麻の道の復活ー産業用大麻による地域活性化

古来から長い麻の伝統を持つ日本で、麻製品を運んだ街道を発掘し、環境資源麻の古き良き文化を次世代へ伝えてゆきます。

産業用ヘンプが解禁!日本のゆくえ。

2005-02-20 18:00:15 | 産業用ヘンプレポート
産業用ヘンプが解禁!1998年のカナダでの出来事です。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが産業用ヘンプというのは、薬理成分であるTHCが0.3%以下の品種で摂取しても薬理効果はありません。カナダ保健省が認めたいくつかの品種のことで、種を食用に、茎を繊維用に栽培しています。カナダでは保健省が認めた品種に限り一定条件をクリアした上で栽培申請をすれば、簡単に免許を交付し栽培をすることが出来ます。ヘンプ農家やヘンプ会社の起業がさかんに行われているのです。一方、日本の厚生労働省はこの薬理成分のほとんど無い産業用ヘンプの存在さえも認めていないような状況で、どんな種類であろうとひとくくりに取り締まっています。今後の日本では、地域活性や新規産業の育成の観点からも、ある一定の基準を満たしていたら簡単に産業用ヘンプの栽培免許を交付するように法律を改正する必要があります。そのときにどのようなシステムで産業用ヘンプ栽培免許の簡素化を行うことが出来るでしょうか。今回はカナダの事例をご紹介して、近い将来の産業用ヘンプの栽培免許の取得の簡素化を考える材料としたいと思います。
カナダでも日本と同じく免許は毎年更新され、その種類も細かく分類されています。分類は9つあり、栽培、輸入、輸出、加工、配送、所有、育種、分析、サンプル調査となっています。産業用ヘンプの栽培は学校など18歳以下の子供が良く出入りする施設から1キロ以上離れていなくてはなりません。栽培免許を得た農家は、農地を申請し、保健省の認めた品種リストの中からその年の栽培品種を決定します。その農家の用途、種子の食用やオイル用などによって品種を変えてゆきます。また単位当たりの収穫量や成熟期間なども育種により毎年改善されています。毎年5月頃にまかれた種は、芽が出てくるとTHCの含有量の検査を受けなくてはなりません。この検査はカナダ保健省から委託された検査官が、畑にてサンプル抜き取り調査を行います。この調査に合格(0.3%以下)しなければ、栽培を継続して収穫することはできません。しかし、一般に保健省が指定した品種を栽培していれば、基準値以上のTHCがでることはまずありません。農家にとっては基準を上回ればすぐに刈り取らなければいけないので、確実な品種を植えることが経営面の安全性を確保することにもつながります。そのご、収穫された作物はクリーニングされ、契約している加工業者に販売されてゆきます。THCの検査方法もより低額で検査結果がえられるように日々改良が加えられています。近年の単位収量、品質はめざましく伸び、農家の経営も改善されているようです。日本でも,産業用ヘンプで飯を食ってゆきたいという方々にお会いする機会があります、しかし、厳しい免許制度により事実上、起業の自由が奪われています。しっかりとした制度を作った上で、産業用ヘンプの栽培許可を登録制への移行を検討する時期がきています。

世界産業用ヘンプレポート(カナダ編) ―地域経済活性化に向けたカナダ、マニトバ州の取り組みー

2005-01-17 11:54:02 | 産業用ヘンプレポート
2004年9月、カナダの中央部に位置するマニトバ州に産業用ヘンプの取材に向かった。マニトバ州は平原3州といわれ、65万km2に及ぶ州土は見渡す限りの平原で、海抜は150~300mがほとんどである。ここに住む115万人の住人のうち、地方に住む人々はほとんどが農業に従事しており、小麦に関してはカナダの産出量全体の40%をしめている。今回調査に向かった目的である産業用ヘンプに関しては、州政府の2003年のデータによると5400エーカー(約21.9km2/662万坪)で栽培した実績がある。正式な統計ではないが2004年は現在のところ6000エーカーで栽培しているということである。1998年にカナダで産業用大麻が合法化されてから現在まで、栽培面積は着実に増加している。実際に現地に行ってみると、その広大な平原に圧倒され、はじめは自分の距離感覚が狂ってしまうほどである。写真では距離感がつかめないかもしれないが、航空写真に写っている畑の一辺は、1マイル(1.6km)ある。ちょっと隣りの畑に行くということになれば1.6km延々と歩き続けなくてはならない。ちなみにここで言う畑1単位は、2平方マイル(3.2km×3.2km)だそうだ。日本とは規模が違うと実感する。写真:「空から眺めると、見渡す限りの大平原。大型機械による農作業がほとんどで、日本の密度の濃い集約型のスタイルとは大きな違いがある。」

