『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』 パナソニック汐留美術館

パナソニック汐留美術館
『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』
2024/4/6〜6/9


『カラカラ浴場 復元縮小模型』 模型制作:東京造形大学デザイン学科・室内建築専攻上田ゼミの学生

ヤマザキマリの漫画『テルマエ・ロマエ』をきっかけに、古代ローマと日本の浴場文化を紹介する展覧会が、パナソニック汐留美術館にて開かれています。

それが『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』で、会場にはナポリ国立考古学博物館所蔵の絵画、彫刻、考古資料をはじめ、日本の入浴文化に関する資料などが展示されていました。


『ヴィーナス』(ナポリ国立考古学博物館・50〜79年)

古代ローマの公共浴場を意味するテルマエは、4世紀になると大規模な浴場は11、小規模なものでは900を数えるほど存在すると、医療と健康と結びつきながら、ローマ市民が疲れを癒す場所として利用されてきました。


『ヘラクレスのトルソ』(個人蔵・1〜2世紀)

テルマエのルーツは古代ギリシャの運動施設の水風呂などにあったとされていて、それをローマ人は水道敷設といった高い技術力などによって、大規模な施設へと発展させました。

また単に身体を洗うために使われるだけでなく、付随する運動場や部屋などで運動や歓談をする場としても重要視されていて、大規模なテルマエには神々の像といった大理石彫刻なども飾られました。


『恥じらいのヴィーナス』(ナポリ国立考古学博物館・1世紀)

今回の展覧会では饗宴を楽しむ光景を描いた『ヘタイラ(遊女)のいる饗宴』や、温泉に祀られたというニンフを象った『アポロとニンフへの奉納浮彫』、さらに『恥じらいのヴィーナス』といった1〜2世紀の彫刻作品も少なからず出展されていて、いわば古代ローマの美術展としても捉えても見応えがありました。


三浦宏『湯屋模型』(個人蔵・1980年代)

このほか、江戸時代後期の湯屋の模型や昭和初期の花王シャンプー、そしてどこか懐かしいケロリンの桶といった日本の入浴文化に関する展示も楽しかったかもしれません。


古代ローマと日本の浴場文化を体感! パナソニック汐留美術館の『テルマエ』展の見どころ|Pen Online


ケロリンの桶などが並ぶ展示風景

GWを挟んで一部の作品が入れ替わりました。これ以降の展示替えはありません。


『テルマエ展』フォトスポット

一部エリアの撮影が可能です。6月9日まで開催されています。

『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』 パナソニック汐留美術館@shiodome_museum
会期:2024年4月6日(土)〜 6月9日(日)
休館:水曜日。ただし6月5日は開館。
時間:10:00~18:00 
 *入館は閉館の30分前まで。
 *5月10日(金)、6月7日(金)、6月8日(土)は20時まで開館。
料金:一般1200円、65歳以上1100円、大学生・高校生700円、中学生以下無料。
 *ウェブサイト割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分
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2024年5月に見たい展覧会【犬派?猫派?/吉田初三郎/TRIO】

4月は諸事情により一ヶ月ほどブログの更新を休ませていただきました。いかがお過ごしでしょうか。



GWも後半に入って遠出をされている方も多いかもしれません。東京から日帰り圏内で楽しめる5つの美術館についてFIGARO.jpにまとめました。お出かけの参考にしてくださると嬉しいです。

