Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

モニタに表示する血圧の測定値は平均血圧だけにしちゃえばいいのに。

2024年04月19日 | ひとりごと

タイトル:「モニタに表示する血圧は平均血圧だけにしちゃえばいいのに」 by ChatGPT

以下は、なぜそう思うかについての独り言です。

血圧について良く言われていること。例えば、
・臓器血流は平均血圧が重要
・ただし心臓は拡張期血圧
・でもCABGすると収縮期血圧に依存するようになる
・低い時は平均血圧、高い時は収縮期血圧を見る
とか。僕も3番目以外はこのブログとか昔のIntnsivistとかで書いたことがある。
つい先日もこの話を聞いて、ふと、「生理学的な説明とか教科書の記載は読んだけど、そう言えばちゃんとした根拠を知らないぞ」と思い、特に三番目についてPubMedで調べ出した。そしたら深い沼が見えたので、早々に撤退した。

根拠はどうあれ、こういう生理学的な説明は面白いので、それはそれで良い。
でも、その情報を使って臨床ができるか(例えばCABG術後患者はSBPをターゲットにしようとか)、というと、別の理由で問題があると思うのですよ。

説明し始めると長くなるので、興味のある人はこちらからリンクをたどって読んでいただくとして省略します(反射波とかダンピングとかA-lineノナマリとかNIBPの測定原理とか)。これらの血圧モニタリングの問題は特にSBPとDBPが強く影響を受けるので、そんな数字を使って臨床して本当に患者さんにメリットがあるのか、疑問に思ってしまう。MAPも、橈骨で測定された値を使って臓器の灌流圧を推測しているわけで、どれだけ当てになるのかわからないけど、SBP/DBPに比べればまだマシではないか。

相当高い確率で、全ての患者さんの全ての病態において、MAPだけで臨床しても予後は悪化しない気がする(波形は一つの情報なので見るけど)。
ついでに、「血圧が60まで下がっちゃってさー」とか、「外科医が血圧120以下って言うからさー」とか、そういう「うーむ」な発言を聞かないで済むようになるし、無駄な薬剤の使用が減る分、もしかしたら患者さんにとってはプラスかもしれないし。

ま、そんなことは絶対に起こらないんだけどさ、人間が臨床をやっている限りは。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

血症性ショックにおける毛細血管再充填時間のモニタリング

2024年04月15日 | COVID-19
Hernandez G, Carmona P, Ait-Oufella H.
Monitoring capillary refill time in septic shock.
Intensive Care Med. 2024 Mar 18. Epub ahead of print. PMID: 38498167.


CRTについての最近の話題をサクッとまとめた文章。
ほお、ANDROMEDA-SHOCK-2ってあるんだ(ちなみに1はこちら、コメントはこちら)。
N=1500。楽しみだわ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

臨床上の質問における大規模言語モデルのパフォーマンス比較

2024年04月14日 | AI・機械学習
Han T, Adams LC, Bressem KK, et al.
Comparative Analysis of Multimodal Large Language Model Performance on Clinical Vignette Questions.
JAMA. 2024 Mar 18:e2327861. Epub ahead of print. PMID: 38497956.


NEJMからemail-alertが来るたびに、最近はChatGPT(有料)、Gemini(無料)、Claude 3(無料)にImage Challangeの問題文をコピペして遊んでいる。ほとんどは正解するんだけど、時々答えが違う時があって面白い。違うときはほぼChatGPTが正解なのだけど、それって有料だからなんだろうなと思っていたが、どうもそうでもないらしい。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ICU設計の変更が譫妄とメラトニン濃度の日内変動に影響する可能性

2024年04月13日 | ICU・システム
最近、生活がパターンが変わり、それとともに読んでない文献がいよいよ溜まり、あっという間に100を超えた。どんどん読まないと。。。

Spies C, Piazena H, Deja M, et al.
ICU Design Working Group. Modification in ICU Design May Affect Delirium and Circadian Melatonin: A Proof of Concept Pilot Study.
Crit Care Med. 2024 Apr 1;52(4):e182-e192. PMID: 38112493.


