部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

2016年11月公演

2016-11-15 | 文楽

平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
国立劇場開場50周年記念
錦秋文楽公演

【第1部】 
 花上野誉碑(はなのうえのほまれのいしぶみ)
   志渡寺の段

 恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじょう)
   城木屋の段/鈴ヶ森の段

 日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)
   渡し場の段


【第2部】 

 増補忠臣蔵(ぞうほちゅうしんぐら)
   本蔵下屋敷の段

 艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
   酒屋の段

 勧進帳


  【配役表】



志度寺は初めてでしたので、これは逃がせまいと思って大阪までいて参じました。

しかし、DVDを観た時も思ったけど、この人たち、どうかしてる。
玉男さん遣う森口源太左衛門は子供相手に大人げなくずっと怒鳴ってるしさー
内記殿もお辻は乳母なんだからほんとのこと言っておいてもよかったんじゃないのー
とにかく諸々つっこみどころだらけのお話でしたが、そこは玉翔さんの坊太郎のいじらしさと和生さん・お辻の必死の母性でねじふせられた感。
そして一番は清介さんの三味線ですね。
あの三味線でお辻の狂乱とも言える決死の祈りがぐわーーっと客席に迫ってくるように思えました。


本蔵下屋敷、
これは単純な話ですが
「諂うても苦しうない」
からの若狭之助のセリフがねー 中年サラリーマンにはぐっとくるわけですよ。
上司にそんな風に言われたら我慢してきた甲斐もあるってもんですよね。
咲さんが9月よりもお元気そうでほっとしました。
それにしても本蔵殿の尺八姿がねー
『染模様妹背門松』の中で、おかつが
「尺八のやうなハナ垂れて」
って言い放つ場面があって、もうそれ以来尺八見ると
「ちょ、こんな鼻水ってどんだけハナ垂らしてたんww すごいな、尺八のような鼻水ってwww」
と考えてしまって、まったくもって不謹慎。
この後12月、九段目でニヤニヤしたらもうおしまいだ。
なにもかもおかつのせいだ!へんなこと言わないで欲しいわー


酒屋、たいへん結構でございました。
酒屋がかかると聞くと、
え… 酒屋か…
てなりますが、見てみればまた、ああ、いいもの見た、聞いた、てなるもんですね。
今回、親たちの嘆きがしみじみと沁みてよかったです。
最初の希・清丈新婚リア充コンビもよかったですね。この、リア充どもめ!お幸せに!
文字久さんの半兵衛も苦渋ぶりが伝わりました。
そしてなんといっても津駒・寛治の口説きの哀しさったら。
いつも思うんですが、津駒さんの語る「泣き言」「繰り言」って響きますよね。
くどくどしいのがお似合いというか。失礼かこれ?
勘十郎さんはなんと初役というお園。後ろぶりなんてもうそれはそれはパーフェクトな美しさでした。
蓑助師匠の三勝が寛治師匠の三味線にのって動けば哀切さを湛えた美が増幅する不思議。
いつまでも見ていたい、聞いていたいと思わせてくれるまことによい舞台でした。
こういう、何かが突出するのではく、全体としてとてもよかった、と思わせてくれる舞台は実は貴重で、私の中ではのちのちとても大切なものになると思っています。


勧進帳は久々に花道をつかうということで、試しに花道真横の席を取ってみたんですけども。
まあまあ、なんという大迫力でしょう!
3人のしんどそうな息づかいまで聞こえ、すぐそばには白足袋白タイツの足が…
足を踏む時は左も一緒に踏む動作になってんだーとか、とにかく足元に目を奪われました。
ふと上を見上げれば大きく動く玉佳さんからキラキラしたなにかが飛んできて私の前髪に…
うっわ、ちょっと!?なにこれ、まさか汗!? 
うぇーー(゚Д゚;)

…気を取り直して。
なかなかこんな間近で見上げるなんて機会はないので、それぞれの動きの懸命さに胸をうたれましたねー
玉男さんの真骨頂じゃないですかね。
玉路くんも頑張ってましたが、まだ足を卒業させるわけにはいかん!ますます精進せよ。
とくらちゃんは言ってました。
あと、弁慶と富樫の問答のスリリングな場面では、和生さんの富樫から気迫がビンビン飛んできておおーっと思いながらふと床をみると、そこには人形よりもスリリングな顔をしている咲甫さんと千歳さんが…
柔軟な顔の筋肉だなと感心しながら面白く拝見しました。