「ゴールデンウィークは、アートに触れる休日を。」madameFIGARO_jp


それでは5月に気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・『ライトアップ木島櫻谷—四季連作大屏風と沁みる「生写し」』 泉屋博古館東京(3/16~5/12)
・『没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる』 東京都写真美術館(3/16~5/12)
・『歌舞音曲鑑 北斎と楽しむ江戸の芸能』 すみだ北斎美術館(3/19~5/26)
・『月岡芳年 月百姿』 太田記念美術館(4/3~5/26)
・『古染付と中国工芸』 日本民藝館(3/30~6/2)
・『遠距離現在 Universal / Remote』 国立新美術館(3/6~6/3)
・『第8回横浜トリエンナーレ 野草:いま、ここで⽣きてる』 ヨコハマトリエンナーレ(3/15~6/9)
・『フランシス真悟 Exploring Color and Space─色と空間を冒険する』 茅ヶ崎市美術館(3/30~6/9)
・『青山悟 刺繍少年フォーエバー』 目黒区美術館(4/20~6/9)
・『サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品』 サントリー美術館(4/17~6/16)
・『茶の湯の美学 —利休・織部・遠州の茶道具』 三井記念美術館(4/18~6/16)
・『歸空庵コレクションによる 洋風画という風 ―近世絵画に根づいたエキゾチズム』 板橋区立美術館(5/3~6/16)
・『驚異の細密表現展—江戸・明治の工芸から現代アートまで』 横須賀美術館(4/20~6/23)
・『どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより』 東京ステーションギャラリー(4/27~6/23)
・『カール・アンドレ 彫刻と詩、その間』 DIC川村記念美術館(3/9~6/30)
・『マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア』 弥生美術館(4/6~6/30)
・『吉田克朗展―ものに、風景に、世界に触れる』 神奈川県立近代美術館 葉山館(4/20~6/30)
・『民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある』 世田谷美術館(4/24~6/30)
・『ブランクーシ 本質を象る』 アーティゾン美術館(3/30~7/7)
・『翻訳できない わたしの言葉』 東京都現代美術館(4/18~7/7)
・『石岡瑛子 I デザイン』 茨城県近代美術館(4/27~7/7)
・『犬派?猫派? —俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで—』 山種美術館(5/12~7/7)
・『Beautiful Japan 吉田初三郎の世界』 府中市美術館(5/18~7/7)
・『三島喜美代—未来への記憶』 練馬区立美術館(5/19~7/7)
・『いざなぎ流のかみ・かたち —祈りを込めたヒトガタたち—』 横浜人形の家(4/20~7/21)
・『未来のかけら: 科学とデザインの実験室』 21_21 DESIGN SIGHT(3/29~8/12)
・『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』 東京国立近代美術館(5/21~8/25)
・『デ・キリコ展』 東京都美術館(4/27~8/29)
・『生誕120周年 サルバドール・ダリー天才の秘密ー』 諸橋近代美術館(4/20~9/1)
・『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』 森美術館(4/24~9/1)
・『伊藤潤二展 誘惑』 世田谷文学館(4/27~9/1)
・『カルダー:そよぐ、感じる、日本』 麻布台ヒルズギャラリー(5/30~9/6)

ギャラリー

・『アピチャッポン・ウィーラセタクン「Solarium」』 SCAI THE BATHHOUSE(3/16~5/25)
・『第17回 shiseido art egg  岩崎宏俊展』 資生堂ギャラリー(4/23~5/26)
・『久保寛子展「鉄骨のゴッデス」』 ポーラ ミュージアム アネックス(4/26~6/9)
・『Human Baltic われら バルトに生きて』 スパイラルガーデン(5/27〜6/9)
・『開発の再開発 vol. 5 奥村雄樹』 gallery αM(4/13~6/15)
・『GOMA ひかりの世界』 GYRE GALLERY(5/4~6/29)
・『フェイイ ウェン|パン カー 二人展』 シャネルネクサスホール(5/22~7/15)
・『MARK LECKEY』 エスパス ルイ・ヴィトン 東京(2/22~8/18)

まずは山種美術館です。『犬派?猫派? ―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―』が開かれます。



『犬派?猫派? ―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―』@山種美術館(5/12~7/7)

これは江戸時代から現代までの犬と猫を描いた作品に着目するもので、俵屋宗達、伊藤若冲、円山応挙、長沢芦雪、歌川国芳といった絵師から、明治以降の竹内栖鳳、川端龍子、藤田嗣治、速水御舟、さらには山口晃などの作品が公開されます。


いずれも初公開となる『洋犬・遊女図屛風』や菱田春草『柏ニ小鳥』などの作品にも注目が集まりそうです。

続いては大正から昭和にかけて名所案内を多く描いた画家の展覧会です。府中市美術館にて『Beautiful Japan 吉田初三郎の世界』が行われます。



『Beautiful Japan の世界』@府中市美術館(5/18~7/7)

京都に生まれ、関西美術院で学んだ吉田初三郎は、鉄道沿線の名所案内などの商業美術家としての地位を獲得すると、ポスターなどのグラフィックや絵画作品などを制作しました。


展示では10点以上の大型肉筆鳥瞰図をはじめ、ポスターや絵葉書、さらには絵画作品などが公開されます。現実の景観を重ね合わせた上で生み出される、現実には存在しない風景を描いたという吉田の画業を知るまたとない機会となりそうです。

日仏を代表する3都市の美術館のコレクションが集結します。東京国立近代美術館にて『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』が開かれます。



『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』@東京国立近代美術館(5/21~8/25)

これはパリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館の3館のコレクションより、20世紀初頭から現代までのモダンアートを紹介するもので、絵画、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など150点の作品が公開されます。


「モデルたちのパワー」や「空想の庭」、「現実と非現実のあわい」など、3館の作品にて34のトリオを組むというユニークな構成にも期待ができそうです。

4月は関東以外へ出向く機会が多く、逆に東京近辺の美術館にあまり行くことができませんでした。今月は見落としていた展覧会を中心に追っていくつもりです。

しばらく不定期での更新となります。それではどうぞよろしくお願いします。
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2024年4月に見たい展覧会【板倉鼎・須美子/青山悟/ダリ】

今年は関東でも桜の開花がずれ込み、久しぶりに4月に入ってから見頃を迎えました。



4月は主に中旬から下旬にかけて多くの展覧会がスタートします。気になる展覧会をピップアップしてみました。

展覧会

・『生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真』 東京ステーションギャラリー(2/23~4/14)
・『生誕150年 池上秀畝—高精細画人—』 練馬区立美術館(3/16~4/21)
・『須藤玲子:NUNOの布づくり』 水戸芸術館(2/17~5/6)
・『花・flower・華 2024 —奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら』 山種美術館(3/9~5/6)
・『没後50年 福田平八郎』 大阪中之島美術館(3/9~5/6)
・『旧朝香宮邸を読み解く A to Z』 東京都庭園美術館(2/17~5/12)
・『ライトアップ木島櫻谷—四季連作大屏風と沁みる「生写し」』 泉屋博古館東京(3/16~5/12)
・『没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる』 東京都写真美術館(3/16〜5/12)
・『国宝・燕子花図屏風 デザインの日本美術』 根津美術館(4/13~5/12)
・『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024』 京都市内各所(4/13〜5/12)
・『大吉原展』 東京藝術大学大学美術館(3/26~5/19)
・『HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館』 千葉県立美術館(4/6~5/19)
・『出光美術館の軌跡 ここから、さきへⅠ 復刻 開館記念展—仙厓・古唐津・中国陶磁・オリエント』 出光美術館(4/23~5/19)
・『歌舞音曲鑑 北斎と楽しむ江戸の芸能』 すみだ北斎美術館(3/19~5/26)
・『没後100年 富岡鉄斎』 京都国立近代美術館(4/2~5/26)
・『月岡芳年 月百姿』 太田記念美術館(4/3~5/26)
・『雪舟伝説 —「画聖(カリスマ)」の誕生』 京都国立博物館(4/13~5/26)
・『古染付と中国工芸』 日本民藝館(3/30~6/2)
・『遠距離現在 Universal / Remote』 国立新美術館(3/6~6/3)
・『第8回横浜トリエンナーレ 野草:いま、ここで⽣きてる』 ヨコハマトリエンナーレ(3/15~6/9)
・『フランシス真悟 Exploring Color and Space─色と空間を冒険する』 茅ヶ崎市美術館(3/30~6/9)
・『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』 パナソニック汐留美術館(4/6~6/9)
・『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎 —「地獄極楽めぐり図」からリアル武四郎涅槃図まで』 静嘉堂文庫美術館(4/13~6/9)
・『空海 KŪKAI —密教のルーツとマンダラ世界』 奈良国立博物館(4/13~6/9)
・『青山悟 刺繍少年フォーエバー』目黒区美術館(4/20〜6/9)
・『板倉鼎・須美子展』 千葉市美術館(4/6~6/16)
・『宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO』 東京オペラシティ アートギャラリー(4/11~6/16)
・『サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品』 サントリー美術館(4/17~6/16)
・『茶の湯の美学 —利休・織部・遠州の茶道具』 三井記念美術館(4/18~6/16)
・『驚異の細密表現展—江戸・明治の工芸から現代アートまで』 横須賀美術館(4/20~6/23)
・『どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより』 東京ステーションギャラリー(4/27~6/23)
・『カール・アンドレ 彫刻と詩、その間』 DIC川村記念美術館(3/9~6/30)
・『マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア』 弥生美術館(4/6~6/30)
・『民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある』 世田谷美術館(4/24~6/30)
・『ブランクーシ 本質を象る』 アーティゾン美術館(3/30~7/7)
・『ホー・ツーニェン エージェントのA』 東京都現代美術館(4/6~7/7)
・『翻訳できない わたしの言葉』 東京都現代美術館(4/18~7/7)
・『ふたり 矢部太郎展』 PLAY! MUSEUM(4/24~7/7)
・『未来のかけら: 科学とデザインの実験室』 21_21 DESIGN SIGHT(3/29~8/12)
・『デ・キリコ展』 東京都美術館(4/27~8/29)
・『生誕120周年 サルバドール・ダリー天才の秘密ー』 諸橋近代美術館(4/20~9/1)
・『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』 森美術館(4/24~9/1)
・『伊藤潤二展 誘惑』 世田谷文学館(4/27~9/1)

ギャラリー

・『ピート・アウドルフのナチュラリスティックガーデン —いのちがめぐる庭』 ギャラリー エー クワッド(4/19~7/11)
・『大木裕之 アブストラクト権化』 ANOMALY(3/16~4/13)
・『第17回 shiseido art egg  野村在展』 資生堂ギャラリー(3/12~4/14)
・『高木由利子 写真展 カオスコスモス 弐 - 桜 -』 GYRE GALLERY(3/1~4/29)
・『TDC 2024 (TOKYO TYPE DIRECTORS CLUB EXHIBITION 2024)』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(4/1~5/15)
・『アピチャッポン・ウィーラセタクン「Solarium」』 SCAI THE BATHHOUSE(3/16~5/25)
・『第17回 shiseido art egg  岩崎宏俊展』 資生堂ギャラリー(4/23~5/26)
・『久保寛子展「鉄骨のゴッデス」』 ポーラ ミュージアム アネックス(4/26〜6/9)
・『開発の再開発 vol. 5 奥村雄樹』 gallery αM(4/13~6/15)
・『MARK LECKEY』 エスパス ルイ・ヴィトン 東京(2/22~8/18)

まずは1920年代のパリで才能を見出されものの、早世した画家夫妻を紹介する展覧会です。千葉市美術館にて『板倉鼎・須美子展』が開かれます。



『板倉鼎・須美子展』@千葉市美術館(4/6~6/16)

1901年に生まれた板倉鼎は、東京美術学校西洋画科に進んだのち、ロシア文学者である昇曙夢の長女須美子と結婚すると、ハワイを経由してパリへと留学しました。そこで夫妻とも油彩画を手がけると、サロン・ドートンヌに入選するなどして評価を得るものの、鼎はわずか28歳という若さにて客死し、さらに須美子もふたりの娘とともに亡くなってしまいました。


この板倉鼎・須美子の画業を顕彰するのが今回の展覧会で、須美子の代表作ともいえる「ベル・ホノルル」シリーズなど、実に約240点もの作品にてパリに生きた洋画家夫妻の軌跡をたどります。

続いては現代美術作家、青山悟の個展です。目黒区美術館にて『青山悟 刺繍少年フォーエバー』が行われます。



『青山悟 刺繍少年フォーエバー』@目黒区美術館(4/20〜6/9)

主に工業用ミシンを用いて作品を制作する青山は、これまで国内外の美術館での展覧会などに参加すると、人間や労働のあり方などを批評的に問いながら、刺繍の枠を超えた作品を発表してきました。

