漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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体がついていかないのは気虚

2024-05-21 | 夏の養生法
卯の花、ウツギが満開になりました。ホトトギスの声も数日前から聞こえています。
まさに「夏は来ぬ」です。
今日から暦では「小満」。生命が満ち満ちていくころ。草木も鳥も虫も獣も人も、日を浴びて輝く季節。
ですが、この頃の漢方相談で訴えが多いのは、
「体がついていかな~い」

この時期は、じっとしていても寒暖差に体を合わせるために体力を使っているのですが、それを疲れると感じてしまうなら「気虚」つまりエネルギー不足です。手や顔がむくみやすいのも気虚の傾向。

漢方薬なら、補中益気湯や麦味参顆粒(生脈散)などがおすすめ。
梅雨のように湿度が高まって、だるさや胃腸不良になるようなら湿を払う勝湿顆粒で早めに対策しておきましょう。
チュウサギ
朝は早起きして日差しを感じる
手足を動かして運動し汗をかく
戸外に出て気温差に慣れる
夜は食べ過ぎない
香りのある食材で気の流れをスムーズにする

日々の養生も忘れずに。

コチドリ

これはイボタノキ
印旛沼周辺にはイボタノキが茂り、独特な香りを放っています。
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なぜ老化細胞は悪さをするのか?・元気な免疫システムを維持すること

2024-05-15 | 老化・血流
年齢とともに、質の悪い老化細胞が出現する確率が増すのですが、それがおとなしく消えずに周りの細胞に炎症を起こすのはなぜか?について「カズレーザーと学ぶ」という番組の中で解説がありました。

答えは、
「老化細胞が周りに炎症を起こさせるのは、自分を早く掃除してほしいという信号を出すため」

例えばがん細胞もミステイク細胞ですが、現実には毎日あちこちにできており、それでも元気に働く免疫システムがあれば、異常を感知してどんどんT細胞が活躍して掃除するので、むやみに増えることはありません。

現在研究が進められているのは、性能の良い免疫細胞(T細胞)をつくることなのですが、免疫システムをいじる結果どんな副作用(例えば激しい炎症など)が起こるか分からないし、今のところとんでもなくその治療は高額なのだそう。
咲き始めたウツギ
「年齢とともに落ちてくる免疫システム」
これを中医学的に考えれば、やはり「腎虚」です。

中医学でいう「腎」とは、脳下垂体、副腎、性腺、甲状腺、すい臓などのホルモン系は泌尿生殖器などの働き、免疫に対する働きなどが含まれ、からだ全体において重要な役割を担っている部分です。
スイカズラ(金銀花)とガマズミ
この「腎」を補う漢方対策のことを「補腎」といいます。何千年もの経験を重ねて処方された生薬の組み合わせ(補腎薬)を飲むと、なぜが体が元気になるのですが、科学的にまだ証明されずとも、理論よりも経験は強しといったところです。
クワの
中医学は究極、不老不死を目指している学問なので、老化に対する解釈と対策はなかなか奥深いものがあります。
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胃ムカムカして吐いた原因は、湿邪

2024-05-07 | 胃腸
漢方ご常連さんのこと。
焼肉を食べたら、急に胃がムカついてどうにもならず、吐いてしまったそう。
これは肉が悪いわけではなく、体調の問題でした。彼女以外の人は何ともなかったのですから。

このところの湿気の多い天候の中(湿)、暑いので連日冷たいもの(寒)を食べていた。
つまり「寒湿邪」で胃腸の動きが停滞している状態にあったところに、こってりした焼肉が入ってきたので、体は処理しきれず仕方なしに上から(口から)出したというわけ。

久しぶりに勝湿顆粒を飲んでみたら、一服で胃が軽くなりすっきりしたのだそう。
これから、梅雨時には、このような状態に陥りやすいので、漢方薬のご用意を。
そして暑くても、冷たい食べ物と冷房は控えめにしておくことですね。





タイワンオナガ

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太っているのに栄養不足?:腎精不足

2024-05-01 | 老化・血流
病院で栄養不足だから卵などもっと食べるように言われたのだそう。「こんなに太ってるの栄養不足だって・・・」確かに見た目は太っているお客様(70代)なのだが。

この頃よく言われる「フレイル(虚弱)」は筋力の衰えの問題で、筋肉の栄養素といえばたんぱく質なのだが、食べたものから筋肉を上手に作り出す酵素(酵素もたんぱく質)が働かなければ、筋肉は増えない。
この働きは年齢とともに落ちてくる。
モンキアゲハが田んぼにやってきた

