Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

2023年を振り返る〜極私的映画鑑賞記録〜

2024-01-13 08:57:00 | cinema
放置しているが忘れたわけではないこのブログ(汗)

2023年は(も)公私共に波瀾万丈
な割にはそれなりに色々観ることができました
が、一年前くらいのことがもう遠い昔のよう…

さて、観たものリスト↓

『バッファロー'66』ヴィンセント・ギャロ
『アメリカン・ユートピア』スパイク・リー
『スパークス・ブラザーズ』エドガー・ライト
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』ジュゼッペ・トルナトーレ
『ホット・ロック』ピーター・イェーツ
『何かいいことないか子猫チャン』クライヴ・ドナー
『世界で一番美しい少年』クリスティーナ・リンドストロム、 クリスティアン・ペトリ
マグノリア
『メイド・イン・USA』ジャン=リュック・ゴダール
『カルメンという名の女』ジャン=リュック・ゴダール
『1999年の夏休み』金子修介
『フェイブルマンズ』スティーヴン・スピルバーグ
『コンペティション』ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
『夢みるように眠りたい』林海象
『PLAN75』早川千絵
『トップガンマーヴェリック』ジョセフ・コシンスキー
『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』入江悠
『夏の妹』大島渚
『ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』マーティン・スコセッシ
『こうのとり、たちずさんで』テオ・アンゲロプロス
科捜研の女 -劇場版-』兼崎涼介
『EOイーオー』イエジー・スコリモフスキ
『惑星ソラリス』アンドレイ・タルコフスキー
『マックス、モン・アムール』大島渚
『インディー・ジョーンズと運命のダイヤル』ジェームズ・マンゴールド
『Ryuichi Sakamoto:CODA』スティーブ・ノムラ・シブル
『ジェーンとシャルロット』シャルロット・ゲンズブール
『子猫をお願い』チョン・ジェウン
『ARGO』ベン・アフレック
『アンドレイ・ルブリョフ』アンドレイ・タルコフスキー
『シャドー』ダリオ・アルジェント
『未来世紀ブラジル』テリー・ギリアム
『儀式』大島渚
『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ
『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』ブレット・モーゲン
『12モンキーズ』テリー・ギリアム
『ドリー・ベルを覚えているかい?』エミール・クストリッツァ
『メッセージ』ドゥニ・ヴィルヌーヴ
『私立探偵濱マイクシリーズ「遥かな時代の階段を」』林海象
『メグレと若い女の死』パトリス・ルコント
『ラ・ポワント・クールト』アニエス・ヴァルダ
『オペラ・ムフ』アニエス・ヴァルダ
『レミニセンティア』井上雅貴
『PERFECT DAYS』ヴィム・ヴェンダース

あまり映画館に行けなかったので、録画やDVD、サブスクが多いです。

⚫︎映画館でみたものとしては…

『フェイブルマンズ』は流石のスピルバーグで、彼の映画の底流である郊外のメンタリティを正面から扱って質が高いという感じ

『PERFECT DAYS』ヴェンダースの新作は、題材や舞台が日本であることを意識したのか、抑制の効いたスタイルで良い映画。ヴェンダースらしい臭さも隠しきれないが、まあ仕方がない。
巷では福祉行政との関わりでその欺瞞性を隠蔽してしまう的な批判もあるようであるが、映画自体はそのような作りにはなっていなかったと思えたな。

『EO〜』はスコリモフスキらしいパワフルで容赦のない映画。この期に及んでまだ観たこともない映像を生み出せる凄さ。

…という大御所(?)の一方で、『ネメシス〜』もわざわざ豊洲まで行っで観たりして笑(好きなんだもん)

『ネメシス〜』は、映画版はそれほどでもないけれどTVドラマでは明らかに濱マイクシリーズやあぶない刑事あるいはそれらがかつて参照したであろう和製フィルムノワール諸作へのオマージュでもあり、好感を持って観ていたし。

その流れもあってWOWOWで私立探偵濱マイクシリーズ3本をやったのを年越しで観つつあり、これも大変面白い。
たまたま林海象監督の『夢みるように眠りたい』も再鑑賞し、その天才的なセンスを改めて認識したり。