あ、黄八丈のと日高川はほぼ見てないも同然なので感想は言えませんすみません…
お駒ちゃん緊縛の嗜虐美は前回で十分堪能したのでもういいや、って。


なんか今回は余裕ぶっこいてチケット取ってなかったら、土曜日なんて売り切れてて、えっ!て焦りましたよ。当日の朝、チケットセンターに1席出たので無事見られましたけど。
昼夜とも満席に近く、こりゃいよいよ大阪でも気が向いたときにちょこっととかできなくなるのかな、と嬉しいような残念なようなフクザツな気持ち。
ゆったりした気持ちで見られるなんて贅沢なことだったんですねぇ


 

2016年4月公演◆妹背山婦女庭訓

2016-04-05 | 文楽


通し狂言 妹背山婦女庭訓
【第1部】
初段     小松原の段
        蝦夷子館の段
二段目   猿沢池の段
三段目   太宰館の段
        妹山背山の段

【第2部】 
二段目    鹿殺しの段
        掛乞の段
        歳の段
        芝六忠義の段
四段目    杉酒屋の段
        道行恋苧環
        鱶七上使の段
        姫戻りの段
        金殿の段


 【配役表】


全国的ホテル難の折り、初日からしか都合がつかず、欲張ってびっちり3日間観劇するという荒技にでてしまいました。顔には死相、腰は90度になりながら。

 前回の通し上演の時の日誌  を見てみましれば、しょーーーもな!ってこと書いてましたけど、そうだそうだ、と色々と思い出しましたね。
前回いらした重鎮方はほぼ舞台から退かれ、6年の歳月を思ってしみじみと寂しさが。
そんな中簑助さんの雛鳥は6年経っても変わらずキラキラとしたなにかがあたりにこぼれているような可憐さで、見る者をうっとりとさせるのだから嬉しい限りです。


【初段】
なんといっても小松原の最後に
「数多のさむらい走りつき!」
でじゃーーんと登場するひとりのさむらいに笑いましたね。ああも堂々と「あまた感」がないのはむしろいいと思います。

そして蝦夷子館の段。
ここは後ろの席のお客さんが
「ほら朝忙しくてあれだったら、ここらは飛ばして太宰館からでもいいから、とにかく山の段は必見よ!」
言うてましたけど。
いやいやいや、ここ飛ばすと話わからんのでは!?と思います。
初段・二段目で大事な事全部言うてますよー
蝦夷子と入鹿親子の大望と、登場人物の血縁関係など、初めて観る方はできればここ抑えた方が…
「言うても殺す、言わいでも殺す、」って蝦夷子の非道っぷりとか、そんな父親を
「器小せえから芥の如く見捨てたったわ」言う更なる非道な息子入鹿のロングヘアーとか。
せっかく出てきてもすぐ死んじゃう清五郎さんとか。
とにかく、見た方がいいかと…
とくらちゃんも言ってました。

そういえば一輔さんも今回采女だけですからね。もったいないなーと思いますけどしかたないのか。


【二段目】
なんでか猿沢池の段がひとつだけ昼の部に挟まります。山の段を昼に持ってくるための策なんでしょうけど、かといって山の段の前に猿沢池やっとかないと意味不明になるし、山の段と金殿を二部で一気にやったら劇場で気を失う者続出するんじゃないかと思うし。
猿沢池でのこと、夜の部まで忘れないでー!

猿沢池から求馬がひと芝居打って天皇一行を匿うのが、夜の部・掛乞の段からの芝六一家が暮らす侘住居です。
芝六一家は誰も悪くないのに政争に巻き込まれて息子を失うはめになるんですが、これ、ほんと誰が悪いって求馬だと思うの!
「一体お前がこんな内で太平楽を仰るからぢや」って芝六にも文句言われてますけども。
その時の清十郎求馬が頭をポリポリと掻くところが、ちょっと情けなくていいですよね。
清十郎さんの求馬は、前回和生さんの時に感じた「ちょっといい男だからって心がない野心家め!」みたいな憎たらしさがあんまり感じられませんでした。
求馬を憎たらしいとかお前のせいで芝六が!とか言うのはたぶん間違ってます。
間違ってますけど!
憎たらしいもんは仕方ない。お許されよ。
玉翔さんの三作、健気でした。
床も、掛乞の始さん・龍爾さん、万歳の睦さん・清馗さん、共によかったですね~
ここでも「前回は相子さんと清丈'さんが掛乞だったよね…」と思い出して、またしみじみ。
ばばあ、いちいちじみじみし過ぎ。

