日雇い派遣が禁止されたと思ったら、世の中いろいろ考える人がいるらしく「日々人材紹介業」というものがあります。
「日々紹介事業」は、紹介先企業と労働者がその都度(毎日ないし毎回)労働契約を締結し、その企業が『直接給料を支払う』という労基法上の賃金支払い原則が遵守されているかぎり、違法ではないようです。
下記の様な回答が厚労省から出されました。
確認の求めに対する回答の内容の公表
1.確認の求めを行った年月日
令和2年5月29日
2.回答を行った年月日
令和2年6月29日
3.新事業活動に係る事業の概要
以下の方法により、人材紹介サービス・労務管理システムの提供と併せて振込代行サービスを提供する。
<事業の流れ>
① サービス利用を希望する、使用者である法人顧客(以下「使用者」という。)と照会者にて、人材紹介サービス利用契約、労務管理システム利用契約及び振込代行サービス利用契約を締結する。
② 使用者が照会者に求人の申し込みを行い、照会者のシステム上において求人募集が行われる。
③ 使用者と求人に応募した労働者が雇用契約を締結し、労働者が使用者に労務提供する。④ 労務提供の完了した雇用に関し、使用者が照会者に対し給与立替払いを依頼する。なお、
使用者は照会者における賃金の支払状況を確認できる。
⑤ 使用者から照会者への依頼に基づいて、照会者は提携先金融機関へ振込指示を行う。なお、照会者が使用者から既に立替払いの依頼を受けた給与について、労働者が所定の給与支払日に先立って支払いを受けることを希望し、照会者に対して早期支払いの申請を行った場合、照会者は提携先金融機関に対して、所定の給与支払日より前の日付での振込指示を行う。
⑥ 振込指示を受けた提携先金融機関は、事前に立替用として作成された照会者の口座から、労働者の口座への給与の振込を実行する。ただし、この際の振込人名義は、使用者の名称が表示される。
⑦ 照会者から使用者に対し、立替分の費用を請求する。なお、労働者からは手数料は一切徴収せず、労働者が即日払いを希望する場合にも給与全額が振り込まれる。
⑧ 使用者は照会者に対し、上記請求額を支払う。
4.確認の求めの内容
(1) 照会者が提供する人材紹介サービス・労務管理システムと合わせて新サービスである振込代行サービスを提供することが、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第1項に規定する「労働者派遣」に該当しないことを確認したい。
(2) 本サービスを提供することが、職業安定法(昭和22年法律第141号)第4条第7項に規定する「労働者供給」に該当せず、同法第44条において禁止される「労働者供給事業」に該当せず、かつ、その脱法行為にも当たらないことを確認したい。
(3) 本サービスを利用して行う労働者への賃金支払方法が、労働基準法第24条第1項本文が定める賃金直接払いの原則に違反しないこと及び同条第2項本文が定める賃金毎月一回以上一定期日払いの原則に違反しないものであることを確認したい。
5.確認の求めに対する回答の内容
(1) 労働者派遣法第2条第1項に規定する労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」とされている。
照会者は、法人顧客及び個人ユーザーに対しそれぞれ職業紹介を行い、法人顧客と個人ユーザーとの間で雇用契約が成立した場合、法人顧客からの委託を受けて、個人ユーザーに対する給与の立替払いを行うにすぎない。したがって、照会書記載の事実を前提にすれば、当該事実が維持されている限りにおいて、照会者と個人ユーザーの関係は、「自己の雇用する労働者を他人の指揮命令下に労働させる」ものにあたらず、「労働者派遣」に該当しないものと解釈される。
(2) 職業安定法第4条第7項に規定する労働者供給とは、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする」とされており、同法第44条において労働者供給事業を行うことは禁止されている。
(1)のとおり、照会者は個人ユーザーに対する給与の立替払いを行うにすぎず、また、個人ユーザーは、照会者のサービス上に表示されている各企業の求人について自らの意思に基づいて応募するか否かの判断を行うことができるのであれば、照会者と個人ユーザーの間に支配従属関係はない。したがって、照会書記載の事実を前提にすれば、当該事実が維持されている限りにおいて、照会者と個人ユーザーの関係は、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる」ものにあたらず、「労働者供給事業」に該当しないものと解釈される。
