庭の花々(2013)
坪井洋文は、『日本民俗社会の研究資料』隣人社版(1968)のあとがきに、「日本基礎社会の研究にとって、研究上の普遍的要素となる諸現象の分布上の地域的ずれの意味をどのように位置づけるかという問題は、十分に検討されているとはいえない。民俗学的方法による限り、おのずから限界があるといえようが、一つの試みとしてその地域的ずれを説明する概念として”民俗社会”という用語を用いてみた。」と書いていました。
この本には、『日本民俗学大系』平凡社版(1960)に掲載された坪井の「民俗調査の歴史」と「日本民俗調査要項」が再掲されており、発刊当時、いわば民俗社会研究の入門書として読まれていたものでした。
ここにいう「日本民俗調査要項」は、私にとってとても懐かしいものです。
私は、高校入学と同時に森正史先生が指導顧問をされていた愛媛大学農学部附属高校・郷土研究部に属し、夏期合宿と呼ばれる民俗調査や、休日を利用したお祭りの調査に同行していました。調査項目は、大系本の「日本民俗調査要項」の抜書きやそのガリ版刷が、先輩から後輩に引き継がれていましたのでそれを使っていました。
今考えると、不思議なもので、高校の生徒だったころの私は、まさか調査項目を著した当の本人から、将来お教えを受けることになろうなどとは、毫も考えてはいなかったのですから。
高校時代、それは、東京オリンピックが開催され東海道新幹線が開通した、1960年の中ほどのころのことでした。