元細胞生物研究者の日記

某病院に勤務する医師です。以前は細胞やマウスを相手に仕事をしていましたが、現在は医療に携わっています。

費用の概算

2010-06-25 | Weblog
新宿Kホテル
574万円。
会場費のみ、機材、看板、招宴会費用、懇親会費用、付帯備品費、お弁当代などの諸費用は別。
恐ろしい。
絶対ダメです。不可能です。

ジェネリック医薬品について

2007-11-21 | Weblog
最近、テレビや新聞で「ジェネリック医薬品」という言葉を聞かれることが多いと思います。ジェネリックとは開発特許が切れた医薬品を他のメーカーがその特許を利用して製造した「後発」の医薬品です。以前はゾロ品などと、やや蔑まれるような名称で呼ばれていました。

テレビコマーシャルでこの言葉が頻回に聞かれるようになった理由は簡単です。安いからです。新薬の開発は自動車メーカーの新車開発と同じように、長い年月と膨大な開発費がかかるとてもリスキーな事業です。しかし、ジェネリックを製造する製薬会社は、そのリスクを負担する必要でがないのですから、安く薬を提供できる訳です。

平成17年度の国民医療費は33兆1289億円、国民1人あたり25万9300円もかかっており、借金だらけの日本国政府はなんとか医療費を抑制しようと必死になっているのです。赤ちゃんからお年寄りまで、1人約26万円も医療に支払っているのですから、たしかに多額のお金が支払われています。この費用が本当に高いかどうかは、またいずれこのブログに書こうと思いますが、ちなみに日本と比較して「素晴らしい医療」とされるアメリカの医療費と比べると、GDP比に占める割合は約半分です。さらに、医療費をぎりぎりまで抑制したため、病院の外来予約期間(申し込んでから受診できるまで)が3ヶ月になっているイギリスと比べてもGDP比に占める割合は日本の方が低い状況です。

さて、確かに同じ質なら安い方がいいに決まっています。全く同じ薬効で同じ安全性であるなら、安い医薬品を使用することで医療費を抑制することが出来ます。しかし、ジェネリック医薬品の問題点は、この大切な薬効と安全性が担保されているかどうかが怪しいことです。ジェネリックは決して新しい物ではなく、以前はゾロ品とよばれ、少し胡散臭い名も知らない製薬会社が作っていることが多く、医師の間でもあまりイメージが良くありませんでした。さすがに、今は状況が改善されていますが、現在でも私たち皮膚科医が実際に使用してみると効果が劣り、症状をコントロールできない製品もあり、論文として発表されている場合もあります。

乾癬という慢性の皮膚疾患がありますが、軟膏の外用で症状がコントロールできない場合は免疫抑制剤を使用することがあります。この薬品にもジェネリックがいくつかありますが、先発品に比べ症状をコントロールするので難しいことは皮膚科医の間で常識となっています。ジェネリックが全く効果がない訳ではなく、患者さんの体質により、薬の吸収に個人差があり、その為に症状がコントロールできないことがあるのです。先発品はこのことを改善する為に、錠剤に工夫し、薬の吸収の個人差を少なくするようにしています。しかし、薬の中身の特許は切れても、この製剤をつくる特許はまだ有効な為、先発品と全く同じ薬効があるジェネリックはまだ作ることができません。

現在行われている、厚生労働省のジェネリックに対する啓蒙方法を見ていると、ジェネリックのリスクを全く説明していません。おそらく、ジェネリックによって発生したトラブルは、医師や患者の責任に転嫁するつもりなのでしょう。しかし、このような政府の態度が、現在も騒がれている血液製剤によるC型肝炎感染の問題を引き起こしたのだと思います。ジェネリックにも、今後同じような問題が発生する可能性があるのではないかと、私は危惧しています。


学と術と道

2007-07-23 | Weblog
阿部正和先生は元慈恵会医科大学の学長です。
糖尿病をご専門とし、基礎医学者から一転して内科教授に就任され、栄光の第3内科を築かれた偉大な内科医です。
阿部先生がお書きになられた随筆をまとめた「学と術と道」は私の蔵書のなかで最も大切な本の一つです。
私は学生時代図書館で偶然この本に出会い、将来は阿部先生のような立派な内科医になることを夢見ました。
暇をみつけては図書館でこの本を読み、医師の職業の厳しさ、やりがい、心得などを学びました。
そしていつか、この本を手に入れたいと思いましたが、私と慈恵医大との接点はまったくなく、
医師になってからは日々の仕事に追われ、この本のことはいつの間には忘れてしまいました。