⚫︎家で観たものとしては…

大島渚を何本か。大島渚はやはり見過ごしてはいけない作家だとしみじみ。『マックス〜』が意外なほどフランス映画らしく出来ていてびっくり。

音楽系の映画も割と多く。『アメリカン・ユートピア』の奥深さ。『スパークス〜』の異端ぶり。

『PLAN75』は素晴らしいものでした。この監督の活動環境はどんな感じなのだろうか。なんとなく日本では大事にされなさそう…
『レミニセンティア』も同様に大事にされなさそう。こういう人たちをちゃんと支援していけないものだろうか。

『子猫をお願い』も再鑑賞だけどやはり素晴らしい映画。ポン・ジュノも『パラサイト〜』も好きだけど、チョン・ジェウンこそしっかり評価したい感じ

…とりあえずこのくらいにいたします

世界に平和が訪れますように
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「ドリー・ベルを覚えているかい?」エミール・クストリッツァ

2023-11-13 02:16:00 | cinema
放置気味のブログで恐縮です

クストリッツァのデビュー作が日本初公開ということで行ってきました

以前英語字幕だったか字幕なしだったかで観たことがあり、過去記事にありました
(この過去記事がなんだか偉そうで恥ずかしい笑)


偉そうな過去記事にも関わらず、これまた恥ずかしいことに内容はすっかり忘れていて、ほとんど初見気分でもありました

いい加減なのに暴君みたいな父親の濃さに圧倒されるものの、世代交代に向かう親子の心持ちの変化がまたさりげなく感じられて、人としての共感を呼び起こす

人が生き生きと生きることの豪快さと物悲しさ
こういう感覚はなかなか今の社会には無いね

復活後の恵比寿ガーデンシネマにて
休館前と変わらぬ館内の雰囲気にほっとする
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「映画ネメシス 黄金螺旋の謎』入江悠

2023-07-24 14:11:00 | cinema



ここをしばらくご無沙汰してしまい
反省してこの間に観たものなどを駆け足で記しておこうと思いました

ということでまずネメシス
テレビシリーズ好きだったので、映画も。

横浜港町がメインの舞台で、かつあぶない刑事や濱マイクシリーズのエッセンスを散りばめ、リアルにジャック&ベティが出てくるし、その地下に謎のアングラエンジニアが生息しているとか、これは好み。

もともとエンタメに徹する気合いに満ちたシリーズな上に、今回の映画も99分という潔さで、これもなんか好み。

な一方で、すごい期待できるわけでもないので、実に気を抜いて楽しめるというものです。これぞ娯楽。

螺旋構造を時間軸にも地理的にも援用した作りがよく考えられてよい
キャラクターよりもむしろこの構造が主役なのかも。ラスボスとか黒幕とかそういう巨悪のインパクトはこの構造の中でどんどん無害化されていく感じがする。
世の中に受けるかどうかはわからないがここが面白いところだと思う。

刑事三人組がもうちょっと出てくるとさらに好みではあるかも。彼らの悲しい役どころは悲しい。

ともみちゃんももっと精神的に存在感を出してよかったと思う。
まあなんとなくだけど。
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「モリコーネ 映画が恋した音楽家」ジュゼッペ・トルナトーレ

2023-02-14 10:29:00 | cinema

「モリコーネ 映画が恋した音楽家」ジュゼッペ・トルナトーレ

やっとこさ観に行けたモリコーネ
若いころから晩年まで、割とまんべんなく追った印象のドキュメンタリーでした。

映画の音楽をやることで、アカデミックな師匠や同僚との軋轢などから生まれる罪悪感のようなものを
ずっと背負っていたという話が印象的。

重厚で感傷的なサウンドとメロディで魅せる一方で旺盛な実験心を持った作品もあり、
職人と開拓者が同居する稀有な存在だったが、
その罪悪感を音楽の芸術性(というか映画音楽としての芸術性の追求か)を高めることで克服していく過程でもあったのだろう。

後年にはその業績、あるいは映画音楽の芸術的な価値が世界的に認められるとともに、
モリコーネを批判した師匠との和解もあり、観ているこちらもああよかったなと感慨深し。。

このドキュメンタリーでは、様々な映画の具体的なカットを取り上げて、
当初監督が想定したなどの音楽が付いたバージョンと、のちにモリコーネが作曲したバージョンを比較するような箇所も多く、
モリコーネが持つ、映画のシーンをとらえて音楽として呼応する才能を、我々にも実感として与えてくれるのが面白い。

