江湖テレビ

主に中国武侠を扱ったテレビドラマを取り上げます。

名前にルビか、カタカナ名か。

2005-08-28 06:15:57 | 雑談
 ネットの中国ドラマのファンサイトを見渡すと、たまに登場人物の名称に関する苦言が書かれているのを目にする。名前の原語読みと日本語読みの問題も然ることながら、名前を漢字表記にしてルビ(ふりがな)をふるのが良いのかカタカナにするのが良いのかという話題が散見される。概ね「漢字表記派」が優勢に見えるが、漢字表記の場合日本では馴染みのない字もあったりして、それに毎度ルビをふられるのも鬱陶しかったりするので、一概にどちらが良いとは言い切れない。

 実際DVD化されている作品を幾つか見ると、武侠ドラマは漢字+ルビ(初回表示時)表記で、現代ドラマはカタカナ表記にしているケースが多いようだ。カタカナにするのは、他の海外ドラマと同様「日本人の名前ではないから」ということで、見かけはアジア人だから多少違和感はあるものの慣れない話ではない。ただ、文字数を食うケースが多く、どうしてもフルネームを表記しなければならない場合などは字幕屋さんたちは苦労されているようだ。

 また、これは現時点ではあまり話題としては目立たないが、漢字名にした場合のルビを日本語読みにする場合と原語読みにする場合が作品によって異なるケースがある。日本語読みにした場合は覚えやすいものの、実際ドラマで登場キャラクターたちが名前を呼び合っている時、字幕にその名前が表記されていない場合、どのキャラクターの名前を言っているのか見失う場合がある。一方、原語読みのルビがふられている場合、キャラクターを見失うことはなくなるのだが、全ての字幕にルビがふられていない場合、名前を覚えるのに苦労したりする。どちらが良いのかは個人の嗜好の差という話になってしまって、メーカーさんとしては頭を悩ませるところかと思う。

首領(しゅりょう)

2005-08-28 06:02:41 | 用語解説さ~と
 ある族や団体の長をこのように呼ぶケースがある。そもそもの原語の意味がこれに近いものもあれば、中には日本では馴染みのない代表役をこのように訳してしまうケースがある。
 ドラマ「断仇谷」では、タイトルとなる峡谷に一つの集落が発生し(発生してから断仇谷と名付けられるのだが)、そこの代表者が「首領」と呼ばれるのだが、原語では実は「谷主(グ・チュウ)」と呼ばれている。字面だけを見れば日本語としてもわからいではないだろうが、いわゆるボスを意味する「首領」を持ち出した方がいち早く視聴者は納得すると思ったのだろう。なお、このドラマは異なった種類の集団が幾つか出てくるので、ここらへんの呼称を日本語流にアレンジした苦労のあとが見られる。

二番頭(にばんがしら)

2005-08-28 05:55:31 | 用語解説な~ほ
 原語は「副将」と同じく「二當家(アル・ダン・ジャ)」であるが、一部特殊な事情で山賊の副将をこのように呼ばせるケースがある。これが日本のお店(たな)ものならば「番頭」とでもなりそうなものだが、一応武侠ドラマなのでそうはならないようだ。
 この語を使っているドラマの場合、以降「三番頭」「四番頭」と訳されることになる。(「副将」の項参照)

頭領(とうりょう)

2005-08-28 05:50:10 | 用語解説さ~と
 「お頭」の項参照。

お頭(おかしら)

2005-08-28 05:48:58 | 用語解説あ~こ
 主に山賊などのアウトロー的な集団の長をこう呼ばせるケースがある。内部では「お頭」と呼び、対外的には「頭領」という言葉にしている場合、原語は「寨主(さいしゅ)」であったりするケースがある。これはそのまま「寨主」と言われてもピンと来ない日本人視聴者への配慮と思われる。(「寨・寨主」の項参照)

護衛局(ごえいきょく)

2005-08-28 05:41:27 | 用語解説あ~こ
 原語ではヒョウ(金へんに票)局(ひょうきょく:ビャオ・ジュ)という中国武侠世界独特の業種の日本語訳。そのままヒョウ局と字幕化しているドラマもある。
 直訳すると運送業になってしまうのだが、今で言う宅配業者のようなイメージとは違って、山賊や盗賊などの襲撃から貴重な金品や人物を護りながら運ぶのが仕事で、用心棒稼業のような要素も含めているらしい。ヒョウ局とそのまま表現しても視聴者がピンと来ないと思ったメーカーさんは、造語としてこの言葉を作ったようだ。局という字は日本では政府の機関を示す色合いが濃いので不適切にも思われるが、では護衛屋やいっそ用心棒などと訳してしまった場合、その後のエピソードに出てくる会話が上手くいかなくなることがあったのかもしれない。意味合いとしてはわかるから、これはこれでアリだと思う。

 ちなみにヒョウ局の代表者はヒョウ頭(ひょうとう:ビャオ・トウ)となり、そのニュアンスをそのまま日本語化すると「お頭」になるのだが、既に山賊の頭領などが出現しているドラマの場合はその語は使えず、やや違和感はあるものの「局長」という言葉が使われている。

 また、局とは言え一つの商売なので、護衛局ごとに名称がついたりする。ドラマによっては「福威ヒョウ局(笑傲江湖)」のようにそのままにしているものもあるが「平安警備(断仇谷)」のように敢えて「護衛」という言葉を変化させているものもある。