(3) 労働基準法(昭和22年法律第49号)第24条の定めにより、原則として、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
このうち、「直接労働者に」とある点については、第三者が賃金の支払を受託してその支払に関与した場合であっても、賃金が労働者の手に渡るまで使用者の賃金支払義務が消滅しない場合には、これに抵触しない。
また、「毎月一回以上、一定の期日を定めて」とある点についても、賃金支払期日を定めた上で、労働者の請求があった場合に、賃金の支払期日前であっても既往の労働に対する賃金を支払うことは、これに抵触しない。
なお、使用者が支払受託者である照会者に賃金の支払を委託すれば労働基準法第24条の義務が免責されるという性質のものではなく、所定支払期日に賃金の全額が現実に支払われなかった場合については、使用者が同条の違反に問われることとなるため、使用者は照会者における賃金の支払状況を確認するなど所要の措置を講ずる必要があること。また、照会者から労働者への支払に際しては、当該支払が賃金の支払であること(複数の使用者からの賃金が存する場合には、その内訳を含む。)が明らかとなるような表示ないし通知をすることが望ましいこと。
この点、照会者のサービスは、使用者が照会者による支払状況を把握できるようになっていること、また、照会者を通じて労働者に対して支払われる賃金は、使用者の名称が表示され振り込まれることから、どの使用者からの賃金の支払であることが明確になっており、かかるサービスは、労働基準法第24条に違反するものではない。
・・・だそうです。人材紹介事業は労働者派遣でもなければ労働者供給でもないそうです。私には詭弁に聞こえます。まあ、労働法に空いた穴をうまく見つけて利用しているような格好です。
因みに、ちょっと違います(こちらは違法な匂いがします)が、昔からこんなこともあるようです。
hamachan先生のブログで紹介されていますので引用させていただきます。
ホテル配膳人はなぜ日雇なのか
東京新聞に興味深い記事が出ています。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/38558(ホテル配膳人の失業相次ぐ 日雇い慣行、コロナ不況直撃 「常勤並み」でも休業手当なし)
ホテルのレストランや宴会、結婚式などで接客を担う「配膳人」。新型コロナウイルスの影響でホテルの利用者が激減していることを受け、休業手当などの補償も受けられないまま仕事を失う人が相次いでいる。ホテル業界では長年、配膳人をその日の需要に応じて日雇いで集める慣行が続いているが、実際には常勤に近い形で働く例も多い。専門家からは「慣行自体を見直すべきだ」という声も聞かれる。・・・
これ、多くの人が内心変だと思いながら、まあ昔からそうなっているからとそのまま来ている慣行なんですね。
ただね、実際は常勤で働いているのに形式上日雇ということになっているのには、かつて職業安定法により労働者供給事業がほぼ全面的に禁止されている中で、実態は労働者供給事業なのに、それを有料職業紹介事業だということにして、表面だけ取り繕ってやってきたことの帰結という面があるんですね。
その典型は、戦前労務供給事業でやっていた看護婦家政婦の派出事業ですが、病院の付添婦が賄えないので大変だということで、むりむり有料職業紹介だということでやれたために、その後マネキンとか配膳人とかも同じビジネスモデルに載っていったわけです。
もしそういう姑息なやり方をしないで、(後に派遣法で実現するように)正面から労働者派遣事業という形でやっていれば、派遣料でまかなえるものを、紹介手数料で賄わなければならないものだから、紹介しっぱなしでは取れるものもとれないので、日々紹介して日々手数料を取っているという形式を整えて、今までやってきたわけです。その帰結。・・・<引用終わり>
・・・とても勉強になります。時節柄(新型コロナの影響下で)非常に大変なことになっているものと思われます。
例えば『権利の乱用』として救済されないもんでしょうかねぇ、『信玄公旗掛松事件』みたいとか???