【三段目】
太宰館は靖さん・錦糸さん。
靖さんの奮闘ぶりには胸をうたれました。
大笑いも3日間、毎回拍手が来てましたよ~
最後まで緩まず、注進~りんりんりんと乗馬のところまでの苦しいところもみごと語り切っていて、立派でした。たいしたもんだ。
その注進役が紋吉さんで意外な人来たなと驚いたね。でもかっこよかったです。
問題の入鹿の乗馬ですけども、初日はちょっとアレでしたが、二日目はビシっと決まってました。
でも3日目は ビ くらい。
そんなとこいちいちチェックすんなよというところですねすみません。

さあ、妹山背山の段です。
太宰館でのいきさつを胸に舞台は吉野川のほとり。「早かっし 定高殿!」です。気に入ってます、早かっし。
わたくし、求馬並みにくるくるよく回る頭で上手、下手、真ん中、と3パターンの席で聞いて参りましたのよおほほほほほ~

しかし、配役出たときはびっくりしましたよね。え??組み合わせ間違ってね?と思いましたもん。
千歳大判事、文字久久我之助、呂勢定高、咲甫雛鳥。
しかも藤蔵さんが背山というのも意外でした。
清介さんはピンクの肩衣がよくお似合い。
正直、やはり若いんですよね皆さん。当たり前ですけど。
だけどこの配役しか他に思いつかないし、きっと今のベストの布陣なんですしょうね。
舞台の上は、簑助雛鳥、和生定高、玉男大判事、勘十郎久我之助。こちらはもう間違いなし。
山の段の和生さん定高が思ったより柔らかく娘かわいの定高でしたね。呂勢さんの語りによってそう感じたのかな。
簑助雛鳥は何も言うことはありません。ただただ見惚れるだけです。ひとつひとつの仕草からほんとうにキラキラとしたなにかがこぼれるんですけどなんですかあれ、もしや妖精さんですか?
大判事も手に入ったもので頑ななまでの一徹武士ぶりでしたし、久我之助はキリッとした若武士だし、例のごとく自害してからえらい長いこと息があるんだけど誠に自然なのが不思議としか。

舞台中央の吉野川を挟んで描かれる「男」と「女」の対比が見事ですよね。
最初にこの演出を考えた人は天才だと思う。
色恋よりひたすら忠義を重んずる「男」と、好きな男に添うて尽くすことこそ喜びである「女」。
この時代ではそうした価値観こそを善しとしていたのでしょう、それを妹山背山で二分して対比する構図。
だから久我之助は権力に抗いつつ建前を守り通して死んでいく清らかさ頑なさが大事で、少しでも色気があったらそれはNO!なのだそうで。
そしてその価値観をもってすれば、わたし達からしたら一見鈍い頑固親爺に思える大判事などは立派な武士の手本であり、親であり、男。

そんな今どきちょっとイラっとするような価値観を、なんかわからんけど納得したような気にさせ、泣かせてくれるのだから、太夫の力というのがいかに大きいかということですよね。

妹山側、背山側と声柄がまさに女と男という組み合わせになっていました。
定高の最初の「でかしゃった」。ここは心底には別の思いのある部分。
ワシのようなすれっからしの観客はそれをわかった上で見てるので、
「ううっ・・・(涙)」
なんですけど。
それ以前に、川を挟んで雛鳥とやり取りする久我之助の
「命だにあるならば また逢うこともあるべきぞ」
で涙目なるおれがいて、年寄り涙もろすぎ。
そんなすれっからし部分を抜きにしてもこの「でかしゃった」は想いのこもったでかしゃっただと思いました。
 「けがらはしい玉の輿、何の母も嬉しかろ」
の本心吐露からはもう一気に母娘の情愛のかたまり。
定高が雛鳥の首に紅をさすところでは、文雀師匠のことを思い出して違う意味で涙がほろり。
できればもう一度文雀さんで拝見したかった。