***

さて、と、
私的にはモリコーネというと…

だいたいは子供のころからときどきTV放映される「夕陽のガンマン」などのセルジオ・レオーネ。
イーストウッドのレオーネは大体(TVで)観ているのだが、具体的なシーンの記憶は完全にごっちゃ。

次に意識されたのはおそらく「エクソシスト2」のあの禍々しい音楽
具体的に似ているということでもないが、なぜかジョージ・クラムの「ブラック・エンジェルズ」のようなやはり禍々しい音楽に通じる印象がある。
バズズのテーマのロックバンドバージョンもかっこよくて好きである。
(あれはダリオ・アルジェント味(というかゴブリン味)があるね)

そういうモリコーネの音楽ということを認識しつつ観たのがベルトルッチ「1900年」で、
あのテーマ曲は、映画館で一度観ただけなのに後日もそれなりに歌えたくらいに印象的。
(後にDVDで再観したのでみずみずしい記憶としてはもう残っていないが)

パゾリーニもだいたいモリコーネなんだが、あまり印象に残っていない。
たぶん絵の印象が凄すぎて音に気が回らないのだろう(?)

「ソドムの市」はむしろモリコーネの音楽ってどこにある?という不在感によって印象に残っている(汗)
劇中で演奏されるショパンなどの既成曲しかないように思ったが、
(IMDBでサウンドトラックリストを見てみたところでもそんな感じ)
もう一度見て確認する気力がわかないのであります。。

あとはポランスキー「フランティック」
こちらは暗く洗練されたシティミュージックin 80' soundという趣で、ベースがかっこいいやつ。
映画としてはピアソラ+グレイス・ジョーンズのリベルタンゴのほうが印象的かもしれないが。。

セルジオ・レオーネ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」も
これは音楽は王道的すばらしさなれど、お話が悲しすぎて(長いのもあるけど)おいそれと見返すことができない。

誰もが推すであろう「ニュー・シネマ・パラダイス」と「ミッション」はなんと観ていない。。

 

というわけで、このドキュメンタリーでは「エクソシスト2」「フランティック」「ソドム~」についてはなにも触れられていなかったのは個人的に残念なところ。

関係者のインタビューの合間や背景には、モリコーネが音楽で関わった無数の作品から引用される無数のカットがさしはさまれるのだが、そこには「ソドム~」はあったけれど「フランティック」はあったかなあ?
無かったと思うが、見落としているだけかもしれない。

2023.1.30@Bunkamura ル・シネマ

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2022年を振り返る~極私的映画鑑賞記録~

2023-02-13 15:18:03 | cinema

2月になってしまいましたが、恒例の振り返りを

2022年に観た映画は以下のとおりでした

「TWIN PEAKS limited event」デヴィッド・リンチ
「屍者の帝国」牧原亮太郎
「ユダヤ人の私」クリスティアン・クレーネス、フロリアン・ヴァイゲンザマー、クリスティアン・ケルマー、ローランド・シュロットホーファー
「スクリーマーズ」クリスチャン・デュゲイ
「ひまわり」ヴィットリオ・デシーカ
「MEMORIAメモリア」アピチャッポン・ウィーラセタクン
アクターズ・ショート・フィルム2
 「理解される体力」前田敦子
 「ありがとう」永山瑛太
 「物語」玉城ティナ
「山猫 イタリア語完全復元版」ルキノ・ヴィスコンティ
「A.W. アピチャッポンの素顔」コナー・ジェサップ
「シャルロット・ゲンズブール 愛されすぎて」ジャック・ドワイヨン
「ポーラX」レオス・カラックス
「アネット」レオス・カラックス
「オフィサー・アンド・スパイ」ロマン・ポランスキー
「ペイ・チェック 消された記憶」ジョン・ウー
「スティング」ジョージ・ロイ・ヒル
「都会のアリス」ヴィム・ヴェンダース
「さすらい」ヴィム・ヴェンダース
「まわり道」ヴィム・ヴェンダース
「ジェームズ・ボンドであること:ダニエル・クレイグの物語」
「冬の旅」アニエス・ヴァルダ
「エディット・ピアフ ~愛の賛歌~」オリヴィエ・ダアン
「DUNE/デューン 砂の惑星」ドゥニ・ヴィルヌーヴ
「ホドロフスキーのDUNE」フランク・パヴィッチ
「ドラキュラ」フランシス・コッポラ
「マイノリティ・リポート」スティーヴン・スピルバーグ

