気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Housemaid by Freida McFadden

2023-03-05 12:51:14 | 読書感想

刑務所を出所した元犯罪者に対して世間はきびしい。10年の服役後、社会に復帰した私は懸命に就職活動をするが、面接後の身元調査で犯罪歴が明らかにされて不採用を告げられる日々が続いている。ここ一か月は、家賃を支払うことができず、家を追い出され、おんぼろ車が我が家になっている。
そして今、私はシャンデリアの吊り下げられた部屋で、豪勢な皮のソファーに座り、家政婦募集の広告をネットに出したこの豪邸の主婦Nina Winchesterとの面接に臨んでいる。
このような豪邸に住む主婦が、私の身元調査をしないはずがない。私は採用される可能性は殆ど無いと思いながらも、注意深く作り上げた家政婦経験が豊富である偽の経歴書を示しながら掃除も料理も得意であることや子供好きであることをアピールする。私は足を折り曲げて眠る車の座席から解放されて、ゆったりと足を伸ばして眠るベッドが欲しい。そして車にはないトイレも。もちろん、三食の食事。私のすべての欲求を満たす、この仕事を私は何としてでも欲しい。私は必死に雇ってくれるよう訴える。
面接のあと何の連絡もないまま1週間が過ぎ、私は私の身元調査が行われ、不採用になったと判断して次の就職活動を始める。そんなとき彼女から採用の知らせが来る。彼女のような大金持が私の身元調査を行わないのか不審に思いながらも、ありがたく私はその仕事を受ける。
勤め始めた私はNinaの気分の移り変わりの異様さに気づく。ある時は私を抱きしめて私の仕事ぶりを褒めてくれたかと思うと、次の瞬間、やるように言われた仕事をしていないと突然怒りだす。私が言われていないと反論すると絶対に言ったと断言して解雇すると脅す。また車で寝泊まりする生活に戻るのは嫌なので私は謝りじっと耐える。そんな中、彼女の気まぐれに翻弄される私に気遣いを見せてくれる夫のAndrewに、私は好意を感じ始める…彼女に知られたらこの仕事を失うことになるので絶対に恋してはいけないと自戒しながら。

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プロットが初めて見る構成の仕方でよくできている。思わず、えっと言ってしまうほどの予想もしなかった展開で、先が気になって一気に終わりまで読ませてしまう。

物語は、いきなり殺人の罪で刑事に逮捕されそうだというモノローグで始まる。そして3ヶ月前に物語は遡る。どこかで冒頭の事件が起きるという結果が見えているので、ヒロインの頑張りや心情に共感度が増していくにつれ、先を読むのをやめたくなる気持ちとこれだけの仕打ちを受ければ起きるべくして起こった事だと思いながら、どこでヒロインの怒りが爆発するのかドキドキしながら読んでいった。

kindle読み放題で読めるので会員の方なら絶対にお勧めします。面白いです。

Kindle版 ★★★★★ 325ページ 2022年出版


英国ミステリー豆知識2

2023-02-12 08:35:36 | ミステリー雑学

Crimestoppers

クライムストッパーは、人々が犯罪活動に関する匿名の情報を提供するのに役立つコミュニティプログラムです。多くの場合、非営利団体や警察によって管理されており、緊急電話番号システムやその他の標準的な警察への連絡方法とは別に運営されています。これにより、人は調査プロセスに直接関与することなく、当局に犯罪解決支援を提供することができます

 

GCSE (General Certificate of Secondary Education)

イングランド、ウェールズ[1]、北アイルランドで運用されている学位認定制度である。日本語では文部科学省が中等教育修了一般資格という訳語を充てている

Wiltshire

ウィルトシャーは、イングランド南西部の典礼カウンティであり、ウィルトシャー州とも呼ばれる。また同時に、ウィルトシャーは、この典礼カウンティの大部分を占める単一自治体の名称でもある。コッツウォルズ地方の一部であり、ストーンヘンジや、多数の丘に点在するホワイトホースで知られる

