「何枚、お切りいたしましょう・・」
「・・・かしこまりました。」
低音な美声、ダンディーな笑みで会話する
ローストビーフコーナーのシェフ。
口数は少ないが、そのふくよかな顔立ち、表情からは
ビッグダディ、もしくは北斗の拳「山のフドウ」を連想させる。
そのフドウシェフが巨大な肉塊から、
極薄ローストビーフを2枚切り分けてくれた。
仕上げは、すりニンニクを添え、グレービーソースを走らせる。
これは、自分でやらなくてはならない。
余談だが、私は2周目にコレらの存在に気づいた。
よって1周目のローストビーフは味付け無しで食べている。
ようやく席に戻り、食事を始める。
みんな各々でチョイスした料理を見せ合ったり、交換したりと、
バイキング定番トークが弾む。
「あーそれ美味しそー! どこにあんの?」
「でもソレ、パクチー入ってない。」
「マーヤさん、ケーキ行くの早くない?!」
和やかな時間が続く。
と、長テーブルの端から、一人の男が席を立つ。
そういえば、みんなが歓談してる中、この男だけは会話に入ってこなかった。
「食」の一点に集中していたからだ。
男は、口をモゴモゴさせながら席を立ち、慣れた足取りで
ローストビーフへと向かう。
彼が、席を立つと同時に反応し、ダンディーな笑みで手元のローストビーフを
切り始めるフドウシェフ。
「阿吽の呼吸」だ。
出会って数分のしんごろうとフドウシェフ。
彼らの間には、我々には見えない、聞こえない何かがある。
そうして、二人の達人が相対する。
しんごろうが、ローストビーフコーナーに着くころには
数枚の肉が仕上がっている。
「肉を切る人」と「肉を食べる人」
この辺の段取りの良さが二人のレベルの高さを物語っている。
通常、3ミリに満たない厚さに切られる肉だが、
しんごろうのは、異例の厚さ1㎝ほどはあったと思う。
これは、名門ホテルにあるレストランで起きた実話である。
つづく
前川玄次郎
「・・・かしこまりました。」
低音な美声、ダンディーな笑みで会話する
ローストビーフコーナーのシェフ。
口数は少ないが、そのふくよかな顔立ち、表情からは
ビッグダディ、もしくは北斗の拳「山のフドウ」を連想させる。
そのフドウシェフが巨大な肉塊から、
極薄ローストビーフを2枚切り分けてくれた。
仕上げは、すりニンニクを添え、グレービーソースを走らせる。
これは、自分でやらなくてはならない。
余談だが、私は2周目にコレらの存在に気づいた。
よって1周目のローストビーフは味付け無しで食べている。
ようやく席に戻り、食事を始める。
みんな各々でチョイスした料理を見せ合ったり、交換したりと、
バイキング定番トークが弾む。
「あーそれ美味しそー! どこにあんの?」
「でもソレ、パクチー入ってない。」
「マーヤさん、ケーキ行くの早くない?!」
和やかな時間が続く。
と、長テーブルの端から、一人の男が席を立つ。
そういえば、みんなが歓談してる中、この男だけは会話に入ってこなかった。
「食」の一点に集中していたからだ。
男は、口をモゴモゴさせながら席を立ち、慣れた足取りで
ローストビーフへと向かう。
彼が、席を立つと同時に反応し、ダンディーな笑みで手元のローストビーフを
切り始めるフドウシェフ。
「阿吽の呼吸」だ。
出会って数分のしんごろうとフドウシェフ。
彼らの間には、我々には見えない、聞こえない何かがある。
そうして、二人の達人が相対する。
しんごろうが、ローストビーフコーナーに着くころには
数枚の肉が仕上がっている。
「肉を切る人」と「肉を食べる人」
この辺の段取りの良さが二人のレベルの高さを物語っている。
通常、3ミリに満たない厚さに切られる肉だが、
しんごろうのは、異例の厚さ1㎝ほどはあったと思う。
これは、名門ホテルにあるレストランで起きた実話である。
つづく
前川玄次郎