弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

「高裁が認めた 選手会強気」転載拒否した 報知に「喝!」

2024年05月25日 09時13分52秒 | 裁判

私の本で画竜点睛を欠いたのは、掲載しようとした新聞記事のうち一件、著作権を有する新聞社の許諾が得られず、掲載できなかったことだ。
日本プロ野球選手会の団体交渉権を認めた私たちの東京高裁決定の直後の「高裁が認めた」今日団交「選手会強気」スト決行かと大見出し(写真)を打たれた記事。決定が団体交渉を格段に進展させ、その後のストライキにつながった事がよく分かる記事だった。
なぜ、この記事だけ許諾が得られなかったのか。
あいにく、それは「スポーツ報知」の記事だったと言えば、理由は容易に推察できよう。
日本プロ野球選手会の古田敦也会長(当時)からの会談希望に対し、歴史に残る大失言をしたあの主筆に部下が忖度したのか、あるいはお伺いを立てられた本人が黒歴史に触れられたくないと拒否したのか。
「たかが選手が!」「バカ言っちゃいかんよ」

https://bunshun.jp/articles/-/11812?page=1


被告本人は「勾引」できぬ 錯覚していた ボクに「喝!」

2024年05月24日 21時06分18秒 | 裁判

私の本は、出版社であるLABOが経営している東京・弁護士会館の地下書店や大阪高裁一階の書店、それから私の出身会である愛知県弁護士会館一階の書店以外の、一般の本屋の店頭にはまだ並んでいないようである。
Amazonで注文しようとしたら「品切れ」だったという声を複数聞いた。そういう皆様は、改めて上記QRコードで試みていただきたい。たぶん、まだ予約はできると思う。

さて、誤記のお詫びの2件目。
85頁2行目の「出頭に応じなければ、勾引して強制すること」を「出頭に応じなければ反対事実を認定すること」に訂正させていただく。
民事訴訟法上、勾引は証人にしか認められていない。

弁解させていただければ、このような錯覚を起こした原因がある。
最近担当していた裁判で、勾引する直前まで行った事件があった。その対象人物はまさに不法行為を行った「張本人」であり、別に被告になっている裁判も係属していて他の裁判官が担当していたが、たまたま私が担当したその裁判では、形式的には原告でも被告でもない第三者であった。
こういうややこしい事案で錯覚をしがちである。お恥ずかしい。


熊本判事の 起案の苦悩 思い知ったか? 階猛

2024年05月23日 23時53分47秒 | 裁判

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240403/k10014411431000.html
私は、岡口裁判官弾劾裁判に皆勤した船田元(ふなだはじめ)裁判長と階猛(しなたけし)裁判長代理は、罷免に反対する少数意見だったのではないかと推測している。
もし、そうだとすると、判決を起案した弁護士でもある階猛裁判員は、袴田事件の原一審死刑判決を起案させられた熊本典道判事補と同様の苦しみを味わったであろう。判決理由の端々に「罷免」の結論と整合しない認定判断が登場するのも、その現れではなかろうか。
熊本裁判官が起案した死刑判決も、多数通の自白調書につき、検察官に対する1通を除いて全て証拠能力を否定して却下していたという。


不当分限「一連」として 足し合わせたら なぜ「罷免」?

2024年05月22日 22時43分51秒 | 「喝!」判決

最後にもちろん裁判官弾劾裁判所の岡口裁判官罷免判決に「喝!」だ。
最高裁による2回の分限裁判の戒告処分をも疑問視するような判断を重ねながら、他の雑多かつ些細な表現行為を無理矢理「一連」とした上、なぜ罷免という結論になるのだろうか。
裁判所の判決であれば「理由齟齬(そご)」(理由の食い違い)という非難を免れないだろう。

もっとも、私も大阪高裁で担当した主任事件で、最高裁に判決を破棄された苦い経験がある。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89559
定年間際の教育公務員の戒告相当程度の3件の合わせ技で、懲戒免職に次いで重い「停職6月」とした懲戒処分を、私たちは重すぎて無効と判断したが、最高裁はあたかも当然のように裁量権の範囲として有効とした。
私に言わせれば、
1+1+1=60
というに等しいアンバランスな結論だ。最高裁判決の理由の最後の方に「個々の加重事由の考慮方法が形式的に過ぎるなど、直ちに首肯し難い点もあるものの」というくだりがあるように、合議ではさすがに疑問とする意見もあったのだろう。それでも、最高裁の厳罰主義ここに極まれりという印象を免れなかった。

民事・刑事の行き過ぎた厳罰主義に典型的に見られるように、世の中から冷静さが失われているのがとても心配だ。


「性的好奇心」で 判決を読む? 「そんな奴おれ へんやろ〜」

2024年05月21日 17時18分01秒 | 「喝!」判決

裁判官弾劾裁判所の岡口罷免判決にも見るべき点はあった(その3)。

最高裁岡口第二次分限裁判決定の事実認定も必ずしも支持しなかった。
最高裁決定は全員一致で、刑事事件投稿を「閲覧者の性的好奇心に訴え掛けて興味本位で強盗殺人及び強盗強姦未遂事件についての判決を閲覧するよう誘導しようとする投稿」であったとした。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89658