「日々紹介事業」は、紹介先企業と労働者がその都度(毎日ないし毎回)労働契約を締結し、その企業が『直接給料を支払う』という労基法上の賃金支払い原則が遵守されているかぎり、違法ではないようです。
下記の様な回答が厚労省から出されました。
確認の求めに対する回答の内容の公表
1.確認の求めを行った年月日
令和2年5月29日
2.回答を行った年月日
令和2年6月29日
3.新事業活動に係る事業の概要
以下の方法により、人材紹介サービス・労務管理システムの提供と併せて振込代行サービスを提供する。
<事業の流れ>
① サービス利用を希望する、使用者である法人顧客(以下「使用者」という。)と照会者にて、人材紹介サービス利用契約、労務管理システム利用契約及び振込代行サービス利用契約を締結する。
② 使用者が照会者に求人の申し込みを行い、照会者のシステム上において求人募集が行われる。
③ 使用者と求人に応募した労働者が雇用契約を締結し、労働者が使用者に労務提供する。④ 労務提供の完了した雇用に関し、使用者が照会者に対し給与立替払いを依頼する。なお、
使用者は照会者における賃金の支払状況を確認できる。
⑤ 使用者から照会者への依頼に基づいて、照会者は提携先金融機関へ振込指示を行う。なお、照会者が使用者から既に立替払いの依頼を受けた給与について、労働者が所定の給与支払日に先立って支払いを受けることを希望し、照会者に対して早期支払いの申請を行った場合、照会者は提携先金融機関に対して、所定の給与支払日より前の日付での振込指示を行う。
⑥ 振込指示を受けた提携先金融機関は、事前に立替用として作成された照会者の口座から、労働者の口座への給与の振込を実行する。ただし、この際の振込人名義は、使用者の名称が表示される。
⑦ 照会者から使用者に対し、立替分の費用を請求する。なお、労働者からは手数料は一切徴収せず、労働者が即日払いを希望する場合にも給与全額が振り込まれる。
⑧ 使用者は照会者に対し、上記請求額を支払う。
4.確認の求めの内容
(1) 照会者が提供する人材紹介サービス・労務管理システムと合わせて新サービスである振込代行サービスを提供することが、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第1項に規定する「労働者派遣」に該当しないことを確認したい。
(2) 本サービスを提供することが、職業安定法(昭和22年法律第141号)第4条第7項に規定する「労働者供給」に該当せず、同法第44条において禁止される「労働者供給事業」に該当せず、かつ、その脱法行為にも当たらないことを確認したい。
(3) 本サービスを利用して行う労働者への賃金支払方法が、労働基準法第24条第1項本文が定める賃金直接払いの原則に違反しないこと及び同条第2項本文が定める賃金毎月一回以上一定期日払いの原則に違反しないものであることを確認したい。
5.確認の求めに対する回答の内容
(1) 労働者派遣法第2条第1項に規定する労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」とされている。
照会者は、法人顧客及び個人ユーザーに対しそれぞれ職業紹介を行い、法人顧客と個人ユーザーとの間で雇用契約が成立した場合、法人顧客からの委託を受けて、個人ユーザーに対する給与の立替払いを行うにすぎない。したがって、照会書記載の事実を前提にすれば、当該事実が維持されている限りにおいて、照会者と個人ユーザーの関係は、「自己の雇用する労働者を他人の指揮命令下に労働させる」ものにあたらず、「労働者派遣」に該当しないものと解釈される。
(2) 職業安定法第4条第7項に規定する労働者供給とは、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする」とされており、同法第44条において労働者供給事業を行うことは禁止されている。
(1)のとおり、照会者は個人ユーザーに対する給与の立替払いを行うにすぎず、また、個人ユーザーは、照会者のサービス上に表示されている各企業の求人について自らの意思に基づいて応募するか否かの判断を行うことができるのであれば、照会者と個人ユーザーの間に支配従属関係はない。したがって、照会書記載の事実を前提にすれば、当該事実が維持されている限りにおいて、照会者と個人ユーザーの関係は、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる」ものにあたらず、「労働者供給事業」に該当しないものと解釈される。
