世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

misinformationとdisinformationの違い

2021-12-22 | グローバル政治
misinformationと、disinformationの違いは何だろうか?

現在この世界では、SNSには、瞬時に多数の人間に影響を与え、一国の政治・経済情勢を揺り動かす力がある。そしてその影響力の源泉の一つが、SNSを悪用すればmisinformationとdisinformationと称される偽情報の拡散によって世論を操縦できることである。

さてこの二つ偽情報を意味する英語に本質的な違いはあるのだろうか?

misinformationにしてもdisinformationにしても、ともに「誤った情報」のことを指している。ただし、前者は、特定の意図をもって故意に拡散させるものでなく、単純に「誤った」情報を指す。一方、後者は、ある特定の意図をもって故意に拡散される「誤った情報」や、「歪曲した情報」を指す。

さらに言えば、自分に都合の悪いNewsは、言下に「Fake‼」と叫ぶことや、言を左右にして「嘘ではないが真実でもないことを延延と語る」ことは、disinformationによる、政治家の世論操作の範疇に入ると言えよう。

Automat: NYで、コロナ禍乗り切りに自販機レストラン復活

2021-12-19 | 米国・EU動向
街頭に置いた自販機で、すぐ食べられる形でラーメンなどをサーブする商売は、日本でも導入されている。
一方、レストラン自体を自販機に置き換えてしまう、ファースト・フード店」はautomat(オートマット)と呼ばれていて、その奔りは19世紀末のベルリンに遡るという。米国では20世紀初頭に各地に現れたが、やがてファミレスに押されて消滅した歴史がある。
最近この店内は自販機だけが置かれた、無人化レストランであるautomatがNYを中心に復活しつつあるという。接客時の人の接触を避けるとともに、前代未聞の人手不足に陥った現在の米国の雇用状況を解決するために出現してきているという。
全米に広がり、世界に広がるTrendとなるか?

コロナへの防御持久戦:Hanker down

2021-12-16 | 貧困・疾病・格差
米国の国立アレルギ―・感染病研究所長のアンソニー・ファウチ博士(Dr. Anthony Fauci)は、「米国民一人一人は、今政府が行っているコロナに対する戦いよりも、はるかに強力な戦いを国民全体としてしなければならなくなると覚悟してもらいたい」と警告を発してきた: [Americans] should be prepared that they’re going to have to hunker down significantly more than we as a country are doing.

hanker downは、もともと塹壕に入って身を守りながら持久戦を戦うことを意味している。米語では、この軍隊用語を転用して、「身を守って頑張って戦う」の意味で口語で使われている。

石油の国家備蓄放出は”A drop in the ocean”

2021-11-25 | グローバル経済
バイデン大統領の呼びかけに、日韓中印英が応じて、各国が安全保障のために備蓄している石油を、原油価格高騰の沈静化のために、数日分放出すると決めた。しかし、市場はこれを「A drop in the ocean(焼け石に水)に過ぎない」と反応して原油価格は、逆に上昇した。各国首脳はどんな戦略と論理で、数日分の放出で市場を操縦できると考えたのか、OPECを威嚇・説得できると考えたのか知りたいものだ。

米国のインフラ再建計画推進:Building Back Better Initiative

2021-11-07 | 環境・エネルギー・食糧


米国議会では、1兆ドルのインフラ予算法案と、1.75兆ドルの民生支援向け歳出・歳入法案は、民主党内部の意見の分裂で、その成立が危ぶまれていたが、ペロシ下院議長の采配で、インフラ予算法案のみを切り離してまず採決に持ち込むという作戦に転じ、米国時間金曜日夜に下院で可決された。

この法案は、すでに上院で可決しているので、バイデン大統領の署名で成立することになる。バイデン大統領の公共投資計画のうち、エネルギー・環境に直接関連するものを2つ抽出すると次の通りとなる:

