昨日公表された人口戦略会議の『地方自治体「持続可能性」分析レポート』ですが、なんとか原本がみられないかと思って検索をかけました。
検索上位にはこのレポートが出たことを紹介する新聞記事やテレビニュースが来て、なかなか原本にたどり着けません。
ようやくたどり着けたのは、北海道総合研究調査会(略称:HIT)さんのホームページでした。
https://www.hit-north.or.jp/information/2024/04/24/2171/
こちらには、地方自治体の持続可能性分析レポートと、全国1729自治体の持続可能性分析リストのリンクも貼られているので、自分の関心のある自治体の将来推計を見ることができます。
分析の結果をみると、北海道には非常に厳しい未来が予想されています。
曰く、「北海道は『消滅可能性自治体』が 117にのぼる。北海道の自治体の大半は人口流出が激しく、社会減対策が必要だが、自然減対策も必要な自治体は少なくない。」とされています。
分析の手法としては、まず「封鎖人口」という名目で、その土地で生まれてその土地で死ぬであろう人口を想定して、自然的増減を見ます。
次にその土地で生まれた人が他の土地に移ってしまう「移動想定」の要素を加えて、社会的増減を加味します。
この結果、将来その土地で生まれる子供が減るとすれば、出生率対策を施さなくてはならないだろうし、社会的減少で人口が減るとすれば定住対策を施さなくてはならないだろう、と政策の方向性も示唆してくれる形になっています。
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分析の結果として、「封鎖人口の減少率を横軸に3つ」に分け、「移動仮定による減少率を縦軸に3つ」に分け、「3×3」のマス目を作り、地方自治体の将来像を9つに分類しています。
封鎖人口(自然減)の減少率が20%未満で、移動による減少率が20%未満ならば自立持続可能性が高いとして「A」判定。
それ以外をB-①、Bー②、C-①、C-②、C-③、D-①、D-②、D-③と分類されたことで、自然減対策がより必要とか社会減対策がより必要といった対策の方向性が分かりやすくなっています。
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レポートでは、これらを踏まえたうえで、これから取り組むべき「人口戦略」が提言されています。
そこで示されている2つのキーワードは、「人口定常化と(経済社会システムの)質的強靭化」です。
人口定常化とは、人口が減るのは仕方がないとしてその現象スピードを緩和させ、最終的に人口が安定することを目指そう、というものです。
また(経済社会システムの)質的強靭化とは、とはいえ人口が減るのは避けられないので、各種の社会システムを人口が減ってもやれる形に変える強靭化を図るべきだ、というもの。
そしてレポートの最後には、これらの戦略をどのように進めるかということに対して、行った政策をしっかり評価したうえで次の戦略を立てろ、といいます。
これまでは"とにかくやらないよりましだから何かやろう"という場当たり的な政策が多く、成果を上げていないのではないか、という反省です。
そのうえで推進の体制を政府がしっかりと作り、国民全体で意識を共有することが必要なのだと。
私が個人的に心配なのは、それらを実現させるための信頼という資源が今の政治にあるか、ということです。
いくら良いことを言っても、「お前には付き合えない」という反発があるようでは国民が気持ちを一つにして推譲の精神を発揮して協力し合うことはできないでしょう。
今の国会での政治資金問題が罪なのは、そうした信頼資本を与野党がともにどんどん棄損していっていることです。
"人気がある、ない"と言ってしまえば身も蓋もありませんが、良い政策も実行するには人気資産、共感資産が必要ですし、逆を言えば、人気があれば後にわかる悪政でも国民は諸手を挙げて賛同するということだってあるのです。
政治が信頼資産を取り戻して、国民の心を束ねるような時代が早く来ることを願うばかりです。