ICUの設計をする時って、ベッドを何床にするとか、倉庫をどこに作るかとか、医者とナースの控え室の大きさをどうするかとか、そんな話が多いけど、患者さんの視点から設計を考えることって少ないのでは。
これもそうだけど、今後はそういう視点で作られたICUが増えるのかな。だったら素敵だな。
まあ、pilot studyなので証明されているわけではないのだけれども。視点が素敵だな、と思って。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

腎保護と肺保護

2024年04月03日 | EBM関連
先日、自治のTEAMSで、若者が「2010年の文献なので古い」という発言をしているのを読んで、目がテンになった。この件は「2010年を古いと思う時点で、医学的根拠とは何か、についての理解に問題があることを示唆します」と喝を入れて終わったのだけど、”古い”けど重要な研究で分かりやすい例は何だろう、と考えていて、この研究を思い出した。

20世紀末、腎臓が悪い人に少量のドーパミンを投与することは普通に行われていた。普通って、それはそれは普通で、もう誰でもやっているレベルで、”腎保護”という言葉をみんなが使っていた。でもこのRCTで世界がひっくり返った。300程度のサンプル数だけど、一つのRCTでここまで診療にインパクトを与えた研究は数えるほどしかないのではないか、というくらいの出来事だった。

今は誰も”腎保護”なんて言わない(は言い過ぎか、でも保護する方法はないけどね)。その代わり、”肺保護”という言葉がすごく普通に使われている。ではその根拠は何かというと、low tidal volume以外は比較的Nの小さい生理学的研究と観察研究が主で、証明されてもいなければ確立されたものでもない。でも、カンファでの若者の発言を聴いていると、「これが患者の命を左右するんだ!」と信じているように思えてしまい、いつもドキドキしている。今から20年くらいしたら、「いやー、昔は食道にバルーン入れたり胸に帯巻いたり人工呼吸器で図を描いたりしてたんだよー、無効だと分かって一気に廃れたんだけどねー」なんて言っているかもしれないのに。

根拠が乏しいからやるなとは言わない。手元にある情報を使って、できる限り患者さんのためにできることをしようとしているのだから構わない。でも、今やっていることが廃れる確率は決して低くないことは理解していないと、利益と有害性の天秤が正しくかけられないし、後でガックリしちゃうよ。

そうそう、ガックリと言えば。
いつだったか正確には覚えていないけど、Dopamine trialが発表されて7、8年くらい経った頃だろうか、麻酔科医の生涯教育セミナー的なところで年上の麻酔科医の方々にAKIの話をしたことがあった。その時の質問で一番盛り上がったのがドーパミン。Lancet知らんのかい!と思ったが、「もう昔の薬」というのは彼らには大きな驚きだったらしい。

歴史は繰り返す。
お気をつけください。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JIAPDの年次レポートの最新版

2024年04月02日 | JIPAD
辞める話をした翌日というのがちょっと変ですが、最新のレポート(2022年度版)が発表されました。
95施設、約75000例。もう立派なデータベースじゃないですか。

「登録症例数は、2019 年 5 月に 10 万例に、2021 年 4 月に 20 万例に、2022 年 9 月に 30 万例に、2023 年 10月に 40 万例に到達した。」
つまり、最初の10万例に到達するのに約4年、次が2年、次が1年半、次が1年。なんかすごい。そして嬉しい。
試しに、Chat先生に、「症例数が二次関数で増えていると仮定すると、100万例に到達するのはいつ?」と聞いたら、「2028年6月と予測されます」ですって。あと4年かー。

今年は「JIPAD関連論文」という欄ができた(半分より下のところ)。もう文献が20くらいある。

あと4年で100万例に到達し、文献もたくさん作られているデータベース。まだ参加していないあなた、それで大丈夫??
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

近況報告

2024年04月01日 | ひとりごと
完全に私事ですが。いろいろ変わるので。

・JIPADを先月いっぱいで辞めました。
設立当初(2011年)からやってきましたが、今後の発展には世代交代が必要と思い、3月いっぱいで辞めることになりました。我ながら良くやったと言いたいところですが、13年で日本の全ICUの20%しかカバーしていない、それでnational databaseと言えるのか、というお叱りの言葉もあるかもしれません。今後の更なる発展に期待です。

・ICUのデータを標準化して生データを集めて利用することを主目的とした、集中治療医学会のワーキンググループに参加することになりました。ただしこちらはまだ活動が始まっておらず、どうなるかは未知数なのですけどね。潜在的に非常に重要(と言うか将来的にはあって普通のもの)だと思うので、楽しみです。

・バイト、辞めました。
これで医師免許を使うことは生涯ないかも。

・自治本院に週1回行くことになりました。
昨年の讃井先生の異動に伴って本院にもチョコチョコ顔を出していましたが、さいたまでやってきたこと(主にデータ解析とその利用)を本格的に本院でもやっていくことになったので。ちなみに自治さいたまは今後も週2で行きます。

ICU患者の予後予測の仕組みがACSYSでリアルタイムに利用可能に
これまでは平日の朝に1回共有するだけだったのですけど、もうすぐいつでも見られるようになる予定。実際にどう臨床に影響を与えるか、患者さんのためになるのか、の評価はまだまだこれから。

・フィリップスと開発しているアプリがもうすぐ臨床応用
患者安全および業務負担軽減を目的としたアプリを3年前から開発していて、それがもうすぐ実際に使えるようになる予定。詳細はひ・み・つ、知りたい人はさいたまに見にきてね。