High Commission

イギリス連邦における高等弁務官(こうとうべんむかん、英語: High Commissioner)は、イギリス連邦加盟国間で交換される在外公館の長たる上級外交官で、一般にいう特命全権大使に相当する。イギリス連邦では、加盟国の在外公館は大使館(Embassy)ではなく高等弁務官事務所(スペイン語版)(High Commission)と呼ぶ。

 


英国ミステリー 豆知識1

2023-02-12 08:31:43 | ミステリー雑学

ウィキペディアより引用

Family Liaison officer(FLO)

英国の家族連絡係は、警察と犯罪の犠牲になった家族との間の連絡を提供するために訓練された、制服を着た、または犯罪捜査局の警察官です。すべての領土警察には、訓練を受けたFLOのプールがあります。 FLOは、上級調査官によって家族に割り当てられます。

Home-Start

未就学児(5歳以下)のいるご家庭に、子育て経験のあるボランティアが訪問するイギリス発祥の「家庭訪問型子育て支援」

bank holiday

バンク・ホリデー (bank holiday) は、イギリスおよび王室属領における公休日。この用語で言及される対象は、法律や、国王の宣言 (Proclamation)、ないしコモン・ローの下での慣習により定められたすべてのイギリスのイギリスの祝日(英語版)である。この表現は、口語的表現としては、アイルランド共和国の祝日(英語版)についても用いられることがある。

 バンク・ホリデーという呼称は、多くの金融機関がこうした休日に休業することを踏まえたものである。名称は、1871年銀行休日法(英語版)に由来しており、元々は金融機関の一斉休業日であったが、この日には金融取引ができないため、他業種や学校なども休みになることが多くなり、公休日同然となったとされる

Child Rescue Alert(CRA)

英国は、アメリカのアンバーアラートに似たチャイルドレスキューアラートを開発しました。このシステムは、誘拐の疑いのある地域で、ラジオやテレビの放送がすぐに中断され(場合によってはスピーチの途中でも)、リスナー/視聴者に注意すべき詳細が提供される方法で機能します。一部の郡には、主要道路のドライバーに行方不明者や道路上の車に注意するように警告する可変メッセージ標識が含まれています


Last seen by Joy Kluver

2023-02-11 12:23:13 | 読書感想

イングランドの南西部Wiltshire州 Otterfieldという小さな町で、公園で遊んでいた5歳の娘Molly Reynoldsが誘拐される。

Wiltshire PoliceのDetective Inspector Bernie Noelはこの事件の捜査指揮を担当する。6か月前にロンドンから転任してきた彼女にとってDIに昇進して初めての重大事件。Bernieは、自分がDIとしてふさわしいと認めさせるためにも少女を救出、最悪でも犯人を逮捕しようと意気込んで捜査を指揮していく。 現場に到着したBernieは、5歳の少女がいなくなったという事態にも関わらず、少女の身を案じて捜索に協力しようという近所の人々が誰もいないことに違和感を抱く。Bernieは公園で少女が来ていたフリースを発見、また少女を連れ去ったと思われる車の車種を特定してマスコミを通じて情報提供を呼び掛ける。しかし、有力な手掛かりを得ることができずに、誘拐された子供が無事に生還できる目安と言われる72時間が経過してしまう。捜査に進展がないことに、警察署長は彼女の上司を通して、事件から1週間過ぎても事件を解決できない場合、事件の担当から彼女を外すと通告する。