介護関係でいろいろと多忙で映画を観る暇もなく、と思っていたが、
意外にそれなりに観ていましたです。

「TWIN PEAKS limited event」は映画というべきかというとなにですが。。
TWIN PEAKSはTVシリーズや映画や音楽や出版物などの一連の創作によって、
なんだか人間の深淵の混沌を掬い取った稀有な物語になっているように思いました。
ただのブームになったドラマとは違う。。

アピチャッポン・ウィーラセタクンの作品を初めて見ました(MEMORIA)が、
これも実に素晴らしいものでした。
ふだん「映画は映画館で観るべき!」とは言わないですが、
これは大きい音で低音がしっかり出る環境でないと伝わらないものがある
(というのも映画館で観たのでそう思うだけかもしれないが)

カラックス(とスパークス)の新作「アネット」も駆け付け系
同時にそれを機に回顧上映があった「ポーラX」をようやく鑑賞
ずっと見逃していていつの日か~と思っていたので感慨深し

ポランスキー「オフィサー・アンド・スパイ」も駆け付け。
比較的王道な作りの本作なれど、冒頭からポランスキーらしい禍々しさ。
物語としての解決は、普通ならカタルシスとして処理されるはずが、
ここでは全く解消されない差別感情に満ちた社会の前景として、絶望的にただ置かれて終わる。

ヴェンダースのいわゆるロードムーヴィー3つを再鑑賞
ヴェンダースはこの3本が一番素敵と思う。

なぜかフィリップ・K・ディック原作物をいくつか観た
「スクリーマーズ」は終盤はともかく割とディック作品の持つひんやりとした不安感をよくとらえていたと思う。
「マイノリティ~」と「ペイチェック~」は再観

********

この間に岩波ホールが閉館し、ゴダールが亡くなりという2022年でした。

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バッハとの出会い〜「Die Kunst Der Fuge BWV 1080」Gustav Leonhardt

2022-09-08 23:36:50 | music

久々にバッハを巡る個人的な思い出

バッハについてほとんど何も知らないころに、
とりあえず何を聴くもんだろか?と思い、いろいろ巡ったなかで、
「フーガの技法」なんか凄そうだしチェンバロだし
ということで購入したレオンハルト盤

当時はもちろんアナログ盤で、真っ黒いジャケットだった。

最初は同じような曲調(まあ当然だ)でしかもチェンバロの単調な響きなので
なんだかよくわからん〜と聴いてはうとうとしていたものでした。

それでも、ある日突然全体がなんとなく抵抗なく入ってきて、
ああこういう音楽なのかと目覚めるので、音楽を根気よく聴いてみるのは面白い。

それで、レオンハルトによる解説がライナーにあって、
楽譜としては楽器指定のない四声だが、鍵盤楽器を想定したものだろうということが書いてあったので、
よし、とばかり楽譜を買いに行ったが、
2手に編曲(?)された楽譜というのが当時なかなか見当たらなく、
ようやくヘンレから出ていることを突き止め購入。

で、自分でも弾いてみるものの、手も足も出ず。
まあ仕方がない、と楽譜をみながら音源を聴いたりして、親しみを深めていったわけです。

その後もめげずにときおり引っ張り出して弾いているうちに
月日が経つについてそこそこ全部弾けるようになってきたので、
人間積み重ねが大事なのだなあ。。

今はベーレンライター版で2手のもの(しかも新バッハ全集版)が買える。

*******

レオンハルトはフランス風のContrapunctus6で、
16分音符をイネガルというよりはかなり付点で跳ねるように演奏している。
これは他の声部との関係などの面で、合理的な理由があるとは思うが、
これをかなり譜面通りに弾いている演奏もあって、
正解というのがあるのかしら?