前記事に関連しますが、老化によって細胞内の呼吸(ミトコンドリアの働き)や正しい形のたんぱく質を作り出す力が落ちてくる。
そこで中学的に必要なのが「腎精」
「補腎」対策の漢方薬の中には、良質のたんぱく質や大切なミネラルがたっぷり含まれているものがあり、服用すると「体がしっかりして、元気になれる」とよく言われるのは、ふだんの食事に加えて漢方薬をプラスすることにより栄養的に大切なものが効率よく摂れるからだろうと思う。
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たんぱく質の生成不良:ミスフォールディング、アミロイド:腎虚(勉強会まとめ)

2024-04-23 | 老化・血流
DNAの情報に基づいて私たちは細胞1個当たり、1秒間に数万個のたんぱく質を作り出している。
「フォールディング」とは、アミノ酸がつながったポリペプチドの鎖が「正確に」折りたたまれること。その結果、酵素などのたんぱく質ができる。

もしも「正確に」できないと(ミスフォールディング)疎水性で繊維状のたんぱく質になってしまい(アミロイド)これが組織に凝集沈着すると細胞は機能できなくなる。
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、狂牛病、白内障、各種繊維症などは、この影響による疾患らしい。

地元の探鳥会にて、オシドリ♂

中医学では、このような細胞レベルでの基本作業を行い生命を維持していくのは「腎」の力といわれている。寿命が延びるとともに「腎虚」状態が長く続き様々な疾患を引き起こすので、「補腎」は大切な健康維持法です。

「補腎」の漢方薬は、中年以降の老化予防対策に用いられるのが一般的だったが、近年では、スマホなどによる目の使い過ぎや睡眠不足、運動不足、食事の不摂生などで、若い人にも「腎虚」が増加している。

「補腎」の漢方薬の中には、良質のたんぱく質やミネラルが多く配合されているものが多い。

田んぼの畔にキジ♂と♀ 鳥たちは恋の季節

「腎虚」の症状に思い当たったら、中医学漢方で養生してみてください。
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肝血虚の症状と目のツボ・春の草花を眺めて

2024-04-16 | 頭痛、めまい、目
春は肝を養生する季節です。
肝は目に開竅しその華は爪にある 肝は血を蔵す 肝は筋を主る 肝は疏泄を主る
そこで、肝血虚の症状をチェック

・目がかすんでしょぼしょぼする
・めまいや立ち眩み
・爪の色が白っぽくて割れやすい
・月経量が少ない
・こむら返りをおこしやすい

目を養生する漢方薬といえば杞菊地黄丸ですが、簡単ツボ押しもやってみてください。


散歩に出て、自然の小さなものに目を凝らすのも目によさそうです。
小さなヒメオドリコソウとキュウリグサ せいぜい2ミリくらい
キュウリグサ拡大 ムラサキ科
クワの芽吹き
サルトリイバラの花
茎が三角のミツカドネギ
ミツバアケビ
アケビ
ウワミズザクラ
春は、どんどん咲いて景色がどんどん変わっていきますね。

春の養生:古いものを排泄する、体を温める

2024-04-12 | 春の養生法
新陳代謝とは、古いものを排泄して新しいものを作り出すこと
静かに過ごした冬の間に体にたまった古いものを排泄し、気血津液のめぐりを促す春です。

溜まったものを排泄する方法は、排便、排尿と汗をかくこと



芽をだす山菜類、発汗作用のある辛味野菜、利尿や便通に効果的な根菜類や海藻類などがおすすめ

体を温める:朝は早起きし、温かいもの消化しやすいものを食べ体内の陽気を上げます。

運動して汗をかくことを春からしっかり行っておけば、体温調節が上手になり、夏の暑さや熱中症対策にもなります。
南の国からサシバがやってきた
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イライラする春・気滞

2024-04-05 | 春の養生法
寒暖差が大きい春。それだけでも気の巡りが偏りがちですが、急に気温が上がると頭が熱くなり気分が高揚しすぎて、イライラして八つ当たりしたくなったり、胸が詰まって苦しくなったり、生理前の不快症状が強くなったりしがちです。
周りの人がとばっちりを受けることにもなりかねないので、早めに対策することをおすすめします。
食べ物では、さわやかな香り、やさしい酸味、少々苦みがあるもの(山菜など)を少量、メニューに加えると気分がすっきり体のつかえが解消します。
漢方薬の味も、ふだんなら苦くてまずいと思うようなものも、気滞状態の時は、美味しく飲めたりします。体が必要としている証拠でしょうね。