マスコミも注目するような重大事件についての経験がない彼女の捜査能力について疑問視された彼女は、今までの捜査指揮に誤りがないか捜査資料を再チェックする。そして、彼女は捜査手順に重大な手抜かりがあったことに気づく。そして、彼女は25年前にも5歳の少女の誘拐事件がこの地域で起こり未解決であることを発見する。同じ地域でおきた少女誘拐事件と今回の事件とつながりがあるのか調べ始めた彼女は、誘拐されたMolly一家は、彼女に語っていない秘密を保持していることを突き止める。さらに深く捜査をすすめる彼女の前に 有力な容疑者と思われる人物が浮かび上がってくる。 事件担当から更迭される期限が迫る中、少女を救出するため、彼女は犯人に対して一か八かの賭けに出る。

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進まぬ捜査に自分の捜査指揮が誤っているのではと落ち込んではなんとか立ち直り奮闘する彼女。捜査主任としての彼女の捜査能力を疑い、勝手に捜査を行う部下の刑事や、自分の許可なしに捜査情報をマスコミに流すマスコミ担当の女性の扱いに悩む。さらに署長から経験不足を指摘されて捜査から外される可能性を告げられる。部下や上司に役不足を指摘されて窮地に追い込まれていく様子にドキドキしていたが、終盤には自信をもって捜査を指揮していく成長ぶりが見られて面白く読めた。 ただ、ストーリーから思い浮かべていたキャラクターのイメージと証人によって語られるキャラクターのイメージのギャップがすごくて戸惑ったり、プロットの展開に不満な点もあるがヒロインの頑張りには好感が持てた。

E-book(Kindle版)★★★★ 358ページ 2021年出版


Lost Little Girl by Gregory Stout

2023-01-22 08:37:44 | 読書感想

2022年 PWA Best First PI Novel

私、Jackson Gamble はテネシー州ナッシュビルの私立探偵。

このところ仕事がなく、壁のポスターを見ながら日がな一日依頼人が現れるのを待っている。

ある日、長めの昼飯休憩を取った後、事務所に戻ると聖書を熱心に読んでいる女性が私を待っていた。女性はDelsey Hawkinsと名乗り、14歳の娘、Gabrielleが誘拐されたと話す。警察にも届けたが、誘拐ではなく10代によくある家出だと考えて警察は捜査に消極的である。彼女は自分は敬虔なクリスチャンであり、娘の子育てに自信を持っており、クリスチャンとして厳格に育てた娘が家出するはずがないと断言する。そして娘は誘拐されたと主張して、私に彼女を探し出し連れ戻すよう依頼する。

調査を始めた私は、彼女の親友や彼女が通う学校の生活指導教師から彼女の両親が狂信的キリスト教主義者であることを知る。

父親は、神に対する忠誠を判断するのに毒蛇を使うという狂信的なクリスチャンの牧師で、妻のDelseyも彼の教えを盲目的に信じている。彼は身の回りに起こることは全て全能の神の思し召しであるとして、娘の失踪も神の遠大な計画であり神に対する絶対的な忠誠を見せることで娘は戻ってくると信じている。そして娘の失踪を警察に届けることを妻に禁じる。私は、そんな両親に嫌気を感じたGabrielleが家出したことを確信する。

調査を始めた私は、彼女の親友や彼女の部屋の捜索で得た手がかりから、彼女の失踪の背後にSEX目的の人身売買組織、違法な少女ポルノビデオ業者などの存在を危惧し始める。初めて夫や神の教えにも背いて、娘の身を案じて、私に調査を依頼してきたDelseyのためにも、多くの家出少女がたどるようにGabrielleがドラッグ中毒や売春などで家出した時とは違う変わり果てた少女になっていないことを祈りながら、私は娘を母親の元に帰すため大都市に潜む暗黒に入り込んでいく。

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一人称で進む物語は主人公に同調しやすくて良い。

彼の調査の方法も腑に落ちる。まず、最近の彼女の様子が以前と違っていないか?不審な電話の有無などを母親に聴く。次に親友や教師に会い、最近の彼女の様子を聴き、彼女の部屋を捜索するなど、少女が失踪した時、どのように調査に着手していくのか、実在の探偵が実施していると思える方法で進めていくので同調しやすい。