初めての出会いから15年以上経ったある日、偶然インターネットでこの本を検索したところ、
この本が古本屋で買えることが分かり、いてもたってもいられず、早速購入しました。
最初のページでは15年前と同様に阿部教授が微笑みかけていました。
内容もすばらしく、全く古さを感じさせず、学生時代と同じ気持ちでこの本に接することができました。
阿部先生はスローガンを作るのがとてもお上手で、医師の心得として大切な事柄が短い言葉の中に凝集され、本の中にたくさん書かれています。
本のタイトルである「学と術と道」とは、臨床医学は学(学問)、術(技術)、道(職業倫理:私の解釈で誤っているかもしれません)の全てが揃ってはじめて成り立つということを示しています。

ばたばたと慌ただしく過ぎ去った一日をふりかえり、今日の私の診療は学問的にな裏打ちはしっかりあっただろうか、手術の手順、方法は適切だっただろうか、患者さんの利益を第一に考え、患者さんの気持ちに配慮した診察だったろうか?などと、自問自答すると、冷や汗が出る毎日です。
しかし、一日の終わりにこの本を手に取ると、
阿部先生が笑顔で
「君はまだまだ未熟だが、少しずつでも進歩するように精進しなさい。」
と励ましてくれているような気がして,明日の診療に真摯に取り組もうとする気持ちが湧いてきます。




テンプレートの変更

2007-07-22 | Weblog
久しぶりにテンプレートの変更をしました。
最終のアップデートから1年近くたってしまいましたが、いまだに読んで頂いている方がいらっしゃるようです。
ありがとうございます。
今後も暇を見つけて思ったこと、考えたことなどを書きたいと思います。
現在は少し立場も変わりました。医局長という医局の雑用の総まとめみたいな役職を担っています。
そのような”目”からみた、医局とはどのようなものなのかも、少しずつ書いていきたいと思っております。


臨床研修制度その2

2006-08-19 | Weblog
前回は臨床研修制度の問題点を指摘しました。今回はでは、どうしたら良いか?、私の意見を述べようと思います。
まず、体中の全ての臓器を治療できる医師を育成することはできないのだから、いまのようなローテーションはやめるべきだと思います。以前のように卒業時に専門分野を決め、その専門の勉強をすぐに始めるべきです。そして、専門分野の勉強が一段落する3-5年ほど経過した後、興味のある分野を研修するようにすればいいと思います。例えば、私は皮膚科医ですので手術を勉強するために形成外科で研修したり、膠原病をもっと深く学ぶために膠原病内科で研修したり、などです。
医師の仕事は専門分野でかなり異なることも事実ですが、その一方で患者様への接し方、看護師さんをはじめとする医療従事者の方々との仕事の進め方、他の科の先生方への診察依頼の方法など、基本となる仕事の仕方は同じです。そのような医師としての”基本”を身につけ、さらに自分の専門分野にある程度責任を持てるキャリアをつんだ後、自分の興味がある分野を学ぶことにすれば効率よく研修できます。さらに受け入れる方にも別の分野の知識がもたらされ、受け入れ側にもメリットが生まれます。実際にこのような研修制度をもつ皮膚科もあると聞いたことがありますが例外的です。もし、このような制度ができれば医師本人のキャリアアップになり、それが患者様へ提供する医療技術の進歩につながると思います。

私の働いている病院にも卒業したての臨床研修医が勉強をしています。朝から晩まで患者様への処方をしたり、検査結果をまとめたりしています。あまり良い言い方ではありませんが、このような仕事は”雑用”と呼ばれています。テニス部で言えば”球拾い”です。医師には”雑用”をしっかりこなせる能力が必要不可欠ですが、もちろんそれだけではダメです。私の科には研修医はいませんので、実際はどうか分かりませんが、短いローテーションの間にどれだけの専門分野の知識を先輩医師から学べているのでしょうか?臨床研修の2年間で様々な専門科の”球拾い”を学んだだけにならないか、私は危惧しています。