ただもし実際に『年羹堯』製作にGOサインが出たとしても雍正帝役が予想された狄龍が『年羹堯』に出演した可能性は低かったかも知れません。
それは葉問から詠春拳を学んだ李小龍、招允から詠春拳を学んだ狄龍と言う、お互いの共通点を詠春拳とした当時の香港武術界の複雑な派閥関係がその背景にあります。
実際、狄龍は公の場では李小龍と同じ写真のフレームに収まった事は殆どなく、李小龍が小麒麟を伴って邵氏のスタジオを訪問し、張徹監督が撮影中だった『刺馬/ブラッドブラザース』(73)のセットを訪れた際も、張徹監督、姜大衛、陳観泰たちが笑顔で李小龍たちを歓迎する写真は多数あっても、そこに狄龍の姿はありませんでした。
私が知る限り李小龍と狄龍、2人の“猛龍”が同じフレームに収まったのはアグネス・チャンこと陳美齢も出席した1972年12月の「十大影劇明星&十大電視明星 頒奬典禮」授賞式の壇上ぐらいでしょう。
そう言う意味では雍正帝(狄龍)に粛清される事を拒み敢然と“闘死”を選んだ年羹堯(李小龍)の壮絶な最後を描く邵氏武俠巨篇『年羹堯』は、李小龍自身の「ミーは邵氏も嘉禾も超越した存在になる!」との野望も含め、そこに様々な要素が絡み合った、ある意味実に波乱に満ちた作品だったわけです。
Bruce Lee and Ti Lung who never take pic together but almost once.Because of their wing chun background.