彼のキャラクターも良かった。人に対して誠実に対応する性格。尋問の仕方がうまく、自分の必要とする情報をうまく引き出す技術。また強面の用心棒が控えていても、怯むことなく自分の要求を突きつけるタフな面。ただ、タフな面が出過ぎて僕の理想とする探偵像からは、少しかけ離れているところが残念だった。

純粋無垢に神の教えを信じているDelseyの生き方が印象に残った。娘も自分のように信心深い子に育てたら娘は幸せであると信じてきた母親の悲哀を感じる。娘の失踪に直面して、最終的には、神や夫の説教よりも娘への愛を優先した決断、でも、もっと早い段階で娘の気持ちを察して決断していたら信仰心というのはなかなか切り捨てられないものだなぁと感じた。

Kindle版 ★★★★ 272ページ 2021年10月


A Minute to Midnight (Atlee Pine #2) by David Baldacci

2021-11-27 09:32:13 | 読書感想

アメリカ、グランドキャニオンに近い町 アリゾナ州Shattered RockのFBI捜査官事務所のただ一人の捜査官Atlee Pineは6歳の時、就寝中、窓から忍び込んできた男に双子の姉Mercyを誘拐される事件に会う。

30年後、消息不明の姉の行方を捜索するためFBI 捜査官になったAtlee Pineは、Mercyが拉致された当時、自宅のあったジョージア州で立て続けに4人を拉致殺害し、終身刑で服役中の男が犯人であると確信していた。彼女はたびたび刑務所に男を訪ね、Mercyの行方について追及するが明確な答えを得られずにいた。刑務所からの帰途、彼女はAmber Alert(誘拐事件発生速報)で手配された逃走中の男を発見する。無駄足になったことに苛立っていた彼女は男を逮捕する際必要以上の暴力を男に振るってしまう。上司からの停職処分を覚悟していた彼女に上司は休暇を取るよう命令、暗にMercyの問題に決着をつけるよう提案する。

Pineはアシスタントの女性Carol Blumを伴い、30年ぶりに事件が起こった町ジョージア州Andersonvilleに戻る。南北戦争ゆかりの地として知られる町は、数日後に控える記念イベントを観に来る観光客で賑わっていた。

彼女は保安官事務所を訪ね当時の捜査資料を手に入れる。警察は犯人は窓から侵入してきたという彼女の証言を無視して、父親の犯行を疑っていたが、確たる証拠を得られないまま事件は未解決となって処理されていた。

30年ぶりに自宅に戻り、惨劇が起こった部屋に立ち当時の記憶を思い出そうとしていたPineは、自分の記憶に誤りがある可能性に気づく。さらに、事件当時、両親の知り合いだったという人々から与えられた両親についての情報が、自分が両親から話されていた情報と全く異なっていることに、彼女は呆然とする。彼女は彼女に隠していた両親の秘密がMercyの誘拐に関係していると考え捜査を進めていく。

そんな中、Pineは女性が殺害されている現場に遭遇する。犯人は被害者にウェディングベールを被せ、指に結婚指輪を嵌めておくなど異常な行動をとっていた。彼女は担当する刑事に連続殺人の可能性を指摘する。人口が千人に満たない町で、殺人捜査に不慣れな刑事は彼女に捜査協力を依頼する。彼女は自分の家族に起きた事件を捜査しながら殺人事件の捜査もしていくことになる。

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面白かった。このシリーズの続きを絶対に読みたいと思うほど…単なる少女誘拐事件だと思っていたら、Baldacciの作品らしく彼女の両親にはとんでもない秘密があることがわかる。

彼女が信じ、思い込んでいた事実が次々と覆されて真実が明らかになっていく。どういう結果に行き着くのかワクワクさせてくれる展開だった。

そして彼女の抜群の捜査能力。今まで真実と思い込んでいた事実が間違っていたと気づき、考え直した仮説は両親の犯行の可能性を否定できないという難問に出会う。だが、事件当日の調書や関係者からの聴き込みからその難問を解いていく推理力は論理的で明快で心地良い。