・次のプロジェクト
予後予測もアプリも、もうすぐひと段落。さて次はどうしようかなと模索中かつ勉強中。一生勉強一生青春
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブラウザの和訳機能

2024年03月28日 | AI・機械学習
この半年で、一緒に研究をしている若者3人に同じことを言った。
「投稿規定を読むときは、和訳機能を使わずに英語のまま読んだ方がいいよ。」

典型例はこれ。
Critical Careのcorrespondenceの投稿規定
"Correspondence articles should be a maximum of 800 words with no more than 5 references. They can include a Table or a Figure. Abstracts and keywords are not required for this article type."
これをSafariの和訳機能で和訳すると、
「通信記事は、5つ以下の参照で最大800語でなければなりません。テーブルまたは図を含めることができます。この記事タイプには、要約とキーワードは必要ありません。」
となる。そもそも日本語がイマイチなだけでなく、これだと図表をいくつまで載せられるか分からない。答えは"a Table or a Figure"だからどちらか一つ。

同じ文章をDeepLに入れても、
「表または図を含むことができる」
ChatGPTで和訳しても、
「表または図を含めることができます」
なので、現状でのAI和訳の限界を感じる。まあ普通は冠詞は訳さないもんね。

これは簡単な例だけど、やはりニュアンス的なものは訳すのが難しいから、読める言語はそのまま読んだ方がいい。英語のウェブサイトを読むときは、僕は和訳ボタンを押したくなるのをグッと堪えて英語で読むようにしている。読めなくなっちゃうと悲しいから。
少なくとも、正確性が要求されるときは和訳せず原文で読みましょう。

と思ったら。
なんとGemini (無料版)もClaude 3 (無料版)も、
「表または図を1つ含めることができます。」
と訳した。
きっとすぐにChatGPTもSafariもちゃんと訳せるようになるに違いない。

もう無理して英語読むのやめようかしら。。。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ピヴラッツのREACT trialの結果

2024年03月26日 | 神経
この件ですが、なんと、知らぬ間に発表されてました。
製造・販売会社( IDORSIAIDORSIA Japanそーせい)のウェブサイトにも書いてないし、ピヴラッツのサイトにもないし、Googleと旧twitterで日本語と英語で検索しても出てこない。
ほぼ誰も知らないのではないか??

発表されたのは文献ではなくClinical Trials.govの中。
PubMed検索していてリンクに飛んで気がついた。

NCT03585270

知らなかったのだけど、Clinical Trials.govって、こんなに詳細に結果が載っているんだね。現在進行中の研究を調べる時にしか訪問しないからかな。

Participants:
・Males and females aged 18 to 70 years
・Ruptured saccular aneurysm, successfully secured within 72 hours of rupture, by surgical clipping or endovascular coiling
Primary Outcome: Occurrence of Clinical Deterioration Due to Delayed Cerebral Ischemia (DCI) From Study Drug Initiation up to 14 Days

N=406(日本のRCTとほぼ同じ人数)。
Primary outcome: 32/202 vs. 35/204, p=0.7338

脳梗塞の発生頻度やmRSが有意差のないレベルで治療群の方が良かったりするけど、それを言ったら有意差のないレベルで治療群の方が合併症が多くて死亡率が高い。
批判的吟味をするほど熟読していないけど(結果を公表したのだから文献にもなることを期待したい)、これで十分。FDA通過を諦めた理由がよく分かった。

そうそう、この結果をIDORSIAがClinical Trialsに投稿したのが去年の11月(掲載されたのは今年の1月)、そして韓国でピヴラッツの販売が認可されたのが12月。
可哀想な韓国。。。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生成AIモデルによる心停止後の転帰予測

2024年03月25日 | AI・機械学習
Amacher SA, Arpagaus A, Sahmer C, et al.
Prediction of outcomes after cardiac arrest by a generative artificial intelligence model.
Resusc Plus. 2024 Feb 22;18:100587. PMID: 38433764.


ほお。
こういう使い方はしたことがなかったし、読んだこともなかった。
既存の予測スコアと同程度かそれ以上の精度ですか。ふーん。

確かに、例えばNEJMのImage Challangeを文章だけコピペしてChatGPTに聞いてもだいたい正解するし、どの専門医試験もだいたい合格する。でもLLMに予後予測してもらうというのは初めて聞いた。

でも、なんか気持ち悪い。それが紹介の理由。
それって生成AIに聞くことか?AIを使うなら予測モデルに聞いたほうがいいんじゃないか?

なんて疑問も、いろいろ統合されて数年したら疑問として成立しなくなるかもしれないけど。

ーーーーーーーーーー
追伸。
こんなのもあった。こっちはAUROCが0.62で悪かった。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする