被告人 濱和彦の逮捕手続きの適否について
212条
① 現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする。
② 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき
被告人濱に対する逮捕手続きなどの適否について
証拠上認定できる基本的事実
昭和60年2月5日
午後2時16分頃 巡査木庭 巡査部長伊東 派出所で勤務中 「和光大学内でけんかという110番通報があった。」との無線連絡を傍受。その後、「和光大学A号棟付近で内ゲバが発生、重傷者 けが人がでた」「革マルは玉川学園方面に逃走した」との無線連絡を傍受した。派出所は和光大学と多摩川学園の延長線上にあり、内ゲバ犯人が逃げてくるかもしれないと警戒をしていた。
午後3時15分頃 派出所前をジャンパーを着て黒色の買物袋を持った被告人濱および氏名不詳の男1名が通りかかった。 時間的にも内ゲバ犯が同署付近に到着すること、朝から小雨降っているのに傘をさしていないことから、内ゲバ犯人と考えた。
木庭巡査が被告人濱を追いかけて70メートル進んだ横断歩道で追いつき停止を求めた。被告人が走って逃げたのでそこから300メートル追跡し、商店の搬入口で追いつき、同所において被告人の腕をつかみ、通報により到着したほかの警察官とともに、被告人の腕を抱えて警察のパトロールカーに乗せて、手錠をかけることなく警察署に連行した。
その後、商店の搬入口において被告人濱を準現行犯人として逮捕した旨の現行犯人逮捕手続書が作成された。
一方、伊東巡査部長は、派出所のストーブを消していたため、氏名不詳の男を追いかけたが見失って戻ったところ、タクシー運転手が道路上に落ちていた被告人濱の買物袋を拾って届けたので、これを領置したことが認められる。
裁判所の判断
・ 被告人が呼び止められて、それまで手に持っていた紙袋をそのまま保持できず、これを手放すことを余儀なくされ、これから手を離してその場から逃げ出したことは明らかであって、これが刑事訴訟法212条2項4号にいう「誰何されて逃走しようと」したことに該当するとの検察官の主張はその限度で相当である。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。 否定
・準現行犯逮捕を有効になし得るためには、外形的行為に加えて、「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる」場合、すなわち、犯罪行為との接着性および明白性の損することが必要とされているので、その点について考察してみる。
控訴審
212条
① 現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする。
② 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき
被告人濱に対する逮捕手続きなどの適否について
証拠上認定できる基本的事実
昭和60年2月5日
午後2時16分頃 巡査木庭 巡査部長伊東 派出所で勤務中 「和光大学内でけんかという110番通報があった。」との無線連絡を傍受。その後、「和光大学A号棟付近で内ゲバが発生、重傷者 けが人がでた」「革マルは玉川学園方面に逃走した」との無線連絡を傍受した。派出所は和光大学と多摩川学園の延長線上にあり、内ゲバ犯人が逃げてくるかもしれないと警戒をしていた。
午後3時15分頃 派出所前をジャンパーを着て黒色の買物袋を持った被告人濱および氏名不詳の男1名が通りかかった。 時間的にも内ゲバ犯が同署付近に到着すること、朝から小雨降っているのに傘をさしていないことから、内ゲバ犯人と考えた。
木庭巡査が被告人濱を追いかけて70メートル進んだ横断歩道で追いつき停止を求めた。被告人が走って逃げたのでそこから300メートル追跡し、商店の搬入口で追いつき、同所において被告人の腕をつかみ、通報により到着したほかの警察官とともに、被告人の腕を抱えて警察のパトロールカーに乗せて、手錠をかけることなく警察署に連行した。
その後、商店の搬入口において被告人濱を準現行犯人として逮捕した旨の現行犯人逮捕手続書が作成された。
一方、伊東巡査部長は、派出所のストーブを消していたため、氏名不詳の男を追いかけたが見失って戻ったところ、タクシー運転手が道路上に落ちていた被告人濱の買物袋を拾って届けたので、これを領置したことが認められる。
裁判所の判断
・ 被告人が呼び止められて、それまで手に持っていた紙袋をそのまま保持できず、これを手放すことを余儀なくされ、これから手を離してその場から逃げ出したことは明らかであって、これが刑事訴訟法212条2項4号にいう「誰何されて逃走しようと」したことに該当するとの検察官の主張はその限度で相当である。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。 否定
・準現行犯逮捕を有効になし得るためには、外形的行為に加えて、「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる」場合、すなわち、犯罪行為との接着性および明白性の損することが必要とされているので、その点について考察してみる。
控訴審