ただ同時に起きた連続殺人については犯人の動機に無理があるように思えて話しについていけなかった。

エピローグは心をしんみりほんわかさせてくれる。

E-book(Kindle版)★★★★ 420ページ 2019年出版


The Missing American by Kwei Quartey

2021-11-13 09:54:50 | 読書感想

2021 PWA BEST First PI Novel , 2021 Nominee for MWA Best Novel 

数十年前、アメリカ人のGordon Tilsonは海外協力隊員としてガーナに派遣されるがその風土や生活ぶりが好きになる。任務が終了してアメリカに帰国する時、彼は現地で知り合ったガーナ人の女性と結婚する。13年前にその妻に先立たれた彼は、妻や夫に先立たれた人々向けの交流サイトをネットに立ち上げる。彼はそこで知り合った若いガーナ人の女性とネットを通して頻繁に交流、好意以上のものを女性に持ち始める。そんな時、その女性から妹が交通事故で大怪我をしたが手術費用を支払えないので手術ができないと知らされ、彼は数千ドルを彼女に送る。それを知った息子Derekがネット詐欺ではないかと忠告するが、彼はSNSのやりとりばかりでなくSkypeなどで直接顔を見ながら話しているので詐欺ではないと断言する。そして恋心が止められなくなった彼は、彼女に会いに行くことを決心しガーナに向かう。

数ヶ月後、ガーナにある探偵事務所をDerekが訪れ、失踪した父親の行方を探して欲しいと依頼する。彼は、ガーナにやって来た父親はネット詐欺にあったのに気づいたこと、父親は友人のジャーナリストの依頼によってしばらくガーナに滞在して詐欺グループを突き止めようとしていたこと、その間、息子の彼にはメールで近況を知らせていたが数ヶ月前から連絡が途絶えたことを話す。

上司によるセクハラを拒否したため、警察を首になリ探偵事務所に雇われたEmma Djanは初仕事として、この調査を担当する。彼女はDerek から、警察はアメリカ人の行方の捜査に積極的でなく非協力だと伝えられる。彼女は警察に頼ることはできないと考え、メールをやりとりしていたDerekからの情報をもとに単独でGordonが出会った人々を訪ねて彼の行方の手がかりを探そうとする。それは彼女もGordonと同じ運命をたどる危険性を秘めているのだが…

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ガーナという馴染みのない国の事件で地名や人名が読みづらく戸惑ってしまった。裕福な生活をするにはネット詐欺で欧米の白人から金を騙し取るしか方法がない貧困な国の若者の実態。そして、かって彼等の同胞を奴隷として使っていた白人への犯行に罪悪感を持っていない若者達。犯罪を行なっている若者達から目こぼしとして金銭を受け取っている警察官僚。詐欺グループに絶対的に信奉されているFetish Priestという牧師というよりは呪術師のような存在。正直、あまり行ってみたい国とは思えなかった。

Fetish Priest ⇒ガーナ、トーゴ、ベニン、その他の西アフリカの国々では、フェティッシュプリーストは霊と生活の間の仲介役を務める人物です。フェチ僧侶は通常、フェチ神社と呼ばれる囲まれた場所に住み、神々を崇拝します。フェチ神社は、その周りにある種の囲いや柵がある単純な泥小屋です。(ウィキペディアからの引用)

章ごとに目まぐるしくキャラクターが入れ替わるのでEmmaが主役という印象は薄く、またそのキャラクターの多さに読む側も混乱する。事件解明もEmmaが進めるというより各章ごとに現れるそれぞれのキャラクターの心情や行動によって明らかになっていく。警察を首になり、探偵として再出発したEmmaが活躍して事件を解明していくという展開を期待していた僕には物足りない展開だった。小説というよりはむしろテレビドラマのほうが向いているストーリーだと思う。

