―鳴海市街―
―鳴海市上空―
「ふう・・・。」『Take a rest? My master.』
広範囲のエリアサーチを長時間続けるなのはを気遣って、レイジングハートは休憩の提案をした。このままではロストロギアを見つける前になのはが参ってしまう。
「・・・そうだね。良く考えたら、はやてちゃんの尾行のために朝早くから準備してたし、何も食べてないんだよね。とりあえず、フェイトちゃんに一度連絡取ってみる。」
『All right,』
なのははエリアサーチを一旦中断し、フェイトへ念話を送る。
「フェイトちゃん、今大丈夫?」
『ふぁふぉふぁ?ふぃふぁふぃふはふふぃぁふぃふぉふぃふふぇふぁふぉ!』
「え、ちょ、何?フェイトちゃん?」
『ふぉうふふ?』
「フェイトちゃん?何か咥えてるのかな?念話だから普通にしゃべれると思うけど?」
『ふぁ!』
フェイトは、念話なので口を使わないことに気づき、急いで訂正する。
『今、シグナム達を見つけて追っかけてるんだけど、どうする?』
「見つかったの!?」
『うん、見つかったには見つかったんだけど・・・ちょっといろいろあって追いかけるのが遅れちゃって・・・。見失いそうなんだ。』
「えっ!?フェイトちゃん今どこなの?」
『鳴海市の空。』
「いや、そうじゃなくて。」
『あ、もうここ遠見市かも。』
「ああ、もう!そこから何が見える?」
『空には一陣の風と、一片の雲があるばかりだった。』
「一度君の頭をブレイカーしようか?」
『遠見市エリアB-7-49座標ポイント49,82』
「(分かるんならさっさと言えよポンコツが)じゃあ今から私も向かうから、とりあえず見失わないようにお願い!」
『イエス、ユア ハイネス。』
なのはは、フェイトからの情報をレイジングハートに入力した。
「遠見市エリアB・・・7-49・・・座標・・・49,82・・・っと。」
『searching…』
「このポイントだと・・・遠見市街じゃない、よね?」
『search completed. Yes,my master. The forest.』
「すると、ロストロギアは郊外にあるって言う事かな。とりあえず、休憩は後だね!行くよ、レイジングハート!」『All right.Sonic move 』
―遠見市郊外―
「ここら辺でいいか・・・。」
シグナムは遠見市郊外の森林の上空で停止した。そして振り返る。
「ヴィータ!」
「!」
背後をほぼ同速で追いかけていたヴィータも、シグナムと少し距離を開け停止する。
「確かにヴィータ、お前の言うとおりだ!私はお前のフルーリーを食べた!しかし、それが何だ!また私が新しいのを買ってやる!何ならハーゲンダッツでもいいぞ!」
「シグナム・・・わかってねぇ・・・わかってねぇですシグナムさん!あんたは・・・あんたはあたしのアイスを食べた!つまりそれは侮辱だ!世界中のアイスに対する宣戦布告だ!」
「待て!なぜそうなる!?」
「それは・・・あたしがアイス界の神だからだ!」
「は・・・?いや、待て?は?」
「あたしは新世界の神になる!アイゼン!」『Jawohl. Raketenform.』
ヴィータの鉄槌、グラーフアイゼンのハンマーヘッドの片方が推進剤噴射口に、その反対側がスパイクに変形する。強襲用形態・ラケーテンフォルム。物理破壊力による攻撃専用の形態だ。この形態時は射撃魔法も範囲攻撃もできなくなる。が、元々レヴァンティンのパンツ赤・・・パンツァーガイストには生半可な魔法攻撃は通じない。それを見越しての形態変化だった。
「ラケーテン・・・」
グラーフアイゼンが噴射口から推進剤を吹き出しながら回転していく。その回転は瞬く間に速度を上げていき、その姿は世界陸上のあの声を上げてハンマーを投げる人達を沸々とさせる。
「ヴィータめ・・・本気か・・・。」
そこへかなり遅れて追いかけていたフェイトが追いついた。
「ふぁふぇ?ふぁらふぁふぁへ?(あれ?仲間割れ?)」
「テスタロッサ!?ちょ、お前何咥えてんの?お前、それ買ったんだよな?なぁ?」
「ふぉりふぁふぇふ、ふぁるふぃっふゅ、ふぁふぁふふぉふぉーふ!」
『Please eat it,and say sir.』(食ってからしゃべれよ、サー)
「むぐ!むぐっ・・・むぐっ!」
フェイトはとりあえず口に入っているハンバーガーを食べ始めた。
「・・・ハンマー!」
そんなことはお構いなしに回転を続けていたヴィータは、その回転の遠心力で相当に速度を上げ、シグナムへと一直線に襲い掛かる・・・!
「くっ・・・レヴァンティン!」『Panzerschild』
これをパンツァーガイストで受け止めきれないと考えたシグナムは、目の前へと魔法陣を展開し、盾を作る。しかしこの魔法はあくまで防御の基本形。まだヴィータの襲撃を受け止めるには不十分だ。
「・・・フルドライブ!」
防御よりも回避を優先するクロスレンジを戦闘スタイルとするシグナムには、防護魔法の適正は薄い。しかし、基本の型であるパンツァーシルト。これは基本形であるがゆえに魔力の上乗せで防御力は格段に上がる。
「そんなもので・・・っ!アイゼンが・・・止められるかぁぁぁ!」
襲い来る鋼の鉄槌。それに対抗するは、鋼の盾。
「むぐっ・・・ん、んんーーーーーーっ!」
そして喉を詰まらせる心優しき金の閃光。
今、その想いが交錯する。