働いている職場の屋上には、庭のような広場がある。
そこの周りには椅子が置いてあり、煙草を吸ったり雑談をしたりすることができようになっている。
15cmくらいの段差で不自然にならされた土とコンクリートは、本当は境目なんてないくせに、区切られている。
見える景色もビルばかりで空気さえも汚れているように感じた。
そんな救いようのない場所で煙草を吸っていたら、僕ら側に青虫が這っていた。
青虫の背中は秋の紅葉に擬態化したような美しい赤で、腹は春の瑞々しい葉のような青だった。
この生き物は元々這って進むようにできていると思っていたが、ぐいぐいっと筋肉を収縮させ二三回進むとコロッと横に回ってしまう。
進むのはあまり得意ではないらしい。
はてさてこの子はどこに行きたいのだろうか?
おそらく土のあるほう、木々の生えている場所に行きたいのだろう、と考えてみる。
しかし、そこに行くには15cmの段差を越えなくてはならない。
平地を進むのもままらないこの生き物がとても登れるとは思えない壁だ。
この子は誰かに踏みつぶされてしまうか、どこにも辿り着くことのないまま朽ちるだろう。
なにかやりきれない気持ちになる。
目的地と思われる土のほうに僕が運ぶことを考える。見えざる手。
でも、不自然な庭を作るための農薬が彼をまた殺すだろうと思いやめた。
行き場のない現状。
ユートピアだと思っている場所。
否定された未来。
この青虫に自分と社会と未来を見立てた僕は、きっともう駄目なのだろう。
そこの周りには椅子が置いてあり、煙草を吸ったり雑談をしたりすることができようになっている。
15cmくらいの段差で不自然にならされた土とコンクリートは、本当は境目なんてないくせに、区切られている。
見える景色もビルばかりで空気さえも汚れているように感じた。
そんな救いようのない場所で煙草を吸っていたら、僕ら側に青虫が這っていた。
青虫の背中は秋の紅葉に擬態化したような美しい赤で、腹は春の瑞々しい葉のような青だった。
この生き物は元々這って進むようにできていると思っていたが、ぐいぐいっと筋肉を収縮させ二三回進むとコロッと横に回ってしまう。
進むのはあまり得意ではないらしい。
はてさてこの子はどこに行きたいのだろうか?
おそらく土のあるほう、木々の生えている場所に行きたいのだろう、と考えてみる。
しかし、そこに行くには15cmの段差を越えなくてはならない。
平地を進むのもままらないこの生き物がとても登れるとは思えない壁だ。
この子は誰かに踏みつぶされてしまうか、どこにも辿り着くことのないまま朽ちるだろう。
なにかやりきれない気持ちになる。
目的地と思われる土のほうに僕が運ぶことを考える。見えざる手。
でも、不自然な庭を作るための農薬が彼をまた殺すだろうと思いやめた。
行き場のない現状。
ユートピアだと思っている場所。
否定された未来。
この青虫に自分と社会と未来を見立てた僕は、きっともう駄目なのだろう。