E-book(Kindle版)★★★ 422ページ 


Brittle Karma by Richard Helms

2021-10-23 11:04:49 | 読書感想

2021 PWA Best PI Paperback Original 

30年前、カリフォルニア州Sacramentoで現金輸送車が襲われ、犯行に加わった5人のうち4人が捕まり、運転手役のEddie Riceだけが2千万ドルの現金と共に逃走する。捕まった男たちは釈放されたとき奪った現金の分け前を受け取ることを期待してEddieのことを警察には話さなかった。30年後、犯人のうちの唯一の生き残りAbner Carlisleが釈放され、San Franciscoの私立探偵のEamon GoldにEddie Riceを探してほしいと依頼に来る。Eddie はCarlisleが拘留されてから5年間は刑務所に面会に来ていたが、その後消息を絶っていた。あろうことか、彼の娘Lydiaを道連れにして。

GoldはAbner Carlisleが彼が行方を突き止めた場合、Eddie を殺すつもりであることを察し、殺人に関与することを嫌い依頼を断る。数日後、Goldのもとに刑事がやって来てAbner Carlisleが殺されたことを彼は知る。Goldは殺人事件には興味がなかったが強奪された2000万ドルの行方には興味を持つ。2000万ドルを賠償した保険会社に連絡した彼は強奪金を取り戻した場合、10パーセントの報奨金が与えられると知り、強奪金の行方を突き止めることを決心する。それは25年前に遡って、Eddie とLydiaの交友関係を調べ現在の彼らの居場所を探るとてつもなく実現の可能性の低いものと思われた。

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このストーリーの魅力はEamon Goldの独特の個性だと思う。詐欺に会っている女性を張り込みを放棄してでも助けたり、ギャングのボスの護衛をしている男を真っ当な仕事につくよう勧めたり、身に危険が及びそうな時も咄嗟の機転で上手く乗り切る、現金強奪事件で現金が回収されてないと知ると保険会社に連絡して回収した時の報酬を約束させる。強奪金やLydia の行方をしゃかりきに追うのではなく、調査の合間には恋人と過ごしたり趣味の楽器作りに励んだり、法廷に出廷しない釈放犯を捕まえる時に油断して負傷した足について、どうしたのか訊かれるたびにホラで返す話術のうまさ、人生を飄々と生きている感じがして心地良い。

ストーリーもミステリーというより、25年前、両親との確執からパーソナル障害になったLydiaを中心としたアメリカンドリームを夢見て旅立とうとしていた若者達が、夢破れた現在の自分と比べて、当時を顧みる青春群像のストーリーに思えた。ストーリーの展開もゆったりしていて本格ミステリーのようなハラハラドキドキ感はなかったけど読み終わった後、ほのぼのした気持ちにさせてくれる。

E-book(Kindle版)★★★ 199ページ 2020年出版 Umlimited対象


The Good Detective by John McMahon

2021-10-02 09:49:44 | 読書感想

2020 MWA Best  first novel nominate

俺の名前はP.T.Marsh  36歳、Georgia州のMason. Fallsという町の刑事だ。自分で言うのもなんだが、この警察署でナンバーワンの敏腕刑事と云われていた…一年前までは。一年前、俺は自動車事故で最愛の妻と息子を亡くした。以来、俺は酒浸りの生活を送るようになり、同僚の刑事達からぞんざいな捜査をする刑事と云われるようになっていた。

クリスマスの飾りが見られるようになった日曜日、何時ものように俺は、妻と息子を失った事故現場近くのストリップバーの前に車を止め、車が故障したという妻からの救助要請を、捜査を優先して断ったことへの後悔を酒で忘れようとしていた。深夜、悪夢にうなされて目覚めた俺はバーで働くストリッパーとの約束を思い出す。女は同棲する男から繰り返される暴力被害を訴える。俺は2度と彼女に暴力を振るわないように男と話をつけてやると約束する。酔って朦朧としていたが、約束を実行するため俺は男の家に行き、テーブルの上に置かれた麻薬を見ながら警察だと名乗り、顔面に鼻血が飛び出るほどの強烈なパンチを浴びせ、二度と女に暴力を振るわないことを男に誓わせる。

