忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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映画「青春18×2 君へと続く道」それでも人が旅に出る理由

2024年05月05日 | 作品紹介(映画・ドラマ)


▼映画「青春18×2 君へと続く道」それでも人が旅に出る理由



05月03日公開■邦画:青春18×2 君へと続く道

「余命10年」の藤井道人監督が、台湾の人気俳優シュー・グァンハンと
「まともじゃないのは君も一緒」の清原果耶を主演に迎えて贈る日台合作のラブストーリー。
18歳の頃の恋を振り返るため、36歳になった一人の青年が想い出を辿る旅に出るロードムービー。

「新聞記者」で社会派の若手監督として注目された藤井監督も
30億超えのヒットとなった「余命10年」やNetflixで配信中の「パレード」では
恋愛映画の名手としての才能も披露し、硬軟併せ持つ作風は今後の日本映画界でさらに存在感を増していくに違いない。
共演はジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳。

ダブル主演を務めた清原果耶の上手さは相変わらずなのだが
台湾のスター俳優であるシュー・グァンハンがとんでもなく良い芝居をしているので
本作がヒットすれば日本での人気が爆発するのではないか。
清原果耶も若手女優ではトップクラスの安定感を誇るだけあり、言葉の壁を感じさせない演技で魅せてくれる。
主題歌の「記憶の旅人」はMr.Childrenの桜井和寿が本作の脚本を読み書き上げたオリジナル新曲。
台本を読んだ桜井がオファーを受けるかどうかの返答を事務所が検討している間に
もうデモを作り上げてしまったとのこと。それほどのイスピレーションを感じる本だったということか。



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(c)2024「青春18×2」film partners


当BLOGでは「青春映画は台湾が名作揃い」ということをこれまで何度か書いてきた。
「藍色夏恋」「あの頃、君を追いかけた」「言えない秘密」「GF*BF」など、忘れられない作品が多いが
大泣きした記憶はどの作品にもなく、気がつけば心の奥底に住み着いてしまったような感覚。
台湾映画の特徴は、同じアジア映画でも韓国や日本に比べて穏やかな空気が流れている。
「言えない秘密」のような少しファンタジックな作品においてもそれは同じで
登場人物の話す言葉や、作中で流れるBGMや、喜怒哀楽の表現に抑制が効いている(ものが多い)。
日本や韓国ではオーバーな感情表現で泣き叫ぶ場面でも、台湾では静かに涙を流すだけであったり
嬉しい時も歓声と共に抱き合うのではなく、別れを告げ、振り返って密かにガッツポーズを取るような、
そんな表現が多く、それらがいちいち私の琴線に刺さるのである。
「青春18×2 君へと続く道」は日本と台湾の合作だけあり、背後に流れる空気を大切にする台湾的演出と、
「感動的なシーン」を直接的に用意する日本的サービス精神が上手くマッチしており
静かな台湾と、泣きの日本のそれぞれの特徴を作品をして語っている。
後半、一気に邦画特有の「泣かせ」演出が強くなってしまうのだけは惜しいが、全体的には良く踏ん張った。


(c)2024「青春18×2」film partners


ストーリーは比較的オーソドックスなラブストーリー
(*少しでも触れればオチまでわかってしまうほどシンプルなので敢えて本記事では言及しない)だが、
舞台、構成、言葉選び、キーとなるアイテムなどが考えうる最良・最高のレベルで揃えられていて驚かされる。
過去の藤井作品と比較しても突出して充実しているのは、台湾側のサポートあってのことなのだろう。
バイクの二人乗りで夜の街を回ったり、ランタンを飛ばしたり、美しい夜景での会話や
最も印象的だった電車の中での小さな「帰らないで...」など、この歳の私が見ても身悶えするほど
素敵なシーンが洪水のように用意されている。
日本のロケーションでも、トンネルを抜け視界が開けた瞬間の一面の雪景色や、
鎌倉の夜の居酒屋でのジョセフ・チャン(「GF・BF」)とのやり取りなど
どのシーンで一時停止してもスチールになりそうな美的感覚が123分途切れないのは凄い。
正直、良くここまで貫き通せたなと思う。