対する背山でも
 「子の可愛うない者が凡、生有者に有ふか。
  余り健気な子に恥て、親が介錯してくれる」
から初めて「私」「父」になって息子への情愛を吐き出すわけです。
そっからはもう武家の建前も義理も一旦置いて、ひとりの父親の部分全開になるわけですから、
ここで泣かずいつ泣く!
なとこですよ。
ま、すれた客代表の私は今回号泣するほどには至りませんでしたけども。
それでも、見終わった後にはぐったりするくらい舞台に入り込んでいた2時間。
これから千秋楽に向けてますます完成度が高まっていくことと思われます。楽しみですね。

あ、そうだ。川ですけどね。
あれはどんどんどんという太鼓の音がなってる時は流すという決まりとかじゃないんですかね?
なんか今回ぐるぐる流れてる場面が少なかったように思うんだけど気のせいでしょうか。


【四段目】

杉酒屋から金殿まではここんとこ何度も観ておなじみのとこですので、まあね改めて言うこともあまりないんですが。勘十郎お三輪はなんていうか別次元、人のようですね。
袖も袂も喰ひ裂き、で、ほんとに切れ端口にくわえてる体でした。
このままいくとお三輪ちゃん、今に血が流れ出すようになるんじゃないか…

若手会でもまた四段目やるそうで、いったいどなたがお三輪ちゃんを、鱶七を?
今回のを見てしまった客の眼は肥えてますからねー たいへんだ。

あ、道行!
今回は「里の童」の3人が登場するんですよね。
和馬・玉路・勘介という師匠の芸を足遣いで担うホープ達ですね。
めっちゃかわいいから!孫という名の宝物~みたいだよ。
若かりし頃の和生さん、勘十郎さんが遣っている写真がどこかに載ってましたね。
この3人もいずれ師匠方のような未来のスターになっていくかもしれません。
し、ならないかもしれません。それは神のみぞ知る。
それから、道行を華麗に軽やかにこれぞ道行!たらしめたのは寛治師匠の三味線でした。
なんですかね、ほんと。あの音色。
簑助師匠しかり、みなさん妖精さんの域に入っておられるんでしょうか。

古の空気を今のわたしたちに伝えてくれるまさに宝です。

そんな宝の至芸と若手の奮闘ぶりと、一日中見ても飽きることのない筋の見事さ、均整の取れた美しさ。
よく聞いてると掛詞とかエロトーク満載で面白いし、ぜひ多くの人に見てほしい舞台であります。



2016年2月公演

2016-02-22 | 文楽
【第一部】

 靱猿

 信州川中島合戦
    輝虎配膳の段
    直江屋敷の段


【第二部】

 桜鍔恨鮫鞘
    鰻谷の段

  (八代豊竹嶋大夫引退披露狂言)
 関取千両幟
    猪名川内より相撲場の段

【第三部】

 義経千本桜
    渡海屋・大物浦の段
    道行初音旅




 【配役表】 



【第一部】

靭猿、簑次さんの猿に和んだ~ 
足がお行儀よかったからかな、猿というよりか子供みたいだったけどかわいらしかったデス

そして、越路!
和生さんの越路、カッコいいです。婆の中の婆ですね~
「この婆はこの年まで人の古着貰うて着た事がない。ノウ嫌や、忌々しい!」
とか捨て台詞の口の悪さよ。
このズケズケ、娘婿の直江も似たとこありますよね。
主人に向かって「短慮高慢」とか言ってのけるあたり。
そして直江屋敷を見て初めて、なぜ越路が「三婆」のひとりなのか合点がいきました。
勘介よりよほど策を練りに練ってるんじゃないですかね。
あと輝虎ね。玉也さんまたこんな横暴なエリマキトカゲ着た役か、と思ってましたけど、直江屋敷の最後には越路の覚悟の自害に元結を切り落として手向けるなどただの暴れん坊なだけじゃなかったのね、という。

この舞台、玉男・簑二郎、幸助・一輔それぞれが人物像を丁寧に表していたので、勘介・お勝夫婦と直江・唐衣夫婦の対比がくっきりと浮かび上がり、玉也輝虎ももちろんだけど、安定感たるや半端なかったですねー
なんか唯一色々と雑念なしに見られてほっとしたのがこの舞台でありました。


【第二部】

鰻谷は去年に続いて2度目、今回はお妻を勘十郎さんで。
簑助さんの時のお妻は八郎兵衛に斬られたあと袖に手を隠して片かいな斬り落とされた体でやってましたよね。
ろせさんの「こびっちょめ」と咲さんの「あつつ」はしっかりチェックした。
最後に弥兵衛の悪事の露見部分が割愛されたまま「四ツ橋さして 遁れ行く」で終わるんで、八郎兵衛がサイテーな短気の考えなしみたいなんよね。井戸で型決めてる場合か!って。
まあどっちにしろ娘の前で嫁を殺めるんだからとんだお父さんにはかわりないけども。