その青山の美術館での初個展が『青山悟 刺繍少年フォーエバー』で、出身地でいまも在住する目黒区内の出身校を描写した初期の作品から新作までが公開されます。

最後は日本で随一のダリ・コレクションを有する美術館からスタートするダリの展覧会です。諸橋近代美術館にて『生誕120周年 サルバドール・ダリー天才の秘密ー』が開かれます。



『生誕120周年 サルバドール・ダリー天才の秘密ー』@諸橋近代美術館(4/20~9/1)


これは1「ダリのペルソナの形成」、2「パリのシュルレアリストとダリ」、3「進化する芸術家 ダリ」の3章構成にて、ダリの生涯を初期から時間を追って紹介するもので、昨年のクラウドファンティングによって修復された『キャバレーの情景』といった2作品も公開(予定)されます。


*諸橋近代美術館(2021年11月に撮影)

また開館25周年を記念する本展は、同館史上初めて開催後に秋田、大分、神奈川、広島などの全国の美術館を巡回します。中世の馬小屋というイメージした美術館の建物をはじめ、磐梯高原の美しいロケーションを誇る同館ならではのダリ展となるかもしれません。

ブログはしばらく不定期での更新となります。それでは今月もよろしくお願いします。
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『第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)』 川崎市岡本太郎美術館

川崎市岡本太郎美術館
『第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)』
2024/2/17~4/14


村上力『學校』 特別賞

今年で27回目を迎える『岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)』が、川崎市岡本太郎美術館にて開かれています。

今回は621点の応募のうち22組の作家が入選し、専門家諸氏の選考を受け、岡本太郎賞以下、岡本敏子賞、そして過去最多の10組の特別賞が決まりました。


つん『今日も「あなぐまち」で生きていく』 岡本太郎賞

まず岡本太郎賞を受賞したのは1981年生まれのつんで、ダンボールで作られた巨大な団地のような立体作品、『今日も「あなぐまち」で生きていく』を展示していました。


つん『今日も「あなぐまち」で生きていく』 岡本太郎賞

ここでは団地の下の各部屋に付属された名簿を手に取ることができて、もうふやにくまん、それにプリンターなどと名付けられた、さながら住人と思しきキャラクターたちの紡ぐ物語を読むことができました。


三角瞳『This is a life. This is our life.』 岡本敏子賞

続く岡本敏子賞を受賞したのは1988年生まれの三角瞳で、ポリエステルの薄く白い布に人の顔を刺繍した『This is a life. This is our life.』を公開していました。


三角瞳『This is a life. This is our life.』 岡本敏子賞

4平方メートル四方に連なる布には、男女を問わずにさまざまな表情をした千人以上もの人の顔が象られていて、赤い糸で表現された遺伝子に束ねられた存在である人間と、そこから抗えない生命の設計図を示していました。


フロリアン・ガデン『Anomalies-poétiques/詩的異常』 特別賞

空間を大胆に用いた大掛かりなインスタレーションが目立つ中、日常に潜む異世界などを幻視的に表現したフロリアン・ガデンの『詩的異常』も魅惑的だったのではないでしょうか。


フロリアン・ガデン『Anomalies-poétiques/詩的異常』 特別賞

一見何気ない都市や郊外の風景を描きつつ、そこへ現実には存在し得ない巨大な昆虫やカエル、それにかっぱなどを描きこんでいて、中には駅のホームで待つ人々が皆、植木鉢を持っているシュールな光景なども表されていました。


野村絵梨『垢も身のうち』

また同じく日常を舞台にした作品といえば、野村絵梨の『垢も身のうち』も印象に深かったかもしれません。


野村絵梨『垢も身のうち』

ここでは作家本人が暮らす部屋をモデルに、3DCGで人形遊びのおもちゃのようなかたちにデフォルメし、そのデザインをもとにスタイロフォームで彫刻として表現していて、家具や洋服といった造形そのものにも魅力を感じました。


クレメンタイン・ナット『POT-PLANTS』 特別賞

なお会期中、3月17日までは「お気に入りを選ぼう!」と題し、お気に入りの作品を投票するコーナーが設置されています。投票の結果は3月22日(予定)に同館のWEBサイト上にて発表されるそうです。