辛すぎるものを摂りすぎると火に油を注ぐことになり、イライラが助長されることがあります。

漢方のご常連さんも、この時期になると「○○漢方の季節よね」と備えにやってこられます。
どの漢方を用いるかは体質によって異なるのでよくご相談ください。


ミツバアケビの花が咲き始めた。アケビ類の茎は生薬木通(モクツウ)で降火利水作用を持ち瀉火利湿顆粒などに配合されている。
やっと咲き始めたと思ったらどんどん咲き進む今年の桜。
それにしても天気がすぐれない日が続く

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本「動物たちは何をしゃべっているのか?」ふれあいの大切さ

2024-04-03 | 
対談形式で、動物のコミュニケーションを語り人間の本質をさぐる本。

グルーミングするときのグルグルというような「ささやき」が、言葉として発達したのではないかという山極さん。
しかし人間の群れは巨大になり、グルーミングなしで言葉を伝達する必要が生まれて文章ができたが、いまや単発的な文がSNSで発信される。
ふれあいという「身体性」なしに発信される言葉は、十分に文脈が読み取れず、取り違え、無意味な炎上を引き起こし、不安を掻き立てている。
コロナによる隔絶の影響も大きい。

触れ合うことをしないまま言葉だけを頼りに、人との結び付きを築き上げなけばならない現代に、人間はいまだ慣れていない。

動物は、吠え声、呼び声、叫び声、ささやきなどを持ち、その声は自然の中をよく通り、ちょうどよい群れの大きさとふれあいと身体能力とを備えて、自然の中で群れとして自立している。
人間の半数以上は都会に暮らし自力で生きていけない状態。

会って話をする、表情を読む、ふれあう、踊る、一緒にリズムをとる、そんな行為がやはり大切なのだと実感した。
先の日曜日、裏高尾あたりを歩いて1号路を下山すると桜が咲き進んんでいた。

動物たちは何をしゃべっているのか?2023年8月発行
山極寿一(やまぎわじゅいち)ゴリラと一緒に2年間暮らした人物
鈴木敏孝 シジュウカラの言葉を研究

コレステロール、中性脂肪、いつも血流がよい状態を保つこと

2024-03-27 | 老化・血流
コレステロールはホルモンや胆汁の材料であり、脳や細胞膜にもなくてはならない大切な物質です。なので少なければいいというものではありません。
概して女性は、女性ホルモンの減少とともにコレステロール代謝が落ちるので、特に閉経後はコレステロール値が高くなる傾向にあるようです。

LDL(Low Density Lipoprotein=低比重リポタンパク質 ):肝臓にあるコレステロールを全身の細胞に運ぶ(悪玉コレステロール)(140mg/dL )
HDL(High Density Lipoprotein=高比重リポタンパク質): 余分なコレステロールを回収して肝臓に届ける(善玉コレステロール)(40mg/dL以上 )
中性脂肪:肝臓で作られ脂肪細胞内で蓄えられる貯蔵用のエネルギー。必要に応じて脂肪酸に変化し、活動用のエネルギーとして使われる(30~149mg/dL)


LH比(LDL÷HDL):1.5未満が理想で、多い数字になるとコレステロールが血管内にあふれている状態。中性脂肪も使い切れないとLDLが増える。

血流が悪いと、血管内でコレステロールが酸化し(酸化LDL)血管に沈着しやすくなって動脈硬化を進行させてしまいます。

アケビ咲き始め(蔓茎は生薬木通:心肺有熱で小腸膀胱が不利になって利水できない状況を改善する)

ではどうすればこれを対策できるでしょうか
ズバリ、現代人は食べ過ぎ(間食も多い)で運動不足です。

対策1:避けたい食べ物
・酸化コレステロールを避ける
例えばインスタントラーメンやレトルト食品加工された肉製品、二度揚げしたり古い油を使った揚げ物、レトルトや加工された肉食品など
・糖質やアルコール、酒を控える 
・甘いものを食べたいときは食後にする
・食べ過ぎを改める

対策2:血流の良い状態をキープする
・よく運動する、食後には軽く体をうごかす
・ストレスをため込まない
・甘いものを食べたいときは食後にする
・血流をよくする食べ物:青魚類や玉ねぎ、ニンニク、ラッキョウ、黒きくらげなど
・気血の流れを改善する生薬や漢方薬で日々、血流を促す

日々の養生の積み重ねで、病気を予防してください。

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