そして嶋大夫引退狂言である関取千両幟。
掛け合いで寛太郎さんの曲弾き付きという、引退狂言としては異例の演目で。
帯屋から久しぶりに出演されたと思ったらこの短時間の語りでは、ファンにはどうにも納得のいくものではなかったでしょう。
そもそも引退も含め、その前にどうにかなんとかならんかったのか。

私が嶋さんを一番最初に聞いたのはたしか巡業で熊谷陣屋が掛かっていた時じゃなかったかな。
まだ新宿で巡業やってましたよね。
正直、「このおじいちゃん、何言ってるか全然分かんない…」が第一印象でした(すみせんすみません!)
だけど誰にも増して緩急とメリハリが大きくて、気が付けば舞台の上の人形も平面からいきなり3Dで飛び出してきているように見えました。
重の井子別れとか帯屋とか宿屋とか封印切りとか、あと岡崎!岡崎は本当に嶋さんで聞かれてよかった。
あ、橋本もだ!
それからそれから、2014年の初春に聞いた新口村。ちょうど私の両親の死と時が重なってしまって、あの時の孫右衛門は心底胸にずしんと響き、一生忘れらないものとなりました。

この千秋楽も伺いましたが、まだまだ現役でいられるほどの余力を残しての引退はやはり残念ではあります。
ただただ、今までたくさんいい浄瑠璃を聞かせてもらってありがとうございました、という気持ちです。


【三部】

勘十郎さんが初役の知盛に挑戦、まさにチャレンジャーでしたね。
最後の入水の型が玉男さんとガラリと変えてきていて、おおー!と驚きました。
私は知盛(銀平)は玉男さんしか知らないししかも好きな役なので、どうしても比較して見てしまうんですが、勘十郎型は若々しくてキビッキビしてた。そして型の決まり方が気持ちよくてエッジが効いてるところはさすがとしか言いようがないですね~
幽霊の知盛の部分を睦さんが語られていましたが、うぉーー!と思いましたね。
錦糸さんが隣でめっちゃ怖い顔してて、わたしなら間違いなくお腹痛くなるとこです。
それをよくよくお稽古されたのでしょう、錦糸さんに引っ張られ抑えられしつつ勘十郎さんの知盛に負けないよう精一杯の語りをされていたように思えて、ちょと感動してしまいましたねー
それから、清十郎さんの典侍局。楽のメリヤスのなか帝の頭上に扇をかざして歩む姿はとても透き通っていて美しかったです。気高さというよりも優しさの勝った典侍の局に思えました。

最後は道行初音旅。
狐忠信を勘彌さん、静を文昇さん。
なんていうか、なかなか見られないものと見たというか
・・・・


というわけで。

なんだか2月公演が終わって疲れてしまいました。
怒ってる人、泣いてる人、ハイテンションな人、静かに悲しんでる人、
色んな人に当てられたみたいになるんで、もうこういうお別れの機会は当分なしでお願いしたいもんです。





2015年12月公演・鑑賞教室

2015-12-20 | 文楽
奥州安達原
    朱雀堤の段
    環の宮明御殿の段
        
  
紅葉狩



■鑑賞教室

 二人禿

 三十三間堂棟由来
     鷹狩の段
     平太郎住家より木遣り音頭の段


【配役表】


【鑑賞教室配役】




2015 錦秋文楽公演

2015-11-04 | 文楽

【錦秋文楽公演】

◆第1部 

 碁太平記白石噺
   田植の段
   浅草雷門の段
   新吉原揚屋の段

 桜鍔恨鮫鞘(さくらつばうらみのさめざや)
   鰻谷の段

 団子売


◆第2部

 玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)
   清水寺の段
   道春館の段
   神泉苑の段
   廊下の段
   訴訟の段
   祈りの段
   化粧殺生石


   【配役表】


久しぶりに大阪までいて参じました。今回は見た事ないところが多くそれを楽しみに。


【白石噺】

「田植の段」は初めて観ました。後におのぶちゃん達姉妹が敵討ちを誓うお父さん殺しの場面がやっと見られて、なるほどなーと。
なるほどなーとは思ったけど、殺す動機、ちっさ!とも思った。
それと、私が今までイメージしていたお父さんより年寄りだったのも驚きました。
「え。こんな(沼津の)平作だったの、お父さん…」
て。
百姓たちが桶からどぼどぼと茶碗に水を注いでいましたが、柄杓は使わないの柄杓!と相変わらずどうでもいいところにちまちました主婦目線がむいてしまうのでした。