藤井監督はNetflixで配信中の「パレード」でも監督個人の思慕の念を登場人物に投影していたが、
本作では監督が18歳の時に影響を受けたであろう岩井俊二監督の名作「Love Letter」やMr.Childrenが、
18歳の頃の二人と、36歳になった二人の物語を動かす上で重要な鍵として登場させている。
ウォークマンやスラムダンクなどのアイテムの使い方は、岩井俊二というよりはむしろ
岩井監督の助監から出世した行定勲監督の「世界の中心で、愛をさけぶ」に近い。
セカチュー公開が2004年公開とちょうど20年前なので、監督も見ていたに違いない。
アン・リー監督が通っていたという映画館、私もいつか行ってみたい。


(c)2024「青春18×2」film partners


本作を傑作たらしめたのは、間違いなくシュー・グァンファンである。
日本人キャストは「宇宙でいちばんあかるい屋根」で組んだ清原果耶をヒロインに、
「余命10年」の松重豊、「余命〜」「ヴィレッジ」の黒木華など気心の知れた俳優を起用しているが
この物語を映画にする上で、よくぞこれ以上ない適役を見つけてきて、また先方から快諾を得られたなと思う。
シューがオファーを引き受けた時点で、この映画は名作への切符を手にしたも同然だと
監督も感じたのではないだろうか。
野心も希望もなく漫然と青春を浪費している18歳の青年が、
18年後、叶えた夢を手放した36歳にして傷心の旅へと出発する。
二つの時代をザッピングしながら進行するストーリーの中で、
シューはどちらの時代でも『今』を生きている等身大の人物に見えて、しかし同じ人物にも見える。
この離れ業には本当に感服した。
さらに、日本語が堪能だからオファーしたのかと思いきや
クランクインの数週間前から集中して練習しただけなのだとか。
なんだその猛スピードラーニングは。
シュー・グァンハンは2023年公開の台湾映画で国内の年間興収No.1となった
「僕と幽霊が家族になった件」(Netflixで配信中)で世界的なスターへの階段を上る真っ最中であり
数年後ならばもうこのキャスティングは実現しなかったかも知れない。
ちなみに、宮﨑駿監督の監督復帰作「君たちはどう生きるか」の台湾吹替え版では
日本で菅田将暉が担当したアオサギ役の声優を担当している。
Amazonプライムでは、ブレイクのきっかけになったドラマ「時をかける愛」が見放題配信中、
Netflixでは「僕と幽霊が〜」に加え、映画「ひとつの太陽」も配信中。

台湾まで旅をしてきたヒロイン・アミと運命的な出会いを果たした主人公ジミーが、
18年を経て思い出の地を巡る旅に出ようと決意したのはなぜだったのか。
傷ついている時に、傷口を広げるかも知れない旅に出かける意味とは。
それは、旅には二度と会えないかも知れない人との一期一会の奇跡がたくさん散りばめられているからではないか。
「もう一度」のない出会いの数々に、生きること自体が奇跡の連続であることを知る。
電車の車中で話しかけてくる気の良さそうな青年(道枝駿佑)と見た景色や、
立ち寄ったネットカフェの店員(黒木華)との予期せぬドライブは、旅でしか起こり得ない奇跡の連続と言える。
そういった出会いと別れを通して、今は傷心の自分もまだ道半ばであり
これからの長い長い人生において希望も選択肢も無限にあることを学ぶのだ。

映画「青春18×2 君へと続く道」は5月3日より公開。

ちなみに、auスマートパスユーザーであれば上映中いつでも1,100円で観られる特典もついているので
スマパスユーザーの方はクーポン取得をお忘れなく。




配信中■邦画:Love Letter

本作は岩井俊二監督、特に「Love Letter」へのオマージュが込められているが
見たことがあってもなくても楽しめる。
予習の必要はないが、補完として見ておいても良い作品。
Amazonプライムでは有料レンタルだが、Netflix、U-NEXT、FODプレミアム、DMM TVでは見放題配信中。
(*2024年5月5日現在)



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