翌朝、相棒で新人の黒人女性Remy Morganからの電話で殺人事件が発生したことを知り、俺はRemyと共に現場に向かう。殺されている被害者を見て、俺は呆然とする。被害者は昨日、いや数時間前、俺が女に暴力を振るうなと警告した男だった。俺は男を殴って脅したが殺してはいない、警告してすぐに男の家を去ったはずだが、断言できるほどの記憶がない。今朝起きた時、俺が男と会った時に着ていた上着が無くなっている。男の死亡推定時刻が俺が男と会っていた時刻に一致する、もしかして俺が殺したのでは…と俺を不安にさせる。

顔馴染みの鑑識の仕事を見ながら、俺が昨日残した指紋を検出されたら、俺が第1容疑者になってしまうと俺は焦る。内心の動揺を隠しながら家の中を捜索していた俺たちは多量の空のガソリン缶を見つける。Remy は昨日起きた放火事件と男の関連性を主張し、俺達は放火現場に向かい、そこで縛り首にされた上に火刑にされた黒人少年の遺体を発見する。殺された男は白人至上主義を標榜するタトーを腕にしていた。男が少年をリンチ刑にした可能性は高い。殺された少年はその日の友達の家に泊まる予定が突然キャンセルになり、家に帰る途中を拉致された。少年の予定外の行動を男に知らせる仲間がいなければならない。暴力的で麻薬取引をしている男が警察に捕まることを恐れ、白人至上主義の仲間が男を殺した。少年の予定外の行動を知っていた人物は誰か?俺は、俺の無実を立証するためにも、少年の両親、少年の友達などに聴き込みをして男を殺した犯人を突き止めていこうとする。

そんな中、少年の母親をはじめ黒人の一部が白人の俺が事件を捜査すれば、いい加減な捜査で犯人を見逃すのではと騒ぎ始める。

彼等がどう思おうと、俺は犯罪を犯した奴にはそれに相応しい裁きを与える、決してそのまま逃がさない、必ず捕まえてその犯罪に相応しい裁きを与える刑事Good Detectiveであり続けることを決意する。

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犯人の犯行動機などは解明されているのだけどプロットの中に提示された謎が未解決のままで終わっているものがあるので、読んだ後のスッキリ感が物足りなかった。

最愛の妻と息子を事故で亡くした衝撃から立ち直れずにいた男が自分の心の支えとなっているものが何かに気づき、立ち直っていく様子は読み終わった後にほっこりした気持ちになって良かった。

主人公は、俺には失うものなど何もないと居直り、酒浸りの生活を送っている態度から、上司や同僚の刑事達にもぞんざいな態度を取り、一匹狼的な捜査をしていくのかと思っていたが、捜査主任として上司には捜査状況をまめに報告し、パートナーの新人刑事と情報を共有して一緒に聴き込みに行ったりする、そして聞き込み先では丁寧な言葉遣いで対応する。捜査の手がかりが途切れた時は、やり残している証人への聴き込みや証拠品がないかどうか考える。気になったことがあれば 納得いくまで捜査を続け、いい加減な妥協はしない。真面目な(?)仕事ぶりはいい意味で予想外だった。また読んでみたくなる魅力的なキャラクターだった。

E-book(Kindle版)★★★★ 309ページ 2019年出版 277円(2021/10/2現在)

 


目次

2021-08-24 11:07:01 | 目次

最近読んだ本









 
 書名索引冒頭のTheは省略


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PWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)Shamus Award




MWA受賞、候補作品