1."Build a national network of electric vehicle (EV) chargers"
電気自動車の充電ステーションの全米ネットワーク構築:EVの普及のために何より重要な充電ステーションのネットワーク構築の75億ドルを投じ、ステーション数を全米で50万か所に拡大する計画。

2."Upgrade our power infrastructure to deliver clean, reliable energy across the country and deploy cutting-edge energy technology to achieve a zero-emissions future"
脱炭素のために必要な再生可能エネルギーの活用のためには、送電網の更新・増強が必須であり、このために650億ドルを投じる計画)

今後10年にわたり、老朽化した社会・産業インフラを110兆円という巨額の投資で、再建(Build back)しようとする壮大な計画となる。わが国も成長とインフラ再建を同時に果たし、脱炭素に向けて力強く舵を切る政策の推進が望まれる。

パラリンピック閉会式標語:Harmonious Cacophony

2021-09-05 | グローバル文化
本日開催の東京パラリンピック閉会式の標語は、"Harmonious Cacophony"と発表されている。cacophonyとは不協和音ないし、不快な大音響のこと。直訳すれば、「調和する不協和音」となるが、それだけでは相反する概念を合わせた自己撞着語となる。英語では、a wise foolのような明らかに、矛盾する言葉を組み合わせて、目を引こうとする語法をoxymoronという。

開催者の意図は、主義主張や、利害が相反する世界の人々も、東京で一堂に会して、美しい旋律を奏でましょうというところにあるに違いがないだろう。それならばこんなもって回った言い方をせず、普通の人が聞きなれたストレートな表現のほうが良かったかなと思ってしまう。


A Political Football (政争の具)

2021-09-04 | グローバル政治
菅首相は、昨日「自民党総裁選挙に出馬しない」と発表して、日本中を驚かせた。

横浜市長選挙で推した候補が惨敗して以後、ここ1週間のかれの動きの結果がすべて裏目に出て、進退窮まったというのが実相だろう。コロナ対策、総裁選、総選挙、党人事、内閣人事すべてが、「政争の具」になって一挙に降りかかり、かれはその重みに耐えきれず、座屈現象を起こしてしまったようだ。

政争の具は、米国ではpolitical footballという。この試合で、菅首相は、掴んだボールをもって突如一人で快走して(running with it.)一挙に挽回しようとしたが、老練な寝技政治家たちのtackleをかわせず、fumbleしてしまった。落ちたボールは二度と戻ってこなかった。

隠れトランプ

2020-10-26 | 米国・EU動向
米国大統領選挙の各種世論調査では、バイデン氏がトランプ氏を大きく引き離しているものがほとんどである。前回2016年の際は、直前まで同様状況で、ヒラリー・クリントンの当選を疑う人は少数派であった。今回もそのdeja vu(いつかどこかで見た光景)ではないか、という人が結構出てきた。本心はトランプ大好きだけれど、公言すると仲間はずれになったり、職場にいられなくなったりする危険があるから、トランプ支持とは言わない人が多くいると言うのだ。この人たちのことは、Hidden shy voterというそうである。隠れキリシタンならぬ、隠れトランプ支持者というわけである。

GAFA またの名を『黙示録の四騎士』

2019-01-02 | グローバル企業
世界をインターネットを中心に再構成して、我々の日常に深く浸透し、心までを支配せんとしているしている世界企業であるGoogle, Apple, Facebook, Amazonの4社は、その頭文字を取ってGAFAとよばれている。発音はガーファ、またはギャッファ。全世界に浸透し、時には政府の規制や課税に反抗して、新たな独占と支配を強めている。

かれらの実態と影響力を知るためには、東洋経済新報社から出た『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』を読むのが早い。(著者は米国のMBA大学院教授のScott Galloway氏、訳者は渡会圭子氏)これらの4社をヨハネの黙示録の四騎士にたとえること自体が、GAFAに対する著者の見解を明快に物語っている。したがって、我々が日ごろ漠然と持っていた不信感や不安について適切に答え、彼らやその後継となるインターネット上の企業の持つ暗部についての認識をしっかり持たせてくれる本である。(大幅に増補された原書最新版の記述をもとに改訂翻訳が出るのを待望する)