というようなあれこれ考える楽しみがあるですね。
楽譜に親しむと。

ということで、60年代の録音なんだが、そんなに時代を感じない。

 

 

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「ポーラX」レオス・カラックス

2022-09-04 21:34:42 | cinema

これも観たのは結構前になってしまったので、
雑感メモ程度で。。

公開時に観損ねて、依頼機会をずっと伺っていたものの
ことごとく見逃してしまった「ポーラX」

「アネット」公開にあわせた回顧上映でついにみることができましたぜ。

(あとは「マルメロの陽光」エリセ←機会があったら絶対見るぞ)

******

で、
例によってオープニングがすごく変

あのどかんどかんは正直今のところなんなのかよくわかっていない。
よく考えたら何かがわかるかもしれない。

(でもカラックスいつもそんな感じかも)

それに続く謎のスプリンクラーからのクレーン撮影(と思う)も不思議

ストーリー的に暗いというのもあるが、
どうやら父親の所業に由来する暗さが
主人公と「姉」の人生に影を落としていることが匂わされる以外に
なにも理由というか事件というか必然性がないのに
生きているだけでどん底に落ちてゆく
そういう恐ろしさがみなぎっている。

「姉」と出会う森の暗さ
森を彷徨うシーンの視界の不明瞭さ
都会の殺伐とした空気
子供が殴られるシーンの視点(なんと殴るやつの視点)

バイクの疾走シーンの(いつもの通りの)禍々しいアングル
(カラックスのバイクシーンはいつも他に類のない異様さがある)
主演俳優の事故と重ね合わせているのか、
バイク事故の持つ変な意味合い

奇妙な夢、暗闇のベッドシーン
謎のロック・ノイズ・オーケストラ

メルヴィルの原作以上に
カラックス的な暗さが炸裂(というか充満)している

恐ろしい。。

***

スコット・ウォーカーのサウンドトラックもとてもよい。
機械が巡ってきたらサントラ欲しい。

シャルナス・バルタスはリトアニアの映画監督であり、
彼の作品にカラックスが出演したこともあるが、
バルタスのパートナーというかミューズ的な存在が
「姉」役のカテリーナ・ゴルベワであった。

ゴルベワは後に(というかポーラXの時点で既に?)カラックスのパートナーとなり
早逝している。

カラックスはゴルベワの娘を養女とし、
娘は「ホーリーモーターズ」「アネット」に出演して(というか少し写って)いる。

という話のようだ。

@ユーロスペース

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「アネット」レオス・カラックス

2022-08-25 22:27:56 | cinema

結構前になってしまったがカラックス

あまり覚えてないので、観たよーということを記すために
適当に思ったことを書いておこう。

*******

アダム・ドライヴァーの毒々しいスタンダップコメディアン
トム・クルーズのこういう感じのがあったよな
「マグノリア」だったかな。
あれはコメディアンではないけれど。

「レニー・ブルース」も思い出す。
あれは題材としてはもう少しストレートか。

なんとなく「オール・ザット・ジャズ」も思い出すが、
これはなんとなく傍若無人な雰囲気が通じるだけか。

一方で最近ジャームッシュのアレ
「デッド・ドント・ダイ」とか「パターソン」とか
ギリアムの「ドンキホーテ」とか観ているので、
いろいろなアダムのイメージがくっついていて

といういろいろな背景を勝手に背負っているように見ちゃったが
アダムの存在感は、コメディアン・ヘンリーらしく見えるにもかかわらず
どうもなにか違う、なにか生きていない人のよう?というような
不思議な感じ。

 

そもそもオープニングから変だ
これは変だ。
そこにいるリアルな製作陣の妙にリアルな存在感が
この先の全部の虚構と普通に繋がっている。
この異様さをうまく言い表せないが、これがこの映画の基調ではないかしら。

すごいあけすけな虚構の網と、その目の向こうに透けて見える剥き出しの何か。
生きているのか生きていないのかよくわからない感じ。

で、その虚構の網の虚構らしさの丸天井のようなものを
ミュージカルというやりかたがもたらしているのかもしれない。

 

そもそもカラックスは毎回オープニングがすごく変だ。
それだけでも他に類を見ないという気がする。

******

で、今回は極力前情報を得ないように頑張った末に観にいったので、
マペットの件は全く知らなかったのです。
で、本当に新鮮にその登場シーンで驚いた。
こういう初見の驚きというのは久々かも。
こういうのは楽しい。