「いざ、ヘンプ畑(フィールド)へ」

2005-01-17 11:41:55 | 産業用ヘンプレポート
マニトバ到着の翌朝、ホテルに迎えが来た。今回のヘンプ産業視察に同行してくださる、マニトバ州政府の農業局のマネージャー、ブライアン氏とカナダでも数少ない、ゲルフ大学ヘンプブリーダーのピーター氏だ。ホテルのロビーで朝食をとりながらブライアンからマニトバ州の産業用ヘンプの栽培状況の概要を、ピーターからは彼が開発している多収量で高品質なウクライナ系の最新品種の話を熱心に説明してくれた。そして、約3時間半の移動の後、マニトバ最大の産業用ヘンプ栽培地を訪れた。写真:「今年の夏は冷夏だったそうで、収穫は2~3週間遅れ気味。しかし、私の滞在中は夏のような晴天がつづき、帰国後もらった最新の情報によると、結局冷夏の影響はあまりなかったとのこと。皆、胸を撫で下ろしていました。」

「産業用ヘンプとは?」

2005-01-17 11:36:36 | 産業用ヘンプレポート
カナダの産業用ヘンプの合法化は1998年3月12日に行われた。これはTHCと呼ばれる大麻の薬理成分の割合が0.3%以下におさえられた低THC品種をカナダ保健省が認証したからだ。これは産業用ヘンプの取り扱い希望者が取扱い許可を申請すると、その指定された品種、部分に限って栽培、製造、輸送、販売、輸出入などを行う事が出来るというものである。今回視察に同行した、ゲルフ大学ヘンプ育種の専門家ピーターは、マニトバ州から依頼を受け、カナダ保健省が認定する規格に適合する低THCヘンプ種を開発している。種の味、用途、収穫量、容姿などを考慮して新しい品種を開発しており、世界でも数少ないヘンプ育種専門家の一人である。写真:「ピーターはルーマニア出身。ルーマニアでもヘンプの育種をしていた。彼の開発する最新品種の種の味は少し甘かった!人柄もとても良く、彼のつけるヘンプ種のネーミングには、愛する妻や愛娘の名前であり、とても美しい響きがある。」

「ヘンプの栽培」

2005-01-17 11:33:08 | 産業用ヘンプレポート
現在マニトバでは4~5種類の産業用ヘンプが栽培されている。この地域で栽培されるヘンプはほとんどが食用にされる、収穫される種はオイル用とナッツ、麻の実用の二つに分ける事が出来る。ほとんどの種類の畑を見学する機会を得たが、毎日ヘンプ畑をおとずれ、畑から直接ヘンプ種を試食しているとだんだん違いがわかってくるようになった。種の味やオイルの含有量、容姿など千差万別であることを実感する。そんな違いのなかでも農家の人々が気にしているのは、やはり収穫のし易さや収穫量である。ヘンプ育種の専門家ピーターとマニトバ政府はテストフィールドをこの地にかまえ、種の育種に力を注いでいる。現在の話題はピーターが開発した「アリーシャ」という名前のヘンプ。これはナッツ、麻の実用の品種で、種の味も甘く、粒も大きく、そして収穫量も多い。ピーターに話を聞くと、もう少し作物の背丈を低くして収穫し易いようにし、雄の花と雌の花の割合を調節したいといいながら育種の作業をすすめていた、彼のヘンプに対する態度はプロであるとともに、自分の愛する家族に接するかのように優しかった。写真:「ピーターの開発する品種は、農家の間でも話題になっている。今回いろいろなヘンプの特性や希望する低THC品種の作り方などを聞く事が出来た。しかし実際に開発するのは長い時間が必要とされる。」

「ヘンプの収穫」

2005-01-17 11:29:54 | 産業用ヘンプレポート
秋の収穫にはとびきり巨大なコンバインが使われる。このコンバインはマニトバでは典型的な大きさのコンバインで、刈り入れるヘッドの部分は全長約11m、刈り入れ時のスピードは9~10km/h。この大きいコンバインの導入により、効率的に刈り入れる事が可能となっている。写真:「コンバインに同乗させてもらったが、中にはエアコンやCDもついてとても快適。すべてコンピューター制御で収穫物の水分量や収穫量も管理される。ちなみに価格は1台2500~3000万円。この畑には4台の機械が動いていた。」