(写真)しかし、裁判官弾劾裁判所は、そうとは言えないとした。岡口さんは変態裁判官と誤解されたのだという見方は、私も同意見である。これが常識的な認定だろう。
性的好奇心に訴える文書図画がネット上に溢れている現代、そんな目的で難解な判決文を読む輩がいるとは思えない。
半世紀前の人気テレビ番組「ウィークエンダー」の事件再現ドラマや、週刊新潮の「黒い報告書」等はこれに近いが、それでも判決文は読まないだろう。
判例となる可能性があるものまでも含めて、性犯罪の判決を一律にウェブ掲載対象外としている最高裁の基準自体に疑問を抱く。東京高裁の担当裁判官たちも、まさか対象外だとは思わないで掲載したのだろう。


「訴訟提起を 一方的に 不当とした」との 不当決定

2024年05月20日 20時27分08秒 | 「喝!」判決

裁判官弾劾裁判所の岡口罷免判決にも見るべき点はあった(その2)。

最高裁岡口第一次分限裁判決定の事実認定を覆したのだ。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88055

(写真)上記判決の要旨の抜粋
つまり、犬事件投稿が「当該訴訟の原告が訴えを提起したことが不当であるとする一方的な評価を不特定多数の閲覧者に公然と伝えるものであった。」という最高裁全員一致の決定の事実認定は、大半が法律家ではない国会議員から見ても、いかにも無理があったということである。とても恥ずかしい。


国会議員に 覆された「寺西分限 決定」に「喝!」

2024年05月19日 15時35分33秒 | 「喝!」判決

実は先月の裁判官弾劾裁判所の岡口罷免判決にも見るべき点はあった。
裁判官も、国会・行政・司法府内部に対する批判は自由であり「尊重すべきである」と述べた部分だ(写真)。
これは、裁判官の立法に対する批判は三権分立に反するから懲戒理由になり得るなどという暴論を展開した最高裁「寺西分限決定」の判断を覆すものである。https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52233

「寺西分限決定」は当時の最高裁裁判官10対5の多数意見で戒告とした。多数意見に与した裁判官たちは真摯に反省してほしいと、当時の寺西弁護団の一員として思う。

おかげで、最高裁事務総局を批判する私の本も安心して出版することができた。


「共同親権」殺到すれば 家裁と地裁は 共倒れ

2024年05月18日 15時29分43秒 | 裁判

見えづらい家庭内…DV、虐待見抜けるか
家裁の人員体制に課題(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240517/k00/00m/040/262000c

現場の一審裁判官が心配しているのは、裁判官・調査官等の配置が元々手薄な家裁(本庁・支部・出張所)が、新たに認められた親権者変更申立事件でパンクしてしまうのではないかという事だ。
最高裁は、これまでも当然の予算要求をしようとしてこなかったので、とても心配だ。
もしも、さしたる増員もせず、地裁からのコンバートや兼務、家事調停官(弁護士の非常勤裁判官)で賄おうなどど考えているとしたら、過重負担に抗議しての退官がこれまで以上に増え、裁判所全体が崩壊の危機に瀕することになりかねない。

わしは知らんけど。


鹿児島から見りゃ「高裁」判事 本当は「宮崎 地裁」だが

2024年05月17日 21時53分17秒 | 裁判

昨日の問題の解答。
高裁の裁判官の一部は、実は地裁の裁判官である。
(写真)宮崎地裁の裁判官配置表(部分)
驚くべき人事配置だ。昨日の福岡高裁宮崎支部の裁判官配置表と見比べてほしい。

一審と二審が同じ裁判官というわけにはいかないので、宮崎地裁本庁の判決に対する控訴事件は福岡高裁宮崎支部専属の裁判官が担当し、鹿児島地裁など他の庁の判決に対する控訴事件は、宮崎地裁本庁の裁判官が高裁判事職務代行として担当しているという。
そこまでして、宮崎に配置する裁判官の人数を節約しなければならないのか。

私が任官した当時は「東京高裁判事職務代行」の東京地裁判事という辞令を受けた。当時は正式な東京高裁判事になるには18年の法曹経験が必要という内部基準があり、それは東京地裁の最も期が若い部総括よりも期が上でなければならないからと説明された。私は弁護士歴16年だったため、2年足りないとされた。
裁判所法上は、10年の判事補・弁護士経験で判事になれば高裁判事の資格があるのだから、そのような内部基準もおかしかった(ちなみに、私の任官の翌年に撤廃された。)と思うけれども、同じ裁判官が地裁と高裁を兼ねるのは、どう見てもおかしいだろう。
鹿児島の弁護士が黙っているのは、案外、宮崎の弁護士以外には、このような兼務をしている事に気づきにくいからかも知れない。


一審・二審が おんなじじゃかいよ 宮崎「どげんか せんといかん」

2024年05月16日 19時02分49秒 | 裁判

裁判所オンブズマンより出題。
(写真)これは福岡高裁宮崎支部の裁判官の配置表であり、上が民事部、下が刑事部。
(問題)この高裁支部特有の裁判官の配置上の問題点は何か。
(ヒント)宮崎地裁の裁判官の配置表を参照。
https://www.courts.go.jp/miyazaki/saiban/tanto/tiho/index.html