しかし、我々はInternetのなかった時代にもはや逆戻りはできない。米国で最も若いビリオネアと言われている、SnapchatのEvan Spiegel氏が、年末のFinancial Timesとのインタビューに答えて、『実世界とインターネット上の世界は今や同一だ』と高らかに宣言している。"The real world and the internet are one and the same" そのような時代が到来したことを素直に認めざるを得ない。しかし、心までの支配を許すわけにもいかない。GAFAのBig Brother化は見過ごせない。




The Affluent Society「豊かな社会」と西部邁

2018-04-30 | グローバル経済
稀代の現代日本の思想家で、世俗の潮流にあくまで棹を指し続けた西部邁氏が、奇妙な死を遂げたとのニュースに触発されて氏の代表的評論「大衆への反逆」を、読み返した。

この西部の本の表題は、スペインの思想家オルテガが、ナチが勢力を拡大しつつあった時代の欧州で、1930年に出版した「大衆の反逆」という有名な本の表題の裏返しになっている。西部の「大衆への反逆」は2014年初版であるが、今や彼の晩年となってしまった時期に当たる。

その中に、1958年初版のGalbraithの代表作「豊かな社会」について、西部が1980年に書いた短い批評が再録されている。政治権力は民主化によって大衆の手にわたり、技術革新によって大衆消費が可能となり、「豊かな社会」が到来した。このガルブレイスの鋭い経済面からの文明批評について、西部は、ここで表題に使われた言葉"affluent"を、「豊かな」と訳すのは、このコンテクストでは、誤訳と論ずる。むしろ「過剰な」というべきであり、さらにaffluentは同氏の誤用であり、Effluent Society(放出する社会)というべきであったとする。すなわち、誰かのシナリオに乗せられて、過剰消費に追い立てられる大衆は、消費のかすを噴出させることによる反動で前進するよりほかに自己確認の方法がなくなってしまっていると説いている。


「大衆への反逆」は、文春学芸文庫ライブラリーから刊行されている。


定年退職出戻り就職急増中 The Unretired

2017-12-04 | 世界から見た日本
Financial Times12月4日号の職業欄は、「出戻り就職者」(Returners)を取り上げている。そのまたの名を、The Unretired、すなわち「定年巻き戻し組」と、言うと。
最近の英国では、定年退職者の約25%が、何らかの有給の職場への復帰をしており、それも定年退職後5年以内が半数以上であるという。また米国でも同様の傾向がみられると報じている。

あこがれた、「毎日が日曜日」の生活が実現した当初は、天国であっても、元気があって知力に衰えがない「市場性のある」働き手は、犬の散歩ばかりして暮らすことに耐えられなくなるのだ。社会はこうした高齢者再雇用に対応する必要があると説いている。

そして、出戻り理由として、注目すべきは、「EU離脱後の先行き不安」を挙げる人が増えていることだという。

ドイツで広がる「メルケル」疲れ ”Merkel Fatigue"

2017-12-03 | 米国・EU動向
選挙で敗れて、連立工作も不調の少数与党党首メルケル首相に対しドイツ国民や、与党支持者の間に、疲労感が蔓延し始めているとの、Financial Timesの論評である。そのことばはずばりMerkel fatigue.
17年間も君臨しドイツを押しも押されぬEUの中心の地位に押し上げた彼女も、国内と世界の激変にもはや追随出来ぬのも歴史の必然のようだ。深く刻まれつつある彼女の顔のしわと、時折見せる憔悴の表情に比して、ご当人は案外落ち着いているのは、彼女にとってかわる政治家が全くいないせいだと、断定している。