その驚きは、あまりにもあけすけな虚構、虚構の中の虚構が
臆面もなく現れたという感じだった。

不遇な娘(虚構)は最後に受肉(現実化)をするが、
現実化がこの映画の終点であるだろうか。
最後にアダムがちらと監視カメラ(である我々)を見る。
現実への目配せ、現実への綻びではないだろうか。
あそこで虚構の網の世界は均衡を完全に失い
密かに映画は崩壊する。

面白いと思う。

ユーロスペースにて

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「萩尾望都がいる」長山靖生

2022-07-31 21:44:35 | book

 

「萩尾望都がいる」長山靖生

書店で見かけて購入。
著者についてはまったく知らなかったですが、
とっても同世代。

おそらく結構なマニアな方ではないかと思われ、
本書中にもその熱意はみなぎっている。

ただ、強い思いや考え方、解釈を熱弁するのではなく、
あくまで論証的に、高度な文化としての漫画表現を確立した第一人者として
萩尾望都の偉大さを検証してみせるので、
とても好感が持てる。

というか熱意と論証、主観と客観のバランスが
新書というあまり力まないメディアにふさわしい塩梅で、
同じく萩尾ファンである我々の興味と思いによく響くのがよい感じ。

初期から現在まで、作品を中心に
時代の空気や、作家の家族関係をふまえて
革新的な表現を切り開いていった過程を論じていくので、
作品に親しんだものは「そうそう!」とガクガク頷きながら読み進めるだろう。

*******

目次をみると、萩尾本人がもう最後にしてほしいという趣旨での出版の後なのに

大泉の件にも触れているようで、
これはどうなのかと思ったが、
読んでみると、ここも論証的なアプローチで、
大泉時代がどうだったのかということよりも、
近年「大泉サロン」的な物語化、神話化がぼんやりと進み
それに心地よく飛びつき耽溺しがちな我々読者に、
もっと慎重であれと語りかけるようである。

**

中盤からは特に1作毎の章が設けられ、
(ワタシの大好きな)「スター・レッド」や
(ワタシの大好きな)「訪問者」や
(ワタシの大好きな)「メッシュ」や
(ワタシの大好きな)「銀の三角」や

きりがない

が論じられていて
盛り上がりを禁じ得ない。。

 

ということで、萩尾ファンにはおすすめと思います〜

 

漫画世界最高峰とワタシは思う「訪問者」

 

 

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「オフィサー・アンド・スパイ」ロマン・ポランスキー

2022-07-16 18:58:00 | cinema
新作の題材は1894年に起きた「ドレフュス事件」

作風は質実剛健という感じで、
演出的な盛り上がりも抑制的。

だが、淡々と進むストーリーテリングによって、真相解明サスペンスの緊張がぐっと濃縮されている。

ポランスキーらしいコンプレス具合で
131分があっという間に過ぎた。

***

冤罪であることが公になる過程でも、
関係者も街の人々も反応が圧倒的に反ユダヤ的であることが、
作品の通奏低音のように描かれ、
ずっしりと疲れる。

冤罪事件そのものよりも、
この事件を経たにもかかわらず
人々が正義や公正ではなく憎悪と憎しみを選んでいくということに、この映画の主題はあるだろう。

主題というか、
これを題材とした映画を撮る動機の核心なのかも。

***

ウィキペディアでドレフュス事件の項を見てみたら、事件を描いた当時の挿絵が掲載されているが、映画はこの挿絵にかなり近いイメージ。

とりあえず挿絵の出典を把握していないので、後で調べてみよう。
(と言って結局放置なのがいつものパターンだけど)

ルイ・ガレルのドレフュスもウィキにある写真とそっくり。

***

監督本人が演奏会シーンにチラ出演しているらしいが、
まったく確認できなかった。
ので、
もう一度観たい。

そこで演奏されるのはフォーレなんだが、
せっかくチェロとバイオリンがいるのに、
両者が延々とオクターブユニゾンするという、
フォーレの室内楽によく見られる不思議な特徴がよく出ている部分。
(フォーレは宇宙人だと常々思っている)

冒頭静かな風景かと思いきや
よく見るとすごくたくさん人間がいる〜とか、
弁護士の受難シーンのぶっきらぼうな感じに
ポランスキー味を感じた。。

あとデスプラの奇妙な音楽も。


シャンテにて





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