四声は字幕では表現できない。

2005-08-18 13:23:25 | 雑談
 中国語を習ったことのある人ならご存知の四声(しせい)。文字で表現するのが難しいが、たとえば「マー」という発音、「マ」を強調するか「ー」を強調するか、平板に言うかで意味が異なってくる。中国語の文字で表現すればその差は歴然で、それをただ字幕や吹き替え用に日本語翻訳することは難しい話ではない。ただ、これが人名となると話が変わってくる。

 武侠ドラマの字幕の中には、名前を漢字で表現してその文字にルビ(ふりがな)をつけて読ませるものがあるが、一般的にはカタカナで表記するのが字幕のルールらしい。ただ、先の例にあるように、文字が異なっても字幕にすると同じものが出てきてしまう。

「やあ、麻さん」
「どうした、馬さん」

という会話も、カタカナ表記をすると、

「やあ、マーさん」
「どうした、マーさん」

となってしまって紛らわしいことこの上ない。二人で会って話していればともかく、別のシーンで噂話などをしていたら、一体どっちの「マーさん」の話なのかわからなくなってしまう。ということで、翻訳者の方は涙を飲んで呼び名を変えてしまうのだそうだ。まあ、日本人でも伊藤さんと伊東さんが出てくる話を、漢字圏以外の国で字幕表現する場合は両方とも「Ito」になってしまうのだろうから、あってもおかしくはない話なのだな。

 ということで、原語で聞いている呼び名と字幕や吹き替えの呼び名が異なっている作品を発見したら、こういうことがあると思って見るといい。

副将(ふくしょう)

2005-08-17 23:50:26 | 用語解説な~ほ
 例えば山賊だったり、例えばとある集落だったり、そこにはその集団を統べる首領なり頭領なりがいて、その二番手に位置する頭が副将と呼ばれている。以降、三番主、四番主など数字と「~番主」の組み合わせとなるのだが、武侠ドラマの世界では、副将と三番主の開きは大きいようで、みんな副将には敬語を使うが、三番主以下の番主同士は敬語を使わなかったりする。これは日本語のような敬語の使い方をしない中国ならではの職位表現なので、実際には日本語の様な敬語を使ってはいないのだろうが、そこで副将とそれ以外の差異をつけるところに字幕や吹替え製作者の苦労のあとが見てとれる。

 実際「番主」は原語では「當家(ダン・ジャ)」と呼んでいて、わかりやすく日本語化すると「当家」となるのだが、「三当家」「四当家」という表現では今ひとつわかりづらいと思ったのだろう。「何番目の主」という意味合いが見てとれる「番主」と訳したのは賢明だと思う。
 また「副将」自体も実際は「二當家(アル・ダン・ジャ)」であり、それをそのまま先の訳のルールに則れば「二番主」となるのだが、先にも書いたように他の番主キャラと区別を大きく付けるために敬語を使わせるという手段に出たが故に、二番主だけ「副将」になったのだろう。まあ、「副々将」などという単語は耳慣れないから、三番手以降は仕方がないんだけど。

敬語と呼称。

2005-08-17 23:36:18 | 雑談
 中国語には敬語はないとは言わないが、日本語のように語尾が変わったり、言い回しが変わったりするようなケースはあまりないようで。それよりも、相手に対しての呼びかけ方が細分化されていて、そこで敬意を表するのが一般的なようだ。
 字幕や吹替えで「~さん」とひとくくりにされている部分の原語に、そのポイントが隠されている。それを敢えて日本語で表現すると、大雑把に挙げても以下のようになる。

「○○兄さん」
「○○お嬢さん」
「○○先生」
「○○おばさん」
「○○おじさん」

 また、役職や職位を名前に付けて呼ぶ。日本では会社組織などで「○○課長」とか「○○部長」とか呼んだりもするが、そのノリで上司に相当する人間のみならず部下に相当する目下の人間にも何らかの役職・職位名称を付けて呼んだりする。大体、会話自体、いちいち相手の名前を呼ぶことが多い。これは実際の生活でもそうらしいのだが、場合によってはフルネームをいちいち会話のはしばしに入れて、敬語や丁寧語に相当する役割を持たせているようだ。例えば日本語で表現した場合、山田太郎さんと鈴木花子さんの会話を中国風にするとこうなる。

「山田太郎さん、今日はどうしたんですか」
「鈴木花子さん、ちょっと近くまで来たから寄ってみたんだ」
「そうなんですか」
「鈴木花子さん、あまり元気がなさそうじゃないですか」
「山田太郎さん、実は身体の具合が芳しくなくて」

 大袈裟に書くとこんなカンジだ。ただ、武侠ドラマに出てくる人物の名前は二音節ないしは三音節でフルネームをカバーする場合が多いので、会話を耳にしていて、そのテンポの良さにあまり違和感を感じない。

 当然のことながら、字幕や吹替えではかなりの量を略しているだろう。場合によっては名前を連呼するところなどもあって、そこにそのままの名前を字幕や吹替えに入れても芸がないと思ったのか、アレンジしている作品も多くある。例えば、原語では「山田太郎、山田太郎、山田太郎」と連呼していても、字幕では「太郎 どうした しっかりしろ」などとしている場合がある。ご苦労様です。

兄貴(あにき)

2005-08-17 23:18:53 | 用語解説あ~こ
 実の兄弟のみならず、義兄弟の兄をこう呼ぶケースがある。(「兄さん」の項参照)