどがCloseな会合になっていて、外からは何が起こっているのか、うかがい知ることは難しい状況です。議論は、京都議定書の第一約束期間後の話。次期約束の合意へと向かうことができるかどうかで、京都議定書とこれまでの多くの努力が報われるかどうかが決まります。

午後からは、グリーンピース主催のお誕生日会、日本の気候ネットワーク主催のお誕生日会、そして国連主催のお誕生日会・・・と京都議定書はたくさんの人々に祝われ、応援される人気ぶり!

京都議定書を尊重する誰もが、この会議の成功によって、温室効果ガスの大幅削減への道へと確実に向かい始めることを心から望んでいます。

もちろん、当時のホスト国であった日本政府が先頭に立って、京都議定書を尊重する態度を見せてくれることに期待したいものです。

閉め出された先住民族

2007-12-11 12:51:12 | Weblog
7日、バリ会合に参加する先住民族の人々が、国連に向けて抗議するデモンストレーションを行いました。
抗議の背景には、前日の国連気候変動枠組条約事務局長のイボ・デ・ボア氏と市民社会団体代表団との会合の際、先住民族代表も招待されていたにも関わらず、参加を拒否されたからです。先住民族の人々は、この出来事を、国連気候変動枠組条約のプロセスから先住民族が排除されたことを意味すると考えます。

「プレナリー(全体会合)の場にも先住民族の為の席は用意されていない。」と先住民族団体は訴えます。気候変動の影響だけでなく、気候変動対策による環境社会影響を、最も大きく受ける可能性があるにも関わらず、彼ら自身で彼らの土地の権利や人権保護を求める機会は与えられていないのです。

グローバルアクションデー

2007-12-10 12:08:15 | Weblog
世界でも50以上の都市が参加したとされる気候変動に対するグローバルアクションデーが、国連気候会合の開催地、バリでも開催されました。

FoEインドネシア(Walhi)が中心となる市民社会フォーラムの運営のもと、市民集会が開催され、その後参加者達は気候の公平性を訴えながら1km行進しました。このバリのアクションには、世界中とインドネシア各地から集まったNGO、市民、学生が参加し、先進国の大幅な削減責任、環境社会影響を及ぼす可能性のある気候変動対策(REDDやバイオ燃料など)、排出権取引への懸念等を訴えながら行進しました。

行進の後、市民集会でスピーチを行ったインドネシアのスラヴェシの女性に話を伺いました。集会では、資本主義経済や先進国の大企業が行う大規模開発によるコミュニティーの環境社会影響被害を力強く訴えていました。そして今、気候変動対策を偽った新たな開発の危険にさらされることに強い懸念を感じています。集会の様子はテレビを通じてインドネシア中に伝えられます。
しかし、一方で当局に目をつけられると、逮捕、拘束される可能性もあると彼女は恐れています。実際、開発に対し反対運動をしたことで、彼女のコミュニティーの中でも毎年何人もの人々が警察に摘発されているそうです。また、小学校しか出ていない自分などが大勢の人々に向かって話などしてもいいものだろうかとも心配していました。しかし実際に、彼女の言葉は多くの参加者に勇気と励ましを与えました。
国連の会合内で議論している代表団は、確かに交渉の専門家や、科学的、経済、政策の知識には長けているのでしょう。しかし、その中の何%が彼女のように生活や民族の文化の存続、ときには命をかけて真剣に考えているのでしょうか。

彼女たちのメッセージが、交渉の場に届くことを願います。そして、その声を届けるのもNGOやメディアの最も重要な役割の一つです。

バリ・ロードマップの草案

2007-12-08 13:14:55 | Weblog
ついに、「ポスト2012」の合意の為の作業工程を定める「バリ・ロードマップ」の草案が、共同議長より提案されました。
草案の前部には、今後10-15年の間に排出量のピークを迎えること、2020年までに先進工業国が1990年レベルの排出量から20~40%削減させることが記載されています。
2週目からは、これら数字が示されたことに対し、激しい論争が繰り広げられることになりそうです。