「産業用低THC品種」

2005-01-17 11:20:34 | 産業用ヘンプレポート
マニトバ州では3~4種類のヘンプが栽培されている。現在ここでマニトバ州から依頼を受け、育種を担当しているのはピーター氏で、今回はこの貴重な育種の機会に同行し見学する機会をいただいた。現在のところ、低THCヘンプで一番多く栽培されているウクライナ系のUSO14とUSO31、最新のALYSSIA、オイル用のFINOLA、その他にもANKA,CARMEN,FASAMOなどの品種を確認する事が出来る。また州政府が管理するテストフィールドでは、葉の形がヘンプとわからない品種や播種の研究などが行われている。写真:「ピーター氏の実験フィールド。今回も”ALYSSA”をより改善するために、標本の採集とラベリングを行っていた。どのヘンプを選ぶのか、選ぶポイントをいろいろ教えてもらった。」

「ヘンプファイバー、プラント建設計画」

2005-01-17 11:15:55 | 産業用ヘンプレポート
マニトバ州最大のヘンプ生産者団体である、Parkland Industrial Hemp Growersでは、州政府の支援のもと、種を収穫後のヘンプの麻がらからヘンプファイバーを生産するプラントの建設計画を進めている。モデルとなるプラントはイギリスのウェールズにあり、カナダ国内市場向けだけでも生産品の供給は満たす事ができると予測している。今後州内各所にこのようなプラントを随時建設してゆく予定もある。日本を含め各国から投資を求めている。ご興味のある方は麻エネルギーコンソーシアムまでお問い合わせください。写真:「加工されるのを待つ大量の麻がら。ヘンプの繊維は強いため、このような形で保管しても3年以上は保つという話である。資源は大量に調達でき、効率的な運搬には酪農用に日本に輸出している干し草の圧縮梱包装置が使用できる。」

「麻の実の加工 種のクリーニングと選別」

2005-01-17 11:12:02 | 産業用ヘンプレポート
コンバインなどで収穫された麻の実は、そのまま種のクリーニングプラントに持ち込まれる。このクリーニングプラントでは、種の選別と乾燥、保管が行われる。一見、同じ種に見えても栽培基準の違いに寄って、食物などに使用される作物用と農家が使用する播種用の違いがある。また今回訪問したこの会社は農家への種会社の役割も担い、種の開発と製造も手がけている。写真:「新しい品種の種の開発にも積極的に関わっている。この写真のテストプラントは、種や繊維は通常と同じように収穫できるが、葉の形を一見大麻とわからないように工夫している品種。」

「マニトバ州産業用ヘンプ、産・官・学の共同作業」

2005-01-17 11:08:00 | 産業用ヘンプレポート
1998年にカナダで産業用ヘンプの栽培が合法化してから、州政府の支援のもと地元経済の活性化のために、すでに地域にあった人材や資源を惜しみなく投入し産業を育成してきた。ここに現在私が日本国内で推進している「麻エネルギーコンソーシアム」のモデルとなるシステムが存在していた。産業面では、ヘンプの合法化前に先行して2つの会社が起業した。この2社は現在でも順調な成長を続けており、公正な競争のもと新規商品の開発や世界的な販売網の確立を押し進めている。官、行政は今回のような視察の受け入れや、ビジネスのプラットフォームづくり、商品開発や農業指導など民間に先行して積極的に動いている。学、地元の名門である州立大学ではキャンパス内に各種企業の研究所を誘致し、産学の共同開発、研究を進めている。ヘンプや亜麻などの麻類に関しても、栄養学、医学、農学との学際的な研究が進んでおり、ここでの研究成果を民間の企業と共同で、州立の最新技術を用いた食品開発センターにて製品かの実験を繰り返している。このような積極的な活動が影響して、マクドナルドの食品工場やテトラパックなどの飲料メーカーも工場を建設しており、州の雇用や経済に大きな恩恵をもたらしている。写真:「州立食品開発センターの研究室。州政府の予算的なバックアップのもとに、多くの新規参入企業がこの周辺で起業している。センターに隣接して飲料加工プラントを建設中で、多くの投資が集まっている。」