会場内の撮影も可能です。4月14日まで開かれています。

『第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)』 川崎市岡本太郎美術館@taromuseum
会期:2024年2月17日(土)~4月14日(日)
休館:月曜日。3月21日(木)。
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
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『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』 福田美術館

福田美術館
『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』
2024/1/18~4/7


竹内栖鳳『南支風光』 1938年

1864年に京都に生まれた竹内栖鳳は、先人たちの日本画の技に西洋の技法などを取り入れた自らの芸術を確立すると、京都画壇を代表する画家として活躍しました。

その竹内栖鳳と弟子たちに着目したのが『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』で、栖鳳をはじめ、上村松園、西村五雲、また小野竹喬、土田麦僊といった後進の画家とともに、戦後の小野竹喬、福田平八郎らの作品が展示されていました。


竹内栖鳳『水風清』 1935年頃

まず冒頭に並ぶのが栖鳳の作品で、若き栖鳳の描いた『秋夕図』や、群青や緑青を用いて波の打ち寄せる浜辺を描いた『春の海』、それに鶺鴒が可愛らしい姿を見せる『水風清』などに目が止まりました。


竹内栖鳳『春郊方牛図』 1902年頃

一際目立つのは、春の野に放たれた牛たちをモチーフとした『春郊方牛図』で、右に手前を見やる大きな牛を表しつつ、左には牛が群れる光景を俯瞰するようにして描いていました。


上村松園『しぐれ』 1940年頃

こうした栖鳳に続くのが弟子たちの作品で、筆墨は栖鳳を凌ぐとも評価された西村五雲の『高原之鷲』をはじめ、凛とした佇まいが美しい上村松園の『しぐれ』、はたまた赤い鶏頭に蔓を伸ばして咲く朝顔を描いた土田麦僊の『鶏頭花』などが印象に残りました。


土田麦僊『ヴェトイユ風景』 1922年

この土田麦僊が西洋絵画の流れを日本画の世界に取り込もうとしたのが『ヴェトイユ風景』で、単純化した家並みなどを岩絵具を用いつつ色鮮やかに描いていました。


『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』展示作品

戦後に活動した小野竹喬、福田平八郎、池田遙邨らの作品にも優品が目立っていたかもしれません。


池田遙邨『旭譜』 1982年

電線に止まる鳥たち朝日に浮かぶ様子を描き、それを五線譜に見立てたという池田遙邨の『旭譜』にも心惹かれました。


土田麦僊『鶏頭花』 1915年頃

展示替えの情報です。3月5日の休館日を挟み、一部の作品が入れ替わります。(本エントリは前期期間中の展示作品です。)

『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』作品リスト(PDF)
前期:1月18日(木)~3月4日(月)
後期:3月6日(水)~4月7日(日)
*作品点数:前期32/後期35/通期31


なお同館では先日、伊藤若冲が晩年に描いたとされる「果蔬図巻」が新たに発見されたことを発表し、美術ファンの中で注目を集めました。

「世界新発見の伊藤若冲の巻物『果蔬図巻(かそずかん)』が福田美術館のコレクションに加わり、同館で記者発表会を実施」福田美術館プレスリリース(PDF)

『果蔬図巻』は10月から開かれる展覧会にて公開されます。詳しくは上記リンク先リリースをご覧ください。


竹内栖鳳『海光清和』 1926年頃

4月7日まで開催されています。

『進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち』 福田美術館@ArtFukuda
会期:2024年1月18日(木)~4月7日(日)
 *前期:1月18日(木)~3月4日(月)、後期:3月6日(水)~4月7日(日)
休館:3月5日(火)
時間:10:00~17:00。最終入館は16時半まで。
料金:一般・大学生1500(1400)円、高校生900(800)円、小中学生500(400)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *嵯峨嵐山文華館両館共通券あり。
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
交通:嵐電(京福電鉄)嵐山駅下車、徒歩4分。阪急嵐山線嵐山駅下車、徒歩11分。JR山陰本線(嵯峨野線)嵯峨嵐山駅下車、徒歩12分。
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