Bitcoin: poxy currency 疫病神通貨

2017-12-02 | グローバル経済
11月30日付けFinancialTimesのLex.コラムは3月の1,000ドルから10倍以上に暴騰しているビットコインを"poxy currency"(疫病神通貨)として警告している。それは、南海泡沫バブルや、チューリップバブルに似て、貪欲と好奇心にあおられて、ろくに手を洗わない人の手から手へと伝染する心の病だと。

トランプの反知性主義的ブログ活用法(anti-intellectualism)

2017-01-09 | 米国・EU動向
昨日ここで、トランプ氏がそのブログで”Stupid people or Fools"と「バカ」呼ばわりするのは、共和党主流派、Obama大統領やClinton氏を頂点とする民主党幹部、民主党選挙対策本部を盗聴したのはプーチン大統領の指示と断じたCIAなどの諜報機関、Trump氏を攻撃してきたマスコミなど、これまで米国をリードしてきた既成知的エリート層であると書いた。

しかし、かれは、真正「バカ」を「バカ」呼ばわりしているわけではない。そして暴力的言辞を駆使するかれ自身も決して「バカ」ではない。その真の攻撃対象は、きわめて知的水準の高い、自由・平等・正義・グローバリズムといった価値観を表す言葉をもとに世論をリードし、米国の政治を動かしてきた上にあげたような人たちである。トランプのメッセージは、「もうバカの好きにはさせないぞ」ということである。ここが大衆に支持されるところとなっている。それにどうも自分がトランプ支持とは公言したくない「隠れトランプ信者」が結構いる節がある。

文明や文化の成果の集積と、教育による再生産で、我々の知的水準は向上し、世の中はよくなってきたと普通は思う。しかし、しばしばその恩恵に浴すことのできない人々と、その息苦しさと偽善性に耐えられない人々の割合が一定レベルに達すると、揺り戻しが起こる。それは、「反知性主義」(anti-intellectualism)という現象として知られている。

トランプ氏は、選挙期間中一貫して、トランプ批判に回りクリントンにくみした米国マスコミエリートに対して、これからも執拗に「復讐」を続けるであろう。米国の金融・証券、ジャーナリズムと映画産業はユダヤ人脈に支配されていることも合わせ考えておくと、これから起こることの理解も進むかもしれない。どう考えても、彼は趣味でブログで咆哮しているのではない。彼の言うところの「バカ」の巣窟であるマスコミの報道に頼っていては、勝てるわけはないと計算したのだろう。大衆とリアルタイムで直結するブログで勝負に出ようと。いわば「バカ抜き」である。

Donald Trumpが「バカ」呼ばわりするのは誰か?"Stupid" People or Fools

2017-01-08 | 米国・EU動向

今朝、Donald Trump氏のTwitterを開いたら、次の3件が立て続けにUpされていた。

Jan 7 7:02
Having a good relationship with Russia is a good thing, not a bad thing. Only "stupid" people, or fools, would think that it is bad! We.....

Jan 7 7:10
have enough problems around the world without yet another one. When I am President, Russia will respect us far more than they do now and....

Jan 7 7:21
both countries will, perhaps, work together to solve some of the many great and pressing problems and issues of the WORLD!

これら3件は一つにまとめれば「ロシアと良好な関係を持つことに反対するのは、バカだけだ。この世界には次々問題が起こる。私が大統領になれば、ロシアは米国に対し、今よりはずっと敬意を表すだろう。そして両国は大きなしかも急を要する国際問題解決に協調することになる。」ということだ。

同氏がここで「バカ」呼ばわりするのは、ロシア融和政策に反対する共和党主流派、Obama大統領やClinton氏を頂点とする民主党幹部、民主党選挙対策本部を盗聴したのはプーチン大統領の指示と断じたCIAなどの諜報機関、Trump氏を攻撃してきたマスコミなど、これまで米国をリードしてきた既成知的エリート層である。