(3) 労働基準法(昭和22年法律第49号)第24条の定めにより、原則として、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
このうち、「直接労働者に」とある点については、第三者が賃金の支払を受託してその支払に関与した場合であっても、賃金が労働者の手に渡るまで使用者の賃金支払義務が消滅しない場合には、これに抵触しない。
また、「毎月一回以上、一定の期日を定めて」とある点についても、賃金支払期日を定めた上で、労働者の請求があった場合に、賃金の支払期日前であっても既往の労働に対する賃金を支払うことは、これに抵触しない。
なお、使用者が支払受託者である照会者に賃金の支払を委託すれば労働基準法第24条の義務が免責されるという性質のものではなく、所定支払期日に賃金の全額が現実に支払われなかった場合については、使用者が同条の違反に問われることとなるため、使用者は照会者における賃金の支払状況を確認するなど所要の措置を講ずる必要があること。また、照会者から労働者への支払に際しては、当該支払が賃金の支払であること(複数の使用者からの賃金が存する場合には、その内訳を含む。)が明らかとなるような表示ないし通知をすることが望ましいこと。
この点、照会者のサービスは、使用者が照会者による支払状況を把握できるようになっていること、また、照会者を通じて労働者に対して支払われる賃金は、使用者の名称が表示され振り込まれることから、どの使用者からの賃金の支払であることが明確になっており、かかるサービスは、労働基準法第24条に違反するものではない。
・・・だそうです。人材紹介事業は労働者派遣でもなければ労働者供給でもないそうです。私には詭弁に聞こえます。まあ、労働法に空いた穴をうまく見つけて利用しているような格好です。
因みに、ちょっと違います(こちらは違法な匂いがします)が、昔からこんなこともあるようです。
hamachan先生のブログで紹介されていますので引用させていただきます。
ホテル配膳人はなぜ日雇なのか
東京新聞に興味深い記事が出ています。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/38558(ホテル配膳人の失業相次ぐ 日雇い慣行、コロナ不況直撃 「常勤並み」でも休業手当なし)
ホテルのレストランや宴会、結婚式などで接客を担う「配膳人」。新型コロナウイルスの影響でホテルの利用者が激減していることを受け、休業手当などの補償も受けられないまま仕事を失う人が相次いでいる。ホテル業界では長年、配膳人をその日の需要に応じて日雇いで集める慣行が続いているが、実際には常勤に近い形で働く例も多い。専門家からは「慣行自体を見直すべきだ」という声も聞かれる。・・・
これ、多くの人が内心変だと思いながら、まあ昔からそうなっているからとそのまま来ている慣行なんですね。
ただね、実際は常勤で働いているのに形式上日雇ということになっているのには、かつて職業安定法により労働者供給事業がほぼ全面的に禁止されている中で、実態は労働者供給事業なのに、それを有料職業紹介事業だということにして、表面だけ取り繕ってやってきたことの帰結という面があるんですね。
その典型は、戦前労務供給事業でやっていた看護婦家政婦の派出事業ですが、病院の付添婦が賄えないので大変だということで、むりむり有料職業紹介だということでやれたために、その後マネキンとか配膳人とかも同じビジネスモデルに載っていったわけです。
もしそういう姑息なやり方をしないで、(後に派遣法で実現するように)正面から労働者派遣事業という形でやっていれば、派遣料でまかなえるものを、紹介手数料で賄わなければならないものだから、紹介しっぱなしでは取れるものもとれないので、日々紹介して日々手数料を取っているという形式を整えて、今までやってきたわけです。その帰結。・・・<引用終わり>
・・・とても勉強になります。時節柄(新型コロナの影響下で)非常に大変なことになっているものと思われます。
例えば『権利の乱用』として救済されないもんでしょうかねぇ、『信玄公旗掛松事件』みたいとか???