「雷門」は津駒さん病気休演につき咲甫さんが代演。
咲甫・寛治ペアという誠にレアなことでありましたが、寛治師匠は寛治師匠、いつもながらに艶のある音色で情景と心情に寄り添う演奏でありました。
どじょうと観九郎のくだりは器用な咲甫さんらしく楽しく聞かせましたが、こういうところこそ津駒さんで聞いてみたかったという気持ち。どうか早いご本復をお祈りします。

「新吉原」でもですが、大抜擢・一輔さんのおのぶちゃん、かわいらしく丁寧に遣ってらして。
でも、ここは文雀・簑助という大師匠様のおのぶちゃんに見た無邪気さ、勝気さがもひとつ欲しいかなーと思いました。
というか、人形というよりも、語りか? 
嶋さんでしか聞いたことがないので、なんかえらい登場人物の平均年齢が上がってんなーという印象。
惣六さんも粋というよりもお父さんぽくて。オブラートに包みましたが、平たく言えばじじくさかった。
いけね。このいらん口が


【桜鍔恨鮫鞘】

ほんとこれ、悲惨な話で滅入りますね。娘お半が気の毒で気の毒で。そして
「言いたいことも得書かぬ 無筆は何の因果ぞや」
で無筆であったお妻の決死の覚悟にも心打たれるのでした。
咲さんの娘のかわいらしさがいつも意外というと怒られるでしょうけど、愛らしんでびっくりします。
短気な八郎兵衛より、最後に出てくる銀八の方が気持ちの大きい男前なのがまたなんとも。
そして、簑助師匠のお妻があんまり色っぽいので、なんだか弥兵衛に無理強いされて床を共にするというよりも、もっと深~~い大人の事情があるのでは、このお妻には!
みたいな妄想を掻き立てられてしまうのは、私だけではないはず。
後半の簑次さんのお半ちゃんも見たかったなー


【団子売】

初日・二日目はご出演の紋壽さんが休演となり、玉男杵造、勘十郎お臼というペアも拝見。
紋壽さんの辛そうなお姿と哀愁ボイスの三輪さんとが相まって、ご陽気なめでたさのない団子売を見てしまった…
そして玉男杵造の立派さよ。何を遣っても芯がしっかりブレない安定感で、あなた様、本当はお武家さまでは!?という杵造。
若い人たちはよーーく見ておくといいですよね。腰ですよ、腰。



【玉藻前曦袂】

「道春館」、よかったですー
玉男・金藤次、和生・萩の方、玉也・薄雲皇子の安定感。
そして千歳さんがフルスロットル!
金藤次が「父じゃわやい 父じゃわやい」て娘の首に口説くところでは思わずぐっと涙をこらえましたねー
そこで力使い果たしてか、そっから先苦しそうなのが辛いところでしたが、それでも今回の公演の中でわたしはここが一番聞くことに力が入りました。

そして、この後はすべて九尾の狐の妖力を見せつけるためにあるって感じ?
いくつもの段を経てたどり着いたラストの「殺生石」では、これでもかってくらいの勘十郎オンステージ!
うわーー、なにこれ、ええ!?
て勘十郎さんのこれでもかのテクを見てるうちに終わって、しまいには、
「え。これまで長々観てきた話の結末にこれ…??」
と、ぽかーん、で笑ってしまうという。

物語としては正直大して面白くはなかったけども(オイ)、目には楽しかったのでまあよしとしよう、というところかな

それに、今はこういう人形の面白さでお客さんを呼んで行かなくちゃいけない時期なのかなーという気もします。

嶋さんも引退を発表され、今後太夫陣のますますの奮闘が求められると思います。
もう誰も倒れてはならぬ。
そして、若い人たちには急いで欲しい。
他のことは取りあえず封印して、師匠方の芸を盗むことだけに時間をつかって欲しいです。
入門した時から、芸を受け継いで伝えていくという使命を背負ったわけですから、いらんことしてるヒマないと思うわー
と くそばばあ節が炸裂したところで、今回の三泊四日文楽強化合宿日誌を終わります。